見附ノ友蔵が十手捕縄を代官より頂戴し、二足の草鞋と成って早半月。

特に何事も起こらず平和に過ごしておりましたが、禍は突然やって参ります。

新太「親分!まずい事に成りました。」

友蔵「とうしたぁ?何がまずいんだぁ?!」

新太「其れが、黒駒ノ勝蔵と子分たちが見附宿に居ます。」

友蔵「見たのか?!」

新太「見たのはアッシじゃ有りませんが、有三の野郎と啓助の二人が、ウチの賭場で見掛けています。」

友蔵「そうかぁ、でぇ、何時の噺だぁ?!」

新太「初見は四日前で、昨日も現れたそうで、都合二回です。」

友蔵「四日前から見附宿で、旅籠に泊まっているとするなら、奴等は八人だぁ、もう何処かへ移る頃じゃねぇ〜かぁ?

兎に角、勝蔵を捕まえる気は、無ぇ〜から、連中の事は、うっちゃって於け!嵐みたいなモンだぁ、過ぎ去るのを待つに限るぜぇ。」

新太「其れが、旅籠じゃなくて、荒屋ノ新助の家に居候してやがるんです。」

友蔵「新助と言やぁ〜!!」

新太「そうです。来月親分が正式に盃をやると決めた、あの新助です。」

友蔵「そいつはまずいなぁ、まだ、正式に子分にはしていないが、世間はもう俺の身内だと思っている。」

新太「実のオヤジさんは元役人で、お武家さん。親分が大変お世話に成ったお人だから、あのおバカの新助を身内になさるんでしょう?」

友蔵「あぁ、だから今更、絶縁だとは言えねぇ〜。兎に角、黒駒ノ勝蔵達を家から追い出せと、短い手紙を書くから、之を新助に届けてやって呉れ。」

新太「承知しました。」

と、新井ノ新太が自分で此の手紙を、荒屋ノ新助に届けていれば、こんなぁ間違いは有りませんでしたが、

是を下働きの三下奴、若い峰十に届けさせたもんで、飛んだ災難へと発展致します。


峰十「新助さん、居るかい?」

美鳥「ハイ、どなた?」

と、荒屋ノ新助の内儀(にょうぼう)の美鳥が応対に出ます。

峰十「姐さん、アッシです。峰十です。」

美鳥「アラ、峰さん。うちの人かい? お前さん、頭ん所の峰さんが来てますよぉ。」

新助「峰十がぁ? よお、峰、構わねぇ〜奥に来ねぇ〜」

と、荒屋ノ新助が峰十を奥の座敷へと昇がるように言います。

この新助の家、平家では御座いますが、元武家の屋敷らしく、沢山の部屋数が有り、だから、勝蔵達を居候させる事が出来たのです。

峰十「相変わらず、無駄に広い家だぁ。」

新助「何んだとぉ〜?!」

峰十「いいえ、こっちの噺、独り言です。しかし、この家に夫婦二人じゃ持て余すでしょう?兄貴。」

新助「まぁ、普段は使わない部屋が多くて掃除が大変で困るが、人が来て呑み会、博打なんぞがあると重宝するぜぇ。

