東映YouTubeチャンネルの登録20万人突破記念の四週連続、千恵蔵の清水次郎長シリーズを〆るのは、昭和35年の正月映画で、この年の興行成績1位作品がこの『勢揃い 東海道』です。
◇勢揃い東海道
【キャスト】
・片岡千恵蔵:清水次郎長
・久保菜穂子:お蝶
・高田浩吉:大政
・加賀邦男:小政
・北大路欣也:桶屋の鬼吉
・堺駿二:美保ノ豚松
・加藤浩:お相撲常
・尾上鯉之助:増川屋仙右衛門
・伏見扇太郎:追分ノ三五郎
・中村錦司:房五郎
・有川正治:法印大五郎
・藤本秀夫:大野ノ鶴吉
・香月涼二:三保ノ松五郎
・丘路千:伊達ノ五郎
・田中亮三:石尾ノ重吉
・大里健太郎:矢部ノ清吉
・疋田圀男:貴妙院常五郎
・岡郁夫:行栗ノ初五郎)
・大川橋蔵:吉良ノ仁吉
・美空ひばり:お新
・大友柳太朗:松坂ノ清次
・松方弘樹:乙女ノ大八
・里見浩太朗:沼津ノ巳之吉
・河原崎長一郎:神戸ノ長吉
・近衛十四郎:身受山鎌太郎
・東千代之介:寺津ノ間之助
・中村錦之助:大前田英次郎
・丘さとみ:光駒
・松浦築枝:お松
・桜町弘子:おすず
・山形勲:安濃徳次郎(安濃徳)
・原健策:鈴鹿ノ弥助
・中村時之介:小俣ノ紋三
・月形哲之介:河原田ノ岩辰
・浅野光哉:笠取りノ助五郎
・尾形伸之介:勘六
・戸上城太郎:角井門之助
・月形龍之介:黒駒ノ勝蔵
・阿波地大輔:針割りノ幸助
・河村満和:萩原ノ市松
・近江雄二郎:荒川ノ太三郎
・晴賀俊介:大岩
・市川歌右衛門:山岡鉄舟
物語は、三代目伯山の『血煙 荒神山』をベースに少し設定を変えてオリジナルの台本に仕上げてありまして、
如何にも幕末と言う匂いを出しながら、歌右衛門先生が山岡鉄舟を演じて、次郎長(千恵蔵)と絡んで行くのですが、
旗本・山岡鉄太郎と言うより、額に向こう傷の無い早乙女主水介みたいな雰囲気がある旗本退屈男的な山岡鉄舟です。
そして、この作品から次の清水次郎長役の鶴田浩二の次郎長シリーズで活躍する、松方弘樹が黒駒ノ勝蔵の密偵(スパイ)乙女ノ大八役、
又、後半のストーリーのキーマンである次郎長の子分ではお馴染みの桶屋ノ鬼吉役を、歌右衛門先生の実子、北大路欣也が演じています。
物語の前半の主人公は、大川橋蔵演じる吉良ノ仁吉で、女房はお禧久、安濃徳次郎の妹と言う設定ではなく、安濃徳の娘、お新として美空ひばりが演じます。
美空ひばりの時代劇は、背が低いから実に宜しいと感じます。あの養子の息子が155センチと身長を言っていましたが、もっと小さく感じます。
そして、安濃徳次郎(安濃徳)には山形勲!そのケツ持ち、バックで是を操る悪い奴、黒駒ノ勝蔵には月形龍之介です。ただ、この作品には進藤栄太郎と吉田良夫が出ていません。
また、大政役は往年の二枚目、高田浩吉先生が演じているのですが、イマイチ活躍が少なくて、荒神山で仁吉の最期を見取る場面だけです。
あと仁吉とお新夫婦にまだ赤ん坊の息子が居て、次郎長が名付け親と言う設定で、一作目以来のお蝶が登場して、久保菜穂子が演じます。
尚、荒神山の争いの発端となる安濃徳にお会式博打を行う荒神山の賭場を奪われる神部ノ長吉役は若き日の河原崎長一郎です。
一方、相変わらず大友柳太朗先生は、安濃徳一家の代貸、松坂ノ清次という安濃徳に意見して荒神山から手を引けと謂って、自ら親分子分の盃を水に流し、
亭主の仁吉を殺されたお新を不憫に思って、次郎長に掛け合って、お新と息子が母一人子一人で清水湊で暮らせるようにしてやる人情一杯の役所です。
ただ、やっぱり千恵蔵、歌右衛門映画では殺陣には入れて貰えず、遂に、この松坂ノ清次役での殺陣のシーンは皆無で、長ドスを抜くシーンすら有りません。
あと、中村錦之助が、大前田英次郎という上州の主領(ドン)大前田英五郎の実子、若親分役で登場しますが、ピストルを使い殺陣をやります。
しかも、リボルバーらしい連発銃なのですが、外見はなぜか?火縄銃っぽくて変な感じがいたします。
また、東千代之介の寺津ノ間之助役は本当に出番が少しだけで、やはり、吉良ノ長吉を演じた大川橋蔵とはえらい違いです。
尚、今回は里見浩太朗も無宿渡世から足を洗い親の店を継ぐ料理人役、沼津ノ巳之吉なんで出番は少ないけど、唄を聴かせる場面があり、
その唄に合わせて、堺俊二さんがカッポレを踊るのですが、実に玄人肌でこれぞ!芸人と謂う技を披露します。
そしてラストシーンは荒神山が舞台だから、夕日が沈む伊勢の夫婦岩と、次郎長と山岡鉄舟が日本の夜明けは近い!と、鞍馬天狗な場面で終わります。
此の映画は、千恵蔵先生と歌右衛門先生の絡む場面が多くて、だんだん、映画が斜陽になりつつあり、意地を張ってられないのが分かります。
アッそうそう、身受山鎌太郎を近衛十四郎が演じますが、三代目伯山の原作では、森ノ石松が殺される事件の原因となる初代お蝶の香典を預ける役で、
近江の栗東、草津を縄張りにしている若い東海道の売り出し中の親分ですが、この映画の鎌太郎は鈴鹿峠の重鎮の親分として登場します。
そうだ、この映画でも原作とは異なり安濃徳も黒駒ノ勝蔵も、最期は清水次郎長から斬り殺されて仕舞います。