いつまでも悲しんではいられない

 

魔王の中に裏切り者がいるのだから

 

魔王たちは亜魔王種に裏をかかれる可能性はたかい

 

それに

 

ランドは目の前の魔物たちを見つめる

 

このか弱い魔物たちを魔王ザッドより託されたが

 

ランドは自分もそう長くはない事を自覚している

 

この魔物たちを託せる魔王を探さなければならない

 

ランドが最初に浮かんだのは魔王テトだ

 

彼は情に厚い、けれど弱者を好まないため、強さを魔物に要求してしまう

 

魔王テチカは冷静で公平に扱ってくれるだろうけれど規律に厳しすぎる

 

ここの魔物たちは論理的ではない

 

「そう言えば師匠の道場の場所は魔王デスカラードの森だ、彼なら或いはここの魔物たちを引き受けてくれるかもしれない、一度師匠に相談してみよう」

 

ランドはまだシーラン師匠が亜魔王種の救いの為に立ち上がったことを知らない

 

彼はたった今、亜魔王種を絶滅させると決断しまったのだ

 

これはそのままシーラン師匠と敵対する立場になるということだが

 

今のランドにそれを知る術はないだろう

 

「憎むべき亜魔王種に寝返った双子の魔王は何とかしなければならない、これは魔王テチカに早々に伝えなければならないだろう」

 

ランドには亜魔王種の笑い声が耳から離れない

 

魔王ザッドの死は奴らと関わっている可能性もあるからこれも調べる必要がある

 

けれど亜魔王種の結界魔法はランドたちネオホムンクルスの魔力と相殺関係にあり

 

弾かれて結界を破り亜魔王種の居場所を見つけ出せない

 

彼は多くの体験を経てこの絶望的な悲しみの中でも前後不覚になることなく

 

冷静に事態を判断できるようになっていた

 

そんな自分を寂しくも思えるけれど、魔王ザッドの死と共にこの森の結界は解けてしまう

 

外敵から守ることができるだろうか

 

何を最優先させるべきか考え、やはりまずは魔物たちを守る事が最優先だと思い至る

 

結界をどうするか、浮かぶのは魔導師であるリュエラだ

 

「まずはマーリアに合う必要があるな、マーリアは今魔王テチカの森で異空間を作り魔術の修業をしている筈だ」

 

どういうわけがランドには魔力結界を見つける能力があるようだ

 

彼は未だに気が付いていないが実は魔法結界を解除する能力も保有している

 

ネオホムンクルスとしてう生まれた時、偶発的に身についた能力のようだ

 

聡明なランドは城の乱闘の後からどのような戦闘が繰り広げられていたのかを推理した

 

「双子の魔王は二体で魔王ザッドを殺したようだ、卑劣なことをする」

 

魔王同士が戦う場合一対一が基本でそれ以外考えられない

 

双子の魔王はそんな魔王の誇りも持ち合わせていないようだ

 

それだけに手段を選ばないタイプかもしれない

 

何らかの魔法の様なもので突然現れ、最初に剣で串刺しにして弱らせてから

 

二体で何度も斬りつけ、とどめの雷撃を喰らわれた

 

ランドは推理しながら手から血が滲み出る程握り締めた

 

「なんて卑怯な手口だ」

 

まともに戦えば決して魔王ザッドは負けはしなかっただろう

 

勝ち目がないから不意打ちという卑劣な手段を使ったのだろうけれど

 

目的の為なら手段を選ばない相手は厄介でもある

 

「魔王テチカは私の言葉を信じてもらえるだろうか、これはまずマーリアに相談した方が良いかもしれない、魔王の誇りに関わることだから迂闊に伝えることも出来ない」

 

これは彼女の目的遂行の妨げになることだから、マーリアは力を貸すことになるだろう

 

ランドは魔王ザッドの亡骸を見つめた

 

涙が溢れ出て来るのを必死にこらえながら一礼する

 

