①吉保の生い立ちの巻
② 隆光易占
③ お歌合わせ
④ 采女探し
⑤采女の巻
⑥ 刀屋の巻
⑦ 将軍饗応
⑧ 浅妻舟
⑨ 白菊金五郎(上)
⑩ 白菊金五郎(下)
11 隆光の逆祈り
12 光圀公・淀屋との出会い
13 藤井紋太夫お手討ち
14 河村瑞軒
15 徂徠豆腐
16 葛の一壺
12月8日はあの柳沢吉保が亡くなった日、ご命日なんだそうです。つづきは、抜き読みもある第三話"お歌合わせ"からです。
◇ お歌合わせ
弥太郎は、或る日の昼過ぎに牧野備後守の屋敷に呼ばれて、相談を受ける。その相談とは…、桂昌院の歌会にお呼ばれしているが、お題の歌が全く思い浮かばないと言うのである。
そしてそのお題とは「ひとり寝の別れ」である。
分かりました考えてみましょう、と安請け合いでお題を持ち帰った弥太郎だったが、元より詩歌の才はカラっきしである。仕方ないので女房のおさめに相談してみると、
京生まれ京育ちのおさめは、詩歌の素養が十二分に備わっており、サラサラとお題を汲んだ歌を詠み上げる。
小夜更けて 夜半(よわ)の 灯消えぬれば
我が影だにも 別れぬるかな
この歌は「夜一人で部屋にいて灯りを灯していた。その灯りに照らされて自分の影が障子にうつっている。灯りを消してその影とも別れた」こういう意である。
さぁ、いたく感動した備後守は、さも自身の自信作と言わんばかりに、桂昌院の歌会で披露すると、桂昌院がこれにいたく感激して、あれこれと質問責めに…、耐えかねた備後守は、柳沢弥太郎が詠んだ歌だと白状する。
そんな事は露ぞ知らぬ弥太郎。桂昌院が褒美を取らせるからと、牧野備後守に言われて喜び勇んで駆け付けるが、桂昌院からは和歌の先生に成れと請われて窮した弥太郎、実は…と、妻おさめが詠んだ歌であると白状します。
こう言う経緯で、翌日、おさめは桂昌院の前に召される。そこで桂昌院が出すお題に、おさめは何一つ臆する様子なく、つらつらと全て返答しお題に添った歌を詠み上げる。
桂昌院はいたくおさめを気に入るのである。そして両人はとも京の都の出身であるが故に、通じるものも多く、お互いに話が合い、桂昌院はお染を大いに気に入る。一方弥太郎は、これを足掛かりに桂昌院の子である五代将軍・綱吉公との関係を深め、得意の弁舌と社交術でもって出世の階段を駆け上がっていく。
◇ 采女探し〜采女の巻
五代将軍綱吉は男色の気があって小姓ばかりに興味があり、正室の信子には手を付けようとしない。この時代の侍は、男色好色両刀のバイセクシャルが普通だが…綱吉は男専門❣️
これでは将軍家にお世継ぎとなる子ができないとは一大事。母親の桂昌院も大変気にかけていた。側用人の牧野備後守から相談を受けた貧乏旗本、柳沢弥太郎は一計を案じた。
その計略とは京へ向かい、一見男性と見えるが絶世の美女である者を探し出し、小姓の装いをさせ綱吉にあてがおうとする。宝塚の男役みたいな女性探しに京に向かう弥太郎‼️
そして探し出したのが采女(うねめ)という女。弥太郎は、その采女を自分の養女にして、娘と言う態で江戸へと連れて帰った。
さて、計略通り酒宴の席で綱吉は小姓姿の采女に興味を持ち、手を付けようとしたがすぐに女性だと分かる。弥太郎めぇ❗️ 謀りおって、と怒り心頭の綱吉。
この窮地を弥太郎、しかしこれは一向に女性に関心を向けない綱吉への、桂昌院の思し召しだと母の子への愛だと説得し、母親孝行の綱吉は結局采女に手を付けたのでした。
いつしか綱吉は采女に夢中にな理、采女は正室である信子も相手にするように綱吉を諭す。言葉に従って綱吉は、信子の元にも通うことになる。やがて采女は懐妊する。
将軍は喜び、采女の義父弥太郎は二千五百石のご加増になり、立派な旗本となります。軈てお子様、徳松君が誕生になると一万七千石に加増となり大名となるのです。
そして今度は御台様も懐妊になり、姫様が誕生する。弥太郎は三万七千五百石、武蔵国川越の城主、柳沢出羽守吉保となり老中職にまで出世する。
◇ 刀屋の巻
結局、徳松君は3歳で亡くなり、後を追うように采女の方も亡くなる。我が子と最愛の采女の方を失い、綱吉公の御落胆は並々ではない。
柳沢も出世の手掛かりを失い、人生最大のピンチを迎えるが…、お側用人牧野備後守は采女に代わる綱吉公を元気づけるような女性をまた探してほしいと、柳沢出羽守に依頼して来る。
そんな折り、芝の三島町の裏店に荒浜次郎右衛門という芸州広島の浪人がいる。手習いの師匠をしていたが、今は中風に罹り苦しんでいる。
妻を「おしん」、娘は十八歳で「おたか」といい、三島町小町と呼ばれている美人だ。年の暮れで廿両の金が要るという。おたかは自分を吉原に売ってくれと両親に言う。
さて、近くに住む荒物屋の市兵衛は元・女衒で、おたかを吉原に売る世話をして欲しいと頼む。しかし、父親の次郎右衛門が娘の身売りを許さない。
その代わりに先祖伝来の名刀を売って金を拵えて貰いたいと言う。
刀は市兵衛が預かり、友達の刀屋、権兵衛に見せる。この刀は藤六左近将監国綱(とうろくさこんしょうげんくにつな)の鍛えた刀だと権兵衛はいう。市兵衛が事情を話すと、権兵衛は丗五両を無利息、ある時払いの催促なしで貸そうという。
この話を隣に住む、柳沢吉保の腹心、曽根権太夫の耳に入る。丗五両の金で刀を受けだす。次郎右衛門と話をつけ、おたかを吉保の養女にもらい、采女に代わって五代将軍綱吉の側室となるのである。