既に、この連続ドラマも半分を過ぎまして、赤穂浪士の目的も、吉良邸討入り!ただ一つと絞られたのですが、
このドラマ、三十話を過ぎて、恐ろしいくらいのダレ場に突入致します。
つまり、前回ネタ振りをした天野屋利兵衛の武器調達噺も、その続きの『天野屋利兵衛は、男で御座る!』の噺を期待して観たのですが。。。違いました。
まずは、本傳の方の物語です。大石内蔵助は、一旦は『清書』に血判を押した同志面々に、真意を確かめる必要が有ると、強く感じていた。
そこで内蔵助は、『清書』に血判した大石家の身内、父方の叔父である小山源五右衛門と、娘・おゆう、そしておゆうの夫の潮田又之丞を山科へ読んで、その事を相談した。
さて、先ず小山源五右衛門役には北竜二さん。この作品の時が、六十六歳で、翌年に亡くなるんですね。
北さん、実に紳士でダンディーです。科白も如何にも明治の武骨者と言う感じで威厳があります。
一方、義理の息子、娘婿の潮田又之丞は、横森久さん。横森さんは悪役で、知能犯の悪代官や悪徳家老の役が殆どでしたが、
この『大忠臣蔵』では、赤穂四十七士の潮田又之丞役です。
最後に、潮田又之丞の内儀、おゆう役は島かおりさんが演じていて、このドラマ当時は二十五歳です。
そして、島さんと言えば、時代劇も偶に出ていましたが、兎に角、昼メロの主演女優の印象で、特に花王・愛の劇場に代表される悲劇のヒロイン女優でした。
今でも時々、お婆さん役で見掛けると、懐かしくなります。
内蔵助が討入りへの同志面々の意思確認方法を思案していると、江戸表から安芸の浅野本家へ移送される浅野大學が大石邸を訪ねる。
大學は、赤穂義士が討入りをすると、安芸に居る自身に迄、切腹の沙汰があるやも知れぬ由え、討入りは止めろ!と、命令しますが、
内蔵助は「貴方は、我々の主君ではない!」と、大學からの干渉を退けます。
併し、芸州浅野本家のお船手奉行、四百石取りの進藤源四郎は、内蔵助の母方の大叔父に当たるが、万一、公儀に叛いて吉良へ赤穂浪士が討入れば、
浅野本家にも、罰の類が及ぶ事を恐れて、『清書』血判者の名前を、赤穂義士の親友、小山源五右衛門から聴き出して、
大石内蔵助が、『清書』への血判の気持ちに変わり無い事を同志に確認する前に、先手を打ち討入りに参加しないよう、働き掛けて脱落者を増やす根回しを行うのだった。
さて、この進藤源四郎役は、玉川伊佐男さんが演じていて、玉川さんは時代劇と刑事ドラマに能く出ていました。
この進藤源四郎もそうですが、苦虫を噛み潰した様な頑固な武士が似合う役者さんで、基本的に演じるのは武士ですよねぇ〜。存在感の有る役者でしす。
さて、此の進藤源四郎の思わぬ行動に、同志の名前を不用意に教えた小山源五右衛門は、驚いた。そして、既に手遅れで、内蔵助に対して済まない気持ちで一杯になる。
一層、責任を取る意味で腹を切る事も考えたが、『清書』からの脱盟を、大石内蔵助に告げて、生きる道を選ぶのである。
併し、この事実を知った娘婿の潮田又之丞は怒った。そして、身重の内儀、おゆうを離縁し、一人だけ討入りへの意思を大石内蔵助に告げるのでした。
親戚身内である小山源五右衛門の脱盟は、少なからず、大石内蔵助にショックを与えたが、内蔵助は、原惣右衛門と勝田新左衛門に命じて、
予め『清書』の解消を先に告げて、血判の破棄に異を唱え激しく怒りを露わに反対する者だけを、新たに討入りに加えよと言う。
結局、百二十人近く居た義盟の血判者は、最終的に五十人程度になりますが、この後、二度目の『清書』に参加する面々は、強い絆が生まれ、是が討入り成功のカギだったのかも知れません。
