法華の長兵衛と親子の縁を切った小平は、暗闇の中を庵崎村を目指して駆け出しておりました。まっすぐ幡随院長兵衛の家へ向かうと、
流石に、法華の子分に直ぐ捕まり始末されてしまう。そう思った小平は、小平なりに一計を案じながら、妻子に最後の別れをする為に庵崎村へ。
夜通し歩いて、明け六ツ、辺りが白んで鶏の声が聞こえる中、妻の葦と倅の小吉が住む我が家へ、実に三月ぶりに帰ります。
大きな家で御座いますが、庭には草ボウボウで、全く手入れがなされておりません。かつては石燈篭が在った場所も穴が空いたまんま。
池は枯れて、母屋への飛び石だけが残っていて、門は崩れかけていて、玄関の格子戸も激しく歪んで御座います。
庭に面した側の縁側には、雨戸が閉切られた状態で、是を外して入ったり、玄関の格子を動かすと、大きな音が致しますから、
小平は、勝手口の台所の方へ廻ろうと致します。正に其の時、まだ、二歳(ふたつ)になったばかりの倅・小吉が泣き出しまして、
『あぁ、小吉の野郎、起きて来たなぁ?!』と、思いながら小平が、台所の方を覗いてみると、
竈(へっつい)の前で豆柄を焼べながら火吹竹で頬を膨らませている女房・葦の姿が御座います。
その背中には、倅の小吉が背負(しょ)われていて、背後に小平が居ると気付かぬまま、葦は小吉に何やら噺掛けます。
葦「小吉、もうすぐまんまが焚けるからねぇ。昨日、久保田の叔父ちゃんが白いまんまを持って来て呉れたから、久しぶりに白いまんまが食べられるよ、嬉しいねぇ。
それにしても、父(おっとう)は何処へ行ったんだろうねぇ~、もう、出て行って三月になるよ。鉄砲玉とはよく言ったもんだぁ。
小吉、お前は父(おっとう)の様には成るんじゃないよ。お前は、立派なお百姓になるんだ!間違っても、賭博打にだけは成るんじゃないよ。
貧乏しても構わないけど、賭博と喧嘩だけはいけないよ、小吉。父(おっとう)の様にダケは成るんじゃないよ。」
妻の葦は、念じるように息子の小吉に、夫、小平への愚痴を聴かせます。毎日毎日、この調子なので御座いましょう。
時折、“バブバブ”ぐずる小吉をあやしながら、葦は豆柄を焼べ、竹を吹きながら、夫・小平への愚痴を小吉に聴かせます。
また、この葦の衣装(なり)が物凄く、頭はカラスの巣のようにザンバラ髪を手拭いの鉢巻きで固定して、
着物は、ツギハギだらけの木綿物、襟には垢がべったり溜まって、帯とは思えないような紐で是を締めています。
そして、足元はと見てやれば、竹の皮で編んだ草履を突っ掛けております。
嫁入り前は、「お嬢様!お嬢様!」と、箸より重いものを持たないお姫様の武家娘だった葦、それをこんなにしちまったのは全部俺のせいだ!
この現実を目にして、どんだけこの妻子に迷惑を掛けて続けていたか、慚愧の念に堪えない様子で、大粒の泪が小平の頬を伝わって零れ落ちます。
法華の親分に盃を返して、初めて父親らしい、いや人間らしい気持ちになった小平でした。そして、ゆっくりと二人に進み寄った小平は、
「葦、小吉! ただいま、今、帰った。」と、声を掛けます。 しかし、声を掛けられた方の葦は驚きます。
葦「お前さん! 突然、びっくりするじゃないかぁ?」
葦の驚きが伝染したのか?背中(せな)で小吉が泣き出してしまいます。それを愛す(あやす)葦、そしてただただ、小平は是を見ております。
葦「あんた!何処へ行ってたんだい。三月も帰らずに突然。。。もう借金取りに、全部持って行かれたから、金目の物は、ウチにはもう何もないよ。」
小平「いや、済まない。俺が馬鹿で甲斐性が無ねぇ~ばっかりに、苦労掛けて済まない。」
葦「今更、そんな事を云っても、アタイは鼻血も出ないよ!! 銭も金目の物も、このウチには無いから、賭博打のお前さんは、とっとと出て行ってお呉れ!
