決死の櫻川五郎蔵が、何んとか母親の元へ這う様にして辿り着いた頃、幡随院長兵衛も、花川戸の自宅へと帰って来て居た。
長兵衛「誰かぁ?! 開けツ呉れ。」
留守番「ヘイ、ご苦労様です。」
長兵衛「その声は、金五郎だなぁ?!」
金五郎「ヘイ、左いです。」
長兵衛「いやぁ、今、雨が降って来た。 傘も合羽も無かったから、間に合って宜かった。」
金五郎「本当ですね、濡れずに何よりです、元締。 こりゃぁ~本降りになりそうです。」
この日の留守役の、『芝居の喧嘩』でお馴染みの雷(いかずち)ノ金五郎という若衆が、玄関を開けて長兵衛を迎え入れた。
金五郎「親分どうなさいますか? 直ぐにお寝になりやすか?それとも、呑み直しますか?」
長兵衛「そうだなぁ、お前が相手して呉れんなら、少し呑むかぁ?! 金五郎、酒の支度をして呉れ。」
そう云って、上がると長兵衛、フラッカ、フラッカ、障子戸にぶつかりながら奥の居間へと辿り着くと、長火鉢の前にドッカと胡坐かいて、煙草に火を点けてました。
一方、台所へ向かった雷ノ金五郎、予め気を利かせ、支度して於いた膳部と徳利を持って、遅れて居間に入り、長兵衛に酌をしながら遣ったり取ったり始めます。
金五郎「元締、アッシは、今回の留守番では、本当に損しました。 櫻川関が黒鷲関を倒しての祝勝会! 行きたかったです。」
長兵衛「そりゃぁ~、仕方あんめぇ~。屋敷渡世が本業なんだ、誰か留守番役が要る。」
金五郎「それは判ってます、判ってますが、権兵衛の兄ぃや、伊知郎兵衛の兄ぃは仕方ないにしても、赤鬼、白鬼までもが一緒に𠮷原へ行ったのには腹が立ちます。」
長兵衛「ホラ、之で機嫌を治せ!金五郎。」
そう云って、長兵衛が紙入れん中に残っていた、一両と鰐(一分銀)三枚を渡してやると、現金な野郎で、直ぐに機嫌が治ります。
金五郎「親分、もっとお呑みになりますか?」
長兵衛「いやぁ、もう十分だぁ。 横になるから、敷き布と薄い搔巻を頼む。それから、肩と背中をトントン叩いて呉れ、俺が眠りに付く迄、頼んだぞ。」
金五郎「ヘイ、畏まりました。」
そう言うと、幡随院長兵衛は、横になって金五郎のトントンが気持ち宜かったのか? 直ぐにウトウト始めます。
是を見て、雷ノ金五郎。 長兵衛の寝息が聴こえて来たので、手を止めようと致しますと、「まだ、早いぞ!!」と、長兵衛の声が返って参ります。
トントン!スースー! 「まだ、早いぞ!!」を、何度か繰り返しまして、遂に、長兵衛が深い眠りに落ちて行きます。
金五郎の方は、『漸く、寝てきれた!!』ってなもんで、足音を忍ばせて、部屋の行灯の火を消して、居間を出て玄関横の若衆の溜まり場へと下がりますが、今日は誰も居りません。
白河夜船の幡随院長兵衛。八ツを知らせる回向院の鐘が遠くの方から聴こえて参ります。 すると、俄かに強い風が吹き、それに乗ってか?声が聴こえて参ります。
声の主「幡随院の元締! 不覚を取りこんな様(ザマ)になりました?」
長兵衛「どうしました? その声は。。。関取?! 櫻川関じゃありませんか? どうしました?そのお腹は?!」
櫻川「黒鷲と、その弟弟子に。。。入谷田圃で襲われて、用心してはいたんですが、清兵衛さんが先に殺(や)られましてねぇ。」
長兵衛「ブツクリの親分が?!」
櫻川「清兵衛さんの仇だ!と、思いますから、黒鷲たち四人は首を斬り落としたのだが。。。もう一匹隠れてやがって、不覚にも竹槍を真面に横ッ腹に喰らちまった。」
長兵衛「そんなぁ! 嘘でしょう? 嘘だと言って呉れ!」
櫻川「元締、嘘じゃない。見ての通りだぁ。」
長兵衛「それで、アッシに何をしろと?!」
櫻川「兎に角、老いた母を残して先に逝くのが、なにより、心残りで、それで元締の夢ん中まで追い掛けて来たッて訳です。
どうか!後生です。母の面倒をお願いします。入谷田圃の大きな家で母一人は忍びないので、どうか!元締、母を、母を此処に引き取って下さい。お願いします。」
