新生グランガザル国のクルガス城が占拠された

 

それから、次々に地域領が制圧される

 

旧国際連合は解体状態で、トリメキア国を中心に新たに国際連合が発足され

 

議長に選ばれたトリメキア国のテーシー女王は実に公明正大な判断をするため

 

搾取癖の抜けない王侯貴族の国々は反発を買うも

 

テーシー女王の策略に嵌まり込んで発言権を失って行く

 

このままではテーシー女王の独占世界になるのではないかと勘違いした国も少なくない

 

しかし、彼女の判断は常に総合的に公平なものだと頭の良い人達から気が付き

 

次第に彼女を中心に結束されつつあった

 

搾取派は平等を叫び阻止しょうとしたが

 

「世界全体から見れば平等ではなく公平な判断こそ必要不可欠だ」

 

というテーシー女王の主張に反論する余地は無い

 

平等であることと、公平であることは違う

 

公平であろうとすれば時として不平等を選択せざるを得ない場面も生まれる

 

例えば不況、不作の状況下では全ての人に国の経済力は行き届かない

 

その時優先順位が追求されることになるが

 

平等を考えるならば、今苦しんでいる人に救済の手を差し伸べるべきとなる

 

しかし、その為に予算を遣い続ければ後々疲弊することは必定である

 

この時優先させるべきは子供たちの未来ではないだろうか

 

将来国を背負って立つ子供たちの為に未来を託すための政策を優先させることで

 

最終的に国を向上させることができる

 

どちらもと中途半端にしてしまえば結局どちらも上手く行かないことは多い

 

もちろん、餓死者が出るほど極端な政策は論外であるが

 

基本的に、未来へ向けての政策こそ最優先させるべきことだろう

 

食事も体系や体質に応じて必要量は違ってくる

 

にも拘らず平等を追求するあまり

 

学校の給食などは全て同じ量同じ質を提供する傾向は強くなる

 

しかし、体質は一人一人違うため摂取する栄養量だけでなく

 

アレルギーによって取れない食事も出て来るだろう

 

とは言え個を優先するあまり多種多様な食事を与えるのも現実的ではない

 

結局のところ現場で臨機応変に対処することになるのだが

 

行き過ぎた平等は平均以上の食事量を必要とする子に平均以上は与えない

 

アレルゲンの食材をアレルギーのある子に無理矢理食べさせたり

 

必要でない体型の子に無理矢理平均値の食事量を摂取させたりと

 

子供たちに支障をきたす可能性は大きい

 

では公平とはなんだろうか

 

その時の状況や条件に応じて臨機応変に対応することで

 

結果的に偏りのない状態にすること

 

場合によっては一見すると不平等に見える場面も発生するが

 

トータル的にみれば、それぞれの負担を同じように判断して実行することである

 

テーシー女王は常に公平な判断をするため

 

搾取する者たちの悪知恵を寄せ付けない

 

必然的にそう言う者たちの恨みを買うことになる

 

亜魔王種たちはそう言う王侯貴族の統治する国を利用して反乱を起そうとしていた

 

議長であるテーシー女王を暗殺することで

 

新たな国際連合の求心力を失わせ

 

混沌状態を生み出し再び乱世へ逆戻りさせようと企んでいる

 

世界中の全ての人が戦を無くすことを願っている訳ではないのだ

 

戦を無くされては困る人々もいることを決して忘れてはならない

 

戦のない世界を望む者は特に、全ての人がそう願っていると勘違いし易い

 

人間は自分がそうだからみんなそうだと勘違いをする傾向が強い

 

多様性を極めた人間には、戦を好む或いは戦を利用する者たちも生まれている

 

搾取することの味を覚えてしまった王侯貴族たちは

 

まさにこの甘美な味の虜になっているためそこから抜け出せない

 

亜魔王種たちは、そのような者たちを結集させて

 

再び人間の世界を乱世へと引き摺り戻そうとしている

 

亜魔王種たちの策略に反して

 

ゴッドウィンドウ国によって潰された国が戦勝国によって独立国として再興させている

 

グランガザル国もその一つだ

 

特にトリメキア国の庇護は大きく

 

グランガザル国の人々は

 

トリメキア国特にテーシー女王に恩を感じ強くリスペクトしている

 

亜魔王種がそれを狙わない筈はない

 

トリメキア国にとって友好国を少しでも崩しておく必要があるため

 

世界を乱世へと引き摺り戻す拠点にこの国を選んだ

 

まず旧サーティーン・キル軍の残党と将軍、元帥たちを結集させた

 

戦を無くされては困る者の中に、武将たちも含まれるだろう

 

