先日、祖母が倒れた。

家族が全員仕事で外出していて、帰宅したら廊下で失禁して倒れていた。更に倒れた拍子に足の親指の爪を剥がしてしまったらしく辺りは血だらけになっていた。

祖母は倒れた事でパニックを起こしていて、受け答えもいまいちハッキリしない。だが、祖母は救急車だけは断固拒否するので仕方なく爪の応急処置だけしてその日は祖母を寝かしつけ、翌日病院に連れて行くことになった。

あぁ、ついに来た、と思った。

年齢的なことを考えても、いつこうした事態になってもおかしくはない。ここ数日、ちょっと口数が少なかったりボンヤリしていることが多かったりと、様子がおかしいとは思っていた。

そして今回の事が起きた。あまりにいきなりで、ちょっと急激すぎるけれど、知らない間に病の影が忍び寄っていたのかもしれない。そういうものだろうと自分を納得させるので、その瞬間は精一杯だった。

翌日、掛かり付けの内科医院に連れて行ってMRIを受けさせた。実は爪が剥がれていたにも関わらず全く痛みを感じなかったらしかったことから、きっと何か神経や、最悪脊椎あたりに異常があるものと、キッチリ覚悟を決めていた。

ところが、医者が一言。「異常ねぇなぁ」

更に医者が言うには「我が家の中で一番健康体」なんだそうで、それはそれで安心したのだが、そうなると倒れた原因が全く不明だ。それはあまりに不安なので祖母に倒れる前の話を聞いてみて原因がわかった。

祖母は医者から年齢からくる膝の痛みを緩和させる痛み止めを処方されていた。それは「かなり強い薬だからどうしても痛い時だけ、一日一錠だけ飲め」と渡されていたものだが、祖母はそれを毎食三錠ずつ飲んでいたらしい。

強い痛み止めのような薬には多かれ少なかれ麻薬のような効果がある。

だからこそ用法用量を守って正しく使用することが大事なのだが、祖母はその用量の9倍を服用していたわけで、つまりは薬が効きすぎた、ということだった。更に有り体に言えば、俗に言うところの「キマってた」状態だったらしい。まさかのトリップ。

祖母は基本的に人の言うことを聞かない。耳が悪くて聞き取れないこともあるかもしれないが、たとえ聞こえたとしても端から聞く気がない。

そうした祖母の性格が今回のような大騒動の原因になったんだと祖母には強く言い聞かせたが、そこでまた例の性格が爆発して一言。

「アタシはこうやって生まれて80年間生きてきたんだ!」

一つ言っておくと、うちの祖母は今年で91歳になる。

あらゆる意味で、この期に及んで、しかも家族に向かって11歳もサバをよんだのをみて、あぁ元に戻ったと安心した。うちの祖母はそういう人だ。