浅野大學を立てての浅野家再興の噂は、江戸の同志に強い動揺を与えた。大石内蔵助は、原惣右衛門と奥田孫太夫に密書を託し、
自身の考える真意を、堀部安兵衛や片岡源五右衛門に伝えて、『徒党を組んでの討入』の大切さを説くのでした。
討入りが、単なる仇討ちではなく、公儀、特に柳沢吉保の政への不満、不審を訴える為であり、其れが主君浅野内匠頭への忠義に繋がると書かれた文書に、江戸の同志は納得し、
当初は、喩え十人でも、吉良上野介の外出を襲う積もりだった急進派は、考えを改めて、大石内蔵助が統領と成り、徒党を組んで討入るまでは我慢する事に致します。
そんな『幕府への抗議の為の徒党を組んでの討入』などと書かれた大石内蔵助からの密書が、公儀隠密の忍者に奪われそうになりますが、
清水一學が此の忍者から密書を取り返し、赤穂浪士の危機を救います。
一方、密書は奪いそこねますが、お蘭は立ち聞きした内容から、赤穂浪士が『徒党を組んでの討入』にあくまでも拘る姿勢だと、黒鍬衆頭領の高松英郎の加倉井林蔵へ報告します。
そして、加倉井からの報告を受けた柳沢吉保は、江戸城廓内の武家屋敷ならば、赤穂浪士は討入るまいと、鷹を括って居たが、其れは甘いと知るや、
吉良上野介に対して、隠居を理由に屋敷替えを宣告し、廓内の神田呉服橋から本所松坂町、旧松平駿河守の屋敷へと移されます。是が九月の事で、浅野内匠頭の刃傷から半年後の事になります。
また、ここからふとした事で、再会した堀部安兵衛と清水一學は、互いの長脇差を交換、義兄弟の契りを結びますが、
一學の妻、お聖の父、三州國家老の宮石新左衛門が切腹させられそうになり、堀部安兵衛の強い薦めもあって、清水一學は吉良家に帰参致します。
この宮石新左衛門役は、村上冬樹さん。國家老としては貫禄はやや貧弱ですが、この場面のお聖の父親役としてはピッタリだと思います。
そして、この清水一學の吉良家帰参で、義兄弟の契りを交わした堀部安兵衛は、討入りと成れば敵味方、斬り合う定めと成るのでいた。
そして、ここから本傳の方は、浅野家の菩提寺、瑞光院が舞台に。此処で、九月十四日、内匠頭の半年の命日と言う事で、上方の浪士が内匠頭の供養に集まります。
其処に、不破数右衛門と妻のぬいが現れて、内匠頭の墓の前で、数右衛門の『清書』への参加を懇願しますが、
瑞光院境内には隠密が潜んでいると察知した内蔵助は、不破数右衛門の参加をこの場では認めようとは致しません。
さて、この不破数右衛門の妻・ぬい役は、伊藤榮子さんが演じます。本当に可愛らしい和服の似合う女優さんです。
併し、このドラマは、和服美人を何人集めているのか?!驚きます。伊藤さんは、本当に可愛らしい女優さんです。
この半年の法要に向けて、公儀、柳沢吉保の方も仕掛けて参ります。高松英郎さん演じる加倉井林蔵を京都へ派遣して、
京都所司代、松平紀伊守に働き掛けて、大石内蔵助と、上方の浪士たちの分裂工作を画策します。
この松平駿河守役は、あの佐藤慶さんが演じておりまして、併し今回の分裂工作では、まだ、大して大きな働きは致しません。
そして、そのターゲットにされるのが、上方の赤穂浪士の中では、大石内蔵助の次に求心力の有る江州膳所の岡野金右衛門です。
この岡野金右衛門役は、浜村純さん。中村嘉葎雄の九十郎の実の父を演じます。浜村さん、宜いですねぇ〜、好々爺な頑固爺を演じます。
加倉井林蔵は、金右衛門の甥にくの一の『れん』を近付けて骨抜にし、夫婦約束をさせて、れんを京都所司代に女中奉公させて盗んだ情報だと言って、
柳沢吉保から松平駿河守へ当てた手紙の写しだと言って、『浅野大學による浅野家再興は却下したが、速やかに公にするのは待ち、意図的に遅らせて、赤穂浪士の討入りも遅らせよ!』
と、いうメモを大石内蔵助に見せるが、内蔵助は、赤穂城の評定で、『籠城』『殉死』に加わらず、命惜しさに赤穂を逃げだした岡野新伍が、
妻を使って京都所司代に潜入し探索させたとか、是を手柄に大石たちの『清書』の仲間に加わると言い出した事に強い疑念を持ち、
この岡野新吾が齎した、手紙の写しを一読すると、囲炉裏の火に焼べてしまう。又、従兄弟である九十郎も、新吾と妻、れんを怪しく思います。
さて、この岡野新吾が早川保さん、妻のれんは、牧紀子さんが演じます。早川さんも、牧さんも、ドラマでは悪役が板に付いた二人で、
もう、登場して直ぐに、是は罠だなぁ?と、ドラマを観ている側に、ネタバレの臭い演出なのですが。。。
岡野金右衛門は、甥新吾の齎した情報で同志を江州膳所に集めて、『大學様によるお家再興は潰えた!』と説得して、同志と共に東へ下る決断をします。
是を知った岡野九十郎と不破数右衛門夫婦は、岡野新吾の妻、れんが怪しいと睨み、不破数右衛門の妻、ぬいが花売りに化けて所司代に忍び込んで、
れんが所司代の役人と密会する現場を押さえて、赤穂浪士分裂の陰謀を暴きます。結局、京都所司代と黒鍬衆の陰謀は失敗に終わりますが、岡野金右衛門は甥の新吾に殺されてしまいます。
そして、九十郎が父の仇は討って、金右衛門の名前を継いで、二代岡野金右衛門となるのでした。
そんな内匠頭の半年の法要の事件の後、二ヶ月が過ぎた頃、江戸表では、世間は赤穂浪士が何時討入りするか?
