マルカスト元帥の憂鬱

 

魔王デスカラードとシーラン師匠の話し合いにより

 

魔王デスカラードが亜魔王種の救いの道を歩くことにした

 

これには流石に魔物たちも荒れたが

 

最終的に、魔王デスカラードに従って行くことにしたようだが

 

マルカスト元帥は味方と呼べる魔王たちのことを調べて知れば知る程

 

溜息をもらすようになる

 

「何をそんなに悲観視しておるのじゃ」

 

「あのなぁ師匠、魔王デスカラードは魔力と剣技では他の魔王たちに比べてはあまり当てにならない、それは良いとしてだ他の魔王たちは問題だらけではないか」

 

「戦を勝つのにそれほど重要なことかぇ」

 

「もちろんだ、まぁそれでも策略を練れば補えるレベルだ、しかしなぁ、ものには限度と言うものがある」

 

マルカスト元帥の言い草では

 

色ボケの魔王サーマイオスは不死身なだけで戦力にはならない

 

魔王ミューヤの魔力は魔王界一だとしても、彼女は頭が良くない

 

捻くれて性悪な双子の魔王の魔力では心もとない

 

比べて、魔王ロドリアスも魔王グラードも戦術にも剣技にも精通している

 

魔王テトは剣技では魔王デスカラードと同等だが

 

心を掴むのが上手い、統率力と決断力は油断できない

 

魔王テチカは知略にも長け剣技ではシーランと同等

 

そこに抜け目のない魔王パルフェが補佐をすれば

 

一筋縄では行かないことになる

 

「一体これのどこが対等なのだ」

 

遂に癇癪を起すほど腹を立てている

 

「魔王ザッドを性悪の双子の魔王によって始末できたのは良かったが、その後任がランドとなればいよいよ油断ならない」

 

「やはりランドと敵対することは気が引けるかのぉ」

 

「気が引けないと言えば嘘になるが、戦となれば親友でも倒すと決めている、奴が選んだ道を否定はしない代わりに、私も私の選んだ道を貫き通す、結果的にぶつかれば正々堂々と戦うまでだ」

 

「ランドを説得する気は無いのかぇ」

 

「無いな、男がこうと決めたなら私は決して否定しない、奴も馬鹿ではない自分の頭と心で決めたのだろうからな」

 

「しかし、ランドは亜魔王種の全てを知ったわけではない、教えてやれば考えも変わるかも知れぬぞ」

 

しかしマルカスト元帥は眉間に皴を寄せ目を瞑って首を横に振った

 

「ランドは頭は良いが心が弱い、拮抗した正義の狭間になればどちらも決められないだろう、それが奴の良さでもあり弱点でもある」

 

「戦力を削ぐという意味では有効ではないのかぇ」

 

マルカスト元帥は眉間の皴を増やして腕を組みながら

 

「師匠はわかっていない、私は奴を親友と決めた、だから精神的に弱らせて叩くような真似はしない、あくまで正々堂々と悔いの残らないように倒したいのだ」

 

「お前が勝つのが前提の様じゃが」

 

「私が勝つに決まっている、ただ勝ちはしない、奴の全力を引き出してから叩き潰してやるのが親友として私にできる全てだ」

 

流石のシーランも首を傾げた

 

「お前の考え方を時々見失ってしまうのぉ」

 

「師匠に理解など最初から期待していないから気にするな」
 

慰めているのか馬鹿にしているのかすらわからないマルカスト元帥の言葉に

 

シーランは面白くなり笑い転げた

 

「師匠そこ、笑う所と違うぞ」

 

「しかしなぁお前は一体私を馬鹿にしているのか、それとも労っているのかさっぱりわからぬではないか、その言い草が面白いのじゃ」

 

「両方だ」

 

マルカスト元帥が言うとシーランは更に笑い転げた

 

笑いながらついてきたレムイリアに耳打ちで

 

「お前のマルカスト元帥を見よ、あのちっちゃい体で思いっきり偉そうに振舞っておる、かわいいのぉ」

 

「お前の」という言葉に引っ掛かたが

 

次第に笑いが込み上げてきて彼女も笑い転げた

 

「師匠レムイリアに何を入れ知恵したのだ」

 

「何も言ってはおらんぞ」

 

「嘘つけ」

 

「しかしマルカストよこちらには私もこのレムイリアもおる、レムイリアの強さは魔王にも通用することはお前が一番身に染みて理解しておるじゃろう」

 