「こんな親不孝は無いかもしれないが、今は弔うことができません」

 

彼は心を鬼にして魔王ザッドを弔わずそのままの状態を守ることにした

 

魔物たちはもちろん反対したが、魔王ザッドの為だと説得され渋々首を縦に振った

 

魔王テチカならこの状態を見ればどんな相手と戦い

 

魔王ザッドがどんな殺され方をしたのか見て取れるだろう

 

そのためにも、現状をそのままにする必要があった

 

或いは魔王テチカの怒りに斬り殺されるかもしれない

 

それでも、自己保身のために可能性を一つでも潰すことはできないと彼は判断した

 

そしてそのまま魔王テチカの森へ行きリュエラが作った異空間に簡単に入り込んだ

 

これにはマーリアとリュエラも驚いた

 

リュエラが張り巡らせている結界を破り、彼女が作った異空間に難なく潜入したのだ

 

それから魔王ザッドのことや双子の魔王と亜魔王種の関係なども二人に話して聞かせる

 

マーリアはいつになく笑わずに話を聞いていた

 

「現状を維持してきたのは正解ね、魔王テチカも現状を見て推理すれば納得するでしょうから」

 

「それでリュエラ頼みたいことがある、魔王ザッドの森に結界を張って欲しい」

 

「あなたはいつから魔王もどきになったのかしら」

 

「魔王ザッドを父と仰いだ、魔物たちを見捨てるなんてできない」

 

するとマーリアは笑い転げる

 

「あなたは本当に変わっているわね、人間を父としたり魔王を父としたり、一体何になるつもりなのかしら」

 

リュエラはマーリアよりキツイ毒舌である

 

「なんとでも言ってくれて構わない、頼むリュエラ魔王ザッドの魔物たちは弱い」

 

「面倒なことに巻き込んでくれるわねランド、私がそれをする義理は無いわよ」

 

「それなら私が結界を張ってあげるわ」

 

マーリアは自信満々に言うと、今度はリュエラが慌てて止めた

 

「あなたの魔力は強すぎる上にコントロールもまだうまくできないでしょ、結界どころか森をまるごと破壊する可能性だってあるわ」

 

マーリアの魔力の性質は戦闘に特化しているため

 

防御魔術ですら攻撃魔術に転じてしまうことが何度もあった

 

「仕方がないから私が結界を張ってあげる、ランド一つ貸しよ」

 

ランドは頷いてから「ありがとう」と礼を言う

 

「では魔王テチカのことは私に任せると良いわ、彼女を連れて行くから、あなたたちは先に魔王ザッドの城へ行って結界を張って待っていなさい」

 

「マーリアまた偉そうな物言い」

 

リュエラが嗜(たしな)めるように言う

 

「リュエラ、あなたは人のこと言えるのかしら」そう言うと笑った

 

この二人は毒舌をぶつけながら楽しんでいるように見えるから不思議だ

 

リュエラにしてみればマーリアが心配で仕方がないのだが

 

こうしてリュエラはランドを連れて移動魔法で魔王ザッドの城へ行くと結界を張った

 

魔力で言えば魔王ザッドより強大な力だと魔物たちは怖がった

 

ランドの後ろに隠れる始末にリュエラは呆れる

 

「ランドこの森の魔物はどうなっているのかしら、こんな臆病で良く魔物として生きていられるわね」

 

「仕方がないよ、こいつらは魔力も戦闘力も弱すぎるから」

 

「この魔物たちが弱いですって、何を言っているのここにいる魔物たちは強大な魔力をもっているでしょ」

 

「それは一体どういう意味だ」

 

「意味も何も言った通りよ、ここに居る魔物たちは一体残らず恐ろしいほど強大な魔力を持っている、何を恐れる必要があるのかしら」

 

ランドは改めて魔物たちを見回した

 

「こんなに愛らしいのにか」

 

