俺はよく車に酔う子供だった。
とにかく血圧が低いので、遠足などの時には観光バスの車内独特の匂いにやられてすぐに気持ち悪くなっていた。食道と胃の中間あたりにいつまでもモワモワと漂い続けるあの匂いはなんだったんだろう。
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さて、今回取り上げるのはカルピスソーダの新味となる梅。俺の勝手なイメージで言うとカルピスソーダやカルピスウォーターは「爽やか」の代名詞。CMで言うなら高校生が自転車で流れる汗を拭いながら必死に走るイメージ。更に言うと、その時に「わーっ」とか「好きだーっ」とか叫ぶような、そういう感覚。
そんな爽やかの旗手ともいえるカルピスに梅が足されたのだという。足さなくてもいいのに。
外見からわかるように、色はいたって普通のカルピスだ。実はそんなに変わらないんじゃないかと思い、キャップを開けるとガツンと脳天を貫くような梅の香り。もしくは、台所の床下にある貯蔵庫みたいなスペースの香り。
一口飲んでみると、味は間違いなくカルピスソーダなのに鼻に抜けるのはキツ目の梅の香り。おかげで一気に爽やかさが消えた。
ここまで書いて、ちょっと思い出した。俺の車酔いの原因はバスの臭いもあるが、クラスに必ず一人くらいブルーベリーガムと梅ガムを持ってくる奴がいたことが一番の原因だった様に思う。その中でもブルーベリーガムはまだかろうじて許せるが、梅ガムのだけはアウトだ。あの匂いの破壊力はすさまじいものがあった。ワンストライクでスリーアウトを取っていた。車で言うなら、遠足のおかげでトップまで入っていたギアが色んな意味でバックに入った。
流れる汗を拭いながら「好きだーっ」と叫びながら自転車で走る高校生は、実は梅ガムによる車酔いで気を失った俺が見た幻覚だった。全力でこいだ自転車は目の前のポールにぶつかって180度回転しながらアスファルトに叩きつけられた。そんな、カルピスソーダ。
あと、高校生の頃の自分を思い出してみると、のんべんだらりと3時間目くらいに学校に顔を出して、遅れた理由を聞かれれば、自転車通学でしかも茨城県民にも関わらず「環七が混んでた」とかわけのわからないこと言っていたので、多分俺は人生単位で爽やかさとは無縁なんだと思う。