特に戦の才に恵まれた者たちにとって戦がなくなることは

 

自分たちの価値を失うとことに等しいと感じることだろう

 

亜魔王種たちはそんな戦屋たちも拾い集め

 

世界を乱世へ引き摺り戻す策略を遂行させている

 

結束したサーティーン・キル軍にまずサラル地域領を占拠させた

 

未だ建国して間もないグランガザル国には国力も軍事力も強固だとは言えない

 

しかし、トリメキア国によって援助された軍備と兵士たちの訓練によって

 

容易に城を落とせないくらいには兵力を鍛え上げていた

 

大きな戦になれば、今では他の国が黙ってはいない

 

クルガス城の北にあるチグリット国と南側のタルメシア国によって挟み撃ちになれば

 

反乱軍など一溜まりもないだろう

 

ところが、ベレゼート国は搾取を望む王侯貴族で満ちているため

 

亜魔王種によって懐柔されていた

 

ベレゼート国の協力によってサラル地域を占拠したサーティーン・キル軍だが

 

何故か直ぐには攻め込まなかった

 

工作員をクルガス城に潜り込ませて啓蒙という洗脳活動をさせていたからだ

 

「我々は戦のない世界を築こうとしている、それなのに再び武器を手にするのか」

 

反戦支持者たちを増やすことで兵士たちの戦意を失わせ

 

「これからは話し合いによる解決をすべきなのだ」

 

新しい国際連合が生まれた為戦の無い世界がすぐそこまで来ていると希望を抱き

 

軍事力も縮小すべきだという声が上がっても不思議ではないが

 

それらすべてはサーティーン・キル軍の工作員による洗脳である

 

次第にその工作員の口車に乗って反戦運動は強くなって行く

 

戦経験の豊富な者たちはこれも敵軍の工作だと見抜いたかも知れないが

 

ゴッドウィンドウ国戦役において、多くの戦死者を出したため

 

そう言う者たちは少数派になっている

 

彼らがどんなに敵の罠だと叫んでも

 

「こいつらは陰謀論者だ、再び戦を起こさせようと企んでいる者たちに利用されている」

 

若者たちの数が多いため、その声だけが国中に響き渡り

 

工作員たちの策略を見抜いた者たちは陰謀論者としてかき消された

 

頃合いにサーティーン・キル軍から提案を持ちかけられる

 

「お互いに武器を減らして、話し合いをしようではないか、武器が所持しているだけで敵意と取られても仕方がないだろう」

 

使者はもっともらしい、耳触りの良い理想論を語ることで

 

若者たちの心を揺さぶる

 

「今や戦のない世界は目の前にある、今ここで武器を手に取ることはそれを遅らせるだけだ」

 

こうしてクルガス城から兵士を追い出し武器を持ち出させた

 

これで話し合いができると若者たちは喜んでサーティーン・キル軍を歓迎した

 

ところが、サーティーン・キル軍は完全武装の状態で

 

一方的な虐殺を繰り返し、クルガス城にいる若者は一人残らず殺された

 

クルガス城は若者たちの血で真っ赤に染まる

 

工作員たちの亡骸も転がっている

 

この悪辣なやり口であっという間にグランガザル国を占拠してしまった

 

グランガザル国は平和を愛し戦のない世界を夢見た若者たちの血で染まり

 

亡骸は山積みされて燃やされた

 

もちろん皆殺しという訳ではない

 

戦えない領民や女子供は捕虜として投獄している

 

つまり、領民は奴隷として使い、女子供は人質のような立場だ

 

殆どの人々を残虐に殺したサーティーン・キル軍は恐らく

 

何の躊躇もなく女子供まで皆殺しにするだろう

 

心ある国は迂闊に占拠されたグランガザル国に奪還戦を挑めない

 

何度も救出作戦を試みたが、捕虜となり投獄された女子供たちは

 

一か所ではなく各地域領に分散されて投獄されているため

 

救出するためには分散してそれぞれ作戦を展開するしかないが

 

恐らくそれは不可能に近い、もしサーティーン・キル軍に気付かれたら

 

他の地域領の女子供たちは皆殺しになるだろう

 

サーティーン・キル軍の元帥の中で最強と呼ばれた者も二番手三番手まで

 

ゴッドウィンドウ国戦役において散っている

 

 

「お前とは本当に勝敗が付かないな」

 

子供の姿のマルカスト元帥は笑った

 

「マルカストお前は私と互角に戦えるから好きだ、いつも私が想像もつかない戦術で応戦してくる」

 

「それも全てお前が無効化しやがる、お前は本当に恐ろしい男だ」

 

「いつかお前の頭をカチ割って脳みそを食ってみたい、さぞかし美味いだろうなぁ」

 

