双子の魔王は魔王ロッドの自室にいた

 

両者とも身動きができない程の深手を負い

 

暫くは安静にしなければならない状態になっていた

 

「恐るべき強さだった」

 

魔王ロッドの言葉通り瞬間移動のような能力で

 

突然魔王ザッドの背後と前に現れ一番最初に両者は剣で彼を串刺しにしたが

 

思わぬ反撃に遭い忽ち傷だらけになってしまった

 

「一番最初に貴様と私で串刺しにしなければ間違いなく我々の首は刎ねられていただろう」

 

それでも瞬間移動の様な能力で自室に移動してから

 

未だに身動きができない程の深手を負っているのだから

 

魔王ザッドの強さは尋常ではなかったと言えるだろう

 

その魔王ザッドを追い込んだ魔王テレメッドも

 

双子の魔王にとって命懸けの相手ということになる

 

「我々の能力は共に戦わなければ発動できない、剣技で勝てる魔王は一体どれくらいいるのだろうね魔王ロッド」

 

「我々の能力を使えば勝てる可能性はあるだろう魔王チート」

 

「だが、我々の魔力も魔王ミューヤに遠く及ばない、話を聞けばその魔王ミューヤの雷撃でバラバラにされた魔王サーマイオスは即座に再生したという、奴も要注意だ」

 

珍しく魔王チートは弱きを見せる

 

「魔力の強大さでは、魔王ミューヤ、魔王サーマイオス、魔王テレメッド、その三魔王に勝るものは居ないだろうからこの三魔王は避けよう」

 

「剣技では剣帝の魔王テチカだ、小さくなったとは言え我々の魔力を持ってしても勝てる見込みは無い」

 

「だが魔王チート、他の魔王なら我々でも勝ち目はあるぞ、魔王ロドリアスと魔王グラードの剣技と魔力は把握している、魔王テトの馬鹿は我々の敵ではない、まして魔王デスカラードと魔王パルフェは魔王の中で最弱といって過言ではない」

 

「我々でも勝てる魔王を一体ずつ倒して、他の魔王にその嫌疑を着せ互いに戦わせるという手もあるぞ」

 

双子の魔王はランドの存在など眼中には無く

 

自分たちの正体がすでに魔王テチカに知られたことは知らない

 

そんな時魔物が魔王ミューヤが尋ねて来たと伝えに来た

 

双子の魔王は魔力の強大さに恐れている魔王ミューヤの突然の訪問に戦慄を覚えた

 

魔王ザッドを手にかけたことが既にバレていて討伐するために乗り込んできた可能性は高い

 

この深手を負った状態で戦って勝てる相手ではない

 

ドアの向こうで止める魔物を押しのけて、ドアを開けて魔王ミューヤが入り込んできた

 

いよいよ不味いことになったと双子の魔王は思ったが

 

「あなたたち魔王ザッドを殺したことはもう魔王テチカにバレているわよ、剣帝相手に勝つ自信はあるかしら」

 

双子の魔王は顔を見合わせた

 

「安心しなさい、あたしはあなたたちの敵ではないから」

 

魔王ミューヤは図々しく魔王ロッドの玉座に座る

 

みればその後ろにシーランがいた

 

双子の魔王は目を細める

 

「何故ここに人間如きがいるのだ」

 

「お前ら人間が足を踏み入れて良い場所ではない」

 

「あらあたしが許したわ、シーランを敵対するということは、あたしと今この場で戦うことになるけど良いかしら」

 

魔王ミューヤは魔王ロッドの玉座に立って腕組みをした

 

「まて落ち着け魔王ミューヤ、我々は貴様と敵対する意思はない」

 

「それでは手を組むということよね」

 

「一体我々は何に対して手を組むのだ、まずそこから説明してくれ」

 

魔王ロッドが説明を乞うと

 

「知れたことよ、亜魔王種たちを魔王たちの魔の手から助けるの」

 

魔王ミューヤの言葉に流石の双子の魔王も目を丸くして驚いた

 

「魔王ミューヤ貴様は何を考えている、亜魔王種は我々魔王の敵となっているのだぞ」

 

