歌手・加藤登紀子が振り返る 宮崎駿監督と「紅の豚」秘話 | アニメ&アニカラ Bar Phantom Club -ファンタムクラブ-

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紅の豚

来年、歌手デビュー50周年を迎える歌手の加藤登紀子さん(70)。長い経歴の中で、今の子供にも広く知られるようになったきっかけは主題歌とエンディング曲、そしてマドンナ役の声優を務めた宮崎駿アニメ「紅の豚」。

名作の誉れ高い本作で、宮崎監督(73)から得たものとは……。

■「紅の豚」が音楽の原点を見直すきっかけに

 早いもので、「紅の豚」の公開からもう22年になるんですね。

 あの作品で宮崎監督と初めてお仕事させていただいたのですが、思い出がたくさんあり過ぎて、どれから話したらいいのか迷うほどです。

 ただ、主題歌の「さくらんぼの実る頃」、エンディング曲の「時には昔の話を」を歌ったことが、私の音楽の原点であるシャンソンを改めて見直す、いい機会になりました。そして、安心して身をゆだねられる場所はどこかを教えてもらったのではないかと思います。


91年の夏ごろだったでしょうか。表参道にあったライブレストラン「テアトロスンガリー青山」で、「さくらんぼの実る頃」の録音と、アニメを描く参考にするための実写収録をしたのが、宮崎さんとの初対面でした。

「さくらんぼの実る頃」は、1871年のパリコミューン崩壊後の悲劇をテーマにした、シャンソンの代表曲のひとつ。
映画の中では原語で歌っています。お会 いして初めての録音でしたから、まだ完全に歌いこなしておらず、歌詞を書いた紙を片手に、ピアノは当時の私のマネジャーが遠慮がちに弾いたんです。

 後日、製作記者発表の際に、その時に録音した曲が流れ、初めて、仮録音ではなく、映画でも使われることを知ったのです。
録音は当時でさえ珍しくなってい たアナログの2チャンネル方式といわれるもの。これだとピアノと歌のバランスを変えられず、ミキシングもできないんです。ですから、CD化する際は困った と思いますよ。

でも、宮崎さんは「あれ以上のモノはないと思います」とおっしゃって下さいましてね。
「歌手に判断する権利はないのか?」って思ったものの、試写会を見ると、そのシーンの雰囲気によく合っていて、さすがだなって感心したものです。

 また、エンディング曲「時には昔の話を」は、もともと87年2月にリリースしたアルバム「MY STORY~時には昔の話を~」に収録されていたオリジナル曲です。
この年の4月に、このアルバムの中の「百万本のバラ」とカップリングでシングル発売しています。お会いする4年も前の曲をちゃんと聴いて、選 んで下さったのも、歌手冥利に尽きますね。

 宮崎さんは「あの歌の中の『あの日のすべてが空しいものだと それは誰にも言えない』という歌詞が僕はうれしかったですね」とおっしゃってましたから、作品のテーマにピッタリだったようです。

「紅の豚」の舞台は第1次世界大戦と第2次世界大戦の間のイタリア・アドリア海。自由が次第に失われていく時代です。作品の中では政治的な主張はまったくないのですが、「さくらんぼの実る頃」「時には昔の話を」を選んだ宮崎さんと私には、考え方や感性に相通じるものがあるんです。

 ですから、私の一番の理解者であり、ボーイフレンドのひとり。それが宮崎さんだといえますね。


日刊ゲンダイ



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