「痛いから頭に齧(かじ)るのはやめろ、バカ者」

 

「その小さい頭で一体どうしてそんな発想が生まれるのだ?」

 

「大きい小さいは関係ない、要は質の問題だ」

 

「また戦をしような、お前との戦は楽しくて仕方がない」

 

「同じサーティーン・キル軍の味方同士でか?」

 

「そんなことはどうでも良い、私は面白い戦ができればそれで良いのだ」

 

「わかったから頭を噛むなっバカタレ」

 

「約束だぞ、今度こそお前をやっつけてやる」

 

「いや勝つのは私だ」

 

「いいや私だ」

 

「よし、今度こそ決着をつけよう」

 

「約束だぞマルカスト」

 

「おおっ」

 

ルカ元帥は消息を絶ったマルカスト元帥を探し回るが見つからず

 

悲嘆にくれて懐かしい記憶を回想していた

 

「嘘つき目、マルカストお前まさか私を置いて死んじまったのではないだろうなぁ」

 

ハラハラと涙が止めどなく流れて行く

 

「お前の息の根を止めるのは私だ、それ以外は許さないからな」

 

マルカスト元帥が実質サーティーン・キル軍の最強の元帥だということは

 

サーティーン・キル元帥たちの共通認識だった

 

ゴッドウィンドウ国戦役においてそれは証明されたのだが

 

そんなマルカスト元帥でも勝ちきれない相手が同じサーティーン・キル元帥の中にいる

 

ルカ元帥である

 

ただ彼が何を考えているのかデュカルト王ですら掴めなかった

 

命令でも気に入らなければ反故にする

 

戦の途中でも敵が弱すぎると圧倒的に勝っていても撤退してしまうため

 

勝率は決して高くはない

 

マルカスト元帥同様に目先の勝敗にそれほど執着していないようだ

 

「こんな弱い奴と戦って勝ったところで何が楽しいというのだ、時間の無駄だ」

 

そう言って八割以上勝っている状況で撤退してしまうのだから

 

制御不能の元帥と言って過言ではないだろう

 

命令無視、作戦放棄、任務も放り投げてさっさと引き上げてしまう

 

遂に反逆罪で捕まえて処刑することになっても

 

たった一人なのに追撃軍を翻弄した挙句壊滅させてしまった

 

千個大隊もの軍を送り込んで追撃させても、たった一人で壊滅させてしまう

 

このままルカ元帥の処刑に執着してしまえば

 

被害は大きくなるばかりだと判断したデュカルト王は

 

免罪して再びサーティーン・キルの元帥へ復帰させる

 

敵とするには恐ろしすぎる相手であることは間違いない

 

結局デュカルト王ですら彼を制御することは最期までできなかった

 

ルカ元帥にとってサーティーン・キル最強の元帥の称号など興味すらない

 

ただ面白い戦ができればそれで良かったのだ

 

サーティーン・キルの他の元帥も彼にとって敵ではないと判断したようだが

 

たった一人彼が興味を持ったのは、マルカスト元帥だった

 

「お前わざと負けているな」

 

「負けているのではない、勝ちを譲ってやっているだけだ」

 

「お前は私と同類だな」

 

「違うなぁ、お前は単なる戦好きだろ」

 

「それ以外この世に何が面白いことがあるというのだ」

 

「私は戦にそれほど執着していない」

 

「お前は一体何が楽しみで生きているのだ、馬鹿かバカなのか?」

 

「お前にだけは言われたくないな戦バカが」

 

「小さいの、お前は面白いな」

 

そう言うとルカ元帥は笑い転げた

 

「マルカストだルカ元帥」

 

「ルカで良い」

 

「では私のこともマルカストで良いぞ、友に敬称で呼び合うのは無粋というものだ」

 

貴族特に王族はどんなに親しい間柄でも

 

節度を重んじて敬称で呼び合うのは常識である

 

同じ王族であるルカ元帥は嫌という程叩き込まれて育ったが

 

しかし彼は生来、気に入らないことはしない体質のようだ

 

万事それを貫き通したため国から追い出された

 

「マルカストお前という奴はいちいち気持ちが良い男だな気に入った」

 

「そうか」

 

「だからお前の息の根は私が止めることにする、他の奴に殺されるのではないぞ」

 

マルカスト元帥は首を傾げたが

 

ルカ元帥の言い草があまりにも愉快で笑いが込み上げて来て遂に笑い転げる

 

「お前は自分を終わらせてくれる相手を求めているんだな」

 

ルカ元帥は暫くキョトンとしていたが

 

自分でも気が付かない側面を自覚したのか笑い出す

 