アッ!そして、また喧嘩して来たねぇ。額が割れて、血が出て瘡蓋になっているじゃないか? 本当、ろくでもないんだから。。。」
小平「違うんだ!お葦。聴いて呉れ。俺がお前や小吉にして来た事は、本当に済まないと思う。やっと、目が覚めた!
賭博と喧嘩に明け暮れて、お前たちには本当に迷惑を掛けた。言葉で幾ら謝っても謝罪しきれるもんじゃない事も判っている。
だから、お前が嫁入りの際に持って来た、家宝の『葦三郎兼氏』の刀、之だけは小吉の為に残してやろうと思っていた。」
葦「調子のいい事を云うんじゃないよ、どうせ、丸腰の様子を見ると、あの刀もとうに売っ払ったんじゃないかぁ!」
小平「違う。之だけは信じて呉れ。あの刀は、親と慕って盃を交わした法華ノ長兵衛の野郎に騙し取られてしまったんだ。
話せば、長くなるが聴いて呉れ。法華ノ長兵衛が、最近勢力を伸ばして来た幡随院長兵衛という元締と揉めたんだ。
まぁ、揉めた!と言うよりも、同じ花川戸に長兵衛は二人要らない!とか勝手に言い出して。。。漢の焼き餅、喧嘩になった。
その時に、幡随院の元締が、元主人家の息子さんを、この喧嘩に巻き込みたくないと言って、その息子を逃がす段取りをする為に、
自分の刀、これも超一級品、『彦四郎』という名刀だ、それを法華の親分に預けて、喧嘩場を離れたんだ。
そしたら、法華の親分がこんな業物でみすみす斬られたくないと言い出して、刀の中身をスリ替えると言い出した。
そしてその場に居た須田ノ十蔵、今戸ノ権六、橋場ノ半七、そして俺の四人の刀を並べたんだが、
親分含めて他の野郎の刀では、鞘が入らない。たまたま、俺の刀だけは鞘に収まったもんだから、俺の方とスリ替えられた。
それでだ!もう、一触即発、喧嘩して𠮷原の堤(ドテ)が血の海になる!って、ところで、仲人が現れた。
お前もよく知っているだろう、神田紺屋町の剣術遣いの先生、山脇荘右衛門さんだ。先生が間に入って呉れて、双方に刀を引きように仕切って呉れて、喧嘩は中止になった。
元々、幡随院の元締の刀が余りに鋭く危険だからとスリ替えたはずなのに、法華の親分、刀を返すのを惜しみ出した。
そして俺には、あの『葦三郎兼氏』を五両、八両の銭で我慢しろと言い出したんだ。
之は、流石の俺も怒ったさぁ。たとえ盃を交わした親子でも、あの刀は俺の宝だし、息子の小吉に譲る大切な家宝だ。
だから、それを懇々と法華の親分に説明したんだが、親分は聴く耳を持たない。全く相手にもして呉れない。
挙句の果てに、法華の野郎!俺に酒を呑んでいた湯呑を投げ付けて来やがって、それで出来た傷なんだ!この額のは。
だから、俺は親子盃を法華ノ長兵衛に叩き付けて突っ返し、俺の、いや小吉の『葦三郎兼氏』を取り返すべく、
俺は、幡随院の元締の所へ談判しに行くつもりだ! ただ、当然、法華の親分も、俺に幡随院の屋敷に行かれると困るんで邪魔をして来る。
いや、邪魔をして来るなんて、生易しいもんじゃなく、捕まえて殺そうとするだろう。法華の盃を貰っている子分衆は三十人位だが、
その気になって、兄弟分、子分の子分など集めたら八十人近く集められるはずだ。だから迂闊には動き出せないって訳なんだ。」
葦「そんな!お前さん、刀の為に命を懸けるような真似は止めてお呉れ!!昨日、久保田の叔父さんが見えたんだよ、お前さん。
