チコライドさんとの共同作品…。

すっごくお待たせしてしまい、ごめんなさい。

いっぱいいっぱい考えて書いては消してを繰り返してつくりました。

読んでくださると嬉しいです。

チコライドさんのプロフィール↓



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由依side



「由依ちゃん!


「ゆーいー…」


「由依」



私の愛を受け止めてくれる存在。


ただ、隣にいてくれるだけで落ち着く存在。


だから、あなたの言葉が本気だなんて思わなくて。


…いや、違う。思わなくてじゃない。思いたくないだけ。


だから、最初は冗談のような軽い気持ちで受け流して。


結局、あなたは私の前からいなくなって。


なぜあの時、自分の気持ちに素直になれなかったんだろう。


あの頃の私達は…勘違いじゃなければ両思いだったはずだけど。


実際のところ、私の思いは一方通行だったみたいで。



「小林さん。ほんとに目障り。さよなら。」



引き止めることが出来たのに引き止めなかったのは、引き止めたくなかったんじゃないの。


ただ、あなたの記憶の中に重い女って印象で残るのが嫌だっただけ。


引き止められるくらい素直で可愛い女の子だったら良かったのに。


そしたら、あなたは私を選んでくれた?


最後に見た理佐の冷たい瞳と言葉がフラッシュバックしてくる。


呼吸が不安定になる。息が上手くできない。


暗い。嫌。助けて。誰か。



「っはぁ、はぁ…なんだ、夢か…」



ばっと飛び起きたところで夢だと気がつく。


体は汗びっしょりで、少し気持ち悪い。



由依「はぁ…、。またこの夢…。、」



朝で湿った布団から体を出して、起き上がる。


汗をいっぱいかいたからか、急激な喉の渇きを覚えて水を飲もうとキッチンまで行く。


水がコップに入るわずかな音しか響かないこの静寂は気分を落ち着かせるには丁度いい。


…渡邉理佐。


コップに水を注ぐ時に指先についた水滴で、あの人の名前を書く。


ほんとに、嫌味なくらい彼女に似合う名前。


…もしかしたら、私は渡邉由依になってかのかもな。


…タラレバは良くないか。もう訪れることもない未来だもんね。


…好きだった。ぜんぶ、全部。





今日も満員電車に乗って会社に向かう。


学生気分でいられたあの頃が今となっては恋しい。


人に流されて、流されて。私の意思はどこに辿り着くんだろう。


なんて答えのない無駄な問いかけを時間潰しにしながら、いつものように窓際の端のスペースを確保する。


ここがこの狭い人がいっぱいいる場所では一番落ち着く。


誰かに聴かれているかもっていう杞憂から電車の中でイヤホンをつけて音楽を聴けたことがない。


ぱらぱら漫画のように過ぎていく風景を何も考えずに眺めていたら、背中の方に違和感を感じた。


…これは…やってるな。多分。


するすると何かを駆け引きするように、そっと体を触ってくる。


声が出てこないっていうよりは、、どうやってこの人から離れようか、と考えていた。


人が多いし…移動することは無理か。


まぁ、まだ本当にやっているかわからないし少し泳がせてみるか。


5分後。さっきまでの疑惑は確信に変わった。


こいつ。絶対にわざとやってる。


こういうのは、声をあげることが大事なんだよね。…よし。



由依「あ、あのっ」



?「おい、おっさん。今、その子に対して痴漢してたでしょう?」



私の小さい声を遮る凛とした心地良い声。


それでいて、なぜか聞き馴染みがある。



男「なっ!ご、誤解だ!!」



?「ねぇ、逃げられないよ。私、動画撮ったから。」



女の人の脅しともとれる発言に、男の人がヒュッと息を呑む音がした。



結局次の駅で男は駅員に連れて行かれた。


そうだ、助けてくださった女の人にお礼言わないと。


電車から降り、歩き出していた女の人の肩を叩く。



由依「あ、あの!さっきはありがとうござ……え、」



あぁ、さっきどこか聞き馴染みのある声だと思ったのは間違っていなかったらしい。


ゆっくりと振り向いた女の人はいまだに夢に見る想い人だった。



理佐「…え、由依…?、、」



由依「え、名前で呼んでくれるんだ。」



思わず声に出してしまった。…だって別れ話の最後であなたが小林さんって言ったからもう2度と名前では呼んでくれないと思っていた。



理佐「あー…、ごめん、小林さん?」



理佐の疑問系の言葉に心臓がキュッとした。



由依「ううん、由依のままでいい。」



理佐「あ、そう…?、。じゃあ、由依で。」



由依「…戻ってきたの?」



高校を卒業して、そのまま他県の大学に行ってしまった理佐。


