半導体復活の仕掛け人「政官財40人」実名リスト公開、TSMC誘致の最大功労者はソニー

日本の半導体産業の反転攻勢が始まった。台湾TSMC第2工場の建設が決まり、最先端半導体の量産を目指すラピダスも北海道で工場建設を開始。このほかにも半導体工場の増産が相次いでおり、日本列島は空前の巨額投資に沸いている。特集『狂騒!半導体』(全18回)の#6では、それを仕掛けた政治家、官僚、学会、産業界の「キーマン40人」を一挙に公開する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

米国進出を決めたTSMCから
日本政府に届いたメッセージ

「今回は米国に決まったが、日本とはいろいろな形で半導体の協力関係を築いていきたい」──。

 2020年5月、経済産業省の幹部に届いたのは、台湾積体電路製造(TSMC)CEO(最高経営責任者)の魏哲家(シーシー・ウェイ)氏からのメールだった。

 その直前、TSMCは米国アリゾナ州で半導体工場を建設すると発表。19年夏ごろから水面下でTSMCと誘致交渉を進めていた日本政府は「落選」した格好だが、TSMCから届いたのは“対話継続”のメッセージだったのだ。

 日本の半導体の反転攻勢は、政府が水面下で進めていたTSMCとの誘致交渉を発端に始まった。次ページでは、今に至る復活のシナリオを仕掛けた「政官財40人」を一挙に公開する。
 

ルネサスが「脱・半導体メーカー」狙い大勝負!米ソフト会社9000億円買収で掲げる“新戦略”とは?

半導体大手ルネサスエレクトロニクスが海外企業の買収を加速させている。総額1兆7000億円でアナログ半導体メーカーを買収した後、約9000億円で買収するのは米ソフトウエア会社だ。狙いは従来型のビジネスモデルからの脱却にある。特集『狂騒!半導体』(全17回)の#8では、政府の半導体戦略から一線を画して快進撃を続ける“ルネサスの新戦略”に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

政府の半導体戦略と一線を画す
ルネサス独自の海外買収の軌跡


 政府主導で半導体工場の建設や増産投資が相次いでいる。

 2月6日、半導体世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に2番目の工場を建設すると発表した。建設中の第1工場を含めると投資総額は200億ドル(約2兆9600億円)で、日本政府は最大7600億円規模を補助する見込みだ。

 同日、半導体大手のキオクシアホールディングスが米ウエスタンデジタルと競合運営するNAND型フラッシュメモリー工場で総額7290億円の巨額投資を実施することが明らかになった。政府は最大1294億円を補助する。

 昨年には、総額5兆円の投資規模とされる最先端半導体会社ラピダスが北海道千歳市に工場の建設を始めた。政府はすでにラピダスに3300億円の補助金を決定している。同年末には、ロームと東芝が共同で総額3883億円の投資を行い、電気自動車(EV)などの電力制御に使われるパワー半導体の増産投資を行うと発表。政府は最大1294億円を補助する。

 こうした巨額投資が次々に表面化する中、ルネサスエレクトロニクスは2月15日、約9000億円で米ソフトウエア会社、アルティウムを買収すると発表した。

 もっともルネサスの投資は、国の補助金を活用して半導体工場の設備を増強する他の半導体メーカーの巨額投資案件とは一線を画している。

 もともとルネサスは、TSMC熊本工場の運営会社JASMへの出資を政府から呼び掛けながら辞退しており、ラピダスに対しても出資を見送っている。

 政府主導の半導体戦略と距離を置くルネサスは、独自の判断で海外の半導体メーカーの大型買収を繰り返してきた。

 17~21年に仕掛けた3社の買収の投資総額は約1兆7000億円。だが、今回の9000億円規模の買収の対象は半導体メーカーではなく、ルネサスが仕掛けてきた巨大M&A(合併・買収)の中でも異色となる。

 その最大の狙いは、従来型の半導体メーカーのビジネスモデルからの脱却にある。次ページでは、快進撃を続けるルネサスの巨額買収の真の狙いを明らかにする。



デンソーが狙う「半導体売上高1兆円」!打倒ボッシュで挑むトヨタからの独立計画

デンソーが車載部品に次ぐ「第二の柱」として半導体事業の拡充を急いでいる。パワー半導体で富士電機とタッグを組もうとしているのもそのためだ。一方、自動車部品業界で競合する独ボッシュは、デンソーより一回り先に半導体分野の投資攻勢を急いでいる。デンソーに勝ち目はあるのか。特集『狂騒!半導体』(全17回)の#9では、デンソーが描く「半導体売上高1兆円」構想の実像に迫る。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

