さて、元禄十四年三月十四日の内匠頭凶変と切腹の知らせを、早駕籠の早打にて、萱野三平と早水藤左衛門が赤穂へ知らせます。

萱野三平は、石坂浩二さん、早水藤左衛門は、和崎俊哉さんです。石坂浩二さんは、この場面、駕籠に乗っている態だけで全く登場せず、和崎さんの口上だけが描かれています。

恐らく撮影スケジュールが合わず、影武者で済まされたんだと思います。またこのドラマでは、赤穂の早駕籠が東海道、三州の吉良上野介の領内を抜ける際に、

吉良の領民から、駕籠が襲われると言う、ちょっとあり得ない展開になります。僅か一日半位の間に、吉良上野介が殿中松之廊下にて浅野内匠頭に刃傷!

と、いう情報を三州の領民が知り、且つ、赤穂藩の早駕籠が三州を通ると確信して、待ち伏せし、駕籠を襲います。

何んとも、あり得ない噺ですが、ドラマだから。。。しかも、民衆を止めて早駕籠を通してやるのは、吉良の家来、天知茂さん演じる清水一學です。

結局、清水一學は、この赤穂藩の早駕籠を通した罪で、暇を出されて浪々の身となり江戸へと向かいます。


そして、清水一學は江戸へ下り、それを彼の許嫁(いいなずけ)の吉良家家老の娘、長谷川峯子さん演じる聖(せい)も、一學を追って江戸へ下る。

やがて紆余曲折あり、清水一學とお聖は、堀部安兵衛と赤座美代子さん演じる内儀・お幸と、同じ長屋で暮らす事になる。

渡哲也さん演じる堀部安兵衛は、天知茂さん演じる清水一學と、大変馬が合い、その関係は無二の親友と言う感じに親しく成って行きます。

さて、長谷川峰子さんと言う女優さんは、あまり記憶にないのですが、家老の娘、武士の娘の風化があり、凛として写ります。



他方、赤座さんは藤田敏八監督夫人で、時代劇にも広く出演はしていますが、何んとも武士のお内儀役と言うよりは、酌婦や女郎のイメージが付いているので、

最初は、やや違和感を感じたのですが、物語が進に連れて、渡さんの堀部安兵衛を出過ぎずに上手くリードしていて、安兵衛の妻・お幸(コウ)と言う役に馴染んで行きます。


さて、物語は赤穂側は、藩が改易と決まり、藩札の処理に大石内蔵助は追われる毎日で、大野九郎兵衛の抵抗に合いながら、是を遂行します。

また、内蔵助は早駕籠が第一陣、第二陣と到着したのに、なかなか、吉良上野介の安否が報告されない事に疑念を抱き、

江戸表に対して、上野介の安否の確認を急ぐように書面を送り、この探索を堀部彌兵衛、安兵衛親子に依頼します。

依頼された、堀部安兵衛は、内匠頭とは母方の血縁で従兄弟の戸田采女正に談判し、当日、江戸城で吉良上野介を治療した御殿医を聞き出し、上野介が存命に違いない事を突き止めるます。

ここの一連の堀部安兵衛の活躍は、実に、渡さんにピッタリの役柄で、刑事ドラマを見ている様な探索ぶり、

また、戸田采女正を演じるのは、山本耕一さん。アフタヌーンショーに出ていた山本さん。ザ・ボンチの『そうなんでよ、川崎さん!』で有名な山本さんが演じています。

山本さんは、夫人の小林千登勢さんも有名でした。この忠臣蔵のドラマの頃は、まだ、アフタヌーンショーの前ですね。(後に小林千登勢さんも登場します。)