風の噂では、外資系の一流会社に就職したとか。



理佐「うん、。会社の異動で。昇進ってやつ。」



由依「…そっか。」



理佐「…あー、。私、そろそろいくね?、」



由依「あ、うん…。引き止めちゃってごめん。」



理佐「ううん、大丈夫だよ。」



また前を向いて歩き出す理佐。


あ、あの時と全く同じだ。振られた時と。


なぜか、前と同じ結末になるのを嫌だと思ってしまった。



由依「りさっ!」



急いで理佐を追いかけて、改札の出口を通り過ぎたところで腕を掴む。



理佐「わっ!…ちょ、どうしたの?」



由依「今度…、いや!今日!今日の夜飲みに行こ!」



理佐「えっと…急だね。…それはちょっと…」



このままだと断られる。


そう悟った私は、使える手札を全部利用してやることにした。



由依「ねぇ、あんな酷い振り方したんだから今日くらい付き合ってよ。」



私、今どんな表情しているんだろう。


きっと悪い顔している。



理佐「えー…あー…、…わかったよ…。」



歯切れが悪く渋々と言った感じだったけれど了承してくれた。



由依「よし、じゃあこれ私の連絡先ね。仕事終わったら連絡ちょうだい?」



理佐「え、あ、うん。」



由依「じゃあ、またあとでね〜。」



やっぱり無理って言われないように、急いでその場を去る。


その日の仕事はなぜか捗って、定時には今日の分の仕事は全て終わった。



由依「うーん…っはぁ、つかれたぁ」



パソコンから目を離しぐーっと体を伸ばしていると同僚のみぃと土生ちゃんから声をかけられる。



小池「えっ、由依ちゃんもう仕事終わったん??」



土生「え、終わったの!?早いね!なんかあるの?」



由依「ふふふ、ちょっとね〜!」



小池「土生ちゃん。これは…恋人やな。」



土生「え〜!!由依ぽん恋人いたの!?」



由依「いやいや!今は違うって!……あ、」



小池「え、今は?…てことは…元恋人ってことなん?」



由依「うん…。あっ、連絡きたっ!」

「2人ともお疲れ様!お先!!」




2人の返事も聞かずに、急いで会社を出る。


駅から裏道を通ったところにある居酒屋に着き、店内に入ると。



理佐「あ、由依こっちこっち。」



ひらひらとこっちに手を振る仕草に心が躍る。



由依「はぁっ、はぁ、つかれたぁ…」



理佐「え、走ってきたの?」



由依「だって理佐がこんなメール送るから!」



理佐から一言だけ送られてきたメール。


“会いたい″


絵文字も何もないけれど、私を動揺させるには十分すぎた。



理佐「ん?」



由依「普通、仕事終わったとかじゃないの!?」



理佐「そう?まぁ、いいじゃん。ほら早く会えたんだし。」



由依「う…、。まぁ、そうだけどさぁ…。?」



昼間は私が優位に立てたなんて思っていたのに、すぐにひっくり返される。


まるであの頃みたいに。



理佐「ほら、そんなとこ立ってないでこっちで飲もう?」



由依「…うん。」



いつのまにか理佐のペースになっているのは学生時代から変わっていなくて、不思議な懐かしさを感じた。



由依「じゃあ、乾杯っ!」



理佐「かんぱーい!」



私がくる前におつまみを頼んでくれていたらしく、お酒が来たらすぐに乾杯した。



由依「あ、理佐の前に置いてあるやつ美味しそう。」



理佐「ん?あー、これ由依が好きそうだなぁって。」

「ほら、お皿貸して?私、取り分けるよ。」



由依「…そっか。うん、ありがとう。」



こういう細かい気配りができるのが、理佐のいいところ。



由依「ん、うまっ!」



理佐「ふふ、よかったね。ほらゆっくり食べな?」



由依「うん!」



いくら元恋人といえど仲の良さは変わらないみたいで、自然とお酒も進み、話も盛り上がってきた頃。


理佐の言動や仕草が少しずつ子供っぽくなってきた。



理佐「んふふ。」



グラスから落ちた水滴を指でなぞる理佐を見て、私がよく癖で水滴をなぞるのは彼女のせいだと気づく。


こんなことまで侵食されていたなんて。


静かな空間、もとい静寂が耐えられなくなって急いで話し出す。



由依「ねぇ、理佐。なんで断らなかったの?」



理佐「ん〜?何が〜?」



由依「今日、。私の誘いを断らなかったのは…なんで?」



理佐「…ふふ、なんでだと思う?」



由依「…質問の答えになってないよ。」



理佐「んふふ。」

「…ん〜、そろそろ出る?」



由依「…まだ飲んでたい。」



理佐「じゃあ…。」




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月にかざした缶チューハイの端っこから月の光が差し込む。



