「ありえない…この私が…」‬小池百合子氏の虚栄と誤算。蓮舫パニックに陥った女帝が東京都知事選に出馬表明できぬ理由

国内2024.06.07 

 

by 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』

蓮舫氏の“覚悟”に狼狽した小池百合子氏が、東京都知事選挙(7月7日投開票)の出馬表明を先送りしている。描いてきた圧勝シナリオはもろくも崩壊した。有権者の批判をかわすため「自民党の推薦を受けないまま、自民党の組織票だけはいただく」ステルス作戦もあるが、そう上手くいくかどうか。6月20日の告示日ギリギリまで票読みをつづけるであろう小池氏の深い苦悩を、元全国紙社会部記者の新 恭氏が明らかにする。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)

この私が蓮舫に負けるというの?新区長に擦り寄った小池氏の「揺れる想い」

6月2日の東京都港区長選挙でも、自民党は勝てなかった。自民、公明両党の推薦を受けた現職、武井雅昭氏が、どの政党の支援も受けなかった無所属新人、清家愛氏に競り負けたのだ。

自公推薦候補なら応援演説に駆けつけてもよさそうなものだが、小池百合子都知事は武井陣営に寄りつきもしなかったらしい。

そればかりか、翌3日には港区初の女性区長となる清家氏を早くも都庁に招く手回しのよさをみせた。わずか2分間の面会劇だった。

「あ~よかった。おめでとうございます」。小池知事は満面の笑みを浮かべながら、清家氏の両手をとって、カメラに顔を向ける。まだ当選証書も受け取っていない清家氏は戸惑いの表情を隠さない。知事と区長のこんなセレモニーがかつてあっただろうか。

港区議を13年つとめたとはいえ、どの政党の色もついていない当選ほやほやの政治家を体よく使ったイメージ戦術。その裏側には、連携を強めてきた自民党が裏金問題で信用失墜するなか、都知事選への三選出馬をめざす小池氏の心の揺れが隠されている。


「小池劇場の嘘」をばらされ苦しい言い訳

先月28日、小池氏は都知事選への出馬要請を受ける自作劇で、主役を演じていた。

「都民ファーストの会」と公明党の両都議団が相次いで知事応接室に招き入れられる。都庁記者クラブ各社のカメラマンが待ち受けていて、要請文を受け取る小池氏の晴れやかな姿を撮影する。言うまでもなく、都民ファは小池知事がつくった地域政党、公明は都議会で協力関係にある。

広く都民に望まれて、東京都知事選に出馬する。学歴詐称疑惑が再燃し、頼みの自民党が失速しているからこそ、小池知事には、見栄えのいいそんな形が必要だった。

調布市の長友貴樹市長、新宿区の吉住健一区長、瑞穂町の杉浦裕之町長らも同じ日に、都庁で小池知事に面会した。東京に62ある市区町村のうち52自治体の首長が名を連ねた出馬要請書をたずさえてやってきたのだ。

「思いは、ありがたく受け止めさせていただきます」「都政を発展させ、持続可能な都市にして世界一にしていくということをこれからも皆さんと進めていきたい」

すべて予定通りにコトが運んだ。小池知事の再選を望む声が澎湃(ほうはい)として湧き起り、都下の多くの首長が出馬を促す姿を満天下にアピールできたはずだった。

だが、出馬要請に名を連ねた一人が実情を暴露したことで、そのムードは急速にしぼんだ。

「小池知事側からわれわれ市長に、支援してくれますかと打診があった」「出馬前ということもあり、応援の依頼だったのが、なぜか出馬要請の話になってしまった。私としては心外だ」

日野市の大坪冬彦市長が5月30日の記者会見で語った内容だ。区市町村長が話し合って出馬要請文をまとめたわけではない。小池知事側が応援依頼をしてきたのだ。

大坪市長は三多摩地区の市長らと対応を相談した。小池都政への不満もあり「支援をするのであれば、いろんな条件をつけたい」という声も出ていたのだが、いつの間にか「出馬要請」をするという話になってしまっていたという。

むろん小池知事は否定する。6月1日の定例会見で、「私からの依頼はしておりません」と話した。学歴詐称問題でも見られた小池知事らしいレトリックだ。「私から」はしていないが、秘書なり副知事なり、周辺から依頼したことを否定してはいない。


