突然、凄まじい風が魔物の森に吹き荒れ

 

山の形すら変えてしまうほどの威力で当たりを攻撃する

 

魔王ミューヤはマーリアの言った

 

「あなたには勝ち目はない」という意味を理解した

 

森には無数の魔物たちが住んでいる

 

魔王は決して理由なく魔物を傷つけることはできない

 

魔王の本能が魔物を守ろうとしてしまう

 

そのためマーリアの無差別攻撃から魔物を守るために

 

魔王ミューヤは魔力を割かなければならない

 

おそらくマーリアは魔物にどれだけの犠牲を生み出しても痛くも痒くもない

 

「卑怯ね」

 

「あら人間の世界ではこんな戦術は当たり前よ」

 

「だったら私は人間なんて大嫌いだわ」

 

凄まじい雷撃がマーリアを襲うも

 

マーリアはそれを漏電させるように森へ拡散したから

 

やむなく魔王ミューヤは攻撃を止める

 

「あなた甘いわね」

 

マーリアは氷結の魔術で氷の矢を無数に作り魔王ミューヤへ飛ばす

 

魔王ミューヤは魔物たちを守るために避けることができない

 

すべてを受けて立つことになる

 

もちろん、こんなこ事では魔王ミューヤにダメージすら与えることはできない

 

ところが、次に雷撃を彼女にへ放つと

 

氷結の矢があたりを濡らして雷撃が拡散して行く

 

やむなく魔王ミューヤはそれをすべて自分へ吸い込んで多大なダメージを受けた

 

「ほらね、あなたに勝ち目はないわ、戦場が魔物の森という時点であなたは詰んでいるのよ」

 

マーリアの不敵な笑い声が魔物の森に響く

 

他の魔王たちもマーリアの卑怯な手口に腹を立てたが

 

一対一の決闘である以上誰も手出しすることはない

 

そのが魔王としての矜持の一つだ

 

「私は魔王ではないから魔王ミューヤに加勢するぞ」

 

というマルカスト元帥を魔王テトが止めた

 

「なぜ止める」

 

「貴様は魔王の決闘の意味をわかってはいない」

 

「決闘の意味だと」

 

「もし貴様が魔王ミューヤに少しでも手を貸せば、魔王ミューヤは自害して果てるだろう、これは魔王として誇りだ」

 

「しかしマーリアのあの卑怯な手口を見ただろう、卑怯な奴には卑怯な手を使っても問題ない」

 

「こういう時人間はそういう発想をするのだな、だが魔王は魔物たちもそうだがあくまで一対一の戦いを貫く、これに準じない魔王は自分の誇りを傷つけることになる、これは死ぬよりも辛いことだ」

 

「何か手はないのか」

 

「マーリアは最初に決闘に応じると刷り込み、見事魔王ミューヤは乗ってしまった、この時点でマーリアの術中にはまっているのだ」

 

魔王テチカが話に割り込んできた

 

「どういう意味だ」

 

「もし決闘でなければ、マーリアは遺物として排除される立場に立つ、つまり魔王が総がかりでマーリア討伐をしても問題ないなかったが、先手を打たれた、これが決闘となれば魔王ミューヤはマーリアを認めることになり、我々は手出しできなくなる、また手出しすれば魔王ミューヤの誇りはズタズタになるのだ」

 

魔王テチカの考えにマルカスト元帥は感動はするが納得が行かない

 

「一体どこまで計算ずくなのだ、マーリアと言う奴は」

 

「おそらくここに現れた時点で、最初から魔王ミューヤを狙っていたのだろう」

 

「なぜ魔王ミューヤなのだ」

 

魔王テチカはちらりとマルカスト元帥を見てから

 

「マーリアにとって魔王ミューヤだけが脅威だったということだろう」

 

魔王テチカは再びマーリアへ視線を移す

 

「マーリアがそこまで脅威を感じているところを私は見たことがない」

 

マルカスト元帥と魔王テトは魔王ミューヤに視線を移す

 

既に傷だらけになっている

 

マーリアの攻撃をすべて受けているからやむを得ない

 

マルカスト元帥は座り込んで腕を組んで考え込んだ

 

何か閃いたのか突然立ち上がり魔王テチカに言った

 

「異空間を作り両者の戦場を設定してやることはできないか、これは手を貸したことにはならない、思う存分戦えるように」

 

「なるほど、それは可能だが、あの強大な魔力を包み込むような異空間を維持できるだろうか」

 

ちらりと魔王テチカは魔王テレメッドを見る

 

魔王テレメッドも視線に気づき魔王テチカに視線を移した

 

「魔王テレメッド貴様には貸しがあったな、返す気はあるか」

 

「もちろんだ、機会があればいつでも手を貸す」

 