この話題で持ち切りであり、辻講釈で、見て来た様な嘘を付く講釈師が、市民を集めて張り扇を叩いていた!
この講釈師役が、なんと、あのケーシー高峰さんが演じております。この時代なから本職の二代目神田山陽先生、六代目小金井芦州先生でも良かったはずなのに。。。
さて、江戸の『清書』に賛同した赤穂浪士たちは、もう、討入りしたいというフラストレーションが貯まりに貯まり。。。爆発寸前。
連日、多数の同志から矢の催促の手紙が、大石内蔵助の元には届いていた。流石に、もう放置は出来ないと判断した内蔵助は、
元禄十四年十一月、泉岳寺への浅野内匠頭の墓参りと、浅野大學、瑤泉院への挨拶廻り、及び、幕府大目付、戸田采女正など公儀要人との面会を理由に、東へ下る決意をする。
大石内蔵助は、不破数右衛門一人を伴に引き連れて江戸表へと入りますが、千坂兵部と連携する公儀隠密、お蘭の手勢の黒鍬衆が常に見張っていて、同志との会合など難しい状況だった。
そんな中、大石内蔵助は、片岡源五右衛門を頼りに、彼が世話になっている寺に、不破数右衛門と二人で居候するのだが、
片岡源五右衛門の妻、志津が、息子の出世と、夫、源五右衛門の仇討ちに反対する気持ちから、大石内蔵助達の密会情報を、お蘭に売ってしまう。
この源五右衛門の妻、志津役は、あの原知佐子さんです。原さんと言えば、山口百恵の『赤いシリーズ』で、
百恵ちゃんを虐めて虐め抜く叔母の役で、意地悪女優の頂点に君臨しておりましたが、この源五右衛門の妻も、中々、その意地悪路線で光ります。
更に、ちょうどこの大石内蔵助の東下りの一月程前に、江戸表には、茅野和助と勝田新左衛門が先に下って滞在中で、
この茅野和助は、前に申した通り島田順司さん、そして勝田新左衛門は寺田農さんが演じています。
さて、噺を源五右衛門の妻、志津に戻しますが、この志津がスパイを働いている事には、流石に感の宜い源五右衛門が気付き、
志津を殺そうとしますが、内蔵助から、其れを逆に利用しようと言われて、片岡源五右衛門は、嘘の会合場所を記した手紙を、志津に読ませて、お蘭たち隠密の目を眩ませて、
片岡源五右衛門、不破数右衛門、そして、茅野和助の三人が囮になって、まんまと隠密の裏をかいて、
大石内蔵助は、三田松本町、前川屋忠太夫の店に堀部親子や磯貝十郎左衛門たち十五名の同志を秘密裏に集めて、会合を持つ事に成功します。
そして、この会合では、討入りの目安として、松之廊下刃傷から一周忌に当たる三月を持って討入りの期限とする事と、
不破数右衛門を同志に加える事が大石内蔵助から提案されて、これも承認されます。
尚、片岡源五右衛門は、妻、志津を手打ちにしようと致しますが、大石内蔵助は是を諌め、源五右衛門の息子を、大石家の養子にして、
京都大石神社の宮司に着かせると言う計らいを、源五右衛門夫婦に提案します。
是であれば、討入りしても、神仏の関係者なので連座しての処罰は受けないと言う、内蔵助の配慮に、片岡源五右衛門夫婦は、感謝の余り泪するのでした。
つづく