「姿かたちなんて関係ないでしょ、ここの魔物は恐ろしいくらいの魔力を持っているそれも攻撃に特化しているからヤバイと思うわ、守ってやらなければなんて言うからもっと弱い魔物だと思っていたのだけれど、結界を作る意味なんてあるのかしら無駄な労力だわ」

 

呆れ果てている様子にランドはいまいちここの魔物が強いイメージが浮かばない

 

「お前たちは本当は強いのか」

 

ランドの問いかけに魔物たちは目を潤ませ泣き出した

 

「ほら泣いているじゃないか」

 

「だったら今その証拠を見せてあげる」

 

リュエラが手を天に向けて上げ呪文を唱えながら振り下ろすと

 

雷撃が天から魔物めがけて落ちる

 

魔物はその雷撃を雷撃で応戦してリュエラの雷撃を弾き返す

 

そのままランドの後ろに隠れた

 

「見たでしょ魔力では魔物の中で一番強いのではないかしら」

 

「一体どうなっているんだ」

 

ランドが驚くのも無理は無かった

 

実は魔物たちも今の今まで自分たちがこれほどの魔力を持っているとは知らかなかったのだ
 

その事実を知ったリュエラは更に呆れる

 

暫くして魔王テチカがマーリアと共に現れた

 

そして魔王ザッドの惨劇の場所に行き戦闘の痕跡を辿り何が起きたのかを推理した

 

ほぼランドと同じ答えに辿り着く

 

暫く魔王ザッドの亡骸を見つめていたが振り返りランドに視線を移す

 

「ランド貴様は魔王ザッドにこの城と森と魔物たちを任されたのだな」

 

「はい、ですが私の命はそう長くありません、そこで魔王デスカラードを頼ろうと考えています」

 

「そうか」

 

冷たい印象を与える響きだ

 

「やっと腹を割って話せるようになったというのに」

 

再び魔王ザッドを見つめ一礼した

 

「双子の魔王については暫く他言無用にしてもらえまいか、私に考えがある」

 

「ですが他の魔王も狙われる可能性があります」

 

「奴らはすでに魔王ではない、二体で戦うなど魔王のすることではないのだ」

 

ランドには魔王テチカがどこか冷めていて他人事のように冷静に言っているように聞こえる

 

「怒りを鎮めて冷静に対処しましょう魔王テチカ」

 

マーリアだけが魔王テチカの悲しみと怒りを感じ取っていた

 

ランドとリュエラには魔王テチカは冷静そのものにしか見えない

 

「そうだな、少し頭を冷やすとしよう」

 

ということは魔王テチカは間違いなく怒っているのだ

 

「貴様とは積もる話もあったというのに、それはもう永遠にかなわなくなった」

 

魔王ザッドの亡骸に魔王テチカは話しかけた

 

ジワリとランドの胸に熱いものが込み上げて来た

 

ほんの少し氷に閉ざされた奥に魔王テチカの温かい心を感じられたから

 

「まずは魔王ザッドを弔うとしよう」

 

魔王テチカ自ら魔王ザッドを弔い、墓石の森の真ん中に彼の墓石を建てた

 

「何万年も生きていると、参るべき墓が多くなるばかりだ」

 

一瞬、はらりと魔王テチカの涙を見つけられた

「亜魔王種はこの世界から根絶しなければならない、たとえ魔王を何体失うことになっても」

 

魔王テチカの声の響きはそれでも冷静でとこか冷めているように聞こえるが

 

今のランドなら、彼女のやるせない思いや怒りを感じられるだろう

 

これが偶発的に起こった惨劇であっても

 

その影には必ず亜魔王種がいる

 

ランドにもはっきりと亜魔王種の恐ろしさを感じた

 

そして亜魔王種の絶滅を魔王ザッドの墓石に誓った

 

「ランド覚えておきなさい、この私が亜魔王種を絶滅させてあげるから」

 