魔王チートが言うと魔王ミューヤは腹を抱えて笑った

 

「貴様たちはその亜魔王種を助けるために魔王ザッドを殺したのでしょ、亜魔王種の味方である貴様たちが亜魔王種を敵扱いするなんて笑えるわ」

 

再び双子の魔王は顔を見合わせた

 

「魔王ミューヤ貴様は何故亜魔王種の味方をするのだ」

 

「あたしはね、気に入らいなのよ魔王テチカが、あの高慢ちきな顔を歪ませてやりりたい、その為ならいつでも魔王たちを裏切るわ」

 

「しかし魔王パルフェは貴様の親友ではないか彼女と敵対することになるぞ」

 

「あら、あんな魔王テチカ被れなんてもう親友でも何でもないわ、彼女に尻尾を振ってれば良いのよ、あたしはたとえ殺されても魔王テチカだけには屈しないから」

 

双子の魔王は考えた

 

剣帝である魔王テチカでも、魔王ミューヤの魔力には及ばない

 

この両者が戦えば一体どちらが生き残るだろうか

 

12魔王の中で、唯一魔王テチカを倒せる可能性があるとすれば彼女以外考えられない

 

それに彼女の背後でずっと黙ったまま立っているシーランは人間でありながら

 

剣技では魔王テチカと互角の腕前だ

 

この時初めて双子の魔王は、この魔王ミューヤの心変わりの原因が

 

先程から扇子で口を隠しながら澄ました顔で立っているシーランだと思い当たる

 

一体どんなトリックで魔王ミューヤに魔王界を裏切る決断をさせたのだろうか

 

基本的に論理的思考の強い双子の魔王には

 

全てを感覚で捉えて行動する魔王ミューヤの思考は理解できない

 

そこでシーランに直接聞くことにした

 

「発言を許すシーラン殿、あなたの考えが聞きたい」

 

「では申しましょう、私は亜魔王種を救うことにしたしました、従って魔王界と敵対することになります」

 

双子の魔王は怪しんで目を細める

 

「ですが今のところ劣勢です、単独で魔王界を倒すことは出来ません、そこで仲間を募っています、魔王ミューヤの話のよりますと、幸い魔王テチカから魔王ザッドを亜魔王種を助けるために両魔王が立ち上がり彼を殺したと聞きました、これは是非とも手を組むべき相手だと考えました」

 

「一体何を企んでいるのだ」

 

双子の魔王から見れば胡散臭くて仕方がない

 

「とはいえ、突然現れた人間である私を直ぐに信頼は出来ないでしょう、そこであなたたちにだけ教えましょう、実は私は亜魔王種たちを匿っています」

 

「あり得ない、亜魔王種は神出鬼没、我々ですら奴らのアジトを探り当てられない」

 

魔王チートは

 

貴様如きに亜魔王種の居場所すら見つけられるものかと思い言葉に怒気が混ざっている

それに魔王ザッドの城から助け出した三体の亜魔王種は倒れ込む双子の魔王を

 

助けようともしないで笑いながら姿を消した

 

心を失くした亜魔王種が人間如きを頼りにするなど考えられないと

 

双子の魔王が考えても不思議ではない

 

「では案内致します故、あなたたちの瞬間で移動する能力をお使いください」

 

双子の魔王はギョッとした

 

何故この人間は自分たちの能力を知っているのだろうか

 

見ていたとは思えない

 

この能力が他の魔王にバレた場合警戒されて

 

魔王ザッドの時のように不意打ちは難しくなる

 

「何のことだ」

 

「魔王テチカの話によると魔王ザッドの城の有様を検証するに、突然姿を現した者に最初に剣で刺されたとみて取れたようです」

 

つまり瞬間移動でもしなければ魔王ザッドをあのようなカタチで剣で貫けはしないだろう

 

「魔王テチカが既に我々の能力をお見通しなのは理解した、しかしお前を信頼するには足りない」

 

「ですから今亜魔王種たちの所へ案内いたしますゆえ、是非その能力を見せてくだいませ」

 

