どうも、かつたるいです。



皆様、明けましておめでとうございます。



見て下さる方々には、ご機嫌麗しくと存じ、申し上げご挨拶とさせて頂きます。



新しい年を迎え、1発目となる「第91話」、

張り切って参りたいと思います故、どうぞ最後まで見て頂けたら有り難いです。



見て下さる方の想像力、包容力をお借りしながら始めます。



では、



「第91話」    損した裕助    」



綺麗に雪化粧する富士山を背にした森山家。



今日も平穏、無事に過ごしている姿が見えます。



新しい家族、" 猫のコウスケ "も、のんびりとお気に入りのソファーでくつろいでいました。




朝食を終わらせた裕助があわただしく出勤しようとソファーのあるリビングを素通りながら




「コウスケ!いってくるぞ、イタズラするなよ!!」



                              " ミャ~ン"





もう、すっかり森山家の一員になった子猫のコウスケです。




小百合さんがその夫の後について見送ろうとしています。



「はい、ゆうすけくん。お弁当とハンカチ!他に忘れ物は、ない?」



裕助はポケットに手入れながら





「うん!、、え?、、あ!!でも、あ!!あれ?、、財布、財布がない!財布忘れたよ!!センパイ、俺の財布持って来て」

 




小百合さんは冷静に




「お財布?いつもズボンの後ろのポケットに入れてるじゃない!ないの?」








裕助はあちこちのポケットをさぐっても



「無いよセンパイ!今日ガソリン入れなきゃならないんだからぁ、俺、困るよー!!」



小百合さんが急いで探しに行くと、それはすぐに見つかりました。



何のことはありません。



子猫のコウスケがオモチャにしていたのです。



猫好きの裕助は、コウスケと大の仲良しで朝食前、2人が朝からたわむれているその姿を妻の小百合さんがほのぼのしく見ていたのでした。








きっとその時、落としか何かしたのでしょう。



小百合さんがコウスケにお礼を言っています。




「ありがとコウスケ。拾ってくれてたのね!助かったわ。後でおやつあげるからね!!」







                              " ミャ~ン "




小百合さんが状況を伝え、夫に財布を渡すと本人は



「おお!あいつが持ってたんすか。助かったー。猫の手も借りるってこの事っすねー!」



小百合さんはやや呆れながら



「何言ってるの!自分のお財布くらいしっかり管理しなきゃダメよ!!」



朝から小言を言われ体裁悪い裕助は「ハイハイ分かりました」とばかり、空返事しながら早々に出勤して行きました。




小百合さんは、夫の財布の中身を承知しています。


免許証と、後、わずかなお金だけ。



千円札が一枚、入っていればいい方です。



タバコ銭とガソリン代。



それ以上持たないのです。



小百合さんはいつも心配していました。



(あの人。お小遣い、、あれで足りてるのかしら、、、。)と。



裕助自身は何の問題にもしていません。



彼は、妻子の為に働きに出ているのだから、それ以外の余分なお金を所持する必要がないと考えているのです。





そうとは知らない小百合さんなのでした。




                         そんなある日です。




小百合さんは新しい靴を買いに行くため、久しぶりに1人で徒歩にて外出をしています。





車の運転が好きな彼女ですが歩く事も大好きで、このくそ寒い中でも、元気に徒歩で靴屋まで出掛けていました。



彼女の足のサイズは21㎝と、とても小さく、その為か中々、大人用からはサイズが選びにくかった為、今までほとんど子供用の靴でまかなっていました。          が、



今回は特注品を予め注文していた小百合さんです。




なので



デザイン共に納得のいくお買い物をしている小百合さんが見えています。



「とても素敵なお足もとです。良くお似合いですよ!」



等と、店員からも誉められ、ご満悦の小百合さんでした。



余程、気に入ったのでしょうか。



小百合さんが、その靴をそのまま履いて帰る姿が見えています。



(軽くて履き心地いいー!歩いててとても楽チンだわ。少しはアタシの脚もスマートに見えてるかしら)



等と、上機嫌で帰り道を軽快に歩いている彼女の姿が見えます。





すると、





彼女は、自分の行く手、前方に何か落ちているのに気がつきました。





                     (何だろう、、、)