そうランドに言ってから天を仰いで

 

「亜魔王種たち、ただで死ねると思わないことね、あなたたちにはこの世の苦痛と言う苦痛を味合わせてあげる、そしてあなたたちの希望を一つ一つ潰して絶望しか見られないようにしてあげる、失意の中絶望を感じながらこの世から消えなさい」

 

流石のランドもゾッとした

 

シラスター王からマーリアは裏切り者に対しては異常なまでの報復をすると聞いていたが

 

聞きしに勝る言葉だ

 

何より怒りに満ちての言葉ではなく冷静そのものだと言葉の響きから感じられる

 

これは復讐心に駆られての考えではないと思える

 

まるでそれが彼女の課せられた責任であるかのような

 

或いは、義務を果たすような感覚に近いから余計に恐怖を感じる

 

彼女は怒りに身を任せてではなく、あくまで冷静にまた冷徹にこれを遂行するだろう

 

これもシラスター王が言っていた彼女の二面性の両極端だとランドは感じた

 

仇同然の亜魔王種にすら救いの手を差し伸べる温かく深い情を持っている反面

 

裏切り者に対しては、あらゆる感情を排除して徹底的にその相手を叩き潰すことに徹しきる

 

これはまるでサイコパスのように、一切の感情を排除された純粋で冷徹なまでの行動である

 

亜魔王種を一体も生かしてはおかない

 

最期の一体に無残な死を味合わせるまでは彼女の報復は止まらないはだろう

 

ランドは魔王ザッドを殺した双子の魔王に対する怒りは消せないが

 

これ程までに残忍な殺し方をしようとは思えない

 

マーリアに一抹の不安を感じた

 

これもまたシラスター王がマーリアに抱く不安と重なる

 

魔王テチカは双子の魔王に対する対策のため、いち早くこの森を去った後で

 

「そういえばマーリア、あなた亜魔王種の絶滅なんて通過点に過ぎないと言っていたのでは?」

 

リュエラの冷静な声だ

 

「そうよ、亜魔王種の絶滅なんて単なる通過点に過ぎない、亜魔王種を根絶したからといって、人間の世界に戦がなくなるなんてあり得ないものね」

 

ランドはギョッとした

 

確かにマーリアは人間の世界に戦を無くすことを目的に生きていると聞いた

 

彼はそんなことは不可能だと考えている

 

これだけ知略に卓越したマーリアなら可能なのだろうか

 

何よりマーリアは亜魔王種絶滅のその先を見ているのだと気づかされた

 

「確かに、亜魔王種を何とかすれば全てが上手く行くなんてナンセンス、この世界はそれほど単純には出来ていない」

 

リュエラが応えると

 

「しかし亜魔王種をなんなとかしなければ世界はまた混乱する」

 

堪り兼ねてランドは口を挟む

 

「亜魔王種など今となっては大した問題にもならないわ、ランドもっと大局見なさい、今のところ亜魔王種と言う壁があるけれど、その向こうにはまた新たな壁が待ち受けている、それに対する対策も練らなければならないでしょ」

 

「一体その先にいくつ壁があるのだ」

 

「そうね、亜魔王種を絶滅させたら少なくとも三つの壁を私たちは乗り越えなければならなくなるからあなたも知恵を絞ることね、いつまでも亜魔王種にばかり目を奪われている場合ではないわ」

 

「そのころには私はこの世にはいないだろう」

 

「崩壊まで一年半と言っていたけれど早まったってことかしら」

 

ランドはゆっくり頷いた

 

「リュエラ」マーリアはリュエラに視線を移す

 

リュエラは首を横に振る

 

「魔導書は長老が隠し持っているのだったわね」

 

「そうだけど何をするつもり」

 

「少しばかり長老から魔導書を拝借して後は独学させて貰うことにするわ」

 

「長老たちの一人一人はあなたにとって大した魔力を持っていないでしょうけれど、七人が一つに合わせると厄介だわ」

 