そして安兵衛が御殿医から聞き出した『上野介存命』の知らせ、その早飛脚は、江戸表を出る前に柳生の隠密に切られて、赤穂の大石内蔵助の元へは届かなかった。


一方、是は早飛脚が襲われた件にも関係するのですが、公儀はこの内匠頭凶変を受けて、兎に角、赤穂城開城と領地没収が済むまでは、吉良上野介の安否をひた隠しにします。

そして、柳沢吉保は、柳生の隠密を使い、堀部安兵衛たちの探索の妨害を指示するのですが、この手先になるのが、上月晃さん演じるくノ一のお蘭です。

殺陣に慣れていないからか?やたら、小塚や手裏剣を投げて、是までは戦いまして、刀を抜きません。

安兵衛に他流試合を申し込み、安兵衛の腕試しと言いながら、刀ではなく小塚を投げて、「お主、出来るなぁ?!」と、科白を吐くのには笑います。

流石に、刀を抜かない訳には行かないと思いながら観ておりますと、御殿医から情報を得た安兵衛が、柳生の隠密の一団に襲われそうになります。

しかし、そこに清水一學が現れ、安兵衛を逃がし仲間へ、その情報を知らせに走るのを助けてやります。

でねぇ、此の天知茂さん演じる清水一學は、二天一流!宮本武蔵の二刀流を使います。その清水一學と、上月さんのお蘭が斬り合う展開になりますが、

上月さんの刀は、非常に短くて一尺五寸無いくらいの刀を使います。また、カメラのアングルが異常に近い。

刀と刀が当たり、動作が止まるとカメラが引きに変わります。目まぐるしいカット割りで編集されていて、何んとも不思議な殺陣でした。


そして、此の斬り合いの後、お蘭の口から清水一學は、堀部安兵衛が赤穂の浪人と知らされますが、安兵衛は無益な殺生をしない為、

事ある毎に相手を脅す目的で、『俺は高田馬場の中山安兵衛だ!命が要らぬ者は、掛かって来い!』が口癖である。

清水一學も、何度か耳にしているのに、安兵衛が赤穂の浪人と気付か無いのは???兎に角、長屋に戻ると、堀部彌兵衛の差配でお聖との祝言の準備な整っていたので。。。

清水一學とお聖は、自身が吉良の浪人だと書置きを堀部安兵衛宛に残して、祝言の翌早朝に長屋から姿を消して仕舞います。


他方、内匠頭凶変は、吉良上野介の実子が婿養子に入った上杉家にも衝撃が走ります。直ぐに城代家老、丹波哲郎演じる千坂兵部が、部下である大須賀治部右衛門を呼び、

上杉家の家臣ではない腕の立つ浪人、元忍者を金で集めろ!と、指示を出します。この大須賀治部右衛門役は、時代劇の悪役ではお馴染みの睦五朗さんです。


上杉家は、面子、主君・上杉綱憲の父上野介への思いを優先して、上野介の命を守ることは、吝かではないが。。。

表立って家臣を動かし、赤穂浪人と喧嘩をするのはすこぶるまずい。何故なら、公儀が是を口実に喧嘩両成敗で、上杉家をお取り潰しにしかねないからである。

千坂兵部は、柳沢吉保ならば、それ位の事は平気でやるに違いないと睨んで、上杉家の別働隊として動く輩を、大須賀治部右衛門に組織させようとしていたのである。


その頃、赤穂城では相変わらず城明渡しに対しての評定が続いていますが、吉良上野国の安否は知れず議論は紛糾します。

大野九郎兵衛を中心とする開城派と、吉田忠左衛門、原惣右衛門たち籠城派が激しく意見を対立させて居たが、大石内蔵助は無言で聴きに徹している。

そこへ、大石内蔵助の伯父、大石無人・通称:五左衛門と次男・三平の親子が江戸から馬を飛ばして駆け付ける。

此の五左衛門は、津軽藩に仕えた江戸勤番の武士で実在の人物、江戸の本所に住み討入りの際は、次男の三平と共に上杉の動向を見張っていたとされる。

また、五左衛門は内蔵助に経済的な援助もしていて、赤穂浪士の討入りを陰で支えた身内の一人である。

さて、大石無人役は辰巳柳太郎御大が演じ、三平役は竜崎勝さんです。竜崎さんはアナウンサーの高島彩さんの実父で、

文学座研究生、花の十五期、同期は夏八木勲、栗原小巻、原田芳雄、前田吟、林隆三、地井武男、高橋長英、秋野太作、浜畑賢吉、赤座美代子、太地貴和子、小野武彦、村井國夫などである。