今も客人が八人も居るが、この家なら、びくともしない安泰よぉ〜、で、何の用でお前めぇ〜、此処に来た?!」

峰十「へぃ、新井の親方から手紙を預かりました。」

新助「エッ!頭からの手紙?」

峰十「そんなぁ、『カナダからの手紙』みたいに言わないで下さい。ラブレターじゃないんだから。

アッ!其れと手紙は、頭からじゃなく親分、見附の友蔵親分からです。じゃぁ、アッシは仕事がありますんで、これで。」


と、峰十、友蔵の手紙を置いてサッサと帰ります。さて、困ったのは荒屋ノ新助。実は此の新助、『無筆』である。

武家の倅が、読み書きが嫌いで家を飛び出し、賭博打(ばくちうち)、渡世人(ヤクザ)に成ったぐらいだから、基本仮名しか読めない。

それも確実に読めるのは「いろはにほへと ちりぬるお」辺りまでで、「けさよたれそ つねならむ」辺りから先は怪しい。

また、内儀の美鳥も、全くの無筆だから、この友蔵、手紙を飯台の上に置いて、開いて見たが、中は小笠原流の達筆で、全く解読不能なのである。

新助「全く分からねぇ〜。読めたのは『り』と『に』だけでぇ〜」

美鳥「アタイは全く分からないよぉ!!」

新助「親分も、頭も、俺が無筆と知って手紙をよこすとは?」

美鳥「何んかの謎解き、暗号かねぇ?峰さんは、何かぁ言ってなかったのかい?」

新助「何も。親分からだとだけ言って、直ぐに帰って行きやがった。アッ!そうだ、黒駒の親分に読んで貰おう。」

美鳥「アンタ、其れが宜いワぁ!!」


ッて事に夫婦の意見が纏まりまして、一番見せてはいけない相手に、荒屋ノ新助は、この友蔵からの手紙を見せてしまいます。

新助「どうです?勝蔵親分、何んて書いてありますか?」

勝蔵「本当にお前さん、無筆なのかい?役人の倅なのに?」

新助「其れを言わないで下さい。親不孝の証みたいじゃありませんかぁ〜」

勝蔵「証(明石)も、姫路も、神戸もないさぁ。手紙はねぇ、親分さんが、江戸からの珍しい物を、土産に貰ったから食べに来いと、そんな内容だ。」

新助「そうですかぁ、そんな事をわざわざ、手紙にするのか、友蔵親分は。面倒臭いなぁ〜」

勝蔵「そんな事を言うなぁ、お前さんの親分に成る人なんだぁろう?

其れにしても達筆だぞ、この手は。素晴らしい小笠原流の流れるようなぁ文面だぁ。」

新助「それじゃ、早速、親分の家に江戸土産を貰いに行って来ます。」

勝蔵「まぁまぁ、待て。そんなにガッついて行ったら、料簡見られて馬鹿にされる。

此処は四、五日経って、何かのついでに『そう言えば江戸からの土産があると手紙で。。。』と、さりげなく切り出すんだ。」

新助「ギンギラギンに?