「心配いらない少し借りて返すだけだから、きっと奴らは気づきもしないでしょう、あなたはランドの崩壊を何とかしなさい」

 

リュエラは暫く考え込んだ様子だったが

 

「わかった、でもマーリアくれぐれも魔法使いや魔術師たちの世界を壊滅なんてしないでよね」

 

「それは約束はできないわ、でもできる限り善処するから安心して」

 

「不安しか感じないのだけれど」

 

リュエラはランドを見つめる

 

「でも約束は果たすから」

 

リュエラは本気で挑むつもりだ

 

しかしランドはそれほど期待をしてはいない

 

ゆっくりと頷くだけで、それ以上のリアクションはしなかった

 

それより残された期間をどう使うかの方が重要だと考えている

 

ここの魔物たちに強大な魔力があり決して弱くはないとなれば

 

魔王テトに任せるという選択肢も増えた

 

魔王ザッドから任された以上ここの魔物たちがこの先身を寄せる魔王を探す必要がある

 

魔王ザッドの森は魔王デスカラードと魔王テチカに近い

 

両魔王に分けて統治してもらえるか交渉する必要もあるだろう

 

亜魔王種のことはマーリアに任せ

 

双子の魔王のことは魔王テチカに任せるとして

 

ランドが今すべきは魔王ザッドの領地と魔物たちの行く末だ

 

彼がそこまで考えてふと気が付く

 

リュエラはマーリアを上手くコントロールしているのではないのかと

 

頭の切り換えが早いマーリアの性質を利用して

 

亜魔王種に対する復讐心をその先へ視線をズラさせることで彼女の思考を先へ導いた

 

当然マーリアは亜魔王種に対する感情が吹っ飛んで

 

復讐心よりもその先の未来の為に思考を使うことになる

 

ランドはリュエラを暫く見つめながら首を横に振る

 

「いやそうではない、これは相性の問題だ」

 

わかり難い魔王テチカの気持ちの変化をマーリアは直ぐに感じ取れるように

 

マーリアの複雑怪奇な性質をリュエラは感じ取れるのかもしれない

 

シラスター王が言っていた

 

「マーリアは狂気と正気を綱渡りで走っているような存在だ、いつどう転ぶかわからない」

 

奇跡的なバランスで走っているが、一度崩れればどちらかに転んでしまうだろう

 

そのマーリアの危険性はリュエラによって中和出来ている可能性をランドは感じていた

 

これはマーリア自身子供の頃から自覚していることである

 

人間の勇者である頃はランディスがいたからバランスを保てることができた

 

しかしランディス亡き今、彼女のバランスを保てる存在はいないことになる

 

新しい生命体に生まれ変わったとしても

 

彼女のこの性質は何一つ変わっていないとみて良いだろう

 

ここにリュエラという存在が彼女に影響してバランスを保つ作用になっている

 

ランドはそんなことを考えて行くうちにマルカスト元帥の顔が浮かんだ

 

ゴッドウィンドウ国戦役においては

 

自分が彼のバランサー的役割だと思っていたが

 

実際はその逆だったかもしれない

 

ホルンと融合したカムイ元帥を取り込むことで彼の能力を手に入れた

 

そのことでランドは今まで以上に他者から自分を分析するように自己分析できるようになった

 

今では不安定なのはマルカスト元帥ではなく自分なのだと自覚している

 

そのマルカスト元帥ももうこの世にはいない

 

「マーリアのことを心配している場合ではないな、私は自分のバランスを改善しなければならない」

 

ランドは心の中で呟くとリュエラを見つめ

 

「私の崩壊についての考察と実験は、私と共にいなくてもできるのではないのか」

 

「すでにあなたのサンプルは私の魔力の中で隔離しているから可能だが」

 

