どうも、かつたるいです。


日に日に陽がながくなってきました。


春の色が一段と濃くなってきた今日この頃如何おすごしですか。


気が付けばもう3月が過ぎようとしています。


年々、歳をおうごとに月日がたつ早さを感じながらも私は心地好い陽気の中、呑気に相変わらずのマイペースでこのブログを書いています。


今回は第70話という節目もあり、小百合さんの過去について少しだけ語ろうと思います。



見て下さる方の想像力をお借りしながら早速本編に移らせて頂きます。



では。



「第70話      小百合さんの幸せ 」

今日も今日とて小百合さんがパワフルに家事をこなしている姿が見えます。


掃除、洗濯、炊事どれをこなすときも彼女から笑顔が消えません。


何をするにも明るく朗らかです。






姑もそんな嫁の小百合さんにつられて心軽やかにてきぱき動いていました。



「小百合ちゃんいつも元気ね!一緒にいる私も嬉しくなっちゃうわ!!毎日主婦やってても嫌になったりしないのね」


小百合さんはこたえました。


「アタシ、これが夢だったからなんでもありません!お母様こそずっと専業主婦なさってるじゃないですか!!」


姑は布団を干しながら


「私は義務でやってるからさぁ!仕方無くやってるようなものよ。小百合ちゃんは特技とかいっぱいもってそうだし、家にとじ込もってばかりじゃもったいないんじゃない?」


小百合さんも干した布団を叩きながら


「アタシなんて何にもできません。得意なのは主婦業だけです!OLやってた時は楽しかったけど、今の方が数倍幸せなんです!!」


姑は嫁を敬うように


「そんなもんかね。まだ若いのにもったいない気がしてならないんだけど。まぁ小百合ちゃんが好きでやってんなら、それでいいけどさ」


小百合さんが、はにかんでいます。


確かにもったいない気がします。


彼女には特技がいくつかありました。


パソコンのタイピング早打ち部門では全国一位の実績を残したほどの実力の持ち主です。

OL時代はその特技を生かし会社にどれ程貢献したかわかりません。




お料理からお裁縫にしても職業にしておかしくないほどのたくみな技を身につけています。

ちなみに彼女は調理師免許ももっています。

英語だってペラペラだし、自分で食べて行けるだけの" 力 "を身につけているのです。


では何故、裕助と結婚し地味な主婦業をしているのでしょうか。


それを話すには彼女の幼児期までさかのぼらなければなりません。


彼女は当時、厳しい事情を持つ夫婦の間に産まれました。

いまは埼玉に持ち家を構え平穏無事に暮らす小百合さんの実父母の若い頃の家庭環境は決して裕福なものとは言えなかったのです。


ここで、小百合さんの過去に振り替えってみたいと思います。




ここは何処でしょう。




目立ったビル等の建物は見当たらないのどかな田舎町といた感じの町並みが、河川にそって広がっています。

その川のへりに並ぶ小さなアパートの二階の窓から、赤ん坊をあやす女性の姿がみえます。







見るとその女性はまだ若く、恐らくこの赤ん坊の母親でしょうか。


可愛らしい女性です。


「さゆり、ごめんね。今、おとうさんミルク買って来てくれるからもう少しガマンしてちょうだい。」


小百合さんの赤ん坊のころの様です。


赤ん坊の小百合さんはお腹を空かしているのか少しぐずっている様で母親と思われる女性が一生懸命あやしていす。


すると、ひとりの男性が息を切らせながら部屋に駆け込んできました。


「す、すまん多恵子!ミルク買ってきたよ、さゆりは大丈夫かい?!!」



この男性は見たことがあります。


小百合さんの父です。



痩せてはいますが、声といい顔立ちといい小百合さんの父に間違いありません。


この若い女性は母親で、名を多恵子と言いました。


今の小百合さんと同じくらい可愛らし女性です。

いったい何歳なのでしょう、とにかく若くみえます。


「ほら、さゆり、ミルクできたよ。おあがり」


多恵子が小百合さんにミルクを与えています。