それにしても、この二人の登場も馬で、二頭の馬の駆ける姿は、本当に迫力満点。現在の時代劇では見る事の無い激走です。

そして、五左衛門は、内蔵助に対して『吉良上野介は生きているぞ!』と、吉良の存命を知らせます。

更に、吉良は五代綱吉より、よく自嘲したとお褒めの言葉を賜り、内匠頭の刃傷を止めた梶川与惣兵衛は五百石の加増を受けた事も知らせます。

ここで、五左衛門が『田分け下郎』と、梶川与惣兵衛をなじり倒す科白が、非常に印象的です。



この身内からの上野介存命の知らせに、大石内蔵助は大変な憤りを覚えます。しかも、吉良側に加担した方には褒賞まで出ている。

武士は喧嘩両成敗の筈、と、怒りを抑え切れない内蔵助は、山中の花畑に趣き、花に向かって怒りを打つけるかの様に刀を振るい花を斬り裂きます。

いやはや、この花を斬り散らかす大石内蔵助の剣捌きは実に見事で迫力が御座います。また、この山中で自分を付けて来た、公儀隠密二人を斬り捨てます。


是がきっかけで、赤穂城下の隠密狩りに不破数右衛門が動くのですが、この新克利さん演じる数右衛門は、恐ろしく単細胞で、

隠密が潜伏する宿を突き止めながら、正攻法に斬り掛かり、隠密軍団との死闘、チャンバラになります。まぁ、ドラマだから仕方ない。

そこへ、京都から馬で、小野寺十内が駆け付けて来たのとに出会して、小野寺十内が馬上から槍で数右衛門を助けます。

この小野寺十内を、伴淳三郎さんが演じておりまして、実にカッコいい。喜劇で惚けている時とは全然違います。

小野寺十内は、朝廷の様子を大石内蔵助に報告、特に御所様は浅野家をお怒りではく、寧ろ同情的だと内蔵助は知り安堵します。


また、隠密達は城下の外れにある納屋に隠れて居たのを、大石三平に発見されて、不破数右衛門、岡野金兵衛の三人に討ち取られます。この岡野金兵衛役は,中村嘉葎雄さんが演じております。この時、金兵衛はまだ部屋詰めで、九十郎と名乗り、奇しくも此の死闘が初めて人を斬る経験になります。


隠密が全滅となった公儀、柳沢吉保は、お蘭を上杉家に差し向け、協力して赤穂藩に当たる事を提案し、是を千坂兵部が受け入れ、

俄かでは有りますが、柳沢・上杉同盟が成り、お蘭と大須賀治部右衛門で赤穂へと出向き、大石内蔵助の動向を探りつつ、赤穂城開城を速やかに行う働き掛けるように命じた。

そして、この時お蘭と大須賀治部右衛門は、見世物一座に化けて赤穂の鷹取峠の関所を通るのですが、お蘭の右腕の忍者・兎助役に露口茂さんが登場し、


一方、受ける関所には、吉田忠左衛門役で、中村伸郎さんと、神崎輿五郎役には、中丸忠雄さんという、実にオールスターな一場面です。

結局、輿五郎が他国民は此処を通さないと!頑張りますが、忠左衛門が遊芸を粗末にして、赤穂が笑われてはいけない、興行はしないと誓わせ、領内にお蘭と大須賀治部右衛門たちを招き入れてしまいます。

また、吉田忠左衛門の息子、澤右衛門役には柴田侊彦さんが付いていて、この柴田さんも若いが味のある役者さんです。



さて、大評定の行方も、いよいよ煮詰まり、大石内蔵助に一任となるや、一度殉死を決めた上で、本当に大石内蔵助に命を預けられる同志を募るのも、忠臣蔵の王道です。

そして、お蘭と大須賀治部右衛門たちも、手下は失いながはも、大石内蔵助が、仇討ちに走る可能性がある!?と、推理し始めます。

この最終の大評定、殉死と決めながら『吉良上野介に対する処分再考』を公儀に願い出て、その真意を見てからの決行となる。

この時に、大石内蔵助に最初は反対していた、竹林唯七と茅野和助の二人は、大石内蔵助が自分たちの命を預けるに足りる大将だと判断して、この殉死に賛成する様になります。

竹林唯七は砂塚秀夫さん、茅野和助は島田順司さんで、おふたりとも、此の時は三十代でテレビドラマの常連で、二人とも八十を過ぎて健在なのは嬉しいです。



つづく