そして、叔父さんが、アタイと小吉の面倒見てもいいと云て呉れたんだよ、だから、お前さんも、一緒に久保田の叔父さんの所へ行きましょう?!」
小平「いや、そうはいかねぇ~、俺が小吉に親としてしてやれる唯一の事だから、こればかりは命を懸けてやり通したい。
判って呉れ!お葦、俺はどうしても幡随院の元締に逢いに行く必要があるんだ。その為に、黙って一つだけ俺に協力して呉れ。」
葦「えっ!協力? 私に何をしろと言うんだい?!」
小平「何ぁ~に、難しい事ちゃない。 この剃刀で、俺の頭を坊主にして呉れればそれで宜いんだ。頼む、俺を坊主にして呉れ。」
そう言って、庵崎ノ小平は、女房の葦に剃刀を渡し、それで自分の頭を坊主にして呉れと申します。
戸惑いながらも、言い出したらきかない亭主の性格は百も承知、そして、この髪を剃り落としたら、
この人は、命懸けで幡随院の所へ行くという。手を動かしながら、葦は溢れ出る泪を抑える事が出来ません。
小平「やい、お葦、頭を濡らし過ぎだ。俺の目も湿り出すじゃねぇ~かぁ。」
葦「仕方ないよ、湿らせないと剃れないから。。。」
夫婦で泣きながら、頭を丸める小平と葦。剃り上がると、小平が手で頭を確認いたします。
小平「ヨシ、俺は幡随院の元締に逢いに行く。お前は、小吉を連れて久保田の叔父ん処へ行け。刀を取り返したら、必ず、迎えに行く!」
葦「お前さん!きっとだよ? もう嘘は御免だからさぁ。」
小平「あぁ、必ず、迎えに行く、じゃぁ、あばよ。」
葦「お前さん!!お前さん!!お前さん!!。。。。」
「お前さん!」と、叫び続ける葦。去って行く小平は跡を振り返る事は、せず、真っ直ぐ下谷の幡随院を目指します。
幡随院に着くと、浅草花川戸の元締に、『彦四郎』の事で大切な噺があるのだが、悪い奴等に付け狙われて難儀をしている。
そこで、この下谷幡随院からの遣いの振りをして、駕籠で花川戸の元締宅を訪ねたいのだがと相談を持ち掛けます。
寺方の幡随院の方では、まずは、元締に確認しますと言って、遣いの小坊主を花川戸へ向かわせると、
確かに、駆け込みの坊主頭が云う通り、目付き、人相の悪い連中が七、八人、幡随院長兵衛の家の裏も表も見張って御座います。
そんな元締の家へ入ろうとすると、その連中にジロジロ見られて、下谷幡随院の小坊主だと判ると散って行きます。
中へ入った小坊主が、元締に『彦四郎』の件でかくかくしかじか、と言うと、是非、駕籠で送って呉れとの返事ですから、
寺へ直ぐに帰って、坊主頭の小平に、それらしい墨衣を着せて駕籠に乗せて送り出します。
こちらも、庵崎ノ小平を見知っている連中が見張りに加わってはおりますが、坊主の恰好して駕籠で参りましたから気付きません。
この様にして、庵崎ノ小平は、まんまと幡随院長兵衛との面会に成功します。
小平「御免ください!下谷幡随院より参りました。」
取次「お待ちしておりました。庵崎ノ小平さんですね?!」
小平「へい、左様で御座います。」
取次「奥で、長兵衛が待っておいます。こちらへどうぞ。」
小平「ご丁寧に、有難う御座んす。」
取次の若衆に同道して、小平は幡随院長兵衛の待つ奥の部屋へと案内されました。
長い廊下のドン突きの部屋で、八畳ほどの居間に、長火鉢を向こうにして、長兵衛が座って居ります。