確かに、レムイリアの強さは魔王に匹敵するだろう

 

シーランの奥義を三つも会得したマルカスト元帥ですら未だに一度も勝てない

 

シーラン師匠なら魔王テチカと対等に戦えるだろう

 

「それにじゃ、こちらにはお前がおるではないか」

 

「戦闘力では魔王界で通用するとは思えないぞ」

 

「したが、戦略合戦ではお前に利がある、考えてもみよ魔王たちは戦闘で勝ち抜いて来た猛者ではあるが、戦をした経験は一度もない、となれば戦において素人同然じゃ」

 

「こちらも魔物を使っての戦は素人同然だぞ」

 

「謙遜するでない、お前ならすでに戦い方の一つや二つ見当をつけてあるのであろう」

 

マルカスト元帥は舌打ちした

 

「お見通しってわけか、師匠は食えないなぁ」

 

「魔王界の戦は当然人間の世界での戦とは異なるじゃろうのぉ」

 

「まぁな、これだけ当てにならない魔王が揃っているのだから戦略だけでも有利に進めないと割に合わない」

 

「しかし味方をそこまでこき下ろすとは少しは信頼しても良かろう」

 

「魔王デスカラードを除いて、この魔王たちのどこに信頼できる要素がある、少しの刺激で空中分解するのが落ちだ、敵が仲間割れを仕掛けて来る可能性だってある」

 

「魔王の誇りがそれを許さないであろう」

 

つまり魔王たちは誇りという制約を自ら設けて切り離しては生きられない

 

「師匠は魔王の誇りすら利用する気か」

 

「人聞きの悪いことを言う出ない、それを平気でしてしまう相手が相手側の魔王の向こう側におるのじゃ」

 

「マーリアという奴のことか、ランドから聞いたことがある」

 

「多かれ少なかれ、生き物には譲れないものがある、その執着に縛られて動けない方向があるものじゃが、マーリア殿にはそれがない、文字通り変幻自在な思考でどこにでも行ける」

 

マルカスト元帥は何か思い当たることがあるのかちらりと視線をシーランに移した

 

「そういえば、師匠も似たようなものじゃないのか」

 

「私は面白い方へ傾いてしまう欠点があるのじゃ」

 

「わかっているなら少しは自重されよ」

 

「つまらぬことを言うでない、この世は辛いことだらけなのじゃ、せめて笑いくらいないとやり切れぬ」

 

シーランの弟子ならツッコミを入れる言葉ではあるが

 

マルカスト元帥はシーランのその性質から何かしらヒントを得た様だ

 

「確証はないが、マーリアとかいう奴も師匠と同じ性質を持っているかも知れないな」

 

「ほぉ」

 

「だとすれば、やりようはある」

 

「なんか引っ掛かるぞぇ」

 

マルカスト元帥は何か言いかけて、首を大きく横に振った

 

「まぁ良い今は余計なことを考えるのはよそう」

 

その時マルカスト元帥が感じた違和感のようなものが後々現実のものとなるが

 

今はその正体を知る術がない

 

魔王界が真っ二つに分かれて戦をすることはもう変えられない

 

それをシーランが敢えて仕向けている可能性は否めない

 

戦を好まない彼女が何故そんなことをしているのか

 

亜魔王種のことなら話し合いで解決できる可能性はあるのに

 

何故か彼女はそれを選択しない

 

魔王に犠牲が生まれる可能性が高い戦をあえて選ぶ理由とは何だろうか

 

マルカスト元帥はマーリアと言う存在がシーランをそうさせている可能性を感じていたが

 

当のマーリアがどういう人物か会ったことのないマルカスト元帥には漠然としか見えてこない

 

マーリアが陰で魔王たちを動かしているとしたら

 

しかもその魔王たちすらそれに気が付かないとすれば

 

マーリアとは恐るべき相手だと見た方が良いだろう

 

変幻自在さではマルカスト元帥も冴えたる能力があるが

 

彼は人としての軸を持っているためやはり制約が発生する

 

ところが、マーリアにはそれがない

 

彼女は時として善悪の価値判断すら度外視する

 

場合によってはこの世界の法則にすら囚われない発想をする

 

狂気と正気の狭間でどちらにも属さない立場である限り

 

彼女はどこにだって辿り着けるのだ

 

反面どう転ぶかわからない欠点も背負い込むことになる

 

