小満ん師匠フアンが小雨の中集まりました!満員御礼。 
今回は、こんなネタが並びました。


・看板のピン~へっつい幽霊

・泣き鹽(塩)

お仲入り

・湯屋番


1.看板のピン~へっつい幽霊 
面白い構成でした。まずマクラは「みすゞ会」金子みすゞさんを愛する人が集まる会、 
この会に、岡崎へ行った話をされました。金子みすゞさんといえば、矢崎節夫さんですね。 
小満ん師匠と矢崎さんの対談も在ったそうで、「みすゞ会」の皆さんは、 
初めて落語を聴くお客さんが殆どだったそうで、「日本は狂っている!!」と言う小満ん師匠。 
そして、矢崎さんに「これだけみすゞファンが居るのに、子供さんにみすゞと名付ける人は居るのか?」 
そんな素朴な疑問をぶつけると、矢崎さん曰く「親は自信がないようで、なかなかみすゞとは付けません」 
つい最近も、みすゞと付けようとした親が居たけど、結局、付けられず、逆にして「すずみ」と付けたとか。 
実に、夏向きな名前ですこと(笑)

三ドラ煩悩と言いますが、これは「みすゞ会」の皆さんの前ではできない噺です。と笑いを取る小満ん師匠。 
サイコロを使う博打、1つ:チョボイチ、2つ:丁半、3つ:狐、4つ:酔いどれ、5つ:天災と言うらしい。 
そんなマクラから『看板のピン』へ。隠居の親分が、どっしりしていていいですね。仕草もカッコイイ!! 
この噺は、目が見えないと言いながら、親分は壷をカッコよく振ってみせないとダメですね。

そんな『看板のピン』から、そのまま、小銭を儲けた博打打ちが、賭場帰りに、 
久しぶりに銭を持ったから、これを形に残したい!! 道具屋へ行ってあれこれ見て、 
この博打打は、黒光りする“へっつい”を気に入り、道具屋と交渉するが、 
このへっついは幽霊が出るいわく付きの代物だと、道具屋は売却を渋る。 
それを無理やり買い取る博打打、そして、その夜に幽霊が出て、 
死ぬ前にへっついに塗りこんだ百両の話をします。若旦那は出ないパターンで、 
最後は、幽霊が丁半博打で負けて、「これで、お釈迦になりました」とサゲました。


2.泣き鹽 
「縁は異なもの味なもの」この“エン”はシオですね。と噺に入る小満ん師匠。 
『泣き鹽』は、米朝師匠で30年以上前に聴いた記憶があります。 
これを米朝師匠以外でやる人があったとは… 意外でした。 
50代後半の米朝師匠は、自分で復活させた噺を、ラジオの収録などでやっておりました。 
『泣き鹽』だけでなく、珍しい短い噺ばかり、一日4席、5席やってました。

さて、小満ん師匠のマクラ、塩の使い方で、料理の味が決まる。 
イタリアンでは、おうような人にオリーブ、ケチには酢、 
そして勘の良い人にだけ塩を使わせるそうです。 
それだけ、塩を扱うのは難しい。そんな話から話題は日本の塩事情へ。 
日本だけ海から塩を取る。海外は岩塩です。塩土翁が古事記にも出てくる。 
ただ、現在は神事として神社がやるぐらいだとか。

塩田製法の歴史と、赤穂の塩がいかに珍重されていたか? 
そして、日本の塩は、電気製法による専売にしていた話。 
これによって本土復帰した沖縄は、豚肉を塩漬けにするのに困った話。 
やっと、数年前に専売制を止めた話をして、沖縄の塩は美味い! 
そして、江戸時代、塩売りは、爺さんの仕事だったと言って塩売りの声。 
売り声が素晴らしい!!小満ん師匠だなぁーと思いますね。

そして、マクラの最後に、漢字の“鹽”という字の由来を語りました。 
「皿」を船に見立てて、シオの詰まった荷が「鹵」です。 
これに、製造元の藩の印の旗を立てる、それが「ヶ」なんですね。 
そしてそして、シオを番する役人が「臣」で、家臣なのです。 
そんな由来から、シオという字は、“鹽”書くんだそうです。勉強になります。