「お前の魔力は魔王ミューヤに匹敵する、あの二人を包み込む異空間を作り、あの二人が存分に戦える戦場を作ってやってはくれないだろうか」

 

魔王テレメッドは魔王テチカの意図に気が付き

 

「なるほど、このままでは魔王ミューヤがあまりにも不利だから対等に戦えるようにしてやるのだな」

 

話を聞いていた他の魔王たちも「私の魔力も使ってくれ」と次々に志願した

 

「もし許されるなら私の魔力も使ってくれないか」

 

「貴様は何故それ程までに魔王ミューヤに肩入れするのだ」

 

魔王ロドリアスである

 

「私は魔王ミューヤが大好きだ、あいつのためなら、たとえ魔力が付きて死んでも悔いはない」

 

マルカスト元帥の魔王ミューヤへの思いを感じ取った魔王たちは心を打たれた

 

「貴様が発案者だ、責任を取って魔力を提供するのは当然のことだ」

 

魔王テチカの言葉にほかの魔王たちも同意した

 

「魔王ミューヤの魔力は計り知れない、マーリアはそれに匹敵する魔力のようだ、当然異空間で戦えばその魔力に当てられてただでは済まないだろう、場合によっては命を落とすことだつてある、それを提案して自らも参加するなど亜魔王種にできるだろうか」

 

他の魔王たちは口々に「否」と叫ぶ

 

「マルカスト元帥は亜魔王種にあらず」

 

他の魔王たちもマルカスト元帥を亜魔王種ではないと認めた瞬間だった

 

マルカスト元帥は「魔王たちは本当に気持ちの良い奴らばかりだな」と思った

 

器用な魔王テチカが異空間づくりの先導をすると、ほかの魔王たちの魔力を利用して

 

強大な異空間を作り最後に魔王テレメッドがその異空間に

 

マーリアと魔王ミューヤを入り込ませた

 

両者は突然異空間に放り込まれて戸惑った

 

「これでは、まともに遣り合うしかないわね」

 

マーリアは即座に状況を把握した様子だ

 

「これはなんなの、どうなっているのかしら」

 

「気が付かないの、ほかの魔王たちが私たちに戦場を提供してくれた」

 

つまり、魔王ミューヤはこの異空間では魔物たちを庇う必要がないため

 

まともに戦えるのだと理解した

 

「これなら全力で戦えるってわけね」

 

「それでも勝つのは私だけどね」マーリアはくすくすと笑う

 

「その薄ら笑いも今のうちだけよ」

 

マーリアには勝算があった

 

先ほどまでのダメージが未だ魔王ミューヤに残っている

 

彼女が回復前に徹底的に叩けば勝てる

 

そこで氷結の魔力で氷の矢を無数打ち込むと魔王ミューヤはそれ燃やす

 

水蒸気で辺りが見えない程になると

 

高圧で熱を圧縮した熱の球体を作り魔王ミューヤへ放つ

 

途端に辺りは爆発して魔王ミューヤは吹っ飛ばされ倒れ込む

 

「なんなの今のは、本当に魔力でしたこと」

 

「人間の世界には科学というものが存在するこの世の現象を物理的に分析して解析したものね、かつて魔術師と魔法使いの戦いが勃発した時、数の少ない魔術師の劣勢を補うために、科学者と手を組み、錬金術というものを生み出した」

 

「これが錬金術なのね」

 

「それの応用のようなものね」

 

すると今度は具現化系魔術で粉を撒き散らし魔王ミューヤを粉塗れにした後

 

炎を小さく圧縮した球体を作り

 

魔王ミューヤの前まで放ち、爆発させると

 

途端に辺りの粉が爆発して魔王ミューヤはまた吹っ飛ばされた

 

「これも錬金術なの」

 

「魔術による人工的な粉塵爆発ね」

 

マーリアの繊細かつ斬新な頭脳に魔王ミューヤは翻弄されるばかりだ

 

ところが魔王ミューヤは突然笑い出した

 

「面白いわ、粉塵爆発、水蒸気も粉も爆発するのね、もう一度やってみて」

 

マーリアは戸惑ったが、この魔術はマーリアも相当修練を積んで会得したもので

 

そう簡単にまねできるものではない、だから攻略は無理だろうと判断した

 

そして再び粉を巻き起こし魔王ミューヤへ飛ばすと

 

突然の突風が吹いてその粉塵はマーリアのもとへ送り返された

 

途端に爆発する、今度はマーリアが吹っ飛ばされた

 

「あなた、さっきのを一度見ただけで覚えたの」

 

「そうよ、面白いわ」

 

傷だらけのマーリアが彼女を見上げると彼女の傷は治って行く

 

「認めたくないけれど、確かにあなたは天才だわ」

 