それは彼女自身制御不能のようだ

 

だからランディスの様な人物が必要になってくる

 

ランディスは融通の利かない堅物で、軸の塊のようだった

 

マーリアにとっては灯台の光に思えただろう

 

しかし今そのランディスはいない

 

彼女はいつ暴走してもおかしくない状態なのだ

 

軸がないという点では、シーランもそのように見えるが決してそうではない

 

彼女は弟子を持つことで軸を持たざるを得なかった

 

師が迷えば弟子も迷宮に嵌まり込む

 

だから彼女は常に正しい道を探り出すことになる

 

結局彼女もその生き方である以上制約を強いられてしまう

 

変幻自在の頭脳の持ち主ではあるけれど

 

マーリアの様には生きられない道を歩いているのだ

 

このままではシーランはマーリアには勝てない

 

しかしシーランの本質もマーリアと同じだとすれば、或いは可能性は皆無ではないのだが

 

生き方の問題となるため、シーランがマーリアと同じことには決してならないだろう

 

それがシーランの足枷となりマーリアに相対したとき不利に働くのは間違いない

 

当然シーランもそのことに気が付いていない筈はない

 

必然的にシーランには何か企みがあると見た方が良いだろう

 

マルカスト元帥は未だにシーランのその企みが見えない

 

彼から見ればシーランもまたどう転ぶかわからない性質を強く持っているように感じている

 

実際マルカスト元帥ですらシーランの考えが読めない時があるからだ

 

これは亜魔王種の能力が通用しないからではない

 

変幻自在な頭脳を持っているマルカスト元帥ですら

 

シーランの可能性を見切ることが出来ないということだ

 

マルカスト元帥の目には得体の知れない不気味な存在に映っていることだろう

 

 

マルカスト元帥の魔力覚醒

 

まず彼を他の魔王たちに紹介した時

 

真っ先に反対したのは魔王サーマイオスである

 

「人間如きが我々魔王界のことに口出しするなど許容できない」

 

ところが、魔王ミューヤはマルカスト元帥をまるでペットか何かのようにかわいがる

 

「ちょっとこの子可愛いじゃない小さいし、そのくせ魔力が膨大だし、面白い」

 

散々マルカスト元帥を振り回し、撫でまわし、挙句に宙に浮かせて楽しんでいる

 

これには他の魔王たちも呆れ果てる

 

当のマルカスト元帥は笑えない

 

「どうやら私は魔王ミューヤの魔力を過小評価していたようだ」

 

魔王ミューヤは双子の魔王たちをからかい、戦いを挑んでいろんな魔力の使い方を引き出し

 

それを真似することを繰り返すと、あっという間に

 

あたかも人間の魔術師のように魔力を使えるようになっていた

 

双子の魔王たちは開いた口が塞がらない

 

最初から双子の魔王たちが全力で戦っても魔王ミューヤには勝てなかった

 

双子の魔王たちは本気で魔王ミューヤを殺すつもりだったため

 

あらゆる魔力の使い方を駆使したが、いずれも決定打にならず

 

一度繰り出しただけで、彼女はその技を使えるようになった

 

それだけではない、双子の魔王たちでは太刀打ちできない程強力なものになっている

 

「こいつは天才だ、相手にならない」

 

「相手にするだけ魔力と労力の無駄だ」

 

双子の魔王は遂に降参してしまった

 

「えぇぇぇぇっもっといろいろと教えなさいよ」

 

彼女にしてみれば遊んでいる感覚と変わらないようだ

 

「もうすでに全ての技を使い果たした」

 

「なーんだ、つまんない」

 

途端に興味を失せた様子で双子の魔王には近づかなくなった

 

「つまらないのは、こっちの方だ」

 

魔王ロッドは溜息をもらす

 

僅かな期間で双子の魔王たちが何万年もかけて編み出した技を全て会得してしまったのだ

 

双子の魔王たちにとって絶望的な敗北感を味わったのだろうか

 

マルカスト元帥は一体どんな原理で宙に浮かせられているのか解らず

 

魔王ミューヤの成すがままになっている

 

この様子に怒り心頭になっているレムイリアをシーランは、からかうことで止めた

 

「お前のマルカスト元帥をかわいがっておるのぉ、さぞかしヤキモチを焼いていることじゃろう」

 

「そんなことはない」

 

顔を赤らめそっぽを向く

 

しかし、次第にマルカスト元帥は自由に動けるようになり

 

