俺が住んでいる家は母親の実家で昔ながらの日本家屋だ。

気象庁の官僚だった今は亡き祖父が大昔に建てた家を昔あった九龍城のように改装と増築を繰り返し、今でも昔の面影を残しつつ現代的に暮らしやすい形になっている。俺は顔も見たことのない祖父だが、祖父の遺してくれた家からいい人だったんだろうということが何となく伝わってくる。

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もう結構前の話になるが、改装と増築を繰り返している我が家で、一番最後に改装したのが風呂とトイレだった。

以前の風呂はタイルにヒビが入り、たまに虫が入ってきたりするような感じで、トイレは何故か和式と洋式が一つずつの計二つあった。平屋なのに。その和式の方は祖母が独占的に使っていたが、さすがにトイレが二つもあるのは意味がわからないということでトイレを一つにして、風呂を少し広くとろうということになった。

祖母はこの決定に猛反対した。理由は「足が悪いから洋式トイレは使えない」。足が悪いなら尚更洋式を使えってことで、当然この意味不明な主張は却下され、工事が始まった。

この段階になってもまだぶつくさと文句をいう祖母を尻目にどんどん工事は進み、ついに新しい風呂とトイレが出来上がった。キレイな風呂にシャワー付きトイレ。素晴らしい出来に俺達は喜んでいたが、祖母は不満げな態度。いまだに「洋式トイレは使えない」とか言ってる。

そしてついに「自分用の簡易トイレを買ってくれ」とまで言い始めた。

しょうがない。家が新しくなって機嫌がよかったのと、多分放っておくといつまででも言いそうな気がしたので介護用のトイレを買うことになったのだった。

近所の介護用品を売っている店を訪ね、店員と相談しつつ選んだちょっといいトイレを買って帰ると祖母は大喜びで、今もそのトイレを愛用している。

ただ、ちょっと気になることがある。

俺が買ってきた介護用のトイレ、和式の介護用トイレなんてあるわけもなく、結局洋式を買ってきたんだがよかったんだろうか。

歪む和式と洋式の概念。