と思いつつ、それを素通りしようとした彼女がその軽快だった足取りをピタリと止めています。




落ちていた物が、どうもそのままにしておけない物だったのです。




「やだ困る。これ、もしかしてお財布?、、かしら。いやだ、どうしよう。」



周りを見渡しても誰も歩いていません。







小百合さんが、しばしその財布であろうと思われる物を見詰めています。



彼女は迷いに迷って、それを拾う事にしました。



とりあえず拾い上げ、そっとその財布と思われる物を開いて見ると小百合さんは確信しました。







「やっぱり、お札がいっぱい入ってる。お財布に間違いないわ。直ぐ交番に届けなきゃ!」




小百合さんは、一目散に近くの交番へと足を運びました。




端からみると、(そのまま貰っちゃえ!)と思いがちですが、彼女はそんな疚しい事はしません。




持ち主の人の事を考えれば、という思いやりの行動でした。




受付けた交番のお巡りさんが仰天しています。



「診察券やカードの他に現金が全部で36万7千355円も入ってますよ!!、、これ、道に落ちてたんですか?」




「そ、そうです!歩いてたら落ちてました」



小百合さんは、何故か頬を染めてうなずいています。



お巡りさんは腕を組、いっとき財布と現金を見詰めていましたが、急に態度を改めると



「あの、お手数ですが、あなたが今日届け出たという証拠になる書類の作成にご協力をお願いしたいのですが。、、そういう決まりなもので。」



小百合さんは戸惑いながらも、その要請に応じました。








拾い主である小百合さんの目の前には何枚もの一万円札が順次並べられ、その全てをお巡りさんがいちいち一枚一枚、彼女に確認をするよう促している様子が見えます。



警察官も同じ人間。



という事で、



届け出を受け取った交番側も、横領をしてないという確認を拾い主との間でお互いにし合うのです。



小百合さんは、だんだんめんどくさくなって来ました。




(拾っただけだから、早く帰らせて欲しいなぁ)



お巡りさんは尚も続けます。



「落とし主が見つかるとある程度その方からの報酬を受けられる権利があなたにはあるのですが、どうされます?いわゆる、お礼というものに当たると思うのですが、、」




「そ、そんな、お礼とか報酬だなんて!!アタシ、、け、結構です」




小百合さんはその権利を放棄しています。



お巡りさんは、またしばらく黙ってしまいました。




小百合さんも黙っています。



妙な空気が交番内に漂っていました。



小百合さんは、その雰囲気を嫌ってか、こらえていた事を口から吐き出すように言いました。



「あ、あのアタシ。中身、全然、何にも触ってませんから。お巡りさん、わかってくれてますよね」



対応しているお巡りさんは突然、笑顔をつくると



「いえいえ!!勿論です。せっかく届けてくれたあなたを疑う事なんてしてませんよ!むしろ感心し感謝しておった次第です。、、中にはそのまま現金だけを抜いて後は知らぬ顔する人も大勢居るくらいですからね!報酬も当たり前の様に要求してくる拾い主さんもいるものですから。、、」



小百合さんは、純粋にただ落とした人の事だけを心配しているのです。



(落とされた方、今頃きっとこまってるわ。もしかしたらお給料日だったかもしれないし。、、きっとそうよ。でなければ、こんなに大金が入ったお財布なんて持ち歩かないもの!早く届けてあげないと)



いやはやバカ正直というか、真面目というか。



小百合さんは、かなりの時間を費やし届け出の書類作成に協力しています。




「どうもご苦労様でした!これで全て完了です。ご協力に感謝致します!!ありがとうございました!!!」



お巡りさんが小百合さんに向かってりりしい敬礼を見せている姿が見えます。



届け出全般を済ませた彼女は肩の荷が降りたのか交番を出ると大きく背伸びをして



「あー、もう疲れたー!お財布拾うとこんなに大変なのねぇ!!もうこりごりだわ」




家に帰り早速その話しを家族にすると、まちまちな反応が返ってきています。



「えらい!えらいねー、さすが小百合ちゃん!!中々出来る事じゃないわよ!!いいことしたじゃな~い!!」



とか




「それだけの金額を拾ったんだから、お礼くらい要求しても良かったと思うんだけどな!」




とか




「バカだな、せっかく拾ったんだからセンパイの物にすれば良かったのに。俺ならそのまま貰っちゃうな!!間違いないっすね」




とかでした。




小百合さん自身は、一刻も早く持ち主に届けたいという、その一心がもたらした行いで、ただ当たり前の事をしただけの意識か持ち合わせていないのでした。





そんなこんなで、拾った事も忘れかけたある昼下がりの事、



小百合さんが仏壇の手入れをしていると




                             "ピンポ~ン"