長兵衛「判った!判った!心配するなぁ、関取。俺が間違いなく、面倒を見てやる。」
櫻川「どうかぁ。宜しくお頼の申します。」
長兵衛「関取!! 櫻川!! 関取!! 関取!! 関取!!」
寝言とは思えない叫ぶような、長兵衛の声に、何が起こったのか?と、驚いた雷ノ金五郎が居間へ駆け付けて、障子戸を開くと。。。
金五郎「元締!どうかしましたかぁ?!」
長兵衛「関取!!関取!!」
金五郎「しっかり、して下さい。」
長兵衛「関取!!関取!! 櫻川。。。櫻川。。。」
金五郎「しっかり、して下さい、元締、金五郎です。子分の金五郎、金公です。」
長兵衛「うワッ! な、な、な何だぁ! 金公かぁ? 櫻川。。。櫻川関は何処へ行った? 見たかぁ?金公。」
金五郎「見ませんよ。 それより大丈夫ですか? 魘されてて、大きな声で寝言を仰るから、びっくりして飛んで来たんですから。。。」
長兵衛「夢? 夢だったのかぁ? それにしても酷い悪夢だぁ。」
金五郎「凄い汗ですねぇ、着替を持って参ります。 取り敢えず、この手拭いで汗をお拭き下さい。」
言われて傍に有った手拭いで顔、身体を拭き、汗だくの浴衣を脱いで、下帯も取り替えていると、今度は玄関でけたたましい音をさせせて、誰かやって来る。
来客「(ドンドン!ドンドン!) 夜分すいません、大事件です! 開けて下さい。 元締、開けて下さい。」
長兵衛「金五郎、あの声は小平だぁ、玄関を開けてやれ。」
新しい糊の利いた浴衣を長兵衛に渡し、金五郎が玄関を開けると、其処には庵崎ノ小平と清兵衛の子分の下ッ引き八五郎が立っていた。
小平「親分は、起きて居なさるか?」
金五郎「ヘイ」
小平「上がらせて貰うぞ!!」
廊下を、急ぎ足でドカドカと、居間へと入る小平と八五郎、長兵衛の姿を見るなり、こう申します。
小平「元締、ブツクリの清兵衛親分が。。。殺されやした!!」
長兵衛「清兵衛ドンがぁ?! 誰にやられた?」
小平「それが、下手人は分からないのですが、清兵衛親分の死体の横で、黒鷲関と一門の弟弟子が、都合四ったり!首を斬り落されて絶命していたそうです。」
八五郎「八五郎です、元締! アッシが役人と一緒に見たんですが、そりゃもう酷い有様で。。。胸と腹をえぐられて、右手も切り落とされていました。」
小平「入谷の番屋の役人が云うには、黒鷲たちと喧嘩して、殺し合ったんじゃないかと。。。」
長兵衛「入谷の番屋?! 兄弟は入谷で殺されたのか?!」
八五郎「ハイ、入谷田圃の庚申堂の前で。」
長兵衛「入谷田圃の庚申堂の前って、櫻川の家の近くじゃないかぁ? 櫻川は? 櫻川も怪我をしたのか?」
八五郎「いいえ、うちの親分だけで、櫻川関の事は存じ上げません。」
長兵衛「実は、今、かくかくしかじか、夢ん中で、櫻川から母を頼むと言われて。。。 どうも、悪い胸騒ぎがする、今から入谷の番屋へ寄って櫻川の家へ行くぞ!!」
小平「今からですか?」
長兵衛「そうだ、今直ぐだ!!」
幡随院長兵衛の対応は早かった。直ぐに出掛ける支度をすると、八五郎を従えて、まずは庚申堂の前の死体が集められている入谷の番屋へ向かった。
そして家を出る前に庵崎ノ小平頼んで、夜が白らんで来たら、若衆に𠮷原の茶屋「水樹」行かせて、唐犬ノ権兵衛、夢ノ伊知郎兵衛達を、
ここ花川戸の長兵衛宅に集めて、決して水野の家を無暗に襲う様な軽はずみをさせるなぁ!と、釘を刺します。
そして、全員が集まったら、主だった子分を連れて、小平は、入谷田圃の櫻川五郎蔵の家へ来るようにと命じられます。
また、十中八九、水野十郎左衛門一派、白柄組の仕業と長兵衛は踏んでおりますから、此の家の様子を探りに誰か来るに違いないと、
雷ノ金五郎には、若衆を集めて町内に、そんな妖しい患者、曲者が現れないか?潜んでないか?見張らせます。
この様な下準備を済ませてから、まだ暗い中、夜道をブラ提灯を下げて、八五郎と入谷の番屋へ出向く幡随院長兵衛!