「そんなのどうでも良いわ、ちょっと乗って来たわ」

 

魔王ミューヤは新しいおもちゃを手に入れた子供のように燥(はしゃ)いでいる

 

氷結の魔術で氷の矢を再び魔王ミューヤに放つと

 

魔王ミューヤも同じように氷の矢を放ってきて相殺されると

 

巨大な炎の球体を魔王ミューヤが作りマーリア目掛けて放つ

 

途端に爆発を起こす

 

マーリアはまた吹っ飛ばされ傷だらけになった

 

「へぇ真似るだけでなくしっかり応用して攻撃できるのね」

 

魔王ミューヤの天才性はマーリアの予測を遥かに超えていた

 

「最初から彼女の危険性は感じていたけれど、まさかこれほどまでとは思わなかったわ」

 

そういうとにやりと笑う

 

次の瞬間魔王ミューヤが倒れそうになり片足の膝をついた

 

「一体何をしたの」

 

「二度目の爆発の時、粉に毒を仕込んでおいたの、今頃効いて来るとは魔王の身体は丈夫に出来ているのね」

 

「あら気が合うわね」

 

魔王ミューヤの言葉の意味を次の瞬間マーリアも理解した

 

今度はマーリアが座り込んだ

 

「先程、あなたの作った粉を吹き飛ばしたとき毒を仕込ませて貰ったもの、まさか同じことを考えるなんて、良いアイデアだと思ったのだけれど」

 

魔王ミューヤは決してバカではない

 

嫌、考えての戦術ではなく彼女は閃きと直感で戦術を作り出せるタイプだ

 

「これだから嫌いなのよ天才って存在が」

 

マーリアの無制限で変幻自在な思考によって生み出した戦術も

 

一瞬の直感で読み取りぶち壊してしまえる

 

これは頭脳線による結果ではない

 

如何なる戦術も彼女は感じ取り打ち壊してしまう

 

それどころか、自分が無数の戦術の中で選出したものを凌駕する戦術を

 

直感と閃きにより一瞬で超えてしまう

 

マーリアは天を見上げるように上を見つめてから息を思いっきり吸い込み

 

大地を叩くと魔王ミューヤの周辺から木が生えて来て大樹となり彼女を取り囲む

 

次の瞬間その大樹が燃え上がり燃え尽きる

 

魔王ミューヤは倒れ込んだ

 

「これも錬金術なのかしら」

 

「具現化系魔術と炎の魔術を組み合わせたものよ」

 

満身創痍になっている筈の魔王ミューヤから笑い声が聞こえる

 

そして笑いながら大地を両手で叩くと

 

今度はマーリアが巨大な樹木に取り囲まれ一気に燃え上がる

 

「あなたねぇ人の真似ばかりして、そんなに面白いの」

 

満身創痍でマーリアも直ぐには動けない

 

「面白いわよ、だって魔力にこんな使い方ができるなんて今まで知らなかったわ」

 

「呆れたわ、既に身動きすら出来ない状態でしょ、それなのに楽しそうにしているなんて」

 

「あら、あなただって嬉しそうにしているじゃない」

 

「私が?まさかそんなことは無いわよ」

 

「あなたって本当に嘘つきね」

 

両者は顔を見合わせて笑った

 

「ねぇマーリア、あなたシーランを殺したなんて嘘でしょ」

 

「どうしてそう思うのかしら」

 

「だってこんな面白い発想できる人が、あんなつまらない考えでシーランを殺すなんて考えられないわ」

 

「それではあなたは、私が最初からシーラン殿を殺していないとわかっていて敵討ちだと言って戦ったわけね」

 

「だって、あなたが危険な存在だということは間違いないもの、シーランはどう考えているかわからないけれど私の直感がおなたの存在を認めなかった、それに私に嘘をついたから仕返しね」

 

「そうか私たちは互いに、相手が危険な存在だと察知して倒そうとしたわけね」

 

「そう言うことになるわね」

 

マーリアと魔王ミューヤはまた笑った

 

「それで魔王ミューヤあなたは、この私をどうするつもりかしら」

 

「気が変わったわ、あなた面白いもの、それであなたはどうするのマーリア」

 

「あらそう言えば、バケモノからマーリアに昇格したのかしら、あなたと話をすれば私も気が変わるというものよ、でも魔王が決闘を途中で放棄するなんてできるのかしら」

 

「そこなのよね問題は、こんな場所まで提供してくれているわけだし、でもね、あたしって魔王界では型破りで有名なんだよね、だから決闘より面白いを優先させたとしても誰も驚かないと思うわ」

 

その言い草にマーリアも腹を抱えて笑った

 

魔王ミューヤも笑い転げる

 

途端に異空間が消えて辺りは魔物の森へ変貌して行く

 