シーランは扇子で口を隠しながらまたあの瞬間移動を体験できる喜びを抑え込んでいた

 

双子の魔王は暫く考えていたが意を決したようで

 

シーランのイメージに合わせて瞬間移動をすると

 

マーリアの墓石で泣きながら眠る亜魔王種たちの場所が視界に入る

 

「これは一体どうしたことだ」

 

驚いた双子の魔王たちは亜魔王種の悲しみを感じ取る

 

「我々のことを覚えているか」

 

魔王ロッドが言うと、亜魔王種たちはそれぞれ頷いた

 

「我々はお前たちのことを兄弟と思っている」

 

もちろん心のリンクが殆ど破損している亜魔王種たちは

 

その当時の記憶はあっても、双子の魔王への気持ちまでは思い出せない

 

双子の魔王たちはその様子を見て涙が止まらなくなる

 

何故か魔王ミューヤはもらい泣きをしていた

 

「たとえお前たちが我々のことを忘れても、我々はもう忘れない」

 

魔王チートが言う

 

「どうです、少しは手を組む気になりましたか」

 

シーランは意外と冷静な様子だ

 

「シーラン殿はこいつらを匿ってくれているのですね」

 

魔王チートが尋ねるとシーランは相変わらず扇子で口を隠しながら頷く

 

双子の魔王たちの亜魔王種への思いの深さに魔王ミューヤも感動したようで

 

「あなたたちが手を組んで仲間になってくれるなら、私も協力を惜しまないわ」

 

魔王ミューヤは理屈で物事を判断しない

 

彼女は常に感覚で物事の本質を捉えて判断するから

 

魔王の立場や使命より、今目の前に起きている現象の本質を感じ取り

 

亜魔王種の全てが悪ではないと理解した

 

「ただ亜魔王種の全てに可能性があるとは言えません、ここに居る亜魔王種たちの救いの為に私は働きますが、全ての亜魔王種の救いは考えていません、何故なら他の亜魔王種の殆どは最早救いの道を自分たちで潰してしまう程落ちていて、助けようがない」

 

「しかし」

 

魔王チートが言いかけて魔王ロッドが手で制した

 

「シーラン殿は全ての亜魔王種が滅ぶ可能性が高いが、ここに居る亜魔王種だけでも救える道は無いか可能性を探しておられるのか」

 

シーランは首を横に振ると

 

「他の亜魔王種については先ほど申した通りですが、ここに居る亜魔王種に関しては、すでに道は見つけてあります、しかしそれを実行するのに仲間が足りませぬ」

 

「それで我々に何をさせたいのだ、すでに魔王テチカが我々が魔王ザッドを殺したことを知っている、唯一の頼みである瞬間移動の能力もバレてしまった、我々は恐らく他の魔王たちから処断されるのを待つのみだ」

 

魔王ロッドは冷静に言う

 

「このように深手を負った状態では戦っても勝負は見えている」

 

魔王チートが付け加えた

 

双子の魔王は今更ながらに、魔王テチカの知略の凄さを思い知った

 

僅かな戦いの痕跡から自分たちの能力まで推理してしまうのだから知略では敵わない

 

「能力など問題ではありません、それがバレたところで気にするまでも無い、要はその能力をどのように使うかです、それよりまずはその傷が癒えるまで暫く身を隠されればよろしいでしょう」

 

シーランが応える

 

「しかし一体どこへ身を隠せば良いのだ」

 

魔王ロッドは頭を抱えた

 

「あたしの城で匿ってあげるから心配はいらないわ」

 

魔王ミューヤは相変わらず魔王ロッドの玉座に立って腕を組んでいる

 

無礼極まりない態度だが

 

双子の魔王たちは彼女に悪気がない事は理解している

 

「あたしが裏切るなど魔王パルフェでも思わないでしょうから、案外気づかれないものよ」

 

これは間違いなくシーランの入れ知恵だと双子の魔王は気が付く

 

そこで両魔王はシーランを見る

 