勝蔵「そのさりげなくじゃない!!本当に馬鹿で愛でたいなぁ〜貴様は。」

と、言った黒駒ノ勝蔵は、その日の夜のうちに子分を連れて再び天竜川を越えて、

又、遠州から信州側へと戻ると、直ぐに山ん中へと身を隠して仕舞います。


さて、勝蔵が居なく成って二日後。岡田ノ民蔵が、十手を持って、荒屋ノ新助宅を訪れます。

民蔵「おーい!新助は居るかい?!」

美鳥「ハイ、アラまぁ〜、岡田村の親分さんじゃ御座いませんかぁ、ささぁ、草鞋を脱いでお上がり下さい。

アンタ!、岡田村の民蔵親分がお見えですよ!!」

新助「何にぃ?! 民蔵親分がぁ?!直ぐにお通ししろ!!」

民蔵が草鞋を脱ぐと、美鳥が桶に汲んだ井戸水で足を綺麗に洗って呉れて、奥の居間に通されます。

民蔵「久しぶりだなぁ〜、新助。元気にしていたか?」

新助「ハイ、お陰様でぇ。親分もお元気そうでぇ。さて、今日は御用の関係ですか?」

民蔵「実は、此の辺りに黒駒ノ勝蔵が来ていると聞いて、野郎に逢いに来たんだがぁ、お前さん、勝蔵を見掛けちゃいねぇ〜かぁい?」

新助「それなら、一昨日までこの家に居候していましたが、突然、夜中に出て行きました。」

民蔵「エッ!この家に居たのかい?」

新助「ハイ、間違いなく二日前迄は、此処に。岡田の親分、ひと足違いでさぁ〜、惜しい事をしなすった。」

民蔵「そうかい?勝蔵は何処へ行くと言ってた?」

新助「其れが、突然、急用が出来たとか言って、行き先を語らずに出たから、何処へ行ったかは分かりません。」

民蔵「そうかい。急に?」

新助「ハイ、うちの親分。。。いやまだ盃事が済んでないから、正式な親分子分じゃありませんが、

見附の貸元から来た手紙を、代読して貰った日に、急に夜中に成ったら出て行くと言いだして。」

民蔵「見附の貸元って、見附ノ友蔵かい?」

新助「ハイ、左様でぇ。」

民蔵「どんな手紙を代読したんだ?」

新助「大した中身じゃぁありません。江戸土産を食べに来い!ッて内容だと、言ってました。」

民蔵「勝蔵がぁ、かい?」

新助「ハイ、そうです。友蔵親分の手が素晴らしいと褒めていました。

竹本流が流れたような字だとか、何んだとか?そんな事を言っておりました。」

民蔵「其れを言うなら、小笠原流の流れるような字だろう?浄瑠璃語っちゃいねぇ〜よぉ。」

新助「そう!ソレソレ、小笠原!島流しが行く島みたいな名前だから、流れてるんですか?」

民蔵「違うよ!相変わらず馬鹿だなぁ〜お前さんは。さて、その手紙はまだ有るのかい?」

新助「勿論、見ますか?」

民蔵「あぁ、見たいねぇ〜 どれどれ、金二百文の型、半纏二枚、ステテコ三枚也。ムゥ??

之は質屋の貸札じゃないのか?!」

新助「すいません、お恥ずかしいモン見せちまって。。。アッ!之だ。ささぁ、之です。」

民蔵「どれ、おー!之は素晴らしい!大したもんだぁ。渡世人にして於くのが惜しいくらいだぁ。」

新助「そうでしょう。黒駒の親分さんも大層褒めてましたから。」

民蔵「うーん、どうだ!新助、この手紙、俺に一分で売らないかぁ?!」

新助「エッ!買って頂けるんですか?しかも、一分でぇ。売ります。」

民蔵「ヨシ、買った!!」

新助「こ、こ、こっこ、此の手紙は、茹でた卵ですからね!!」

民蔵「何だ、鶏みたいに、コッコと鳴いて茹でた卵とは?」

新助「二度と返らないッて洒落です。返品はダメですから、一分は返しません。」

民蔵「いいとも。じゃぁ〜、あばよ。」

新助「ハイ、有難う御座んした。」


そう言って、友蔵が黒駒ノ勝蔵を探索しているフリだけで、逃していた証拠を民蔵が手に入れてしまいます。

そして、民蔵。この手紙を持って、代官、山上藤一郎の所へ面会に行き、友蔵の怠慢を訴えるのです。

さぁ〜、山上藤一郎は怒り心頭です。直ぐに、見附ノ友蔵に差紙をして、代官所に友蔵を呼び付けます。

しかし、呼び付けられた友蔵は、まさか、荒屋ノ新助が、手紙を民蔵に売ったとは思いませんから、黒羽二重の五所紋付に、博多の帯、仙台平の袴に正目の下駄を履いて代官所へと向かいます。

代官所では、半刻くらい待ちますと、代官屋敷へ廻る様に言われて、

庭を抜けて、白洲として使われる馬場の入口に在る広敷に通されて、又、浪人台が許されて待たされます。

更に、半刻待たされて、漸く、代官、山上藤一郎が苦い顔で登場致しました。


山上「友蔵!大義である。さて、その方に十手を預けて、そろそろ一月になろうとしておるが、

どうだぁ?!黒駒ノ勝蔵一味の行方は知れたかぁ?!どうだぁ、友蔵。」

友蔵「ハイ、山上様。子分総出で探しては居りますが、取方、岡っ引としては、不慣れ故に、なかなか勝蔵の足取り、行方が掴めて居りません。」

山上「誠かぁ?友蔵。」

友蔵「御意に御座います。」

山上「ホー、ソチは拙者を騙すつもりか?!」

友蔵「騙す?之は、お代官様、何を仰っているのか?私、友蔵には理解できません。

この一月、私なりに黒駒ノ勝蔵達を追っては居りますが、何処に潜伏しておるやら。。。まだ、所在すら掴めておりません。」

山上「所在を知らぬとなぁ〜、貴様は、拙者を舐めておるのか?!

