目覚めたのは午前4:43。目覚ましのかかる2分前だ。
あと2分だけ布団でゆっくりしてアラームを鳴らして起きる、もしくはすぐ起きるかについて葛藤し、勝者になる決意をした。
服を着替えて顔を洗い、新聞を取りに行く。一歩でも外にでると僅かな眠気も押しやることができる。
今朝の温度は8℃。先週よりは少し暖かくて過ごしやすい。ただ、空はどんよりしていた。
少し早めに家をでて、いつものように北鎌倉駅に駐車する。
到着は5時30分。いつもより少し早いが、暖かいので円覚寺通用門をくぐり、お坊さんを待つことにした。
仏殿に向かう途中で紫陽花の茎に枯れた葉っぱが頼りなくくっついて揺れていた。
参加者の何名かはすでに通用門をくぐっているが、山門あたりをゆるゆる歩いている。
列に並んでいると寒くなるので、お坊さんがくる直前まで散歩するのはうなずける。
今日は早かったので列の3番目になった。
常連さんお二人はいつものように胸の前で腕を組んでスーッと立っている。
先頭の人は何時から並んでいるんだろうといつも思うが、聞いたことはない。
なんだか今日は空気が重いなあと感じて立っていると、さっき散歩していた人が私の後に並んだ。
踏切が鳴り始めたので、5:47着の電車が来ると考えていると、小道からザッザッという足音が流れてきた。
お坊さんの登場だ。
今日の担当を心の中で私は蝉丸さんと名付けている。
多くのお坊さんが頭をつるつるに剃り上げている中、蝉丸さんの頭はなぜかいつもごま塩坊主なのである。
五厘刈りよりも少し長いくらいの長さ。頭髪のレギュレーションはどうなっているんだろうか。
蝉丸さんは猫背で、大変寡黙だ。
初心者にレクチャーをするときも、口がパクパク音をさせているのだが、私に蝉丸さんの声は全く届かない。
裏口から入門し、先に並んだ参加者たちで手分けして仏殿正面の扉を開けていると、今日の参加者がぞろぞろ入場してこられた。
暗いし、寒いのによく来られますなあと思う。
参加者はざっと数えたところ30人くらいだ。
春になると観光客が増え、朝も明るくなるので仏殿は満員になるのだが、まだ時期が早い。
今日は奇跡的に初心者の方がいらっしゃらなかったようで、蝉丸さんは正面に坐って坐り具合の調整を始めた。
そして拍子木を2回、力強く叩いた。1回目のスタートである。
今週は在宅で働いた日が多かったせいか、あまり歩いておらず、関節が固まっている気がする。
組む脚も反対側の腿の上まで上がらない。普段の生活態度が定期的にチェックできるのが坐禅のいいところだ。
とはいえ、ダメだと分かればこの時間を使ってリセットすればよい。
頻繁に通うと体が柔らかくなるので良い姿勢を作りやすくなるのだが、姿勢が定まると逆に変なことを考えてしまいがちだ。
今日のように明らかに体が凝っていると、それを直すのに集中するので「今」を有効活用できる。
本日はどうも背中が固い。これを何とか柔らかくするために肩甲骨ををゴソゴソ動かす。
しかしなんか詰まっている感じで、なかなかまとまらない。
こういうときは初心に帰るのが一番なので、腰骨を立て、座骨のどの位置が座蒲に当たっているかを確認する。
そして接地点をできるだけ少なくし、不安定な状態を作り出すようにする。
掌に鉛筆を立てて、倒さないように掌を動かす、あの感覚を腰で再現する。
腰が立つと、腰椎の下から順番に意識を飛ばしてほぐしていく。
胸椎までくると、肩甲骨が邪魔して胸が一塊になる気がするので、肩甲骨を動かして下げる。
下げ方は円相を組んだ掌の重みを使うようにしている。正しいのかどうかは知らないが、使えるものはなんでも使おうということだ。
脚が少し痺れてきた。多分そろそろ終わりだろう。
鉦が鳴る瞬間に集中ゾーンに入っていたら私の勝ち。これは私のマイルールだ。
なので集中にラストスパートをかける。
目で見ていないのだが、ゾーンに入っているといつ鉦が鳴るかを予測できるのが不思議だ。
まあ、衣擦れがするからそろそろだとわかるだけの話だが。
鉦が鳴り、数分の休憩をとった後、2ラウンドが始まる。
ところで蝉丸さんは2ラウンド目でも警策をもって歩かない。
頭髪と同様、レギュレーションに束縛されない自由人なのである。
初めて蝉丸さんが担当だったときは「なんというやる気のない人だ」と思ったものだが、今は蝉丸さんになると嬉しい。
警策で叩いて回ると、多少なりとも集中をそがれてしまうからだ。
好き好きはあるだろうが、私は警策で叩かなくてもいいんじゃないかと思っている。
叩くときはお坊さんの動きを密かに観察して楽しんではいるけれども。
まだ花粉が飛んでいないので鼻づまりもなく、今日は本当に快適な坐禅会を過ごさせてもらった。
読経が終わって外に出ると、ぼんやり明るくなっており、梅の木にちらほら花が咲きだしていた。
梅の木が満開になると花粉が始まり、鼻水との闘いが始まる。
次回は足がしびれないよう、ふろ上がりに柔軟体操をして股関節を柔らかくしておこうと思う。
では良い週末を楽しむことにしよう。合掌