3.湯屋番 
マクラから50分タップリの『湯屋番』でした。実に小満ん師匠らしい一席です。 
まずは、居候の川柳をいくつか紹介してくれました。

居候 置いて合わず 居て合わず 
居候 角な座敷を丸く掃き 
居候 足袋の上から 爪をとり 
居候 嵐に 屋根を這い回り 
居候 精事無しの 子煩悩 
居候 ある夜の夢に 五杯喰い


「居候」は、手紙の中に書いた「居て候」からきているらしいです。

勘当の若旦那を、出入りの職人親方が預かっている。 
居候の若旦那に対して、親方の奥さんが不満を爆発させるのだが… 
二階から昼過ぎて降りてくる若旦那、親方が茶を入れながら意見をするのだが、 
若旦那は、このお茶に対して文句をタラタラ言って、親方の話など耳に入らない。 
この親方には主導権を渡さない若旦那が、小満ん師匠らしく楽しい展開です。 
そして、親方のお上さんの愚痴を、「雌鶏のさえずり」と言う若旦那。 
仕舞には、「雌鶏だろう?ちょいと舐めたが身の因果、諦めろ!」と言う。 
そうそう、私が一番ここで面白かったのが、お上さんに対しての若旦那の一言。

「あの体で、拗ねるんだよ。拗ねる体か???」 
また、豆腐のお遣いのところも、小満ん師匠らしかった。 
横丁の豆腐屋ではなく、振り売りの豆腐やから買ったら、 
豆腐を見ただけで分かる布目が違います!!と、言いやがる。 
お前は、豆腐博士か?!そして、堅い豆腐じゃないといけない!と云いやがる。 
縄付けて引っ張れるのは、豆腐じゃねぇーやい。

それと、皆さんやる飯を削ぎ飯のコキ飯で給仕する場面でも、 
あの雌鶏、新藤弦番でございます!!みたいな格好で、お給仕する、 
そしてお櫃の蓋を開けた時、湯気を凄い顔して目で追うの。 
もう、練磨だねぇー。香具師がガマの油を貝殻に盛るみたいに、 
薄ーく薄ーく乗せるんだよ。どこで身に付けた技なんだろう?

そうだ!この後の展開は、初めて聴きました。あまりに腹が空いたから、 
近所の清元の師匠のところへ、魚の骨が喉に刺さったふりをして、 
象牙のバチを喉に当てると、骨が引っ込むからバチを貸してくれと云う。 
すると、清元の師匠は、象牙のバチと日ごろ吹いてるものが、象牙じゃないので、 
それを気取られまいと、骨を取るのなら、おまんまを飲み込んだ方が早いからと、 
台所に案内されるので、ここぞとおまんまを掻き込む若旦那でした。

更に、ここから『鷺取り』のような展開になり、珊瑚樹、雀、鳩を取る話になり、 
家に戻りなさいと言う親方に、奉公すると言い出して、湯屋「梅の湯」への勤めたいと云う。 
なぜか?六代目圓生と同じ“梅の湯”でした。ここで、梅の湯の女将さんへの思いを、 
親方に対してとうとうと語る若旦那。そして、町内の顔役の親分から紹介で勤めに出ます。 
ここからは、基本的に、皆さんがやる『湯屋番』なのですが、小満んオリジナルのクスグリも出ます。 
岡惚れする妾への妄想の中で、石鹸はLUCKをプレゼントすると云う若旦那!! 
また、自宅を若旦那が訪問すると、妾が泳ぐように出て来るのだが、その修飾に、 
利根川の鰻みたいに泳いで出る!!このフレーズも良いです。 
勿論、さてその次はの、煙突小僧煤之助もやりました。

最後のオチへ向かう、下駄が片方なくなったとクレームを付ける客に、 
木村重成をご存知ですか?貴方も、重成のようにあきらめなさいと云う若旦那。 
すると、クレームを付けた客が、木村?そいつは銀座のパン屋か? 
あそこのヘソのアンパンは美味い!!とか言い出すのも小満ん師匠らしかったです。 
50分、まったく退屈しない『湯屋番』でした。