父はミルクをあたえる多恵子の前に正座ですわりずっとその様子を見つめながら


「すまん多恵子。妻のお前にこんな状態の苦労ばかりを掛けさせてしまって。本当に申し訳ない、ごめんよ」




父はそう言って多恵子に頭を下げました。



美味しそうにミルクを飲む赤ん坊の小百合さんを父はじっと見詰めていました。


妻である多恵子は


「いいんですよ。ほら、さゆり、美味しそうに飲んでますよ。太さん気にしちゃダメよ、こうしてミルク飲めてるんだから。」



父は" 太 "(ふとし)という名前でした。



多恵子は小百合さんにミルクをあげながら続けて


「大丈夫。もうすぐ私のお給料も入るから何とかなるわ、もう少しの我慢よ」


太はうつむいたままの姿で


「すまんね、俺のせいで………」


多恵子は


「あなたのせいじゃないわよ。あなたは何にも悪くない!」


太は無念そうに頭をさげながら


「しかし、そうは言ってもこう毎月の生活が苦しいと……」



多恵子は嬉しそうに小百合さんにミルクを与えながら


「大丈夫よ、二人で頑張りましょう。きっと良くなるわ」




どうも、小百合さんの父母は経済的に苦しんでいる事が話しを聞いていて分かります。


なにかあったのでしょうか。



父の太は


「俺が友人の保証人なんかさえならなければ、こんな事にはならなかった。駆け落ちまでして君と一緒になったのにこんな生活ばかりで。……だらしない俺でごめんよ。そうでなければ君にも普通に子育てをしてもらえたんだ!」






すると多恵子は微笑みを浮かべながらこういいました。


「さゆりもここまで無事に育ってくれてるし、私はなんとも思ってないわ、普通よ。気にしないでいきましょ!」




多恵子の励ましの言葉をきいた太は妻、多恵子の肩を抱きなが心から謝りました。



                     「すまん、多恵子!」




小百合さんの父母はお互いを想いずっと寄り添い合っていました。


父は妻と寄り添いながら強く想いました。




(この子(小百合さん)だけは、将来こんな苦労はしてほしくない、頑張らなきゃ!!……)




すると



今度は大きくなった小百合さんの姿がみえます。



これは幼稚園に通う途中でしょうか、多恵子に手を引かれ明るく元気に歩道を歩いている小百合さんが見えます。


どうも多恵子の服装から察するに普通に生活する上で余り満たされてはいない装いである事の気配が見受けられます。


多恵子は小百合さんの手を引きながら


「お弁当、今日もカボチャがはいってるけど我慢してね。毎日同じお弁当ばかりでごめんね、美味しいといいけど、……」


幼い小百合さんは手を引かれながら


「アタシ、お弁当のおかずなんてなんでもいいよ!アタシ、カボチャ大好き!無理しないで、おかあさん!!」





多恵子はそんな園児の小百合さんの強がる姿を見ると、微笑みながらも心では泣いていました。


                  (ごめんね、さゆり………)


小百合さんがお昼にお弁当を広げると、まわりの園児達にからかわれている姿が見えます。


「さゆりちゃん毎日カボチャばっかりで飽きない?おいしいのそれ!他に食べる物無いの~」


小百合さんはカボチャを口に方張ると


「うん、おかあさんがつくってくれるお弁当とってもおいしいよ!アタシ何度たべてもあきない!!」


等と言いながら嬉しそうにお弁当を食べています。

何か強がっているのでは無いかと思われる程に見えますが小百合さんを見ると、そうでは無く喜んで食べている様子が伺えました。




小学生になった小百合さんを見てみるとやはり相変わらず元気のようですが、服装は地味です。

友達と仲良く遊んではいるものの、周りの女の子の華やかさからくらべると、一段落ちている印象は隠しきれません。

そして、非常に小柄である事が見て取れ、肉付きも決して良いとは言えず、やせっぽちかもしれまんが、救いなのがその表情は決して暗くはなく、常に明るい笑顔を保っているという事が見ていて分かりました。


