6月に入るや否や鹿児島らしい高温高湿の気候となり、それに耐えつつ、且つ高齢ゆえの頭の緩みに呆れながら、ここ数日、
2022年に公開された韓国映画「不思議の国の数学者」を楽しんでおりました。
AmazonのPrime Video会員でしたら無料で何度でも楽しんでいただけますし、なかなか良く出来た映画でもあります。
その、良く出来ている理由(ワケ)も含めて、お勧めしたくなり記事にいたしました。
上位1%以内の成績の良い生徒だけを集めた有名私立高校に通う主人公が、クラスメイトや担任教師の蔑視に耐えながらも、
ひょんなことから知り合った高校の警備員のオジサンの手ほどきを受け、苦手の「数学」に取り組んでいく、という第1プロット。
実は、その警備員のおじさんは北朝鮮から韓国へ脱出してきた天才数学者で、数学史上最大の難問の「リーマン予想」を解決したといわれていた人でした。が、韓国にてはろくな仕事につけず、苦しく孤独な生活を送っていました。
が、主人公と言葉を交わし、少しづつ数学への取り組みを指導することで、亡くしてしまった実の息子を育てているかのような、喜びを実感していく、というのが第2プロット。
そして、クラス担任で数学の先生が、主人公を「転校」させようと企て、主人公がまさに負けようとしているとき、天才数学者が名乗りを上げ、主人公を救い、自分も数学者として研究に戻っていく、というのが最後のプロットです。
オジサンを演ずる韓国一級の俳優チェ・ミンシクの演技が素晴らしく、また脇を固めた俳優たちも個性的な演技で、上質の映画に仕上がっています。
物語の途中、これまで天才たちが発見した、数学に出てくる公式の持つ美しさに気付いて欲しいと願ったオジサンが、倉庫の中の古いピアノを引きずり出して弾いてくれる曲「円周率(パイ)の数列に音階を当てはめた”πの旋律”」が、とっても素敵です!
一聴の価値あり!是非お聞きになってください!!
また、劇中、あちこちで流れる、J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」がまたストーリィを引き締めてくれています。
そこから先は、辿ってきた辛い悲しい思い出を断ち切って、オジサンが活躍する終幕と、π(パイ)の旋律が感動的に流れるエンディングをどうぞ味わってくださいませ。
さて、この映画の基となったドラマをご案内して記事を終わりましょう。
「不思議の国の数学者」は、2000年に制作されたアメリカの映画「小説家を見つけたら」
(原題:Finding Forrester)のプロットを殆どそっくり借りて、韓国風に再味付けを行ったもの、と言えましょう。
「小説家を見つけたら」は「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・ヴァン・サント監督が制作した、伝説的な天才作家と天才的な文才を秘めた黒人少年の心の交流を描いたドラマです。
場所は、高級住宅地とは言えないニューヨークのブロンクス。
黒人の高校生ジャマール・ウォレスは、プロのバスケットボール選手を夢見つつも、実は大変な文学少年で、ブロンクスの高校での作文の試験で大きな注目を浴び、マンハッタンの有名私立高校からの学費なしの入学を誘われる。そんな彼が、古びたマンションの一室に引きこもっている謎の老人とめぐり合い、小説の書き方の指導をして欲しいと願い出るというのが第1プロット。
老人は、40年前にピュリツァー賞に輝いた処女作一冊だけを残して文壇から去った幻の小説家、ウィリアム・フォレスター(ショーン・コネリー)でしたが、少年の才能を見抜き、作文能力と必要な知性を磨き上げていきます。
二人の間には、いつしか師弟関係を超えた友情が生まれ、ジャマールは文学の才能を開花し、フォレスターは長年閉ざしていた心を開いていき、ついには少年を学校から追放しようとした文学指導教官を教壇から追い落とすため、一計を案じ、少年の志の実現への道を開くことを手助けする。これが第2プロット。
この嫌味な指導教官を演じているのが、ナントあのサリエリ役を演じていた マーリー・エイブラハム!
主人公がチャレンジする「文学」が「数学」へ変わっているくらいで、二つの映画のプロットの大半と配役構成は、ほぼ「そっくり」なのです。
「小説家を見つけたら」制作年から22年もの時を経て、その間に著作権や(韓国化)翻案権などなど、いろいろ面倒な交渉・調整を経て、映画化権を確立し、韓国独自の色付けをしたものが「不思議の国の数学者」なのだ、と思うのです。
「小説家を見つけたら」には、昔懐かしい俳優が多く出演しています。「フラッシュ・ダンス」の女性主人公の恋人として出演していたマイケル・ヌーリー(Michael Nouri, 1945年12月9日 -アメリカ合衆国の俳優)等などが、懐かしい映像・音楽とともに蘇ってくるのです。良質な映画を味わうときの大きな楽しみの一つですね。
ただ、残念ながら「小説家を見つけたら」のほうはAmazonでも有料です。ぜひ、見比べてほしいものですが、その点が残念です。