経産省画策のパワー半導体「強制再編」
ローム・東芝に続く第二陣営の誕生

 デンソーが富士電機とタッグを組み、半導体業界に地殻変動を起こそうとしている。

 パワー半導体メーカーの“強制再編”を促そうと経済産業省が準備した「補助金の受け皿」として、デンソー・富士電機陣営が急上昇しているのだ

 仮にデンソー・富士連合が結実したならば、ローム・東芝連合に続く、第二陣営が誕生することになる。

 もともとデンソー社内では、ローム・東芝連合との連携を模索する構想があったようだ。ロームは、次世代パワー半導体の有望材料とされる炭化ケイ素(SiC)ウエハーを供給できる唯一の日本企業である。デンソーを含め多くのパワー半導体メーカーが、材料調達分野でロームと連携したいと考えるのは自然なことだ。

 また、東芝にも虎の子の会社がある。東芝傘下のニューフレアテクノロジーは、半導体の回路原版となる「フォトマスク」に電子ビームを使って描画する半導体装置で世界シェア9割を握る。

 もっとも、現在、デンソーがローム・東芝連合に接近できる方策は乏しい。そこで炙り出された現実解が、もともと近しい関係にある富士電機と協業することだった。

 いずれにせよ、パワー半導体では世界10指に入らないデンソーが、半導体事業の拡充に猛チャージをかけていることだけは確かだ。

 デンソーはいかにして、「半導体メーカー」への転身を図ろうとしているのか。次ページでは、半導体戦略で先行する競合の独ボッシュとの比較を図解で提示しながら、デンソーの「半導体売上高1兆円」計画の実像に迫る。



半導体・部品「株高をキープできそうな142社」ランキング!4位東京エレク、2位信越、1位は?

史上最高値を付けた日本の株式市場。相場を大きくけん引しているのが半導体銘柄である。このまま株高をキープできそうなのはどの企業なのか。特集『狂騒!半導体』(全18回)の#10では、半導体・電子部品142社を対象にした「生き残り力」ランキングを大公開する。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

日経平均株価をけん引する半導体銘柄
生き残る142社ランキングを大公開!

 2月22日、日経平均株価が終値ベースの史上最高値を上回ったことで、東京株式市場をけん引する半導体銘柄の業績先行きに関心が集まっている。

 生成AI(人工知能)や電子機器の需要拡大が追い風となり、世界の半導体市場は過去最大の5883億ドル(88兆円2000億円)となる見込みだ(WSTS調べ)。

 日本の半導体市場でも材料・装置メーカーを中心に盛り上がりを見せている中、潜在的な「成長余力」が大きい企業はどこなのか。

 ダイヤモンド編集部では、設備投資や研究開発投資を機動的に実行できる「財務力」と「マネジメント力」を兼ね備えた企業を将来性の高い企業として評価。半導体・電子部品142社を対象に「生き残り力ランキング【最新版】」を作成した。

 ランキングを作成するに当たって、重要視したのは以下の3タイプのデータ(七つの指標)だ。

●企業の基本的な稼ぐ力を表すデータ…企業を変革するにも「先立つもの」が必要であり、本業でキャッシュを稼いでいる企業を高く評価した。
指標:年平均売上高成長率、営業利益率

●将来への投資意欲を表すデータ…現状の事業領域に甘んじることなく、変化を恐れず新しい領域への野心を燃やしているかを端的に表しているのが、研究開発費にかかわる指標で評価した。
指標:研究開発費、売上高研究開発率、フリーキャッシュフロー

●事業の拡大意欲を表すデータ…製造業にとって設備投資の増減は生命線。設備投資をしっかり実施している企業を高く評価した。
指標:設備投資額、売上高設備投資率

 これらの独自指標を用いて、企業の実力値とポテンシャルを総合的に評価した。それでは、次ページで「半導体・電子部品142社「生き残り力ランキング【最新版】」の結果を見てみよう。