長兵衛「ご苦労様です。」
役人「おぉ、幡随院の元締。ご苦労様です。 」
長兵衛が番屋へ入ると、目の前にブツクリの清兵衛の死骸があり、その脇に一目で力士と分かる首の無い巨漢の遺体が四ったり置かれていた。
長兵衛「それにしても対照的な殺され様ですね。片や、清兵衛ドンは刀を刺してグリグリ回され、痛々しい死に様だが、
こっちの四ったりは、死んだ事すら分からないくらいに見事な首の跳ねようだぁ。きっと痛くなかったでしょうねぇ。」
役人「本当だよ、元締。七軒町の親分は気の毒だったなぁ。殺したのは、どうやらこの二人みたいだ。」
と、役人は鶯谷次郎吉と若松釜右衛門の二人の死骸を指して申します。
長兵衛「お役人、検死が済むまで、この八五郎を清兵衛さんの傍に残して行きます。
八ッ! 検死が済んで動かせるようになったら、七軒町までは駕籠で運べ、ほら、之で早桶に入れて運ぶんだぁ。」
そう云って、三両の小判を八五郎に持たせた長兵衛は、庚申堂の前を通り、水たまりを除けながら櫻川の家へと急いだ。
雨はもう止んで、遠寺の鐘が明け六ツを伝えて、烏の鳴き声が聴こえて来る。『生きてて呉れ!』と念じながら、長兵衛は櫻川の家の格子の戸を叩いた。
長兵衛「おはよう存じます。 朝早くご無礼さんに御座んす。花川戸の長兵衛です。 お袋さん!関取はお帰りでしょうか?」
母「ハイ、締まりはして御座いません。元締、お入り下さい。五郎蔵は、ここに居ります。」
長兵衛「ヘイ、ではお邪魔致します。」
長兵衛が奥へと進み入りますと、櫻川の母親は仏壇に向かって手を合わせて、その傍らに横っ腹が横一文字に裂け絶命の櫻川。
大量の出血を受けて、畳が真っ赤に染まって御座います。
長兵衛「やはり、こんな事に。。。」
母「やはり? どういう事です、元締。」
長兵衛「実は、かくかくしかじか、私の夢ん中に、関取が現れて、『母上を宜しく頼む!』と、言い残して黄泉の国へと旅立たれました。」
母「そうで御座いましたかぁ。 アッ、元締。お茶も差し上げませんで。」
長兵衛「そんなぁ、お構い無く。櫻川関に頼まれたからには、母上の事を、この長兵衛が面倒見させて頂きます。」
母「いやぁ、もうこの歳で御座います。 五郎蔵だけが生き甲斐で御座いましたから。。。」
長兵衛「母上、息子、五郎蔵は不覚にも、貴方より先に逝きましたが、代わりにこの長兵衛が息子で御座います。
長兵衛は貴方の新しい子供です。亡くなった五郎蔵の分も、私が孝行させて頂きます。何んなりと仰って下さい。
今、本日只今より、この長兵衛、貴方の息子で御座います。」
泣き疲れて、気丈に振る舞う母でしたが、幡随院長兵衛の言葉に、頬を濡らす泪が溢れ出した。
母「誰が、あの子を。。。元締、あの子は何か悪い事をしましたか?人に殺されるような。。。そんな悪い事を。」
長兵衛「すいません、アッシが傍に居てやれば。。。悔やんでも悔み切れません。だから、アッシが櫻川の代わりです。
お袋さん! お前さんは、何より先に、櫻川の仇討ち、其れをお望みですかい?」
母「いいえ。五郎蔵を殺したのは私なのかもしれません。兎に角、今日の取組、黒鷲関に勝たせたい一心で、私は私の命をお不動さんに捧げると誓いました。