玄関の呼びリンがなっています。




姑が訪問者の対応にあたると、




「小百合ちゃーん!小百合ちゃん!!ちょっとー、お客さまよー!!」




「はーいおかあさまー!今行きまーす!!」




小百合さんは、仏壇の手入れを一端止め玄関に

向かうとそこには、見知らぬ年輩の婦人がたっていました。




小百合さんを見たその婦人が丁寧にお辞儀をしています。



それを受けた小百合さんも、つられるようにお辞儀を返しながら




「どうも。、、あの、、どちら様、でしょうか?」




婦人が返事をする前に姑が割って入りました。



「ほら、いつだったか、小百合ちゃん、お財布拾ったでしょ?!その落とし主の奥様だそうよ。」



小百合さんは思い出したように



「ああ、あの時のぉ!落とし主さんなんですか?!良かった、お財布無事に戻ったんですね!!アタシ心配してたんですぅ!!」




その婦人は丁寧かつ静かに言いました。



「その節は本当にありがとうございました。主人も大変喜んでおりましたんですよ。いい人に拾われたって、、。本日は警察の方に伺い拾って下さったそちら様のご住所とお名前をきいて出向いた次第でございます。この様に突然お伺いして大変申し訳ございません」




小百合さんは恐縮して、




「それはそれは、わざわざありがとうございますぅ!いい人だなんて、アタシは当たり前の事をしただけですからぁ。落とされたの、ご主人様だったんですか?!良かったですねお財布見つかって何よりですぅ!!」




小百合さんがとても嬉しそうにしている姿が見えます。



すると、婦人がこう言いました。



「でも、その主人はその後、すぐに亡くなりました。もうこの世には、いないのでございます。」



それを聞いた途端、小百合さんと姑が神妙にしていると



婦人は、おもむろに、ふくさに包まれたものを開きながらまた、言いました。



「あの、大変筋違いと存じますが、もし、ご迷惑でなければ拾って頂いた主人のこの財布をそちら様の小百合さんに受け取って頂けないだろうかという、お願いに伺った次第なのでございます。」



小百合さんは困惑した様子で




「え?あ、アタシに?、、ですか?な、なんでまた」



婦人は続けて



「実は、亡くなった主人と私の間には娘が1人おりました。ですが、その娘もすでにこの世におりません。早くに命を落としましたもので、、その娘の名がそちら様のお名前と同じだったのでございます。」





「ア、アタシ?と、同じだったん、、ですか」





「さようでございます。財布を落とした日も娘の命日に当たる日で、主人は娘の眠るお墓へと供養に出掛ける途中だったのでございます。主人は拾い主が娘と同じ名前の小百合様だと知り亡き娘が拾わせたのだと断言しておりました。私も、これも何かのご縁ではないかと勝手に解釈させて頂いたのでございます。」



小百合さんは困ってしまいました。




「で、でも。、、他人のアタシが受け取る訳にはまいりませんよ。大事なご主人様のお片身なんですもの。そうではありませんか?」



婦人は小百合さんを見詰めながら



「私どもと致しましては、娘に拾われたも同然なのでございます。どうかご承知頂き受け取って頂けたら有り難いと存じます。亡くなった主人もきっとそうなさって下さった方が喜ぶと存じますので、、どうか、どうか受け取って頂けますよう、ご承知下さいませんでしょうか、お願い致します。」