長兵衛「えー、いらっしゃい。その座布団をお当てになって下さい。私が幡随院長兵衛で。。。 おやおや。。。
おや?頭を坊主クリにしているから気付かなかったが、昨日、大門前の堤で喧嘩になった、法華の子分の何て言った?あん中の一人だねぇ?!」
小平「ヘイ、庵崎ノ小平と申します。左様で御座います。昨晩は大変失礼致しました。」
長兵衛「それで、『彦四郎』の刀の事でお噺があると伺ったが、どういう事って?!」
小平「実は、もうお気付きと思いますが、昨日、本多家ご家来のご子息を、元締が送って行く際に、法華の親分に預けた刀、
あれに細工をして、スリ替えをした刀。その今、元締の手に在る方の刀は、アッシの刀なんです。」
長兵衛「ほー、それで?」
小平「法華の親分は、元締の刀がえかく立派なんで、このまま返したら『鬼に金棒』になるってんで、刀身のスリ替えを命じました。
あの場には、法華の親分を含めてアッシらは五人だったんですが、元締の刀の鞘に納まる刀身の刀を持っていたのはアッシだけで、
選択の余地無し!で、アッシの刀と、兄弟分の須田ノ十蔵の野郎が刀をスリ替えたんです。」
長兵衛「ほー、それで?」
小平「それで、元締が戻って来られたんで、そのスリ替えた刀を渡し、喧嘩が始まります。そして一触即発、今にも斬り合いが始まる、その時です。
神田の山脇荘右衛門先生が、間一髪の所で仲人として間に入られたので、喧嘩は無くなりました。それで、良かった!刀が戻って来る。
そう思った矢先ですよ、私に五両と言う金子を与えて、元締を騙して手に入れた『彦四郎』を自分の物にするから、
俺に、あの刀は諦めろ、この金子で何か適当に腰の物は手に入れろ!とそう云うんです。
そして、私が納得しないとみると、もう三両渡して、八両なら御の字だろう、みたいな態度を取ります。」
長兵衛「ほー、それで?」
小平「アッシの刀も、武家の姫様だった女房が嫁入り道具と一緒に持って来た大切な家宝の刀なんです。
正宗十哲、『葦三郎兼氏』の系統の名の在る匠が拵えた刀なんです。だから、金子では変えられないと言うと、
烈火の如く怒り出して、俺に呑んでた湯呑を投げ付けやがって。。。それでこの有様なんです。
だから、オイラ堪忍袋の緒が切れて、法華の野郎とは親子の縁を切って来ました。
アッシが、元締の『彦四郎』を、法華ノ長兵衛がスリ替えした生き証人になります。
之から一緒に、法華ん所に談判しに行って、元締の『彦四郎』と一緒に、アッシの『兼氏』も取り戻して下さい。」
そう言って、頭を坊主にしてまで、刀を奪い返すと言う、小平の願いに、長兵衛は強く打たれるものを感じ、同時に謎が解けて嬉しかった。
長兵衛「小平、お前さんが俺と同じ気持ちで、法華ノ長兵衛から家宝の刀を取り返したいと言う気持ちは伝わったが、
お前さんが、俺の味方で、本当に法華に盃を返して、俺の所へ来たという確証がない。
気の毒だが、お前さんを無条件に信じてしまう程、俺はお人好しには出来ていないんだ。済まねぇ~!」
確かに、昨日、喧嘩場で初めて会った俺が、頭を坊主にして来たからって、俄かに信用できないと言う幡随院の気持ち、小平は理解できた。
其れでも、何んとしても、この幡随院長兵衛に縋って、家宝の刀を取り戻したい!そう、小平が願っていると、その思いが神に通じたのか?!