そして、あの子は黒鷲関に勝つことが出来た。でも、お不動さんは、私の老い先短い命では満足なさらなかった。
たとえ仇を討ったとしても、また、新たな憎しみが生まれるだけです。だから、お不動さんに召されたんだと諦めて、
今は、亡くなった息子の鎮魂に、宜しい弔いを上げる事に、集中したいと存じまする。」
長兵衛「判りました。お袋さん! 四十九日が過ぎるまで、この長兵衛も決して刀は抜きません。」
そう言うと、長兵衛は『彦四郎』の鍔と鞘の間に、紙縒りを通して、刀を封印した。
一方、𠮷原では茶屋『水樹』に、唐犬ノ権兵衛、夢ノ伊知郎兵衛、赤鬼ノ喜兵衛、白鬼ノ権左と言った面々が集まって、
女郎買いの反省会? そんな酒盛りを始めようとしていた。
権左「やっぱり、女郎は三枚目、四枚目くらいの『大いなる片輪』って感じが具合いいですね。」
権兵衛「何を抜かしやがる、通ぶって。。。お前に女郎の何が語れるってんでぇ~」
伊知郎兵衛「そうだぞ、白鬼。三度に二回は振られる奴が、偶々、朝まで女郎が付いて居たってぐらいで、語るんじゃねぇ~」
権左「そうは言いますけど、兄ぃ達が今朝は起こし番だった訳ですから、負け惜しみはよしましょう。」
権兵衛「誰が負け惜しみだ! コン畜生!」
と、権左の頭を一つ、唐犬ノ権兵衛がポカリ!と、殴った所で、角町中万字屋勘兵衛の処の牛太郎、助清が水樹へ入って参ります。
助清「おやおや、幡随院の元締ん処の皆さんじゃありませんか? もうお聴きになりましたか?例の件。」
権兵衛「何んだ!助清かぁ~ 例の件なんて勿体付けず、言ってみろ!? 何んだ!?」
助清「ヘイ、何でも入谷田圃の庚申堂の前で、大きな喧嘩が有って。。。そこで死んで居たのが清兵衛親分と、水野十郎左衛門の贔屓の相撲取らしいって、噺で。」
伊知郎兵衛「何だとぉ? ブツクリのオジキが殺(や)られただとぉ~?!」
権兵衛「『らしい』ってのは何んだぁ? 助ッ!お前が見た訳じゃねぇ~のかぁ?」
助清「へぇ、直接アッシがこの目で見た訳じゃなく、大門脇の番屋の岡っ引が、入谷の役人から聴いたそうです。」
伊知郎兵衛「何んだぁ、岡っ引の又聴きかぁ~。」
助清「ヘイ。」
伊知郎兵衛「どうする、権兵衛さん。入谷の番屋へ行きますか?!」
権兵衛「そうだなぁ、先ずは、確かめねば成るまい。」
そんな会話が有って、連中が入谷の番屋へと茶屋『水樹』を出掛けた所に、庵崎ノ小平と橋場ノ半七の二人がやって参ります。
小平「権兵衛!伊知郎兵衛!何処へ行く?」
権兵衛「入谷田圃の庚申堂の前で、ブツクリのオジキが殺(や)られたって、遊廓の若衆が云うから確かめに行くところだぁ。」
小平「それなら間違いない。ブツクリの清兵衛親分は、黒鷲達の闇討ちに遭いって、命を落とされた。残念ながら、櫻川関も一緒に殺(や)られなすった。」
伊知郎兵衛「何んだとぉ~! 誰がやった?!」
半七「まだ、確証はないが、十中八九、水野十郎左衛門の家来の仕業だ!」
権兵衛「そんなら噺は早え~、水野の屋敷に今から直ぐにカチ込もう! 小頭も、半七も行きますよねぇ?!」
小平「早まるなぁ!! 元締が仰るには、まず、櫻川関を殺(や)った野郎を突き止める事、之が先決だぁ!