婦人は深く頭を下げながらその財布を差出しました。




こうなると、小百合さんも断りきれません。




横で聞いていた姑もかしこまって



「小百合ちゃん。受け取っておあげなさいよ。こんなに思われてるんだから、余程のご事情がおありなのよ。受け取って差し上げたら?」







小百合さんはしばし考えましたが、やむなく




「分かりました。そしたら、お受け取り致します。」




その財布を、かしこまって受け取る姿が見えます。



婦人は満足そうな笑顔を見せたかと思うと、深々と頭を下げながら森山家の玄関を出ました。



玄関では財布を持つ小百合さんが途方に暮れたかのようにたっています。



小百合さんは、何気なくその財布を開くと一瞬でその表情を強ばらせました。





「やだ、お金が入ってるわ!」





姑も驚いてます。





「ホントだ!凄い大金じゃない!!どういう事かしら」




小百合さんはその財布を持って直ぐ婦人を追いかけましたがすでに姿はなくなっていました。




小百合さんは本当に困ってしまいました。




財布の中を調べたところ、彼女が拾ったその時と同じ、そのままのお金が入っていたのです。



翌日、



さすがにそんな大金受け取る訳には行かないと返しに落とし主の家へ出向く姑と小百合さんの姿が見えます。




ところがです。




その落とし主の家へ伺い、呼びリンを何度ならしても返答がありません。




「お留守かしらね、、、」




家の前でたたずむ小百合さんと姑を見た近隣の人が二人に声をかけました。



「そのお宅のご夫婦、先月お二人共にお亡くなりになってしまって、今は空き家ですよ!」



それを聞いた小百合さんと姑は我を疑いました。



「亡くなった?!!せ、先月って、、ウソ、ご婦人がうちに来たの昨日よ。何かの間違いでは?」



近隣の人は続けて



「仲の良いご夫婦だったんですけどね。ご主人を亡くされた奥さん、余程気落ちされたんでしょうかね。、、後を追うようにその一週間後に亡くなられましたのよ」




姑と小百合さんは思わず血の気が引きました。




「だって、そんな!、、じ、じゃ、昨日来た、あのご婦人って誰?ウソでしょ、、なんだったの?、、、、いやだ、そんなバカな、、、!」




財布とお金は確かに小百合さんが持っています。




すると、昨日、渡しに来たあのご婦人って







2人は、お互いそれ以上何も口に出しませんでした。




小百合さんは、また迷いに迷ったあげくその財布を交番へと届けに行き、出来事を全て話しました。



すると、お巡りさんがこう彼女に助言しています。




「その財布とお金は、もうあなたのものです。

正直なあなたに神様がご褒美をくれたと思われては如何ですか?何の問題もありませんよ。それに、そういう件は私達のかんかつ外ですから。」








そうやさしく小百合さんに告げていました。




帰り道。小百合さんは、亡くなったご夫婦の事ばかりを考えています。




「アタシと同じ名前のお嬢さんがいらしたのね。、、なんだか、とてもおかわいそう」









小百合さんはその後、亡くなったご夫婦のお墓を探しあてると、そのお墓をあずかる御寺様に訪れ、ご夫婦と先立たれたお嬢さんの為の供養にと、そのお金、全額を御寺に納めていました。




それを聞いた夫、裕助は猫のコウスケと遊びながら、無神経にも





「もったいねぇ~な~センパイ。そのまま貰っちゃえば良かったのに~!俺ならそうするね!!」








等と、軽々しい事を口走る夫に対し小百合さんは肘で小突いておりました。




裕助が、猫のコウスケに言っています。




「おまえ、どっか行って大金が入った財布拾ってこいよ!2人で山分けしようぜ!!」





                              " ミャ~ン "




まったくもって、不謹慎な夫の裕助なのでした。




小百合さんもさすがに呆れたのか、ソファーから静かに立ち上がるとそのまま台所に姿を消していきました。




彼女は、わずかなお金しか入っていない夫の財布にお小遣いを足してあげようと思っていましたが、一次、取り止めにしたそうです。




裕助は、いらぬ事言うものだから、損してしまいました。とさ。





おしまい。




最後まで、見て下さってありがとうございます。



書いてる私も、もったいないな~!!ってついつい思ってしまいます。



でも、さすが小百合さんと彼女を讃えたくなります。



私欲だけのお国のお偉いさんとは大違いです!



やっぱり、人は、こうでなきゃね!(*^^*)



正直者でやさしい小百合さん。



私は大好きです。





っという事で、また書きます。




次回も覗きに来て下さると嬉しいな。




では、また!この次まで。👋👋👋