自由に空を飛ぶようになった

 

「これは面白い、魔力で空を飛べるのか」

 

散々魔王ミューヤに魔力で振り回されて行くうち

 

彼は魔力の発動原理を分析し、解き明かし遂に実践してのけたのだ

 

「やるじゃない、おチビちゃん」

 

魔王ミューヤは嬉しそうに自分も飛んだ

 

マルカスト元帥はまるで本当の子供のように燥(はしゃ)いでいる

 

小さい子供の身体を使い空中で平泳ぎのように泳いでいる姿には

 

魔王ミューヤも空中で笑い転げた

 

「冗談ではない、我々でもそこまで自由自在に空中を飛ぶことなどできないぞ」

 

無空魔術は、魔術師でもできる者が非常に少ない

 

いくつもの魔術を同時に発動させながらバランスを取らなければならないからだ

 

ほんの少しの計算違いで落下して命を落とすことだってあり得る

 

「考えるな魔王ロッド、規格外の奴らことなど考えても気が変になるだけだ」

 

この様子を見ていた魔王サーマイオスも

 

魔王ミューヤと対等の魔力を持っていると認めざるを得ない

 

「ナタル師匠が言っていたのはこのことか」

 

ナタルがマルカスト元帥を魔術の師匠になったのは

 

彼に膨大な魔力を感じ取ったからに違いない

 

しかも聡明な彼の頭脳は現象から原理を割り出し

 

それを自分の魔力に応用させその場で実践することができた

 

「これは使える、剣技では他の魔王たちに及ばないだろうが、この魔力を併用すれば魔王たちとも対等に戦えるのではないか」

 

こうなればマルカスト元帥も考え方が変わるというものだろう

 

ただもっと他の魔王たちを呆れさせたのはシーランである

 

両者が空を飛んでいるのをみて、大はしゃぎで叫ぶように

 

「私も飛ばすのじゃ、マルカスト、魔王ミューヤ」

 

マルカスト元帥は相手にしなかったが、魔王ミューヤが彼女を飛ばすと

 

シーランは面白がって飛び回っているのだから

 

「これが我らの知恵袋だ、本当に勝てるのか」

 

双子の魔王たちが不安になるのも無理は無いが

 

魔王デスカラードとレムイリアは慣れている様子で、それほど呆れている様子すら伺えない

 

シーランは宙に浮くのを利用して、大樹から大樹へ回転しながら飛び移ったりする

 

「面白いのぉ、これは実に面白いのぉ」

 

本当に楽しんでいる様子だ

 

実はマーリアもリュエラに無空魔術を教えてもらい始めて飛んだ時は

 

シーランのように大喜びで飛び回ってリュエラを呆れさせていた

 

このことをもしマルカスト元帥が知れば、二人が同類の人間だとという確証を得たことだろう

 

「古来天才には拘るなという諺は正解のようだ」

 

「だが、我々には三種類の天才がいるということだ、面白いと思わないか魔王ロッド」

 

「なるほど、少しばかり勝てる気がしてきたな」

 

「それに、あの子供みたいなのはどう見ても亜魔王種だ」

 

「確かに亜魔王種と人間の匂いが合わさっている感じだ」

 

「一体どんなトリックを使って亜魔王種と融合したのだろう」

 

懐かしい亜魔王種の匂いのせいだろうか

 

双子の魔王たちはマルカスト元帥のことが気に入った様子だ
 

しかし、魔王サーマイオスだけは気に入らない

 

彼は双子の魔王たちが魔王ザッドを二体で殺した卑怯なやり方も気に入らない

 

「こいつらは信用できない」

 

今のところ共通の敵がいて利害関係が成立しているが

 

「何れ奴らは裏切るだろう」

 

そう思えてならないのだ

 

事実双子の魔王たちは今のところシーランたちの側にいるが

 

彼らの目的は魔王の全てを滅ぼすことにある

 

出来れば両魔王陣が共倒れすることを願っていた

 

魔王ミューヤのことだって本気で殺そうとかかっていたのだが

 

圧倒的魔力の差で軽く遊ばれている感じだった

 

「魔王テチカと魔王ミューヤだけは生き残って欲しくないものだ」

 

魔王チートに同調するように

 

「この両者を何とか戦わせて、弱り果てたところを我らがとどめを刺すというのはどうだろう」

 

「魔王チートそれは妙案だ」

 