拙者が、何も知らないと思うて居ろう?だがなぁ、拙者にも、目となり耳となる『間者』、草が在る!!田分けめぇ。

貴様の子分に、荒屋ノ新助なる者が在ろう?つい三、四日前まで、その新助なる者の家に、黒駒ノ勝蔵一味、潜伏しておったそうではないか?」

友蔵「お代官様!誰がその様な根も葉もない事を?」

山上「黙らっしゃい!!何が根も葉も無いだぁ。 之を見るがよい。之は誰の手だぁ?!」


と、山上藤一郎から差し出された紙切れを見て、見附ノ友蔵は、真っ赤に成って言い訳が出来なくなります。

そして、直ぐに座っていた浪人台を外して、玉砂利に土下座をして、『申し訳御座いません!!』と平謝りに成ります。


山上「友蔵!此の度は差し許して遣わす。由えに心して勝蔵達の行方を探せ!

そして、必ず召し捕るのだぞ!宜いなぁ、友蔵。二度と不埒は許さん、左様心得よ。」

友蔵「ハイ、忝けのぉ〜御座います。」

山上「友蔵、励めよぉ!! 立ちませえ〜。」


山上藤一郎が砂利の上に残して下がった跡、その自らの書面を、鷲掴みにして走る様に立ち去る友蔵。

友蔵「あぁ〜肝を冷やしたぜぇ。人生で之程驚いた経験はねぇ〜。」

そう呟くと、一目散真っ直ぐに荒屋ノ新助の家へ駆け込むと、

友蔵「新助!新助!出て来い、馬鹿野郎!」

と、玄関先で友蔵が大きな声が聞こえて参ります。

新助「おい!お峰、アレは親分の声だ。手紙まで貰って、なかなか見附のお宅に行かないもんだから、怒ってらっしゃる。

直ぐに、俺が行くから、お前は茶の用意をしていろ!茶菓子は? 其れで宜い、其の羊羹で。」

新助、内儀(にょうぼう)に茶の支度をさせて於いて、慌てて玄関へと飛び出して参ります。

新助「親分!ご無沙汰しております。すいません、わざわざお手紙を頂戴しながら、ご馳走に成りに参りませんで。」

友蔵「何の噺だぁ?馳走がどうした?!」

新助「お手紙によりますと、珍しい美味しい物が有ったんで、御座んしょう?」

友蔵「俺がよこした此の手紙!!貴様はどうしたんだぁ?!」

新助「オヤァッ?何故、親分の所に其の手紙がぁ?!」

友蔵「お代官に呼び出し喰って、タップリ油を搾られた。全部貴様のせいだぁ!!」

新助「But I'm just a soul whose intentions are good oh lord Please don't let me be misunderstood.

友蔵「尾藤イサオ版じゃないと、『みんなオイラが悪いのさぁ!』にならないだろう!?」

新助「何が、どうしたんです、親分?!」

友蔵「カクカク、しかじかだぁ。」

新助「エッ!此の手紙には、そんな事が書かれていたとは?!