「そうか私は私を終わらせてくれる相手を求めているのか、それには気が付かなかったぞ」

 

「お前は運が良い、お前を終わらせることが出来る唯一の男と今出会っているのだからな」

 

「お前が私を終わらせるのかマルカスト」

 

「お前が望むなら、お前の息の根を私が止めてやる」

 

「約束したぞマルカスト、私がお前の息の根を止め、お前が私の息の根を止める」

 

「いいや、お前には無理だ私の息の根を止めることなどなっ従って一方的にお前は私に息の根を止められることになる」

 

「面白いやれるものならやってみろマルカスト」

 

そう言うと、ルカ元帥は事あるごとにマルカスト元帥の邪魔をするようになった

 

場合によっては敵軍の味方をしてマルカスト元帥の戦術を潰すこともある

 

頭に来たマルカスト元帥は

 

ルカ元帥の任務放棄寸前で敵の味方をして追い詰めるようになった

 

自分が撤退するのは良いが撤退させられるのは嫌いなルカ元帥は敵軍を壊滅させる

 

こうしていつの間にかルカ元帥の勝率は鰻登りになる

 

結果的にマルカスト元帥が彼にちょっかいを出すことで完全に勝たせている

 

それは意図的にしているのだろうか

 

それとも子供っぽいケンカのようなものなのか区別がつかない

 

互いに敵軍の味方をして相手の邪魔をすることで

 

寧ろ互いに戦績を上げているのだから

 

サーティーン・キルの元帥たちは首を傾げるばかりだ

 

もしかするとデュカルト王がマルカスト元帥に頼んだことかもしれない

 

ルカ元帥は時々マルカスト元帥に夜襲をかけたが逆襲に遭い

 

命からがら逃げかえることを繰り返していた

 

正確には逆襲しようとした途端に逃げ出すので倒せない

 

「折角仕掛けた罠が台無しじゃないか、逃げ足の速い奴だ」

 

マルカスト元帥の笑い声が響く

 

その声を聞きながら逃げるルカ元帥も笑いが込み上げて笑っている

 

「楽しい、たのしいぞマルカスト」

 

ゴッドウィンドウ国戦役の終結によって

 

ルカ元帥のそんな楽しい日々も終わった

 

忽然とマルカスト元帥の消息が途絶えたのだ

 

ルカ元帥は探し回り結局見つからない

 

そんなある日、サーティーン・キル元帥の一人が迎えに来た

 

当然世界のことなど興味のない彼は断ったが

 

マルカスト元帥もいると聞いて意気揚々とグランガザル国へ辿り着く

 

しかし、マルカスト元帥の姿はどこにも見えない

 

騙されたと気が付き怒り心頭になる

「マルカストがいないじゃないか、騙したな」

 

「そう言わず力を貸してくれルカ元帥」

 

「いやだ、つまらん、帰る」

 

「しかしマルカスト元帥も見つかればすぐに来ると思う」

 

「あぁ?本当に来るのか、もし来なかったらお前ら皆殺しにしてサーティーン・キル軍も壊滅させてやるぞ」

 

流石のサーティーン・キル軍と元帥たちはその言葉に背筋が凍りついた

 

ルカ元帥なら本当にやりかねないからだ

 

彼は脅しもジョークも言ったことが無い、常に本気なのだ

 

「そんなことよりルカ元帥、面白いおもちゃを用意しております」

 

「誰だお前は?」

 

ルカ元帥に話しかけた初老の男は自分を悪徳商人と名乗った

 

ゼンガ・ドルードと呼び生い立ちも何も知る者はいないが

 

裏であくどい商売をして巨万の富を掴んでいる

 

戦の武器の売り買いも得意とするため死の商人と呼ばれることもある

 

「戦を無くされては困る者の一人でございます」

 

「回りくどい言い回しは止めろ、時間の無駄だ」

 

どうやらルカ元帥は相当のリアリストのようだ

 

「ゼンガ・ドルードと申し商人をしております」

 

ルカは暫く舐めるように彼を見まわしてから

 

「そのおもちゃが面白くなかった、その目玉を抉って食うぞ」

 

「面白くなければご随意(ずい)になさって結構でございます」

 

ゼンガ・ドルードに誘われるまま地下室に行くと巨大な広間に出た

 

そこにはネオホムンクルスが百体はいる

 

「この一千倍は用意できます」

 

ルカ元帥は喜んで見回した

 

「ただのネオホムンクルスたちではございません、かつて魔王すら倒せた原初のホムンクルスと同等の戦力を保持しております」

 

突然ルカ元帥は笑い出しゼンガ・ドルードの背中を叩く

 

