素晴らしい陽気の中、田辺いちかさんの会へと墨亭に行きました。
1.依田孫四郎『下郎の忠節』
マクラでは、今日寝不足なのは、安売りキャンペーン中の電子書籍百冊を選ぶのに、あれこれと深夜まで試し読みをしていたからだと言ういちかさん。
何でも70%offらしいのだが、考えてみると、欲しい本が百冊もある人は、得するのかしらないが、30冊に満たない人は、本屋の計略にまんまと乗せられている。
何でも、前回も仰っていましたが、いちかさん!小泉八雲、ラフカディオ・ハーンの熱烈はファンだと言う事で、
百冊の本の目玉が、ラフカディオ・ハーンの東京大学での講演を纏めた本なんだそうなぁ。
録音、録画、速記なんてものはなく、東大生が撮ったノートから編集して起こした本だと仰ってました。
試し読みしたら、小泉八雲は現代のLGBT問題にも通じる男女同権、特に男性諸君!女性を大切にしなさい!と、説いていたらしいです。
あと、ラフカディオ・ハーンは、焼津の海が好きで、焼津の何とか言う漁師さんと仲良しだったとか。
この二人の友情も、身分を越えた相手を敬いリスペクトした宜い距離感が保たれた関係だったらしいです。
どうも小泉八雲と言う人は、19世紀に在ってかなり進歩的な思想信念の持ち主らしく、その辺りが、いちかを虜にしているのだなぁ?と、思いました。
そんなマクラから『下郎の忠節』へ。私はいちかさんの此の噺を聞くのは、三回目で、最初は阿久鯉先生の会の開口一番で、
そして、二回目は南海先生の会の開口一番で聴いておりまして、いちかさんではお馴染みのお噺で御座います。
依田孫四郎と言うのは、家康公の家来で酒の上にだらしがなく、女人禁制の城内に女を連れ込んで、
是が家康公に見付かり、手打ちだ!と、言われて謹慎を仰せ付かるが、この孫四郎の忠僕、身分は卑しいけれど、大変主人思いの又七が、
三河奉行の本多重次、別名・本多作左衛門の所に相談に行き、この孫四郎の死罪を作左衛門が助けます。
そして、この後に起きる豊臣と徳川の合戦、長久手の戦いで、この孫四郎が大活躍をして、家康に許されたと言うお噺なんですが、
墨亭の瀧口さんも、いちかさんの寸評で書いておられますが、実に武将の描写、科白廻しが女流講談師としては、男らしくてびっくりします。
神田鯉栄先生は、長脇差の懐中の深い科白廻しに驚きますが、いちかさんは、武芸者、武将の科白廻しが天下一品です。(ラーメンじゃないよ)
2.火消しと男爵
1932年のロサンゼルス五輪の馬術競技、障害飛越(大障害)の個人金メダルを取った西竹一、バロン西と、
火消しが消防隊へと改まった後も、消防士にはなりきれず、鳶口を持って火事場へ出るような松次郎が、
白木屋から火の手が上がった昭和七年十二月十七日、此処で火消しの松次郎と陸軍将校西竹一が出会うお噺です。
何年か前に私は、琴調先生で初めてこの噺を聴いた時は、全く東京五輪2020と結び付けたくなる気持ちは有りませんでしたが、
この日は、このまま東京五輪をやると聞いたら、西竹一や火消しの松次郎は、どう思うだろうなぁ〜と慮ると、自然と涙が出て参りました。