魔王たちが両者の周りを取り囲むカタチで立っていた

 

どうやら二人の様子はマルカスト元帥によって、魔王たちに筒抜けだったようだ

 

最初にマルカスト元帥が笑ったものだから

 

他の魔王たちも笑った

 

魔王パルフェだけはカンカンになって


「あなたねぇ、みんなを巻き込んで結局何この結末、決闘より面白いものを優先ですって」

 

「わかったから今あたし身動きすら出来ない状態なのよ」

 

「だから言っているのでしょ、これなら逃げられないもの」

 

そう言うと、魔王ミューヤを抱きしめて泣いた

 

「あなたが殺されるんじゃないかと心配したじゃない、少しぐらいお説教言わせなさいよね」

 

魔王パルフェの偽りのない愛情が伝わってくる

 

この瞬間、魔王ミューヤの彼女に対する蟠(わだかま)りは消えた

 

「魔王パルフェ心配かけてごめんね」

 

魔王ミューヤまで泣き出すから他の魔王たちは怒ることも出来なくなった

 

しらけているのはマーリアだが

 

そんなマーリアに手を差し伸べたのは魔王テチカだった

 

「珍しいわね魔王テチカが感情表現するなんて」

 

「あまり無茶をするでないマーリア、再び貴様を失う悲しみを私に味合わせるつもりか」

 

「私が殺されたとき、少しは悲しんでくれたのかしら」

 

「愚問だ」

 

クールな声の響きから、無限に伝わってくる温かい気持ち

 

「それでマーリア貴様の本当の見解を申してみよ」

 

「そうね」そう言うとマーリアはマルカスト元帥へ視線を移した

 

マーリアが何かを言おうとしたところで

 

「あのシーラン師匠は無事なのですか」

 

ネルキスとレムイリアがマーリアの近くまで来ていたらしく

 

ネルキスが尋ねた

 

すると突然発光体が現れ、それがシーランとナタルの姿に変わる

 

瞬時に状況からマーリアの足跡を察知したシーランは

 

「マーリア殿ちとイタズラが過ぎるのではないかぇ」

 

「シーラン師匠」ネルキスとリムイリアが傍に近づき跪いた

 

「命懸けのイタズラよどうかしらこの満身創痍っぶりは笑えるかしら」

 

泣き出した二人の頭を撫でながら

 

「それで気が済んだかぇマーリア殿」

 

「えぇスッカリ気が変われたわ魔王ミューヤのお陰ね、彼女は最初から私があなたを殺していないと見抜いていたわ」

 

「当然じゃ、だって魔王ミューヤなのじゃからのぉ」

 

そう言うと扇子で口を隠し笑う

 

「答えになっていないのだけど」しらけ顔のマーリアは

 

魔王テチカによって治癒魔力を注がれている

 

突然シーランは魔王たちに向けて語り出した

 

「亜魔王種討伐に関して、私に秘策があるのじゃが、魔王の方々聞かれるかのぉ」

 

「私に意義はない」

 

魔王テチカが言うと、魔王テトもそれに同意した

 

他の魔王たちも話だけは聞くという姿勢だ

 

そして、シーランの提案を聞いて

 

シーランがマーリアに匹敵する知恵者だと魔王テチカも認めることになるが

 

それはまた次の話に譲ることにしょう

 

マーリアと魔王ミューヤの顛末は何を意味するのかも

 

そして、シーランの秘策も、魔王たちのそれぞれの思いも

 

未だにバラバラに存在している

 

果たしてそれが一つになれるのか

 

それとも、決裂で終わるのかはまだわからない

 

つづく

 

人間たちの落日 落日の兆し もくじ

 

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あとがき

 

実のところ、マーリアと魔王ミューヤの戦いは避けられないと考えていまして

 

この二人は真逆な存在だと私は見ています

 

魔王ミューヤは紛れもなく天才です

 

そして天才の真逆の存在であるマルチでありカリスマのマーリア

 

でもこの真逆は相通じるようですねΣ(=o=;)!!

 

私は魔王ミューヤの

 

昨日の敵は今日の友のような気持のよい性質が大好きです\(*´▽`*)/

 

マーリアの戦術はいろいろと考えていたのですが

 

魔王ミューヤの魔力があまりにも大き過ぎて(((゜д゜;)))

 

一撃の破壊力が大きいため、マーリアでも相当なダメージを受けてしまう

 

しかも、魔王ミューヤは反則級の学習能力で反撃したものだから

 

マーリアの戦術の連打は打ち砕かれましたΣ(=o=;)!!

 

さて、シーランがどのようにしてマーリアを説得したのか

 

次回描いてみようと思いますヾ(@^(∞)^@)ノ

 

まる☆