
横浜にぎわい座・地下での三遊亭萬橘師匠の独演会です。
二つ目・きつつき時代から続いている会で、名前だけ真打昇進と共に、
この「よこはま萬々」に変わりました。
ネタ卸し1席と、得意のネタ2席の合計3席やる独演会でして、
今回は、『ねずみ』を掛けるというので、ほぼ満席でした。
私は、友人でありにぎわい座の重鎮の一人S氏に、
席取をお願いして、中央の最前列を確保!! Sさんありがとうです。
二つ目・きつつき時代から続いている会で、名前だけ真打昇進と共に、
この「よこはま萬々」に変わりました。
ネタ卸し1席と、得意のネタ2席の合計3席やる独演会でして、
今回は、『ねずみ』を掛けるというので、ほぼ満席でした。
私は、友人でありにぎわい座の重鎮の一人S氏に、
席取をお願いして、中央の最前列を確保!! Sさんありがとうです。
さて、真打・萬橘となって、二回目のこの会、こんな内容でした。

1.牛ほめ
マクラで、冬季五輪の浅田真央チャンについて触れる萬橘師匠。
ちょっと、説明を焦っていい間違いが多い。間違うと連鎖するようで、
上滑りぎみに、話を強引に進めるのです。笑いは起きていますが、
全体の意図が伝わりにくい状態。そこへ客席から「スベってるなぁー」の声。
本人は、折れそうになる心を、なんとか奮い立たせて、マクラを続けるのでした。
これも修行ですね。頑張ってください、萬橘師匠!!
真央ちゃんはフィギュアの選手なので、“走り”ません。
“演技する”と言うべき箇所で、“走る”と言うから変な空気になりました。
そんなマクラからヒーローと言えば、落語の世界では“与太郎”と振って『牛ほめ』へ。
萬橘さんの『牛ほめ』は、少し変わっています。普通は、父親から全部指図されて、
佐平叔父さんの家を褒めに行くのですが、家の褒め方だけしか習わないのです。
「あれ?秋葉様のお札が仕込んでないぞ?」と、不安になりますが、それで良いのです。
秋葉様のお札も、牛をほめなさい!も仕込まれずに与太郎は、叔父さんの家を褒めに行きます。
そして、与太郎が単なるバカではない風に、萬橘師匠は演じますね。
そうです、志らく師の考え方に近い与太郎です、哲学者的であり思想を持っています。
だだ、同じ単なるバカではない与太郎でも、ギャグのセンスが志らく師匠とは違います。
どちらかと言うと、白鳥師匠並みに突飛です。意表を突かれて笑ってしまいます。
2.粗忽の釘
SNSって知っていますか?僕、ドラゴンクエスト・モンスターズをやっているんですが…
と、マクラを振ったのですが、お客さんの大多数が知らないので付いて行けず、
このマクラも、結構、寒い結果になってしました。メガネ掛けているんだから、
客層を見て喋りなさいよぉーと、思いましたね。それでもプロだから強引に話は、
最後の結論まで持っては行きましたけどね。これは立派でした。
なんでも、DQ・モンスターズは、自分が倒したモンスターだけが「仲間にして下さい」と言って、
冒険の旅に加わるそうなのですが、これは、咄家の入門の図式に似ていると言うのです。
つまり、師匠の才能で御せるヤツしかだいたい弟子には入ってこない。
だから、咄家の弟子は、概ね、ダメなヤツばっかりだ!と、言っておりました。
そこから、電車でのエピソードを2つ紹介して、『粗忽の釘』へ。
これは、比較的古典通りに展開しました。そして主人公の粗忽オヤジが、
女房に、引越しの準備中から「今日は久しぶりに、お前に男をみせてやる!」
このフレーズを何度も使うのですが、ことごとく失敗に終わります。
それでも言い続けるのです、「お前に男を見せてやる!」を。
大爆笑でした。萬橘師匠に非常に合った噺です。
3.ねずみ
この日のネタ出しされた、ネタ卸しのネタがこの『ねずみ』
家で稽古していると、奥さんから「できたのかい?『ねずみ』」とプレッシャー掛けられていたそうです。
そして、漸く今朝自分なりのやり方が確立できたので、
「できだぞ!真央チャンのフリーの演技みたいに霧が晴れた」と奥さんに言うと、
「えっ!本当なの?ショートプログラムにならなきゃいいけどねぇー」と返されたそうです。
だから「縁起でもない事言うな!フリーの演技だ!」と言うと、更に奥様が、
「まぁ、どっちでも真央ちゃんの様なだけに、スベるわよ」と言われたそうです。
上手いなぁー萬橘夫人、元落研なのかなぁー
そんなマクラから『ねずみ』へ。これまた、萬橘師匠独自の組立てでした。
甚五郎が、かつてのような情熱でノミが持てない。そう言って、
一種のイップスですね、そんな状態で旅をしているのです。
自分探しの旅です。輝いていた時代に彫った仏様を持って旅しています。
そこで、宿屋の客引き小僧:卯ノ吉と出会います。
卯ノ吉が、自分の家の仏壇に祈る的がないから、その仏様を下さいとねだりますが、
甚五郎は、今はやれないんだと、これを断るのです。
この後、甚五郎は卯ノ吉の計らいでねずみ屋へ泊まる事になるのですが、
既に、向かいの寅屋には、飯田丹下が彫った虎の看板が掛かっています。
腰の抜けた父親卯兵衛の応対は、ほぼ他者が演じるのと同じなのですが、
腰が抜けた理由の説明、なぜ寅屋を乗っ取られたか?
最終的になぜ、寅屋の物置でねずみ屋を始めることにしたのか?
などなど、普通は20分くらい掛けてやる説明が5分くらいで終わります。
後妻を貰ったら、番頭の牛蔵とグルになり、乗っ取られたくだりも出てきません。
それどころか、七夕の宴会客に突き飛ばされて、階段落ちして腰が抜けたのもナシです。
ただ、サラッとした卯兵衛親子の身の上話に打たれて、
甚五郎は、ねずみ屋への集客目的でノミをもう一度持つ決心をします。
そして、大切にしていた仏様を卯ノ吉にやり、ねずみを一心に彫ります。
彫ったねずみが動く(いごく)のに、卯兵衛親子がビックリするのですが、
これを旅籠の宣伝の為に外に出すと、動かなくなり、
甚五郎が「なぜ動かない?!あんな虎に怯えるのか?お前は!!」
と、ねずみに問うと、「えっ虎??? 猫かと思った」でサゲです。
実にシンプルなのですが、やっぱり卯兵衛親子の身の上話は、
もう少し筋立てて、聴かせて欲しいですね。
でないと、甚五郎の決心まで、薄く感じてしまいます。
今回は、ネタ卸しですから、掛ける度に進化して行くのだと思います。