昨日の土曜日は、墨亭さんで一日講談漬けになる日でした。まぁ、ちょっとだけ落語も在るんですが。。。

その一発目が、田辺いちかさんの会で御座いまして、この様な内容でした。




1.鼓ヶ滝

黒の暑そうな袷ので高座に登場のいちかさん。次の会の都合らしいのだが、それにしても、暑い!と客席まで感じてしまう。

そして、墨亭さんと同じ墨田区在住のいちかさんには、新型コロナウイルスのワクチン摂取巻が、もう届いたそうです。

噂通り、墨田区はワクチン摂取の段取りが宜くて、コロナ対策が進んでいるようです。

そんな話題からコロナ禍で、出来るだけ遠くへ行く電車にあえて乗り、旅気分を味わいながら、車窓を眺めて講談の稽古をしていると言ういちかさん。

稽古に夢中になって気付いたら、『箱根』だったと言ってらっしゃいましたが、此れは小田急で『箱根湯本』までなら、

確かに一本で行けますから、稽古に夢中で『箱根湯本』まで行くケースは有り得ます。

しかし、そこから次に気付いたら、西伊豆の『韮山』に居たと言うのは、乗り過ごしては、単純には行けません。

小田急で『小田原』、そこからJR東海道線に乗り換えて『三島』、更に伊豆箱根鉄道の駿豆線に乗り換えないと『韮山』へは行けないのです。

そんなプチ旅行で、西伊豆を満喫した話から、『鼓ヶ滝』へ。

これは、つい最近、愛山先生で聴いたばかりですが、あまり演者の個性が出る噺ではありませんが、

其れでも、西行の夢に登場する歌道の神様三人に歌を直される西行の天狗の鼻のヘシ折られ方が、なかなか滑稽で良かったと感じます。

いちかさんらしい、ユーモアが、短い噺に込められておりました。



2.玉川上水の由来

此れは、貞鏡さんで聴いた事があるお噺で、江戸の人口が爆発的に増えて、神田上水だけでは水が足らず、

新たに、玉川から十里、新宿、四ツ谷、麹町へと上水を敷く事を幕府は計画。

是を成し遂げた庄右衛門とその弟の清右衛門の兄弟と、松ノ市と言う醜い按摩の物語で御座います。

確か、宝井馬琴先生の十八番の噺で、近年は多くの講釈師が演じているので、聴く機会が増えました。

臭くない人情噺で、私はいいなぁって思います。



3.赤穂義士外傳「忠僕 元助」

この義士外傳の『忠僕』シリーズ。私は三作品聴いた事が御座います。

まずは、この片岡源五右衛門高房の忠僕『元助』の物語で、私はいちかさんで聴く前に神田あおい先生で聴いております。

次は、岡嶋八十右衛門の忠僕『直助』の物語で、私は貞水先生で聴いています。

最後は、大石内蔵助の忠僕『勝助』の物語で、此れは貞寿先生が、真打披露に合わせて演じられ始めた珍品です。


さて、「忠僕 元助」は、討ち入り前夜。佐賀鍋島藩への仕官が叶ったと嘘をついて、忠僕・元助を赤穂へ帰そうとする源五右衛門ですが、

此の元助、なかなか素直に赤穂へ帰るとは言わず、佐賀へお伴しますと言って、暇(いとま)を受け入れて呉れません。

それでもどうしても暇を出すと言い張る源五右衛門。元助は脇差を腹に突き立て、死んで不忠を詫びると言い出す。

その時、源五右衛門の屋敷の戸がガラッと開く。四十七士の一人、武林唯七(たけばやしただしち)と木村岡右衛門が訪ねてきたのだ。

そそっかしい武林は元助が主人を斬ろうとていると勘違いして、元助の横ッ面をボカンと殴る。

何をするんですと、元助は事情を話すと、武林はそうであったかとその忠義ぶりにホロホロと涙する。

源五右衛門、武林と木村の三人は、話し合ってこの忠僕ならば、差し支え無かろうと、吉良邸討ち入りの事情を説明すると、

この忠僕、元助は主人の事情を全て呑み込んだ上で、酒肴を用意して、源五右衛門、武林、木村の三人に最後の宴席を用意します。


そして、討ち入り本懐を果たして、泉岳寺へと引き上げる四十七士が、回向院の門前で休息している処に、

この元助が風呂敷積みを抱えて現れて、皆様、ご苦労様で御座いました!と、沢山のみかんを差し入れます。

しかも、皮を全て剥き、筋を丁寧に除いてたるみかん。浪士たちは、是を貪るように食べて喉を潤したと申します。


このみかんを差し入れする『元助』と、刀鍛冶になり主人の刀を研ぐ『直助』が、忠僕の話では双璧かと思いますが、

毎度、思うのは、特に『元助』の場合は、主人が片岡源五右衛門なんだから、源五右衛門の松の廊下刃傷に際し果たした役割や、

討ち入りの十文字槍を駆使しての活躍ぶりなどをもう少し説明する場面があってもよくない?と、思います。

あと、片岡源五右衛門を、武林唯七が訪ねて来るのは、お定まりですが、木村岡右衛門が付いて来るのは、お初かもしれません。

と言うのは、赤穂義士は討ち入りに際して、表門も裏門も、三人一組の隊を編成させて、討ち入りに望んでいて、

片岡源五右衛門と武林唯七は同じ組なんで、極々自然ですが、木村岡右衛門は、別の組なので、

いちかさんの説明では、大石内蔵助の命令で、浪士の借財を討ち入り前に綺麗にする為の見廻りで、片岡の長屋を訪れた設定でした。

個人的には、木村岡右衛門ではなく、組が同じ富森助右衛門にすれば、訪問がすんなり説明がつくのにと思ってしまいました。


いちかさんの次回墨亭は、八月十五日です。