蓮舫氏だけではない。小池氏が都知事選“敗北”を予感する理由

小池知事は当初、この出馬要請セレモニーを受け、翌29日の都議会本会議で、華々しく出馬の意思を表明する予定だった。だが、一夜にして予定を変更し、その日の出馬表明をとりやめた。

27日に立憲民主党の参院議員、蓮舫氏が都知事選に名乗りをあげたためだ。

「裏金議員、政治とカネの自民党、絶対に許さない。自民党の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしい」

小池都知事と裏金自民党を結びつけて挑戦状をたたきつけてきた。これは計算外だった。立憲は衆院補選や静岡県知事選などで連勝し、勢いがある。都民の人気という点では最も手ごわい蓮舫氏が、まさかリスクを承知の上で出てくるとは思いもよらなかったのである。

圧勝の自信が吹き飛び、当選できるかどうか読めなくなってきた。選挙戦略の見直しが必要になった。そのための時間が欲しい。

自民党は自前の候補を出さず、小池氏に抱きついて、選挙戦の連敗を食いとめようとしている。小池氏はというと、自民党の組織票は欲しいが、あからさまに共闘して自分も逆風にさらされたくはない。

前回の選挙で再選されて以後、小池知事は自民、公明両党と手を組む「古い都政」に逆戻りした。

今年1月の八王子市長選では、裏金事件の影響で苦戦を強いられた自公推薦候補の応援に駆けつけ、勝利に導いた。八王子を地元とする自民党東京都連会長、萩生田光一氏が小池知事と頻繁に連絡を取り合うようになったのは、このころからだ。

ところが、それ以降、「選挙の小池」の神通力に陰りが見え始める。4月末の衆議院東京15区補欠選挙で、小池知事が擁立した乙武洋匡氏は、立憲民主党の候補にダブルスコアの差でぼろ負けした。

4月の目黒区長選、目黒区の都議補選(5月26日)でも小池知事の支援した候補が敗れた。小池氏の元側近による告発手記「私は学歴詐称工作に加担してしまった」(月刊「文藝春秋」)の影響があるのは明らかだった。


自民党との「ステルス選挙戦」でも勝算は見えず

選挙に対する小池氏の自信が揺らぎ始めたのを見透かすかのように蓮舫氏が立ち上がり、与野党対決の構図に持ち込もうとしている。

小池氏は、自民党の推薦を受けずに戦う方策を考え始めた。

岸田首相ら自民党の大物議員には応援に入ってほしくない。だけど、自民党都連の議員たちにはしっかり動いて票をまとめてもらいたい。

小池氏にとっては都合のいいステルス作戦だ。

むろん、小池氏の勝利をもって選挙の連敗を食いとめた実績としたい自民党としてはやすやすとのめる話ではない。だいいち、そんな選挙戦で、実戦部隊の都議や区議らが本気でがんばれるだろうか。5月の静岡県知事選でもステルス作戦を用いたが、うまくいかなかったではないか。

学歴詐称疑惑。自民党への逆風。それに加えて小池氏の不安をかき立てるのは自公関係の悪化だ。公明党とは都議会で連携しており、出馬要請も受けている。安定した創価学会票を確保するためにも自公の協力関係は欠かせない。

ところが今国会、自公は政治資金規正法の改正案の中身をめぐって対立し、自民党が単独で改正案を提出する事態となった。

政治資金パーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げるよう求める公明党に対し、自民党は「5万円超」では収入が激減するとして「10万円超」を主張した。

しかし、公明党は譲らない。裏金自民党と「同じ穴のムジナ」と見られたくないのだ。


出馬表明なら学歴詐称「刑事告発」の可能性も

最終的に岸田首相は、公明嫌いの麻生副総裁らが反対するのを振り切り、「5万円超」で公明と合意した。

これで、小池知事が懸念した最悪の事態は回避されたが、自公間のしこりは解消されたとはいえず、いぜんとして選挙協力がうまく機能するかどうか不透明なままだ。

おそらく小池知事は6月20日の告示日のギリギリまで情勢分析に取り組むだろう。負けるイクサは絶対に避けたいからだ。

出馬するとして、経歴にはカイロ大卒と書けるのか。自民党の推薦を受けるのか。受けないとしたらどのような選挙戦を展開するのか。

余裕綽々の笑顔の裏で、小池氏はさまざまな難しい決断を迫られている。



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永田町異聞/新 恭(あらた きょう)

まぐまぐ大賞2022年受賞