友達と遊び終えると1人アパートに帰る小百合さんが見えます。


カギを自分であけ、誰もいない部屋へと1人入っていきました。


すると台所に向かいお米をとぎ始めています。


きっと家の手伝いをしているのでしょう。


「大切なお米だもの!ていねいにとがなきゃ。お米さん、お米さん美味しくな~れ!!」




背が低い小百合さんは、ふみ台に乗り流し場で一生懸命米をといでいる姿がみえます。


一、二年生位のころでしょうか、元々小百合さんは小柄なので正確な歳はわかりませんが、この頃から彼女は炊事をこなしていたようです。


小さな冷蔵庫を覗いてみると


「あ!大根だ!!よーし、大根さん美味しくな~れ!!!」


そう呪文をかけながら、包丁とまな板を使い料理をはじめています。


小百合さんはこの頃すでに楽しく料理するコツを自分で見つけていたようです。


仕事から帰って来た両親、太と多恵子に料理を嬉しそうに差し出す小百合さんが見えます。


「美味しいよ、さゆり!お母さんに負けないくらいの味だ!!いつもありがとう」



「本当?おとうさん!たくさん食べてね!!」



小百合さんが無邪気によろこんでいます。




小百合さんは幼くして人に料理をつくってあげられる喜びを得ていたのでした。


父の太は娘を想い訪ねました。



「さゆりは将来どんな仕事をしたいんだい?」


小百合さんははっきりと答えました。


「アタシ、大好きになった王子様のお嫁さんになるの!ずっと王子様のそばにいてその人のお世話がしたいのよ!!それがアタシが一番やりたいお仕事なの!!!」



彼女の夢は純粋に" いいお嫁さん "になる事だったのです。


小百合さんは両親の前で幸せそうに将来の夢を話していました。………



と、




少しだけ小百合さんの過去を覗いて見ましたが彼女は理想通りの家庭を築くことが出来てとても幸せを隠せずにはいられないのです。


喜びを噛みしめ炊事、洗濯、掃除、子育てと主婦業をこなしているのでした。

その喜びに対する有り難さが全て気持ちに現れ笑顔となっているのでしょう。


彼女の過去は勿論これだけではありません。


想いを寄せた男性を信じるが故に傷ついた事もあります。


あえてこの場ではお話ししませんが、物心ついて年頃になった彼女にも癒えぬ辛い過去があるのです。

それをすべて帳消しにしてくれたのが、裕助との出逢い、結婚、森山家に嫁いだ事でした。





なので、小百合さんは専業主婦を嫌だと感じたことは一度もないのです。



彼女は夕飯の支度で、夫が好物にしているカレーをあたためながら、こう呪文をかけています。


「カレーよカレー、美味しくな~れ、美味しくな~れ!……早く帰って来てアタシの旦那様~ゆうすけく~ん!!」





ってね!!




小百合さんは今日も幸せのようです。







おしまい。







見て下さってありがとうございました。


小百合さんは幼い頃苦労していたようですが、
本人は余り苦労したとは思っていないようです。


対する裕助は何不自由ない、恵まれた環境で育った青年です。悪い表現で言うとボンボンそだちです。

正反対の環境で育った二人はそれなりにうまくバランスがとれているのではないでしょうか。

苦労した小百合さんが偉い等と言っているのではなく、お互い違った環境で育った二人はそれぞれに認め合って寄り添っているのだと思います。

小百合さんも過去の苦労等みじんも見せたりしません。


いつも笑顔です。


これって素晴らしい事だと私は思います。


私には出来ないことですから…………


「小百合さん、がんばれー!」って応援しながら次回に続けたいと思います。


まだ、懲りてなければまた覗いてみて下さいね。それでは………👋