双子の魔王たちは記憶を取り戻すことで、凶悪性が強化されたように見えるが

 

どうやらこれが彼らの本来の性質のようだ

 

彼らは魔物たちに相当根深い恨みを抱いている

 

また亜魔王種を根絶やしに仕様としている魔王たちも憎んでいた

 

双子の魔王たちにとっては亜魔王種の救いの為に戦おうとしているこの魔王たちですら

 

味方ただとは思っていない

 

この戦いに勝利したなら、生き残った魔王を全て殺すつもりなのだ

 

「それまでは、何としても生き延びる必要があるな魔王チート」

 

「生き残ることに徹しきればやりようはあるだろうさ魔王ロッド」

 

テレパシーのような魔力で二人は会話している

 

この魔力だけは魔王ミューヤに使ってはいないため彼女もこの魔力は使えない

 

そんな双子の魔王を魔王デスカラードは警戒している様子だ

 

一本気で真っ直ぐな性質の強い魔王デスカラードは

 

双子のやりようがどうしても納得ができない

 

魔王サーマイオスも同じ思いなのだが

 

残念ながら魔王デスカラードと魔王サーマイオスは性格的相性は良くないようだ

 

両者は互いに興味を抱いていない

 

関心を持てない相手というものは、この世界にはいるようである

 

これは好き嫌いの問題ではなく、性質の相性の問題だろうか

 

両者は悪意こそもっていない、寧ろ好感すら抱いているのに

 

何故か話しかけて親睦を深めようとすら思えないのだ

 

もちろん、両者には何の悪気もない、あたかも自然現象のようにそうなっている

 

つまり、魔王たちはそれぞれ違う方向を見て生きている

 

足並みが揃わないどころか信頼関係すら希薄で

 

とても力を合わせて戦える状態ではない

 

こんな寄せ集めでバラバラの魔王たちでシーランは一体どう戦うつもりなのだろうか

 

それを危惧していたマルカスト元帥もシーランと同様に子供のように空中で遊んでいる

 

「魔王デスカラード、我が兄弟子よ、私にはとても勝てる気がしないのだが、どうしてだろう」

 

「師匠の考えは私にも解らぬ、だが何か考えがあってのことだろう」

 

とは言うもののその魔王デスカラードも不安の色は消えていない様子だ

 

レムイリアは魔王デスカラードだけは信頼できるとこの時確信できた

 

同時にシーランを師と仰いだ瞬間から、彼女に振り回される運命なのだと諦めた

 

魔王デスカラードは、初めて会ったレムイリアが気に入った

 

同じ師を仰いでいる好(よしみ)もあるだろうが

 

苦労性な性質の共通点が両者の絆を深める

 

「師よ、そろそろ会議を始められてはどうだろうか」

 

魔王デスカラードがシーラン師匠を諭すように言うのと

 

「魔王ミューヤそろそろ遊ぶのをやめて会議をしようではないか」

 

彼女を諭すように言うのは同時だった

 

楽しく遊んでいるところを止めさせられた子供のように

 

つまらなそうにシーランと魔王ミューヤ、マルカスト元帥は大地に降り立った

 

その後マルカスト元帥は、魔王ミューヤと意気投合して彼女から魔力の使い方を学んだ

 

感覚派で魔力の使い方を言語化できない彼女が説明などできる筈はないのだが

 

実践でマルカスト元帥に行使することで彼の分析力は見事なまでに再現できた

 

奇しくも魔王ミューヤが魔力の使い方を会得するのと同じカタチである

 

どうやらマルカスト元帥は魔王ミューヤに匹敵するほど強大な魔力を持っているようだ

 

元々亜魔王種の魔力は魔王種のそれと同じであり

 

人間と融合することマイナスの魔力が

 

プラスの魔力圏内の彼の身体で相殺して影響されない

 

同時にマイナスの魔力を使うことが可能になっているようだ

 

このとこにより魔王として覚醒するのと同等の進化をもたらし

 

今マルカスト元帥は魔王に匹敵する魔力を持ったことと同等の魔力を保有している

 

しかも、魔王ミューヤに匹敵する強大な魔力である

 

このことにより、マルカスト元帥の考えは更に進化を果たした

 

とは言え、そんなマルカスト元帥でも

 

これだけバラバラの魔王たちで他の魔王たちとどう戦うかは迷っていた

 

それでも楽しそうにしているシーラン師匠が一体何を考えているのか見えない

 