そして次に清兵衛親分と櫻川の四十九日が済むまでは、喧嘩よりも弔いが優先だ!
之は、元締の強い意志だし、櫻川のお袋さんの意向でも有るそうだぁ。今は、堪えて呉れ!」
全員「ヘイ!畏まりました。」
こうして、小平と半七が唐犬ノ権兵衛達を上手く宥めて、そのまま、長兵衛の居る櫻川の家へ全員で訪れた。
長兵衛「おーう!待っていたぜぇ。 眠たいだろが、交代で『櫻川の通夜』の支度をして呉れ。
それでなぁ、決してお袋さんから目を離すなぁ。何時々々衝動的に死のうとなさるか判らない。
井戸に飛び込んだり、突然、短剣で喉を突いたりするかもしれないから、十分用心して見張れよ。判ったなぁ?!」
全員「ヘイ!」
長兵衛「俺が家に戻ったら、若衆をもっと大勢よこすから、心配するなぁ!ひとまず、ここは小平とお葦さんで仕切って呉れ。
あと、七軒町の方も八五郎だけじゃ通夜も葬式も出来やしねぇ~から、そっちは橋場のぉ!お前が行って助けてやって呉れ。
そして、伊知郎兵衛!お前は、寺方の都合を聞いて来い。赤鬼!白鬼!の二人を使っていいから、この非常事態だぁ、俺が頼むからと『幡随院』に無理を聴いて貰って呉れ。
最後に、権兵衛、お前は俺に付いて、花川戸に戻るぞ! そして、櫻川を殺(や)った野郎を突き止めるんだ!」
全員「ヘイ!ガッテンでぇ~」
こして、ブツクリの清兵衛と櫻川五郎蔵の通夜と葬儀の支度に係る幡随院長兵衛一家、
此処に来て、庵崎ノ小平と橋場ノ半七の働きが、実に見事で、伊達に法華ノ長兵衛一家で下積みをしていません。
また、それぞれの女房が、縁の下の力持ちで、裏方の仕事を子分、若衆を使いながらこなして行きます。
一方、家に帰った幡随院長兵衛。朝から何も口にしておりませんから、冷や飯に熱いお茶をブッ掛けてサラサラ掻き込みます。
すると、そこへ朝から見張りと警戒の役目を仰せつかっていた、雷ノ金五郎がやって来て、怪しい野郎を見付けた!と、報告を致します。
金五郎「親分! 怪しい野郎が一匹。屋敷の周りをウロウロしています。」
長兵衛「どんな野郎だぁ?!」
金五郎「ヘイ、山岡頭巾を被り、紋無しの羽織。袷の木綿物で白足袋に雪駄履き、そして二本。白い柄の刀を差しておりやす。」
権兵衛「間抜けな野郎だなぁ~ 私は四ツ谷六法の廻し者です!と、名札を付けた様な野郎だぁ。」
長兵衛「ヨシ、塀伝いの狭い路地に居る時に挟み撃ちにして捕まえよう。生け捕りにして、ゆっくり噺を聴こうじゃないかぁ。」
金五郎「ヘイ!」
そして、その曲者が現れるのを待っていると、余程、中の様子が知りたいと見えて、塀の節穴から中を覗いたり、耳を塀に充てて聴いたりしております。
其れを、人気の無い路地から突然現れた唐犬ノ権兵衛、雷ノ金五郎、幡随院長兵衛、そして、若衆五、六人で取り囲み、
逃げようとかなり激しく抵抗致しますが、多勢に無勢。。。少々手を焼きましたが、縄で縛って、長兵衛の家の松の木に縛り付けてしまいます。
さて、捕らえられたのは、誰か?!それは次回のお楽しみです。
つづく