明らかに、古典口調というか落語口調の咄家があります。
それは、マクラの時から古典口調100%なのです。
こいう人は、TVのお笑いの仕事や、レポーターとしては呼ばれません。
また、司会業もできませんね、この古典口調では。
「するってぇーと、何ぃかい?」みたいな喋りだと、アイドルが鳩豆になります。
「おめぇーさんの、その料簡が…」 と言っても、絶対に通じない。
だから、基本、落語を喋るしかありません。でもそれで良いのです。
咄家なんですからね。古典口調で通して上等です。

ちょっと脱線しますが、林家正雀師匠。この師匠は古典口調というより、芝居口調です。
歌舞伎のリズムで喋ります。 小ゑん師匠によると、20代前半からそうらしい。
しかも、私生活でもこの喋りなので、若い頃旅の仕事で長崎へ行った際に、
林家正雀が、芝居口調でナンパするのを目撃したそうです。
「お嬢ちゃん、どちらからですかぁ?」と声を掛けたらしい。
掛けられた方は白目を剥いて驚いていたそうです。

若手で、この古典口調の代表は、なんと言っても文菊くんだと思います。
彼は、前座のころから60代の咄家みたいな喋りをしていましたよね。
高校生とかで、あの喋りだとさぞいじめられたに違いないと思います。
三三、談春、市馬あたりは、マクラの口調からギアを上げて古典口調にしますね。
それでも、普段の喋りもやや古典口調ぎみだと感じます。
菊之丞も、文菊くんに近い古典口調度の高い咄家です。
(と言うより、文菊が菊之丞に近いのだろう)

一方、全くこれを感じさせない咄家も居ます。代表は、昇太師匠ですね。
あえて、古典でも現代風に喋ります。また、できない部分を斬新に斬り捨てます。
おいおい、と思ってしまう程、アッサリ切捨てるので、驚いてしまいますけどね。
柳昇師匠や、桃太郎師匠は、昇太程じゃないですね。それなりに新作の時とギアが違います。
ただ、桃太郎師匠は、人物が変わらない時があって、違う意味で驚きますけどね。
新作・古典のギアの切替で言うと、圓丈師匠もあんまり違わないのを感じます。
噺にもよりますけどね、圓生に捧げる一夜限りの文七元結は、ちゃんと古典でした。

で、ここで書きたかったのは、喬太郎なのです。
どうも、古典の時に、妙なリズムの時があります。
上手く言葉になりませんが、第三者的に語っているのです。
直接話法なのに、ト書き的な感じなんですね。
深く掘ると、概ね、陰惨になるのです。『お札はがし』『宗悦殺し』『宮戸川』がそうです。
『錦木検校』などは、喜多八や三三と比べるとよく分かります、陰惨度が。
また、彼の口癖が出て、古典が白けてしまう時もありますね。

「なんつってぇ」

これを多様する時があります。新作ならいいけど、古典では止めて欲しいです。
似たような表現、「○○っつーの」「なんちゃって」などが出る場合もあります。
これはねぇ、タイムスリップ型くすぐりよりも、興醒めする時があります。
笑いにならないからだと思うんですね、アレ?変と言う気持ちだけが残ります。
ドン引きするくらいのインパクトがあれば、別なんでしょうねぇ、きっと。
悩ましいところです。代表例で喬太郎を取り上げましたが、
同じようなタイプの若手、探せば、もっと居るかもしれません。