「それなら、私と行動を共にする必要はない、マーリアの傍についていてあげてくれ、彼女はどう転ぶかわからない、きみが傍に居てくれると安心だ」

 

「あら、あなたは私を高く評価してくれているようね」

 

ランドは少し照れたように頷く

 

「でもそれは買い被りよ、実のところ私にはマーリアが一体何を考えているのかさっぱりわからない」

 

「それでも君の存在が彼女にとって大きいことには変わりない、君はマーリアにとって灯台のような関係になっていると私には見える」

 

リュエラはこれと言って感情を動かせたようには見えず

 

ただ冷静にランどの話を聞いてから

 

「斬新な考え方ね、少し短絡的にも思えるけれど一理はありそうだから、あなたの忠告を聞いてみることにするわ」

 

リュエラは何故かランドの背中を強い勢いで平手で叩く

 

突然の思いもよらない彼女の行動にランドは驚きの顔を隠せない

 

「あなたはこれ以上戦わないようにしなさい、ダメージを受けるだけで崩壊が早まるから、私が崩壊の謎を解き明かし解決する道を見つけ出すまで死んではダメよ」

 

「わかった善処するよ」

 

「みんな軽く返答しているけれど、善処の真意を理解しているのかしら」

 

そう嫌味を言い残すとリュエラは消えた

 

マーリアの傍にリュエラがいる限り、急激にマーリアのバランスが崩れることはないだろう

 

相変わらずランドは自分のことよりも他者のことを考えすぎる傾向が強いようだ

 

これは彼の母体との数少ない共通点なのかもしれない

 

シラスター王が彼を大好きでたまらない理由の一つだろうか

 

気が付けば魔物たちは集まりランどに擦り寄っている

 

「この魔物たちが強大な魔力があると解れば、その使い方を研究して最大限まで引き上げよう、他の魔物たちからも身を守れるほど強くなれば、どこにいても生き抜いて行けるはずだから」

 

ランドは暫く魔王ザッドの魔物たちの攻撃に特化した魔力を研究して鍛えることにした

 

因みに、この時マルカスト元帥がクシャミを連発したことを付け加えておこう

 

ランドは未だにマルカスト元帥が生きていることを知らない

 

つづく
 

人間たちの落日 落日の兆し もくじ

 

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あとがき

 

出会いの不思議さは子供の頃から感じていますΣ(@@;)

 

不思議なくらい私の周りには個性の違う人が集まるので

 

意志の疎通が上手くできない日常が普通だったため

 

共通点にのみ目が向いている人の多いことが目につきますエッ∑(`・д・´ノ)ノ何故にはてなマーク

 

相変わらず私と共感する人は現れず

 

「まるちゃんって変わっている」が殆どの人の共通認識のようになっていますヾ(。`Д´。)ノむかっ

 

ですが、私にとって個性の違う人は必要不可欠だと考えています

 

理解し合えない領域を多く持っている相手ということになりますが

 

私の個性の弱点を補える相手だからです

 

私の目には映らない景色を見ているその人たちから

 

その景色を教えてもらえるし、また私には無い発想で物事を判断しているから

 

私の弱点を見つけて指摘してくれる有難い存在ということになります

 

ただその相手が私のことを好きかどうかは別問題です

 

時にはムカつく言い方や嫌味のカタチでブツケテくることもありますからねヾ(。`Д´。)ノむかっ

 

こんな時俯瞰で私とその相手ではなく、他者との関係性も見える高さで見れば

 

その相手の内容が今の私には必要であった可能性も見えてきます

 

見当外れの場合もありますけどね¢( ・・)ノ゜ポイ

 

リュエラとマーリアもそういう意味では、相性的に良い側面もありそうですね(Φ▽Φ)♪

 

次回から少しずつ、それぞれの動きをこまめに描いてみます(((゜д゜;)))

 

一話としてのまとまりに欠けるようになるかもですが・・・(。_。;)゜:。アセ 

 

まる☆