約一月半を掛けて『侠客 業平文治』を読んで参りました。業平文治こと高濱文治郎の備前國岡山での事件、江戸へ来てから漢を売り出すまでの物語、
並びに、兄の事件から父の自害と母親の東下り、そして再度、業平文治から高濱文治郎へと戻るまでの経緯と、最後は次回作『侠客 その後の業平文治』への布石、
服部平太夫と謂う悪役の登場までゞ『侠客 業平文治』としては大団円を迎えます。物語は圓朝作品である『業平文治漂流奇談』にインスパイアはされているが、
全く異なるエピソードで御座いまして、圓朝の『漂流奇談』に比べると、事件の複雑さ人間模様の深みと謂う点が、薄っペラでは御座いますが、
壱の子分、立川ノ岩松と其の父親、岩蔵のキャラクターや、武士の内儀で文治(文治郎)の母、お峰の性格などは、三代目玉田玉秀斎の生み出す登場人物の講釈らしい人物像で私は気に入りました。
そして圓朝の『漂流奇談』も此の『侠客』もですが、清水次郎長や國定忠治より侠客傳の色合いよりも、武士の生活や侍の心理描写が多くて啖呵が全面に打ち出す感じじゃありません。
続編はどうなのか?!今から興味は湧くのでは御座いますが…、其れは此の後、じっくり年内にお届けすると致しまして、
次回は、此の『侠客 その後の業平文治』と平行して、読みたい!読みたい!と、以前から思いながら後回しにして来た、時代がやや遡る、『陰陽奇談 安倍晴明』もお届けします。