さて、此の後、浅野内匠頭の菩提を京都での葬いを頼んだ瑞光院の戒首座和尚から、強すぎる殺気を戒められて、断食の業を十四日行う事になり、
その断食明けの体力が無くなった所を狙い、柳生黒鍬衆からの刺客、覚雲と言う僧侶に化けた資格が、六人の部下を連れて内蔵助を襲います。
此の刺客の僧侶、覚雲を演じるのは、天本英世さん。天本さんと言えば、私たち世代は仮面ライダーの死神博士です。
反政府の思想家であり、日頃からブーツにマントと言う出立ちで、非常におどろおどろしい雰囲気の役者さんです。
さて、その天本英世さん演じる覚雲が七人の刺客で大石内蔵助を襲いますが、無の境地に居た内蔵助は、たった七振りの刀で、七人の刺客を斬り捨てて仕舞います。
一方、江戸に戻った堀部安兵衛は、討入り迄の準備の分担を江戸に現在居る十数人のメンバーに割り振る必要に迫られていた。
大雑把には、隠密対策を神崎輿五郎をリーダーにしたチームが担い、討入の道具一式は大石内蔵助が、大高源五と共に江戸表に持ち込む手筈ですが、
其れ以外の吉良邸の探索と、京・大坂からの同志の受け入れ、及び相互の資金の融通と調達は、堀部安兵衛に一任されていた。
其処で、安兵衛は八月十二日の両国の花火大会に目を付けて、このどさくさに紛れて、赤穂浪士の会合を計画します。
この会合の準備に加わった江戸の同志は、堀部安兵衛(渡哲也)と内儀・幸(赤座美代子)夫婦、茅野和助(島田順司)、
竹林唯七(砂塚秀夫)、近松勘六(工藤堅太郎)そして前原伊助(若林豪)である。特に、この両国花火の回は、若林豪の前原伊助が活躍致します。
まず、会合の場所が問題です。相変わらず、公儀の柳沢吉保(神山繁)から命令を受けた、加倉井林蔵(高松英郎)の隠密と、
上杉家の千坂兵部(丹波哲郎)とお蘭(上月晃)の隠密、更には吉良側の警備を担当する上野介の用人・松原多仲(神田隆)、
そして、その実質警護の責任者であり、元上杉浪人の大須賀治部右衛門(睦五朗)が、堀部安兵衛達の周りを嗅ぎ回っております。
そんな中、若林豪さんの前原伊助は、両国で花火を上げる鍵屋市兵衛とは、以前からの知り合いである事を利用して、
鍵屋に、花火大会当日、花火を打ち上げる船を利用しての会合の場所提供をお願い致します。すると、鍵屋は此れを快諾。
赤穂浪士の江戸会合に、赤穂の城、刈谷城を模して造った巨大な仕掛け花火の模型の城の中を提供すると提案致します。
其処で、安兵衛と妻の幸は、ダミーの会合場所として、船宿に屋形船を予約するのですが、加倉井林蔵も、お蘭も、是はダミーで、鍵屋の花火の打上船が本丸と、直ぐに見抜きます。
何んとも間抜けで、杜撰な江戸の赤穂浪士で御座いまして、隠密の裏を掻きに行くのですが、武士のアバウトな所行に、作戦の意図が直ぐに相手にバレて仕舞います。
さて、この鍵屋市兵衛を演じるのが田崎潤さん。田崎さんは三船さんの大親友で、この両国花火の回は、三船敏郎さんのプライベートで親しい出演者を集めた回である。
田崎さんと三船さんは、大の呑み友達で、田崎さんが、成城に家を建てた時、新築祝いに呼ばれた三船さんが、
「何んで、あんな奴を呼ぶ!」「何んで、あいつを呼ばない!」と怒り出し、田崎さんと喧嘩に成ったらしい。
子供みないな言い合いをするから、周囲は放置していたが、突然、三船さんは、田崎さんの新築の家から飛び出し、帰宅して仕舞う。
暫くすると、明らかに飲酒運転で、自家用車で田崎邸に乗り込んで来た三船さん、『お前の様な奴には、討入りだ!!』と、叫びピストルを三発乱射して去って行ったそうです。
まぁ、昭和30年代頃なんで、武勇伝で片付けられたようですが、今では信じられないような伝説で、その位、田崎さんと三船さんは親しかったようです。
