『天保水滸伝』の連続読みの二回目で、平手造酒、大酒呑みの噺だからと、ゲストは蜃気楼龍玉師匠でした。
1.平手の破門…春陽
マクラでは、「昨日は落語カフェで三遊亭天どん師匠がゲストだった」と言う春陽先生。天どん師匠が、釈台と張り扇(天どんさんは『棒』と呼ぶらしい)を使って何にか落語をやり切ったそうです。
想像すると、上方落語風に、見台と小拍子みたいに使えば、其れなりには出来そうですが、春陽さんが仰る様に意外と天どん師匠は器用だと思います。
そんな噺から、いよいよ来週念願のワクチンを春陽先生も、一回目を打つそうで、渋谷区民だからNHKが接種会場なんだとかぁ。
是で、晴れて聖火ランナーに近付けると言ってましたね。あと、バッハ会長を広島、長崎ではなく、熱海の盛り土土石流現場へ連れて行け!!が、受けました。
出来るならば、炎天下の行方不明者捜索ボランティアで働かせてやりたいと、私も思いました。
さて、平手造酒の腕事件。是が元で千葉周作道場を破門に成るのですが、此の獄門首の死体から腕を盗むと言う、
実に陰惨な噺を、如何にコミカルにやって、お客さんが引かないように演じるか?!此処が講釈師の腕の見せ所なんですが、上手いですねぇ春陽先生。
跡で仰っていましたが、此の獄門死体からの『腕』を盗むッて噺は、史実らしいと春陽先生、
江戸時代の無職渡世人物傳みたいな本で、読んだ事があるそうで、ただし、この噺の様に遊廓で冷やかして、牛太郎に腕を抜かせて揶揄ッた訳ではなく、
此の腕を、お湯屋に持ち込んで、湯船にプカプカさせて遊んでいたらしいのです。是は、却下されて当然です。私もそう思いました。
2.千両みかん…龍玉
足立区は最寄り駅が『西新井』の龍玉師匠。東武の急行に乗れば、北千住、曳舟と二駅なので十分ちょっと(調べたら十二分でした)。
非常に家から墨亭は近いけれど、初めて来たと云いながら、墨亭が駅から遠いとボヤいておられました。
確かに、今日の炎天下、曳舟駅から墨亭までは更に遠く感じてしまいました。
そうそう、兄弟子、馬石さんが墨亭で朝会している噺も弄りました!朝っぱらから、『豊志賀』や『お札はがし』は馬石兄さんらしく、
「朝からいきなりステーキ!」みたいな感じだと、上手くdisりますね、龍玉師匠。
さて、『千両みかん』。雲助師匠、白酒師匠では何度か聴いていますが、龍玉師匠では、多分、初めて?と思います。
この噺は、やっぱり番頭さんのキャラクターですよね。そして勿論、白酒師匠の番頭さんとは全く違うキャラクターでした。
白酒師匠の番頭は、強気と言うのか?サディスティックな番頭さんで、若旦那を親旦那が甘やかし過ぎるから、気の病何んかに掛かるんだと、
ガンガンスパルタにブツかるタイプなんですが、龍玉師匠の番頭は、間抜けなオウム返し魔みたいな変なキャラなんですよね。
其れで居て、メチャクチャ小心者で臆病なのが、三枚目で、龍玉さんらしい番頭何んですよね。
アッ!そうそう、若旦那の気の病の喩えで、『心ん中の徳利』と言う表現があり、喉に魚の骨が刺さっている様な感じの喩えとして、
此の徳利の詮を、番頭さん!抜いて呉れと、親旦那が言い出す場面があり、他の咄家さんの『千両みかん』では聴いた事がない表現で、印象に残りました。
『千両みかん』って『崇徳院』よりは、『擬宝珠』に近いけど、メジャーな感じの噺で、番頭さんが、親旦那、若旦那の上流階級には成れません!的な卑屈さが、最後のオチに向かって高まって行きますよね。
そうだ!あと、龍玉師匠の『千両みかん』は、最後のみかん三房を、若旦那が「父と母、そして番頭お前に!」とは言わずに、
「父と母、そしてお婆様へ!」と言って三房、番頭に渡すんですよ。確かに、之の方が番頭は三房盗みたくなる衝動が高いと思いました。
この番頭の小市民ぽさが、私の中では、志の輔師匠のが一番自身のキャラを殺した、見本!手本の様な番頭で、
一方、亡くなった喜多八師匠の番頭さんが、その真逆で、自分のキャラを番頭さんに擬えていて、暗さが堪らない番頭でした。
あと『千両みかん』と言うと、真っ先に思い浮かぶのが、兼好師匠で、この志の輔型と喜多八型の中庸を行く、凄くバランスの良い『千両みかん』をやられてて、実に短く纏めているんですよね。
そして、最後に成りますが、小満ん師匠の『千両みかん』は、マクラの紀伊國屋と紀州みかんの蘊蓄から始まり、非常に格調高い『千両みかん』何で、是非一度聴いて下さい。
3.鹿島の棒祭…春陽
龍玉さんとの思い出に、獅童さん(勿論、中村ではなく柳家)が出て来て笑いました。
barのカクテルの名前に『千両みかん』と言うスクリュードライバーみたいな奴が有ったそうです、獅童さんのやっていたbarに。
あと、和助くんが兎に角、声がデカいって話をする春陽さん。この和助さんの大声とポンコツ噺は、林家きく麿師匠から聴いていますが、
他人のセーターにポップコーンを付けて、毛玉を取るふりをして、そのポップコーンを食べていたと言う和助さんのエピソードはお初でした。
大声はね和助さん、深夜の「日高屋」で、テーブル席で騒いでたら、カウターの見知らぬオジサンから、帰り際に、『お前!煩過ぎ、黙れ。』と凄まれたらしいですからね。
アッ!個人輸入で外国の薬を買う噺は、ちょっと衝撃でした。
さて、『鹿島の棒祭』は、犬に団子を食わせて芸をさせる婆さんが、伯山先生みたいに、コテコテにはしませんが、其れなりに笑えて塩梅が実に良かったです。
p.s. 今日はかき揚げ蕎麦にしたんですが、常にタコが入っているとは限らないのかぁ〜