GW期間中の名物になっていると言っても過言ではない笑福亭たまプロデュースの落語会、
「大日本橋亭落語祭」に、今年も行きました。今年で6年目になりました。
今年は、全席座席指定で、ある程度希望を聞いて予約できるシステムになりました。
去年鮨詰にし過ぎた反省からか?ちょうど100名くらいの定員でしたね。
さて、そんな大日本橋亭落語祭 初日、こんな内容でした。

  
・オープニングトーク

・柳家三三「猫の皿」
・笑福亭たま「次の御用日」
・旭堂南湖「軍師幸村」
・三遊亭遊馬「動物園」

お仲入り

・春風亭一之輔「新聞記事」
・三遊亭兼好「紙入れ」

・大喜利「なりきりトークショー」


0.オープニングトーク
全員で、出演順を決めて、なりきりトークのルール説明がありました。
出演順は、例年のジャンケンではなく専用のくじが用意されていました。
そして、この初日の大喜利は、「なりきりトークショー」でした。

「なりきりトークショー」とは?

まず、あらかじめ100人の客が何でも思いつくモノを紙(入場券の半券)に書いて投票する。
投票されたお題を、紙袋に集めておいて、出演者は、このお題から1つ選び、
当たったお題の専門家、人間国宝、漫才師の3つに成り、それに成り切って、
笑福亭たまさんがMCを勤める、エセ徹子の部屋みたいな番組に出てトークショーを繰り広げる。
MCのたまさんの役目が、このトークショーの要とも言えて、MCが如何になりきり者の予想を超えて、
困るような質問をぶつけるか?ここに、この企画の面白さのポイントがございます。

でぇ、この出演順のくじを引いた結果、三三師匠:専門家、南湖先生&遊馬師匠:人間国宝、
そして、兼好師匠&一之輔師匠:漫才というジャンル分けが、この時点で決定。
お仲入りの最中に、客からお題を頂いて、これを大喜利の直前に引いて、なりきりトークショーが展開されました。

  
1.猫の皿/三三
マクラでは、大雪だった3/8に笑福亭たま独演会のゲストに呼ばれていたが、仙台から人形町への移動が、
恐ろしく遅れてしまって、結局、高座へは上がることができなった三三師匠。
新幹線が15時に着くはずの東京に、20時過ぎに着いて、京浜東北線に乗り換えて、
くたくたに疲れて鮨詰の電車に乗ったら、たまさんから電話が掛かったそうです。

「なんだ? 会がもう終わったのか?」と思って、電車内だったので、周りに気を使いながら、
小声で電話に出ると… 元気なたまさんの声で「三三兄さん!お疲れさんです、今、何処ですか?
あのねぇー まだ会やってまして、お客さんが兄さん来ぉーへんから怒ってはって、
それでねぇー兄さん! この電話口で、1分でよろしいさかいに、鰍沢をやってください」とのこと。
仕方なく、周囲を気にしながら、車内放送に負けないように、1分間で分かる鰍沢をやったそうです。
そんなマクラを振って、『猫の皿』をやりましたが、圧倒的にマクラが面白かったです。
 

2.次の御用日/たま
3/8のギャラを貰っていない!!と言う三三師匠に、当たり前や!電話だけの鰍沢ではギャラは出ません、と、きっぱり。
ゲスト三三目当ての客を集客しながら、ギャラを払わずに済んだので、二匹目のどぜうを狙うたまさんでした。
上方ではお馴染みの噺ですね、たまさんのは、天王寺屋藤吉の半被を叩き付けた後の奇声が独特で長い長い!!
でも、この日一番受けてたのは、たまさんでした。

 
3.軍師幸村/南湖
軍師といえば、大河ドラマでもお馴染みの黒田官兵衛、天下三官兵衛と言うのがありまして、
会いたかんべぇ、見たかんべぇ、逢うて話がしたかんべぇーという百年前のギャグから入る南湖先生でした。
この日の『軍師幸村』は、真田幸村が、紀州九度山へ隠れてうつけのふりをしながら、
徳川方を油断させておいて大阪城へ入場するお噺ですが、東京の講談師が演じるのとはやや赴きが違います。
笑いがやっぱりありますね、かなり。東京の講談は、修羅場を読んでキメ台詞が売りですが、
やっぱり上方は、適度に笑いを入れないと、先へ進めないのかな?ここに東西の講談の違いを見た気がしました。


4.動物園/遊馬
芸協の寄席でしか見ないのですが、大人数で出ると、こいうネタが多い遊馬師匠です。
たまには、本寸法の噺を聴いてみたいものですが、そいう機会に恵まれません。
この『動物園』は、マクラで遊馬師匠自身も言いましたが、繁昌亭では禁止演目らしいですね。
多分、誰がやっても同じ程度の笑いが取れるので、やりたがる演者が多いので、客がうんざりだからね。

  
5.新聞記事/一之輔
先週聴いた甚語楼師匠のとは、全く違う『新聞記事』でした。これでもか?!ってくらいに変えております。
そして、上方の『阿弥陀池』と同じくらいのテンポの良さが、一之輔流なのです。これはこれでアリですね。

  
6.紙入れ/兼好
一之輔さんとの漫才で頭が一杯!!と、いいながら、お題を「小三治」に想定して練習していたと言う兼好さん。
『紙入れ』は何度か聴いているのですが、あえて、ご贔屓の女将さんと貸本屋の半公が間男する場面は、回想なのです。
ここをいらやしくしない兼好さんの工夫なのですが、この日くらいタップリやるならば、回想でなくても?と思いました。