「私の道場とも考えましたが、魔王デスカラードの森の一画故難しいのです、魔王デスカラードは他のどの魔王たちより亜魔王種を憎んでいます故」

 

「シーラン殿はその魔王デスカラードすら裏切るおつもりか」

 

「はてさて、魔王ロッドそこは触れぬがよろしい、いずれ魔王デスカラードは我らの仲間に成る故な」

 

「誰よりも亜魔王種を憎んでいる魔王デスカラードが亜魔王種救済のために魔王界を裏切るなど考えられない」

 

魔王チートが呆れ果てたように言う

 

「私に考えがあります故、その件は気になさらぬように」

 

魔王チートは驚き魔王ロッドは目を細めた

 

一体何を考えているのか双子の魔王にもさっぱり解らなかったからだ

 

しかし直観力に優れ物事の本質を感覚で感じ取る魔王ミューヤが信頼している以上

 

双子の魔王が疑う理由は見つけられない

 

それに今となっては、魔王ミューヤに頼るほかは自分たちが生き残る道はないようだ

 

「わかった、貴様らがここに居る亜魔王種たちだけでも救ってくれるなら、我々は貴様らの手足となろう」

 

これは魔王ロッドの嫌味も含まれている

 

ささやかな抵抗にも似ているが

 

このままでは何一つ逆らえずシーランの思うままだから

 

嫌味の一つでも言わなければ心のやりどころに困るようだ

 

「私たちにとってあなたたちは大切な仲間ですとも、では悪は急げと申します」

 

「善は急げの間違いではないのか」

 

魔王ロッドが正すと

 

「魔王界を裏切るのじゃから善とは言えませぬ、従って我々は悪ということになります」

 

自分の言い草があまりにも面白かったのでシーランはついに笑ってしまった

 

すると何故か魔王ミューヤも不敵に大笑いする

 

双子の魔王はその光景を目を丸くしてみる他は何もできない

 

実のところ魔王ミューヤとシーランの笑いにタイプ的について行けない様子だ

 

「しかし悪は急げとは我々にピッタリの言葉だな」

 

魔王チートが言うと、魔王ロッドも同意を示した

 

人々はおろか弟子たちからも破天荒扱いされているシーランは

 

遂に悪の道を歩き出したと弟子たちが慌てる様が浮かんで笑いが後から後から込みあげて

 

それを抑えるのが大変な様子だ

 

「しかし、これは弟子たちに黙っておこう、このことが知られればまた口うるさく叱りおるからのぉ」

 

シーランは心の中で言ったが

 

このことはレムイリアによって弟子たちに直ぐに知られることとなり

 

後々シーランは弟子たちにこっぴどく叱られ説教されることになる

 

弟子が師を叱り説教するなどこの世界のどこを探しても見られない光景だろう

 

これはシーランが長い間培ってきた子弟の関係なのだ

 

この関係は親子の関係に限りなく近い

 

老いては子に従えという諺の真意は、親と言う漢字に示されている

 

木の上に立って見守るのが『親」の在りかたであるように

 

子供が成長して自立するためには、たとえ間違えた判断をしても

 

それを見守り干渉してはイケナイ領域が生まれる時期が訪れる

 

子供なりに自分の頭で考えて学び自ら成長して行く能力が身につけば

 

親がいなくとも子は成長し続けることになる

 

従ってこの言葉は決して年老いて衰えたから健在の子に従う方が良いという意味ではない

 

それにこの世界の変化を即対応する感性のは

 

今の時代をこれから生き抜いて行く子供たちの方が鋭敏だ

 

経験が寧ろ時代の変化を鈍らせてしまうことも少なくない

 

やがて親の方が子から学ぶときが来る、また来なければ子育てを間違えたことになる

 

子は親を踏み台に更にその先を開拓して行くものだから

 

自分の子供から時代を学ぶときが来たなら、その子は更なる高みへと歩んで行けるだろう

 

これは親にとって最高の幸福と言えるだろう

 

頑固な親はいつまでたっても自分の子に教えようとするが

 

それはその子供の未来を紡いでいることになっていることを知らないだけだろう

 