この場に、山脇荘右衛門が、小平の内儀(にょうぼう)お葦を連れて、幡随院の元を訪ねて来たのである。
山脇「御免、元締はご在宅でしょうか?」
取次「ハイ、ですが、来客中で」
山脇「来客というのは、坊主頭の庵崎ノ小平って野郎じゃないか?」
取次「左様です。」
山脇「それなら噺が早い。その小平の内儀殿を拙者が連れて来たと、元締に伝えて呉れ。」
言われて取次の若衆が、長兵衛にこの事を伝えると、長兵衛も、小平も、驚いた様子になる。
そして、長兵衛が二人を奥へ案内するように、取次に申し付け、二人が奥へやって参ます。
山脇「之は、元締。昨夜はどうも仲人の申し出を聴いて頂き、忝のう御座います。」
長兵衛「何んの、こちらこそ。先生が仲人を買って出て下さったお陰で、無用な殺生せずに済みました。」
山脇「いえいえ、たまたま拙者も𠮷原(なか)に居たんで、あの騒ぎだ。出て行かざるをえぬ。」
長兵衛「それより、どうして先生の方がこちらに、今、正にこちらが出向こうとしていた矢先で御座いました。」
山脇「左様であろう? だから、入れ違いにならぬ様に、慌てて罷り越した。さて、此方は、そこに居る坊主の小平の内儀、葦殿だ。
葦殿の実家は、元は武家の分家で、御家人株を持っておられたのだが、時節柄、直参といっても百石にも満たない禄では食うに困る。
由えに、葦殿のご実家は長屋借家の宿貸商売をされていて、その実家から形見分けではないが、家宝の刀を譲り受けられたそうだ。
その方の事で、亭主の小平が法華ノ長兵衛と命のやり取りにたっているから、どうか先生!私と一緒に幡随院の元締を訪ねて欲しい。
そう、元四ツ谷小町の葦殿に泣いて頼まれたら、この山脇荘右衛門! 漢として放っては於けない。という訳で此処にお連れした。
拙者も、葦殿のご実家には何度かお邪魔して、その『兼氏』は見せて頂いていたので、元締が見せて下されば拙者と葦殿で鑑定しよう。
ただ、鑑定しても元締には納得感が無かろう。そこで、刀身の長さ、幅、及び刃毀の位置まで、事前に特徴を申すので、
それを現物と比べて確認なされば、元締にも、納得して頂けよう。如何でしょうか?そのような方法で。」
長兵衛「其れは、忝い。早速、お願い致します。」
そう云うと、まず、山脇荘右衛門と、お葦の二人が相談し、紙に『兼氏』の特徴を予め書き出し、それを長兵衛が現物で確かめるというやり方である。
長兵衛「これは非の打ち所がない! 長さと幅は『分』までは当たるだろうと思ったが『厘』の位を云い当てるとは。
また、傷も位置と研ぎでどう仕上げ、それを素人目に判らぬよう誤魔化しているかまで云い当てれるものなんですね、先生!改めて貴方の眼力には感服致しました。」
山脇「これで元締、小平の料簡を信じて頂けましたか?」
長兵衛「勿論です。さて、早速、法華ノ長兵衛を懲らしめに参りましょう。小平、お前も付いて来い。」
小平「ヘイ、有難う御座んす。」
長兵衛「流石に、その墨衣では具合が悪かろう、俺のを適当に貸してやる。そして、刀は之を使え。」
と、長兵衛が小平に渡した刀は、『坂東太郎卜傳』の一刀。そして、自身は『相州住秋廣』の一刀を持ちまして、
後ろ鉢巻たすき十字にあやなしまして、手甲脚絆に草鞋履き、そして着物の裾を尻端折り。
長兵衛「さて、お葦さん、この家にはお前さんに着せてやるような着物が御座んせん、貴方の分は、之で買い求めて下さい。ついでに、頭も結直した方が宜い。」
そう言って、お葦に三両の金子を渡し、出撃の準備は整いまして、長兵衛、小平の二人、そして山脇荘右衛門の三人で、
同じ町内、花川戸の法華ノ長兵衛の家へと、談判に出掛けようという、之からが面白い所なれど、今日は時間が一杯!一杯!
さて、次回、法華ノ長兵衛と幡随院長兵衛、二人の対決は如何に?!乞うご期待で御座います。
つづく