また、この鍵屋に十四、五歳の宜く働く少年が居て、名を定太郎と申します。定太郎は、花火職人の狭い作業小屋で、槍を振り回し、花火に槍先が当たると爆発するからと、親方の市兵衛にコッ酷く叱られます。
其れを観た槍の名手である前原伊助は、その子が使う槍が、あの肥前平戸の鎮信流であると、直ぐに気付きます。
鎮信流槍術とは現在の長崎県平戸市を本拠としていました旧肥前平戸藩の藩主、松浦家に伝わる武家-大名茶道の一派であります。
流祖は松浦家二十九代の当主、松浦鎮信であります。
それ以降、当代の四十一代松浦宏月の代に至るまで松浦家各代の当主により継承されております。
そんな平戸藩にあって、鎮信公の信頼も厚い槍術指南役が、上坂鉄舟斎であり、此の定太郎は、鉄舟斎の倅だと言います。
そして、定太郎から「父をご存知ですか?!」と、訊かれて、前原伊助は「武者修行で日本六十余州を廻りし折に、鉄舟斎先生から手解きを受けた事がある。」
と、答えますが、実は、荒木新左衛門と伊助が偽名を使い武者修行していた三年前、肥前平戸で一対一の真剣勝負で、討ち果たしたのが上坂鉄舟斎だったのである。
其れ由え、定太郎は、姉の小雪と二人で肥前平戸から親の仇討ちの為に、荒木新左衛門を探して、九州、四国、中国、近畿、中部、北陸と旅をして、此処、江戸に流れ着いたと申します。
そして、三年の長旅で姉の小雪は、病に倒れて寝た切りで、其れを定太郎が鍵屋で働き、支えていると知った前原伊助。
直ぐに、定太郎と小雪を、汚い長屋から堀部安兵衛の家へ移し、医者の手配をして、小雪を医者に見せると、単なる長旅の過労だから、栄養の付く物を食べさせれば治ると言われ安堵します。
さて、この定太郎役は、中村光輝と名乗っていた青年時代の歌舞伎役者、三代中村又五郎丈です。
又五郎さんは、中村光輝時代に、NHKの大河ドラマなど、テレビにも出られて居たから、宜く覚えています。
私はほぼ同世代で、又五郎丈が私より五歳くらい年上だから、このドラマの時は、十四、五歳だと思います。正に、定太郎と同じ位の年齢です。
また、定太郎の姉、小雪を演じているのが、北川美佳さん、後の喜多川美佳さんです。そうです、数年前に、高橋ジョージとモラハラ離婚した三船美佳の母上です。
このドラマの時は、二十二、三歳ですから、三船さんの愛人では有ったと思います。まだ、美佳さんは生まれていないので、事実婚状態では無いと思いますが。。。
因みに、美佳さんの名前は、北川さんの芸名から付けたと、『徹子の部屋』で仰っておりました。
田崎潤さんといい、この北川美佳さんといい、三船敏郎の力で入れた配役陣も、それなりに活躍する回が御座います。
ただ、馴染まないキャスティングでは在りません。ちゃんと、役に見合う役者は配置されております。
其れに、公開当時、田崎潤さんは三船さんの親友だとは知れてても、北川美佳さんは愛人とは知れてませんからねぇ〜。
それにしても、北川美佳に三船美佳さんは似ている!と、本当に思います。面影や仕草が極似で、びっくりします。
一方、山科では、大石内蔵助と松之丞の東下りの準備が着々と進められて、陸と二人の幼い子供、吉千代と空が陸の郷、播磨の豊岡へと移り、内蔵助から離縁される事になります。
陸は当初、山科から内蔵助と松之丞を江戸表に見送ってから、豊岡の実家へ帰ると主張しますが、
親戚筋の潮田又之丞がおゆうを離縁する様を見て、自分だけが幸せ過ぎるのは、内蔵助が同志に対しての引け目になると判断し、自ら、豊岡行きを切り出すのです。
此処で、別れの辛さを滲ませる松之丞が、実に、いじらしく自然に、臭くならない演出で、いいなぁ〜と、思います。