まるで先のことを何も考えていないようにしか見えないからだ

 

「その場のノリで適当に集めただけではないのか」

 

そんな考えが浮かんでは消える

 

「魔王ミューヤ、私を他の魔王たちに会わせてくれ」

 

「良いわよ、でもあなた殺されても知らないよ」

 

「もとより覚悟をしている、だが他の魔王たちをこの目で見て確かめたいのだ」

 

「そうね実際自分の目で、肌で感じてみないとわからないものね」

 

マルカスト元帥は亜魔王種と融合しているため亜魔王種の匂いが漂っている

 

今や他の魔王たちは亜魔王種討伐を決意していて

 

今まで散々煮え湯を飲まされてきたその相手が亜魔王種だと気が付いたばかりだ

 

そこへ亜魔王種の匂いがする彼が現れたらどうなるか想像に難くないだろう

 

「したが、お前を失えば我々は切り札を失くすことになる」

 

そう言うとシーランは何かを思いついたのか扇子をパタンと閉めた

 

「そうじゃ、以前ナタル殿が額を当てることで相手の記憶を自分のことのように体感できると言っておった、それを試してみてはどうじゃ」

 

「なんだそれ、そんな便利な魔力の使い方があるのか」

 

ところが、額を合わせても何も起こらない

 

当然である、マルカスト元帥はその魔力の使い方を知らないのだから

 

ところが他の魔王たちとも試して行くうちに

 

魔王ロッドの額を額で当てることで何か感触を味わい追求して行くと

 

次第に彼の記憶が流れ込んできた

 

「これは酷い仕打ちをされたな」

 

口からの言葉ではない直接脳に響いている

 

魔王ロッドのテレパシーのような魔力の使い方を吸収でもしたのだろうか

 

「貴様は何故この技を使えるのだ」

 

「わからないが、何となく見えて来てそれに集中しているうちに、魔王ロッドの記憶が流れ込んできて、こいつの使い方まで理解できた」
 

今のマルカスト元帥の魔力は進化しているため亜魔王種を遥かに超えている

 

魔王と同等の魔力を保有しているのと変わらない

 

双子の魔王から見れば、魔王ザッドの再来としか映らないだろう

 

亜魔王種と同種類の魔力を強大化させた魔王ザッドの魔力に匹敵する

 

実際はそれ以上である

 

このことによって、マルカスト元帥は他の魔王たちの記憶を感じ取り

 

対戦する相手側の魔王たちの性質を分析することに成功した

 

「師匠面白いことに気が付いたぞ、師匠は最初からそれを狙っていたのか」

 

唐突なマルカスト元帥の言葉を理解したのかシーランは扇子を彼に向けて

 

「さぁねぇ」と言ってからその扇子で口を隠して笑った

 

「まったく食えない人だ」

 

マルカスト元帥もお得意の高笑いをしたものだから

 

他の魔王たちはこの両者を不気味に感じる

 

どうやらシーランの秘策にマルカスト元帥も気が付いたようだ

 

つづく
 

人間たちの落日 落日の兆し もくじ

 

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あとがき

 

早速、続きを書いてみましたヾ(@^(∞)^@)ノ

 

ですがパー

 

プロット段階で、双子の魔王たちが魔王ミューヤを本気で殺そうとしたときは焦りました

 

・・・(。_。;)゜:。アセ 

 

魔王サーマイオスはマルカスト元帥を認めていないし

 

その魔王サーマイオスと魔王デスカラードの相性も一抹の不安を感じたりします

 

恐らく意思の疎通が上手く行かないでしょう(=◇=;)

 

そこへ持ってきて双子の魔王たちの企みが凶悪過ぎて

 

元々凶悪性はあったものの、記憶が戻るともっと凶悪な性格だった(((゜д゜;)))

 

これでは何度シミュレーションしても互角に戦うことすら困難ですヽ(;´ω`)ノあせる

 

次第にシーラン師匠が何かを企んでいることに気が付いてきましたエッ∑(`・д・´ノ)ノ

 

思いっきり長引くと思ったいたのですが

 

そう長い戦いではないかも知れませんΣ(@@;)

 

とは言え書いてみなければわからないのが私の物語です

 

キャラたちがどう動くかで、大きく変わってきますからね(=◇=;)汗

 

張り切って続きを書いてみますヾ(@^(∞)^@)ノ晴れ

 

まる☆