初めて、鈴本演芸場で幕見をしました。新宿末廣亭は何度も幕見していますが、3000円が半額になる末廣に対し、鈴本は2000円取るから微妙なんですよねぇ〜。


それでも、流石に昼・夜通しで鈴本演芸場の椅子に座りっ放しは、体力を奪われるので、夜は幕見。どうしても、10月の文菊師匠の『鰍沢』と、雲助師匠の『鰍沢』を比べたくて幕見で足を運びました。


そんな訳で昼の部が16時丁度にハネて、久しぶりにチェーン店以外の蕎麦屋へ行き、日本酒、海苔、蕎麦味噌を舐めながら、〆にセイロを一枚手繰り、二時間半繋ぎまして、

丁度、1830分頃に涼しい風に、酔いを奪われながら、鈴本へとフラッカ!フラッカ!歩きますと、幕見客を入れる仲入りには、まだ、20分近く余裕なのに56人が並んでいる。

慌てて、私も列の最後尾に並ぶと、私の後からも、1人、又、1人と列は伸びて、1850分過ぎに幕見客を中へ招き入れた時には20人くらいの列になっていました。


そんな幕見で中へと入るとガラガラ。五十人がやっと。平日、火曜日の夜。人間国宝の五街道雲助が『鰍沢』をやるのに淋しい限りだと、喬太郎の昼の部を思い出す。


【仲入り後】


・風藤松原 「漫才」

『エンタの神様』『オンエアバトル』でも活躍した風藤松原。当時は吉本興業の芸人でしたが、色々ありまして、コロナ禍に太田プロに移籍して、落語協会では橘家文蔵一門入りし、寄席に2021年より活動中です。


・馬石 「鮑のし」

馬石師匠の甚兵衛さんが、実に、味のあるフラで演じられて、正直者だが間抜けな脱力感で、与太郎とは似て非なる所が出ていて大好きです。


・小春 「粋曲」

ちょっとばかり真面目過ぎて、遊びが欲しい小春さん。都々逸も、時には廻して欲しいと思います。


・雲助 「鰍沢」

圓朝が拵えた三題噺とも、イヤ、河竹黙阿弥の芝居狂言だ!とも言われております『鰍沢』と、簡単に諸説に触れ、法華、身延山、池上本門寺にと触れて本編へ。
















雪に遭難する旅人、南無妙法蓮華経のお題目が、次第に細く弱くなる演出が、旅人の心細い様子が見えて素晴らしい。

兎に角、お熊月ノ兎花魁のツン・デレからの戻り遊女に早変わりな所が、人間国宝の演技で、やっぱり一月前に観た文菊さんの芸は、若いと!思い知らされます。


先の写真だけ見せると、『二番煎じ』も見えるらしいが、ラス前の13枚目写真は、鉄砲を構える雲さんです。


そして、旅人目線が、熊蔵丸屋の月ノ兎花魁と知れた瞬間、物語の目線がお熊に移るのが、人間国宝の技で、文菊さんは旅人を引っ張る演技で、熊の膏薬、薬売りの旦那登場から目線が移ります。

コレねぇ、細かい違いですが、旅人からお熊に、ワンテンポ早く切り替える事で、最後のチェイスが、映画の場面の様に切替わり、最後の最後に、旅人目線に戻ります。


そして、調べたのですが、雲助師匠が、四十代・厄年くらいに、落語研究会の京須さんが編集した映像や、その後、キントトレーベルからの『鰍沢』は普通に終わりますが、

2001年過ぎ、二十一世紀の五街道雲助師匠は、『お富與三郎』『緑林門松竹』などの〆場面を、芝居科白にして、ハメ事をやる、芝居仕立てです。

この鰍沢も、芝居科白の〆が炸裂し、人間国宝らしい終わり方になります。素晴らしいチョキの拍子木と、三味線、太鼓。実に芝居の雰囲気で

旅人が、丸太一本で中洲溜まりに流れ着き、お熊の火縄銃弾を背中から浴びて、髷ではなく、肩をかすめて銃弾は岩を貫く!!


チョン!チョン!ドドン、ドン。


南無妙法蓮華経!


はては、助かりしぃ〜、はぁ〜、思いがけなき雪の夜に、身素知らぬ


メモ、正しいのか?ここまでが限界で、芝居の国宝っぽく、五街道雲助師匠の芝居仕立てが炸裂しました。


文菊さんのとは、確かに、次元の異なる『鰍沢』。幕見で申し訳ない。あと、仲蔵は多分、幕見でごめんなさい。