ある友人から「行けなくなったので…」と、頂いたチケットを持って、
ムーブ町屋にあるホールで、談幸師匠の独演会へ行きました。
町屋へは、荒川のホールへ行くのに、都電荒川線乗換で使うけど、
このホールに行くのは、本当に初めてでした。
土曜日のお昼15時開催の談幸独演会、こんな演目でした。
・寄合酒 … 幸之進
・千両みかん … 談幸
お仲入り
・品川心中(上・下) … 談幸
1.寄合酒/幸之進
初めて聴く二つ目さんです。立川流にありがちな様子の良い二つ目さんです。
ちょっと、人物の演じ分けが曖昧ではありますが、まずまずですね。
ただ、鰹節を手に入れる、鬼ゴッこ。ここで角の仕草をやりませんでした。
あの角は、やって欲しいと思います。談志師匠のようにお茶目な感じで。
2.子ほめ/吉幸
3年ぶりの吉幸さんでした。良いデキに当たり、かなり満足の『子ほめ』でした。
流れとテンポが本当に良かったです。笑いも適度にあり、前座噺ですが、
退屈せずに最後まで聴く事ができました。また、聴きたくなる一席でした。
凄くハデな、蛍光色のグリーンの羽織で登場の談幸師匠。どうしたの?と思ったら、
何でも、その羽織は、談志師匠からの形見分けの品だそうです。
それにして、なぜ、この羽織?と、思うくらいにハデでした。笑点時代のか?
そう思うぐらいの配色でね。この後、談幸師匠がその羽織の思い出を語りました。
前座時代、師匠の独演会の衣装を選ぶのも、前座の大切な仕事だったそうです。
そして、毎回、似たような組合せになるので、たまには気分転換に良いだろうと、
このハデな蛍光グリーンの羽織を選んで、現場の出番の時に、初めて師匠に見せ、
それを着せようとしたところ、「バカ野郎!こんな羽織を着て出られるか?!」
と、叱られ、談志師匠は羽織を着ずに高座へ上がったそうです。
それから40年。形見分けにと呼ばれて、その羽織を見付けた時に、
思わず懐かしくなり、これを是非、頂きたいと、師匠のご家族にお願いしたそうです。
談幸師匠の珍しい仕事に、札幌の時計台での落語会というのがあったそうです。
札幌の時計台には、隣接する多目的ホールがあるらしい。私は初耳でした。
実に良い趣きなのですが、一つ大きな欠点が。それは1時間に1回鐘が鳴るのです。
だから、その音を避けて、噺と噺の合間に必ず鐘が鳴るように、進行する必要があるのです。
という事は、八代目文楽のように、30秒と噺の寸法が変わらない事が大切ですね。
つまり、立川志の輔のような人には、絶対、この会場は使えないという事になります。
かなりの時代が付いた家で、家に大きな仏間が。これが、小さい寺の本堂に匹敵する大きさ。
その仏間を、楽屋に使ってくださいと提供されて、あまりのデカさにくつろげない談幸師匠。
開演の20分前になったので、洋服から着物へ着替え始め、パンツ一丁になったところで、
「おじゃまします」と、襖が開く。それは見た事の無い老婆で「すいません、見せてください!!」と、言う。
そして今度はやや照れながら「違うんです、貴方のじゃなく、仏様です」と、言ったとか。
流石に、談幸師匠も、パンツは脱がないよ、と思ったらしい。
そんなマクラから地方地方で、ご馳走になるご当地料理や産物が、地方公演の楽しみだと語り、
そして、地方で食べた物を、東京に帰ってから、お取り寄せして食べたりするが、
やっぱり、その土地の空気の中で食べた記憶にはかなわないと云う。確かに!と、私も思います。
更に話は、昔のトマトは良かった!とか、昔のほうれん草はなどと、昔を懐かしむ人が多い。
平成にあっては、昭和のレトロを懐かしみ、昭和では、大正ロマンを懐かしみました。
そして、明治の人は、徳川様の時代を… おそらく弥生時代の人は、縄文時代を羨んだだろう。
そんなマクラから『千両みかん』へ。ネタ卸しだったそうですが、かなりの完成度でした。
番頭さんの人のよさそうな感じと、それでいて、少し抜けている感じがよく描けてました。
この番頭さんの人間性によって、この後のみかん探しが面白くなるのでね。なかなか楽しかった。
通しで、最後にお染の髪を剃らせて尼のようにするオチまで演じるのを聴いたのは久しぶりでした。
おそらく、志らくが“ぴん”でやったのを聴いて以来だと思います。
これは、上の心中に失敗した金公が、親分の家を訪ねるところで、切ってしまった方が良いとは思うのですが、
談幸師匠のは、結構、テンポよく下の方も展開し、そんなにダラダラせずにサゲまで行きます。
談志師匠は、『品川心中』は上で切っていて、晩年は、まずやらないネタでしたなぁー
若い頃、まだビデオテープの時代に、木馬館で自分独りで解説まで喋りながら、『品川心中』を演じています。
復刻版で、DVDにもなっていますね。それと見比べると、似ているところと、談幸さん独自のところとあり、
なかなか面白かったです。全部が全部、師匠のコピーじゃありませんね。
お染が、談志師匠ほどプライドが高くないのと、金公が本当にバカみたいな野郎です。