だいたい、親分がいけないんですよ、アッシが無筆と知りながら、手紙なんか書くから。」

友蔵「成る程、そりゃぁ〜オイラも粗忽だった。」

新助「粗忽だったじゃありませんよ、気を付けて貰わなくっちゃぁ。」


と、見附ノ友蔵、子分の新助に逆にやりこめられて自宅に戻ると、直ぐに新井ノ新太を呼びにやります。

友蔵「新太!、大変困った事に成っちまった。実は、之だぁ。」

新太「アッハッハハ〜、そいつは災難でしたね、親分。」

友蔵「笑い事ちゃねぇ〜、さて、どうする新太!?」

新太「兎に角、騒ぐ事です。露骨に『黒駒ノ勝蔵、御用!御用!』って、触れ回るんです。

そうしたら、勘の宜い野郎ですから、之は遠くへ逃げた方が宜いという合図だと分かります。

遠くに逃げて呉れたら、もう、〆此の兎!!代官には、必死で探索を掛けたが逃げられましたと、報告するんです。」

友蔵「成る程、そいつは名案!早速始めよう。」

そう言うと見附ノ勝蔵、子分を集めて『黒駒ノ勝蔵を召し捕れぇ!』と、下知を飛ばします。

さぁ、一方の黒駒ノ勝蔵はと見てやれば、暫くは山ん中に居て潜んで居りましたが、

もうよかろうと、天竜川から二里ほど離れた温泉宿に逗留し、さて、この先、どうしようかぁ?と、思案の最中でした。

ところが、そこで急に『黒駒ノ勝蔵、御用!御用!』と、見附ノ友蔵が、子分に百人近く動員を掛けて、

天竜川の川下から川上へと、お祭り騒ぎにけたゝましく、勝蔵を召し捕りに来ていると思いましたから、

もう、カンカン!ぷんぷん!と、さとう珠緒みたいに怒った!怒った!

「友蔵の野郎は外道以下の畜生だ!

公儀や代官にへつらって、犬に成り下がった畜生だ!

この黒駒ノ友蔵の首を狙うなんざぁ、百年早いわぁ!返り討ちたぁ。」

ッと、怒って拳骨を左右の頭の脇に付け、プン!プン!とやったかどうかは知りませんが、

黒駒ノ勝蔵は、怒り心頭です。


っとそこへ、廻し合羽に三度笠、黒い手甲脚絆に草鞋を履き、一尺九寸五分の長脇差の旅人が天竜川へと参ります。

大岩「親分!渡世人ですぜぇ?」

勝蔵「ウン、宜い男ップリだなぁ〜、旅姿(ナリ)からして間違いなく渡世人だぁ。」

大岩「親分!あの野郎は、大濱の良助!お役者小僧の良助、見附ノ友蔵の身内ですぜぇ。」

勝蔵「ヨシ!野郎から血祭りだぁ、ゴロを巻いて足止めしてやれ。」


大岩「ヤイ、待ちやがれぇ!」

良助「へい。どちらさんでぇ?」

大岩「貴様、見附の子分で、お役者小僧の良助だなぁ?」

良助「すいません、先を急ぐんでぇ仁義切るのを忘れておりやした。確かに、大濱ノ良助に御座んす。」

大岩「親分、間違いありやせんぜぇ!」

勝蔵「俺は、甲州黒駒ノ勝蔵だぁ!!」

良助「こりゃぁ〜失礼さんに御座んす。同業者だとは思いましたが、まさか親分さんとは、失礼さんに御座んす。」

勝蔵「そんな些細な事で怒っている訳じゃぁ〜ねぇ。コラ!野郎ども、名乗ってやりねぇ。」


「俺が大岩!」

「そして、俺が小岩!」

「乙女ノ大八だ!」

「玉手箱ノ長次だ!」

「兄、牛島ノ久五郎だ!」

「舎弟、青島ノ久五郎だ!」

「そしてシンガリは荒川ノ新太だ!」


勝蔵「いいかぁ!お前さんの親分、見附ノ友蔵は渡世人の風上にも於けねぇ〜悪党だぁ!

公儀(オカミ)から十手捕縄を貰ったのを笠に着て、元親戚付き合いの俺を、お縄に掛けて、代官所へ連れて行き、牢屋に入れようとしやがった。

親の因果が子に報い!とは、宜く言ったもんだぁ。汝(てめぇ)そんな料簡違いの腐った親分を持った不幸せだぁ。

ただ、殺(や)りはしねぇ〜から安心しなぁ。腕を一本頂戴するか?指を五本貰おうかぁ?!」


そう勝蔵が言い終わると、子分七人は、ぐるっと大濱ノ良助を取り囲みます。

さて、黒駒ノ勝蔵以下八人に取り囲まれたお役者小僧ノ良助の運命や如何に?この続きは、次回のお楽しみ。



つづく