また自分の子供にすら学ぼうとする者は、無限に成長して行ける可能性を持っている

 

シーランは弟子たちが自分の頭で考えて

 

師である自分の行動を叱り説教することがウザいと思う反面嬉しくもあった

 

たとえそれが見当外れであっても、彼女たちは何度自分たちの間違いに気が付いても

 

師匠が間違っていると思えば遠慮することなく指摘して来るのだから

 

何れ自分がこの世を去ったとしても、弟子たちは無限に学び成長して行くことだろう

 

それが何よりシーランは嬉しくて仕方がない

 

「とはいえじゃ、口うるさいのはやはりウザいのじゃ」

 

そう心の中で言うとシーランは笑った
 

「あたしは悪の王道を歩むわ」

 

突然魔王ミューヤは言うと大笑いする

 

常識に捕らわれない彼女らしい選択だと後々誰もが納得することになるが

 

今はそれを見たシーランが笑いを堪え切れず笑い転げる様を見て

 

双子の魔王は呆れ返った

 

「この者は本当に魔王テチカに匹敵する知恵者なのだろうか?」

 

双子の魔王がそう思っても無理は無いだろう

 

双子の魔王は魔王ミューヤの記憶を頼りに彼女の城へ瞬間移動した

 

双子の魔王の傷が癒えるまで彼女の客室を提供してから

 

「さあ魔王ミューヤ魔王サーマイオスの城へ行きましょうぞ」

 

「嫌よ、あんなグロイ魔王、見たらゲロ吐いちゃう」

 

魔王ミューヤは後で目眩(めまい)を起こしてしまう程首を強く横に振る

 

「私が見る限り魔王サーマイオスは魔王ミューヤにとって天敵のようなものじゃ、敵に回すと厄介じゃ」

 

「嫌よ、あんな気持ちの悪い相手と二度と会いたくない」

 

「しかし味方にしなければ、また対峙してあのグロイ復活シーンを嫌という程体験することになるが良いのかぇ」

 

「えっ」

 

魔王ミューヤは一瞬頭が真っ白になり、今度は頭が吹っ飛びそうな勢いで首を横に振った

 

「ここは魔王サーマイオスを仲間にする必要があるのじゃ」

 

「それでシーランはあのバケモノ(魔王サーマイオス)を仲間にできる根拠でもあるのかしら」

 

「根拠という程のことでもないが、あの魔王の本質を感じ取ったとしか言いようがない」

 

「化け物に本質もくそも無いと思うわ」

 

「したが、気絶した魔王ミューヤを手厚く介抱したのは彼なのじゃから、そんな毛嫌いしてはかわいそうじゃ」

 

「でもねぇシーランあなただって、あんな気色の悪い光景を何度も見たらゲロ吐くことになるわよ」

「元はと言えば、魔王ミューヤが彼をバラバラにしたからじゃろう」

 

「そうだけどぉ」

 

図星でその後の言葉が出てこないため魔王ミューヤは口をパクパクさせた

 

シーランは笑いを堪えながら

 

「全てはこのシーランにお任せくだされ」

 

その魔王ミューヤが何故魔王界を裏切る道を歩き出したのか

 

それは双子の魔王がにらんだ通りシーランの入れ知恵だった

 

魔王テチカに対する嫌悪感を隠せない魔王ミューヤの気持ちを捕まえて

 

シーランは魔王テチカに一泡吹かせる可能性を説いた

 

話を聞いた魔王ミューヤは確率は低いが賭けてみる価値はあると判断したようだ

 

リスクの少ない道ばかり選択していては、堅実の生き方とも言えるが

 

縮こまった生き方になってしまい大きく大胆な勝負ができなくなってしまう

 

そういう生きき方に未来があるとはとても言えない

 

時には大胆に高リスクを背負い挑戦する必要がある、またそう言う時が必ず訪れる

 

そういう場面に遭遇した時、思い切りの良さが勝敗を分ける場合も多い

 

魔王ミューヤの場合は大穴狙いばかりで破産するタイプだが

 

シーランは違う、彼女はリスクを度外視してもやらなければならない時をしっかり見据えている

 