由依「…外、結構寒かったね。」



理佐「そう?だいぶ酔っちゃったからあんまりわかんないや。」



あの後すぐに居酒屋を出た私たちはどこか飲み足りなくて、近くにあったコンビニで缶チューハイと缶ビールを一本ずつ買って。


そのままフラフラと歩いていたら、たまたま公園を見つけてブランコに乗って話し始めた。



由依「私、ブランコ乗るの久しぶりかも。」



理佐「私も。小さい頃は結構乗ってたのになぁ。」



缶バールを地面に置くと、勢いよくブランコを漕ぎ出した理佐。


こういう無邪気なところが好きだった。



由依「ふふ、何やってるの?」



理佐「へへ、」



しばらくブランコを漕いでいたと思えば急に飽きてまた缶ビールに手を伸ばす。



理佐「ぷはぁっ、」



由依「理佐がお酒好きなの、なんか意外だった。」



理佐「ふふ、そうかな。」



そこで会話が途切れる。さっきまであんなに続いていた会話も上手くいかなくなってしまった。


何気なく理佐の方を見ると月明かりに照らされて耳元のピアスがきらりと光った。


ピアスは一生開けないかな、なんて言ってたのに。


なんだか心に靄がかかっていく感じ。


私も理佐も何も話さないないまま、時間だけが過ぎていった。



理佐「あ、ちょっとごめんね。」



断りを入れた後に、ポケットから煙草を取り出して吸い始めた。


心臓がキュッと音を立てて苦しくなる。


そこでようやく気づいた。


あぁ、私自分の知らない理佐がいるのが怖いんだ。

彼女の知らない一面がどうしようもなく許せなくて。



由依「…やめてよ、」



理佐「ん〜?」



由依「やだ、私の知ってる理佐は煙草なんて吸わない、。」



私の知っている理佐は、もっともっと清純で綺麗な人。



理佐「…ねぇ、由依。私そんなに綺麗な人じゃないよ。」



ばっと顔を上げると力なく笑う理佐がいて自分の失言に気づく。



由依「…ぁ、ごめ」



理佐「ううん。由依は綺麗な私が好きだったから。仕方ないよ。」



由依「は、?」



理佐「…綺麗な人間になりたかった、ずっと。」

「…だめだね。らしくないことしちゃうと、。」



由依「りさ、」



理佐「すぐに粗が出ちゃう。私らしさってなんだろうって考えだしちゃうの。」

「由依は私と違って真っ直ぐで綺麗だから隣にいると…ちょっと辛い。」



由依「ねぇ、もしかしてそれが別れた理由?」



理佐「…あはは、絶対話さないって決めてたのに。」

「ごめんね。こんな話されても面倒くさいだけでしょう。…そろそろ帰ろっか?」



いつのまに缶ビールを飲み干していたのか、空になった缶を持って立ち上がる理佐。


スローモーションのようにブランコが動く音と空き缶が落ちる音がした。



由依「…勝手に逃げないで。もう逃さないから。」



立ちあがろうとしていた理佐を押し返して唇を塞ぐ。



理佐「由依?」



なんで、なんで。そんなに顔色ひとつ変えずに平気でいられるの。


私たちキスしたんだよ。ねぇ、心臓が痛いくらい高鳴っているのに。



由依「なんで、」



理佐「由依、酔いすぎだよ。ほら帰りなって、」



由依「なんで理由もなくどっか行っちゃうの。、」

「私はどんな理佐でも愛せる自信があるよ。私の知らない理佐がいることの方が辛い。」



理佐「え、」



由依「勝手にいなくならないで…、。そばにいてよ。」



あんなに威勢の良かった言葉はどんどんと萎んでいって最後にはほとんど消えて無くなってしまいそうになった。



理佐「由依は完璧な私が好きなんだと思ってた。



由依「私はどんな理佐でも好き。大好き。愛してる。」

「理佐はもう私のこと好きじゃない?」



理佐「…まだ好き、かも。」



由依「じゃあ一緒にいて。もう離れないで、。」



理佐「…だめだなぁ私。あんなに決心して由依の隣からいなくなったのにすぐ揺らいじゃう。」

「忘れようって頑張ってもどうにもならないくらい好きなんだもん、。」



理佐「ねぇ、由依。忘れさせてよ。、」



由依「じゃあ、今の私を好きになって。」

「あの頃の私なんてすぐに忘れさせてあげるよ。理佐を一生幸せにしてあげる。」



寒さのせいか、はたまた別のことか。鼻先が赤くなって目が潤んでいる理佐にもう一度口付けした。


また影が重なる。


もう2度と離したりしない。

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綺麗な人って羨ましくなります。

綺麗っていろんな意味がありますよね。

ここで使わせていただいた綺麗の意味は容姿のことではないです。

全然違う話なんですが寒くなってきたこの季節に空を撮るのが好きでカメラ買っちゃいました〜。


では、!!

maru〇