貞鏡勉強会と呼んでの会は、貞鏡さんの産休前から横浜にぎわい座(のげシャーレ)で三、四年ばかり続いていましたが、
師匠であり実父の八代目貞山先生が没してからは、此の副題が付いて二回と成ります。そして、今回の演目は下記の三席でした。
1.鼓ヶ滝
マクラでは、今回の勉強会も前売り完売だったと感謝を口にする貞鏡さん。昨年末の芸術祭で新人賞を頂戴した事を大変喜んでおられました。
また、十月に真打昇進が内定した事も報告されて、二度の産休とコロナ禍で二年ばかり遅れて仕舞いましたが貞鏡さん!真打昇進、おめでとう㊗️御座います。🎊🎉
貞鏡さんの大好きなネタで、十八番中の十八番と呼んでも差し支えないネタです。私は過去に四回聴いていて、コレが五回目になります。
大阪の四代目旭堂南陵先生から稽古を受けた噺だそうで、毎回、「西行は足が棒になり、棒に成った足を杖に山から下りました!」
と言うギャグが、南陵先生オリジナルで、是は南陵先生直伝だ!と、言って笑いを誘うのがお決まりの展開です。
遥々と鼓ヶ滝へ来て見れば
澤邊に咲きし たんぽぽの花
と、西行が詠んだ歌が、三人の和歌仙人に添削されて、
音に聞く鼓ヶ滝を打ち見れば
澤邊に咲くや 白百合の花
と、歌が生まれ変わると謂うお噺で、私は此の噺は、神田蘭先生、六代神田伯山先生(松之丞時代)、そして落語で林家正雀師匠で聴いております。
確か、五代目圓楽師匠も、この噺をやられた様に記憶します。
2.昇天の龍
この左甚五郎の噺は、甚五郎の噺の中でも珍しい噺で、上野寛永寺に三代将軍家光が、鐘撞堂を建立する事になり、東西南北四本の柱に名工を集めて昇龍の彫物細工を施す事になる。
三代家光のお気に入り、智恵伊豆こと松平伊豆守が此の名人選びの命を受け、難波生まれで吉兵衛、野州佐野の伝兵衛、江戸神田皆川町の源太郎の三人は、伊豆守は直ぐに決めたが、
残る一人が決まらず困る。其れを見た将軍家光は、困った時は物知り老人の意見を聴いてみなさいと謂われて、大久保彦左衛門に相談すると、飛騨の匠、左甚五郎を推薦される。
こうして、四人の名工が競い合う形で、昇天する龍の彫物比べとなるのだが…、甚五郎の噺らしく、寛永寺の龍も魂が宿り動く様になりますが、鼠や水仙、大黒とは違って、
龍は動くと人々が難儀するから、他の噺と異なり、と謂うかぁ?此の噺の甚五郎は、楔を打ち込んで龍が夜な夜な動かない様にして、めでたし!めでたし!となる。
3.天野屋利兵衛は漢で御座る!!
此の噺を貞鏡さんで聴くのはお初でした。映画やドラマの『忠臣蔵』で有名な「天野屋利兵衛」のお噺です。
ただ、導入部分の利兵衛が浅野内匠頭や大石内蔵助に厚く『議』を感じる設定エピソードが、弱い様に感じるのと、
クライマックスの大阪城代のお白洲の場面も、政談としての迫力が今一つ物足らないと感じました。
まんまの展開、科白では映画やドラマの様には行かない。『大忠臣』の天野屋利兵衛を参考に大胆に変えても面白いと感じる一席でした。