そして、内儀・陸を國に帰した大石内蔵助の元に、吉良邸の門前に見張用の『搗き米屋』を出したいので、資金の援助の打診されて来ます。
ドラマでは、米屋!米屋!と、言いますが、所謂、『搗き米屋』です。出すのは前原伊助で、名前を五郎兵衛と変えて、髷を町人髷に結い直します。
当初、この提案を大石内蔵助は反対しますが、勝田新左衛門(寺田農)の説得で、了承しますが、内蔵助は搗き米屋出店の条件を付けます。
その条件とは、吉良邸から漏れ聴こえて来る、屋敷内の増改築。大工の出入りも激しくなり、明らかに、討入りに備えた防御の為の増改築である。
ならば、必ず、増改築の資金を、吉良上野介に出す者が有るハズ。公儀や上杉が出す事はないので、町場の『両替屋』からの借財なので、
是を突き止めた上で、出来れば貸さない様に、悪くしても満額の融資を阻止せよ!と、大石内蔵助の密命を受けて、勝田新左衛門が江戸表へ向かいます。
さて、江戸表に半年ぶりで帰った勝田新左衛門は、恋するおしのが居る居酒屋へ飛んで行き、前原、竹林、茅野の三人に、大石内蔵助からの密命を話す。
この居酒屋に、また、1970年代売れっ子の漫才師枠で、夫婦のドツキ漫才で一世を風靡した庄司敏江玲児の二人が、
バッタモンの剃刀売りとして、登場して、この居酒屋でもストーリーには関係なく、混ぜ返して去って行きます。
そして、茅野和助が吉良家への融資先が、両替商の金田屋だと突き止める。金田屋は柳沢吉保から公儀御用商人のお墨付きを条件に二千両を近日中に融資すると言う。
また、勝田新左衛門と近松勘六の探索で、吉良邸の改築内容が、掘割や垣根、塀への鼠返しが設けられる事だと知り、益々、二千両の阻止の必要性を痛感します。
さて、金田屋の女主人・おたかを演じるのは、園千雅子。恐らく池内淳子さんと同世代の女優さんで、時代劇で能く見る女優さんでしたが、
70年代迄で、80年代には消えた女優さんの一人で御座います。現代劇でも、見なくはないこど、やっぱり時代劇のイメージが強い女優さんです。
腰元や大商人の女将が似合う、どちらかと言うと色気、妖艶な役所の女優さんですね。このおたかは、凛としていますけどね。
そんな搗き米屋を起点の活動に、吉良側もボーっと指を咥えてはおらず、大須賀治部右衛門が現れて、五郎兵衛に化た前原伊助を痛め付けますが、
定太郎と小雪の機転で、搗き米屋が赤穂浪士の監視所だとは知れずに、済みますが、定太郎と小雪を伊助は、搗き米屋に住まわせる事になり、
前原伊助は、自身が親の仇でありながら、小雪に恋してしまい、勿論、小雪も前原伊助に惚れて仕舞います。
こうして、親の仇と狙う相手に恋した小雪。そして、親の仇と知らず、姉の宜い人と武士として前原を尊敬する定太郎。
前原伊助は、この仇討ちと自身の仇討ち、そして小雪との恋に挟まれて、悩みに悩み抜くのです。
定太郎と小雪は、前原伊助を討てば、肥前平戸藩に帰参が叶います。しかし、吉良上野介を自身が討つまでは、討たれる訳には行かない、前原伊助。
討入り本懐の暁には、この姉弟に討たれて死ぬ覚悟の前原伊助ですが、小雪との恋は重く、其の別れを更に複雑にしています。
さて、鍵屋での会合の方は、堀部安兵衛・幸夫婦が中心に進めて、一方、金田屋の吉良家融資の二千両は、茅野和助が中心に阻止を計ります。
金田屋の方は、大須賀治部右衛門と前原伊助の激しい斬り合いの末に、搗き米屋の主人だなぁ?!と、正体がバレますが、
前原伊助が、治部右衛門を斬り、序でに、余り強くない用心棒六人も始末して仕舞います。
また、茅野和助は命懸けで、金田屋おたかを説得。お蘭に和助は殺され欠けますが、是をおたかが止めて、金田屋は公儀御用のお墨付きを、柳沢吉保に返上致します。
つづく