  
7.なりきりトーク
なりきりトークのお題に選ばれたお客さん、四名には、この会に参加した六人の寄書のサイン色紙がプレゼントされた。
まず、柳家三三師匠、選んだお題は、「桂枝雀」でした。これは、結構ラッキーなお題でした。
次に人間国宝、遊馬師匠が「ピンク・タイガー」そして、南湖先生は「イタリア大使」
「ピンク・タイガー」は、演目『動物園』繋がりなので、ラッキーなのですが、南湖さんの「イタリア大使」は国宝か???
そして、最後の漫才のお題がかわいそうに、漫画「夏目友人帳」のニャンコ先生でした。これは、出演者全員知らない感じ。
かろうじて、たまさんが存在を知っていましたが、兼好・一之輔のお二人は、楽屋でググり捲りだったのか???
この漫画は、『LaLa DX』および『LaLa』で連載中だから、客席の若い女性は若干している人が居て、声が上がりましたし、
中に、このニャンコ先生の携帯ストラップを持っている人が居て、兼好&一之輔は、これを借りておりました。
するとね、南湖さんがオチャ目なんですよ、「誰か?イタリア大使も持ってませんかねぇー」と言ったのです。

 
という分けで、桂枝雀研究家として三三師匠がすぐに登場!!考えたり準備する時間も与えられず、いきなりトークです。
いきなり、「座っていいんですか?スビマセンねぇー」、枝雀師匠のモノマネから軽く掴みを入れる三三くん。
更に、座り方も真似ないと、芸の評論は模倣からだからと言って、着物の裾を思いっきりはだけさせるのでした。
たまさんが「そんなん、モノマネですやん、評論家であって、モノマネとは…」と言うと、
「調べているうちに、枝雀が降りてきた!!」と、返す三三師匠、なかなか上手い返しでした。
すると、今度は、小佐田定雄さんの事が気に入らないそうですが… と、結構DEEPな質問を飛ばすたまさん。
しかし、小佐田定雄の全てが間違っている!!そう思うからこそ、小佐田定雄の番組に殴り込みを掛けて批判したが、
ことごとく反論を浴びせられ、完全に論破されて、這う這うの体で退散して来ましたと言う三三くんの機転が素晴らしかった。

更に更に、一番売れた本は?と問われて、「桂枝雀の全て 誕生から三歳まで」です、と答える三三師匠。
これには、たまさんも「三歳までの本がいっちゃん売れてるって、どんな内容なんですか?目次だけでも言ってください」と言う。
すると、三三師の返しがまた絶妙、「桂枝雀誕生、桂枝雀一歳、そして戻って枝雀0歳」と言ったところで、
たまさんがすかさず「そんなぁ、一歳から話が0歳に戻るんですか?」と突っ込むと、これにも絶妙の返し、
「そうです!戻るんです、この構成の方が緊張するでしょう、そうしておいて、二歳・三歳と緩和するんです、笑いは緊張と緩和です」

このままでは、やられると思ったのか?たまさんが話題を変えます、「小三治さんのCDもよく聴かはるそうですね?」
すると、調子に乗った三三くんが「ハイ、あれは悪い見本として聴いています、アレは駄目、緊張と緩和がない」
たま「どんな風に?」三三「若い頃は、ずーーーっと緊張、最近は、ぜーーーーん部緩和、あれはダメ!ダメ!」
世間は知らないから旭日章受章とか上げるでしょう、お上は、本当に芸が分かっていない!!と、言いました。
熱弁を振るう三三師に、最後の振りが凄かった、たまちゃんの最後の無茶振りが、「ラップのCDを出さはったんですよね?」
かなり動揺する三三師をよそに、たまさんは続けて、「今日、ここでそのラップの曲を歌って下さい」と言うのでした。

それでも、三三くんとしては目一杯のラップを披露できましたね、この日の三三くんは実に楽しそうでした。
この会は、毎年、三三くんは日常よりリラックスして楽しんでいる様子が伺えて、実に素晴らしいと思います。
たまさんも詰めが甘いのは、ラップまで言うなら、枝雀の出囃子、昼ままでラップさせないと!!

続いて仲のよい二人の人間国宝として、ピンクタイガー研究家とイタリア大使研究家が登場。
これも、まぁーまぁー面白かったのですが、先の枝雀研究家ほど、話が膨らまないのでね。
最初が良すぎて、少し損な感じがしました。ただ、それでも南湖さんのイタリア人気質が笑えました。
たまちゃんが何を聞いても答える前に、最前列の女性のお客さんをナンパするんですよね。
そして、話題がなぜか女性のバストの話になり、最後はエロ話ぽくなり、客が引き気味で終わりました。

最後に登場が、兼好&一之輔の漫才コンビ、一之輔は元落語家、兼好さんは元太神楽出身の漫才師と言う。
ここで、漫才コンビのお生は?と、たまさんが質問すると、兼好さんが「猫柳」一之輔が「川柳」と答えて、
漫才のコンビ名は、猫柳川柳!! どっかで聞いたような名前なのである。ここで、一之輔には軍歌を歌って欲しかった。
この後、漫才も実際に披露、“にゃんこ先生”のキーワードに探し者をするネタなのだが、
夏目友人帳ではなく、ハローキティーや、サザエさんのたま、旭堂南湖先生、いなかっぺ大将だったりするボケの後、
オチは、漫才師の「にゃんこ&金魚」先生に漫才は任せましょう、で決めました。結構、よくできてました。
 
さて、この会、もう一回、5/6にも開催されます、6日の大喜利は、イロモネアです。
当日券が若干出るそうです。観たい人は、早目に日本橋亭に行って下さい。