①吉保の生い立ちの巻

② 隆光易占

③ お歌合わせ

④ 采女探し

⑤采女の巻

⑥ 刀屋の巻

⑦ 将軍饗応

⑧ 浅妻舟

⑨ 白菊金五郎(上)

⑩ 白菊金五郎(下)

11 隆光の逆祈り

12 光圀公・淀屋との出会い

13 藤井紋太夫お手討ち

14 河村瑞軒

15 徂徠豆腐

16 葛の一壺


昨日12月8日はあの柳沢吉保が亡くなった日、ご命日なんだそうです。つづきは、白菊金五郎


◇ 白菊金五郎(上)

江戸の元禄のある秋のこと。向島の土手を踊りの師匠の小菊、八百石の中堅クラスの旗本、壺井帯刀の次男の金五が歩いている。

抜けるような美男・美女である。二人ともほろ酔い気分で千鳥足である。秋葉神社の傍らで、沢田源十郎、入江八九郎、小林惣七の三人が、この小菊と金五を襲う。

理由はごく詰まらぬ事で、二人の仲が良くなった事を沢田が嫉妬の上の逆恨みである。小菊は斬られ、続いて金五はチャリンチャリンと三人とやり合う。

そこを通りかかったのが、十七万石の老中、柳沢吉保とお供の曽根権太夫である。美濃守の命で権太夫が金五に加勢をし、沢田と小林は斬られ、入江はその場を逃げ出す。

金五は両手を付いて礼をいう。絶命した小菊は懇ろに弔った。金五は仏間に閉じこもって毎日供養をする。


逃げ出した入江の家はお取り潰しになったが、壺井の家はそのままである。これでは喧嘩両成敗ということにならないが、すべては柳沢の計らいであった。

金五はこの柳沢への恩をいつの日か一生掛かっても返さなければと思っている。そして柳沢には、しばらく絶えている大老に自分がなりたいという野心がある。

しかし邪魔になるのが、彦根藩の藩主、井伊掃部守直興で、なんとか取り退きたいと常々思っている。この野望を察したのが、勘のいい金五。柳沢のために掃部守の暗殺を考える。


金五は、酒、女、バクチと放蕩を重ね、壺井の家から勘当されるがこれはわざとである。金五は神田お玉ヶ池で人入れ稼業をしている元壺井家の家臣、上総屋吉兵衛の世話を受ける。

やがて遊び人と成った金五は背中一面に菊の彫り物を入れる。色が白いので、白菊金五郎と通り名で呼ばれるようになる。



◇白菊金五郎(下)

年が明けて正月になり、金五は柳沢の屋敷を訪れる。二十四日は二代将軍・秀忠公の命日で、芝・増上寺に井伊掃部守が代参に訪れるので、そこで命を狙えといわれ、短刀を受け取る。

芝・増上寺に池上了山という坊主がいる。仏門に仕えているくせにバクチをするという悪坊主である。金五は、了山にバクチで拵えた百両の借金を棒引きにする、さらには品川の遊女屋で遊ばせてくれると言う。

その代わりに二十四日の日に増上寺の御霊屋を見たいと金五は頼む。ご代参のある日は番人でさえ近寄ることは出来ないと了山は断るが、なんとか見たいと金五は懇願する。二十三日の夜に訪れるということで決着は着いた。

正月二十三日の夜、塀を越えて金五は増上寺に忍び込む。番人小屋では了山が待っていた。これを着れば怪しまれないだろうと、金五に掃除人足の法被を着せる。

二人は酒を飲み、了山は寝てしまう。起きると金五がいない。あまりに取り締まりが厳重なので怖くなって暗殺は諦めて逃げたのだろうと思う了山。

朝になり、増上寺を訪れた井伊掃部守は本堂にて法要に列席し、その後二人の家来を従えて御霊屋へ参詣する。手水鉢の傍らに隠れていた金五は刀を持って飛び出す。掃部守に斬りかかろうとすが、間一髪❗️家来の者は斬られながらも、金五を捕り押さえる。


暗殺失敗❣️


金五は掃部守の屋敷の庭先に連れてこられたところで、舌を噛み切って死ぬ。金五が持っていた刀から、暗殺の黒幕は柳沢であると知る掃部守であった。