この時は一瞬の躊躇いも許されない

 

特に剣技での戦いはその連続と言える

 

彼女は髪の毛一本通る程の僅かばかりの相手の隙をついて斬りかからなければ勝てない

 

そんな姉と幾度も戦ってきた

 

彼女は弟子たちが無謀だと思える選択を幾度もしたが

 

時を逸しない決断力の強さと早さで結果的に成功しないときは無かった

 

これは彼女が

 

その時を嗅ぎ分ける独特の臭覚を持っていて日々鍛錬して磨いてきたからだ

 

実はそう言う時にリスクを背負い直ぐに決断する者にとってそれは大きなチャンスに変わる

 

この時このチャンスより堅実を選択した場合、先細りは必至だろう

さて、魔王サーマイオスという真っ直ぐな性質を持つ魔王が

 

魔王界を裏切るなど十中八九あり得ない

 

見る限り不死身の身体を持っている魔王サーマイオスと戦って

 

勝ち目のある魔王がいるであろうか

 

魔王ミューヤの魔力ですら倒せなかった相手である

 

魔王テチカやシーランが何度斬っても直ぐに復活してしまうだろう

 

この恐るべき生命力のある魔王を味方につければ

 

或いはこの劣勢を覆す逆転の可能性も見えて来るのだが

 

果たしてシーランが見ている勝算が本当に実現できるのだろうか

 

彼を知る殆どの魔王は不可能だと思うに違いない

 

だからこそ、魔王サーマイオスが裏切るなど魔王テチカですら思いつかないだろう

 

シーランは嫌がる魔王ミューヤを連れて魔王サーマイオスの城へ向かった

 

魔王界は再び真っ二つに分かれようとしている

 

つづく
 

人間たちの落日 落日の兆し もくじ

 

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あとがき

 

親子の関係は、父の父である祖父の受け売りです(=◇=;)

 

母の父である祖父にはいろいろと逸話がありましたが

 

最近になって調べる機会があり

 

父の父である祖父にも相当のエピソード情報を入手しましたΣ(=°ω°=;ノ)ノ

 

まぁ機会があれば記事にしてみようと思いますが

 

私は養子になっているので血のつながりはありますが

 

戸籍上では除籍になっているので、両者とも祖父ではありませんあせる

 

Σ( ̄□ ̄;)何の話やあせる

 

破天荒のシーランと魔王ミューヤはとんでもない行動に出ました

 

当然亜魔王種討伐一色に染まった魔王界は再び荒れることになります

 

魔王たちに関しては亜魔王種たちの能力がまるで通用しないため

 

魔物たちを使い混乱させることしかできなかったのですが

 

全ての魔王が亜魔王種討伐すると決断されれば

 

亜魔王種たちは手の打ちようがなくなります

 

魔王テチカによって自分たちの正体も暴露されてしまったため

 

魔王たちが亜魔王種討伐する大義名分まで与えることになった

 

唯一亜魔王種たちが有利なのは、自分たちの所在を魔物はおろか魔王すら見つけられない

 

亜魔王種の結界だけは魔王ですら解けない訳です

 

では何故シラスター王が簡単に亜魔王種の結界を解いてしまったのかと言えば

 

それは彼が亜魔王種の魔力に対する抗体を持っていて

 

亜魔王種の魔力を一切通用しない体質だからです

 

もちろん彼にその自覚はありません

 

シーランも同じです

 

つまり

 

シラスター王やシーランには亜魔王種が何処に隠れているのかを見つけることができる

 

マルカスト元帥もですが

 

この三人は亜魔王種を救う道を歩き出しています

 

ところが、

 

ランドとマーリアにもその体質が備わっているため

 

マーリアがその気になればいつでも亜魔王種の潜伏場所を見つけることができます

 

ランドは自覚が無いため今のところ見つけられませんが

 

そのことを知り力を開放すれば可能になるでしょう

 

少しずつ二つの勢力が魔王界に生まれてきていますねΣ(@@||

 

次回は魔王サーマイオスの城に目を向けてみましょうか

 

まる☆