「お前面白いおもちゃを持っているじゃねーか、気に入った」

 

「ではこのネオホムンクルスたちを使い再び世界を乱世へと導いてくださいませ」

 

彼は怪しく笑みを浮かべる

 

「何を言っているのだお前は、こんな強力な武器を使って戦って何が面白いというのだ」

 

「それは一体どういう意味ですか」

 

流石の悪徳商人もルカが一体何を考えての返答か掴みかねた様子だ

 

「私はトルメキア国へ寝返って、こいつらと戦うことにする」

 

「正気かルカ元帥、こいつらは普通の兵士が太刀打ちできる相手ではないぞ、魔王すら倒せるのだからな」

 

「だから面白いんじゃないか、普通の兵士で私はこいつらを壊滅させてやる」

 

「そんなことは不可能でございます、少しばかり冗談がが過ぎるというものです」

 

「私は生まれてこの方冗談など言ったことは無い、常に本気だ、面白くなってきやがった」

 

そう言うと再び歓喜の声で笑った

 

「本気なのかルカ元帥」

 

サーティーン・キル軍の元帥たちは剣を抜いた

 

「私は今まで本気で無かったことなどないぞ」

 

振り返り剣を向けられていることに気が付くと

 

「そうだ、今からお前たちは私の敵だ、今ここで私を殺した方が良いぞ」

 

するとゼンガ・ドルードがサーティーン・キルの元帥たちを手で制した

 

「お待ちください、では尋常に勝負と行きましょう」

 

「ほう、商人とか言ったな、お前意外と面白いな」

 

そこまで行って彼を見つめてから

 

「お前の雇い主に言っておけ、お前らの目論見は潰れるとな」

 

「一体何のことでございますか」

 

「しらばっくれやがって、私の目は誤魔化せないぞ」

 

そう言うと剣を鞘に納めて去って行った

 

「良いのかゼンガ・ドルード殿、ルカ元帥は恐ろしい戦術家ですぞ」

 

「心配はいりません、あの方は必ず我々に組することになりますから」

 

そう言ってルカ元帥を見送ってはいるが

 

「しかし・・・」

 

彼は自分の背後にいる亜魔王種の存在を確実に見抜いていることを

 

商人の勘で感じ取っていた

 

本当に恐ろしい人物だと思ったことだろう

 

「しかし奴は貴殿のことを商人という名前だと思い込んでしまったな」

 

「冗談ではないのですか?」

 

「奴はそんな気の利いたジョークを言う人間ではない」

 

「本当に商人の方が名前だと思っているに違いない」

 

悪徳商人の顔が歪んだことは言うまでも無い

 

歴史というものはほんの少しの行き違いによって大きく変わることも稀にあるようだ

 

特にマルカスト元帥と同等の戦術能力を持っているルカ元帥が

 

まさかトリメキア国に力を貸した場合

 

原初のホムンクルス三体でも倒せないかもしれない

 

戦乱は再び前人未踏の方へ歩き出し始めた

 

つづく

 

人間たちの落日 落日の兆し もくじ

 

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あとがき

 

サーティーン・キル軍がクルガス城を落とした戦略は歴史的に現実にありました

 

ローマ軍がカタルゴを壊滅させたのも似たような戦略でしたし

 

旧ソビエト連邦がウクライナ国を攻め落としたのも似たような戦略ですよね

 

その後ドイツのヒットラーによって占拠され第二次大戦ドイツの大敗によって独立

 

因みに、このような悪辣な計略で他国を攻め落とした国は

 

必ずといって良い程滅んでいます

 

全ての道はローマに通ずと言われる程の大国だったローマ帝国も滅びました

 

ソビエト連邦も事実上滅んでロシアになりましたよねΣ(@@;)

 

そう言う観点で歴史をフォーカスしている書物が見つからないので

 

あくまで私の見解ですが、実際にそう言う国が滅んでいることは史実です

 

恐らく現代でもこのような悪辣なやり口で他の国を奪い取ろうとしている国の落日は

 

必ず訪れると思います∑(-x-;)

 

さて、ルカ元帥は想像以上に曲者でした(((゜д゜;)))

 

まさかトリメキア国へ寝返るなんて私も考えていませんでしたから(=◇=;)

 

一体どうしようヽ(;´ω`)ノあせる

 

本当は魔王界の話を進めるつもりでしたが

 

ルカ元帥の強烈な個性が浮かんで消えず、書かされた感じです( ̄▽ ̄;)

 

ちょっとばかり話がややこしくかりそうです(=◇=;)汗

 

またプロットを書き直さなきゃヽ(;´ω`)ノあせる

 

まる☆