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横浜にぎわい座の地下にある「のげシャーレ」で、
昨年のNHK新人演芸大賞“落語部門”優勝!の桂宮治くん。
彼が、初めて自分の勉強会を、にぎわい座・登竜門シリーズでやると言うので、
これは、是非、見ておこう!と、思って顔を出しました。


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宮治くんは、この「のげシャーレ」では、兼好師匠の会と、
一之輔師匠の会で、開口一番の前座を務めており、
初高座が、兼好ひとりの「のげシャーレ」なんですよねぇ。
だから、色んな場所で勉強会していますが、ここ「のげシャーレ」は格別のはずです。
そんな気合の入る「のげシャーレ」での第一回・よこはま宮治展!!
こんな演目で、ご機嫌を伺いました。
 
 
1.オープニングトーク
浴衣姿で登場の宮治くん。かなり緊張した様子でしたが、トークは相変わらずです。
元々、セールスマンや大道販売をやっていただけあり、客のハートを鷲掴み!!
客弄りだけなら、関東の咄家では、三本の指に入るかもしれません、転がし上手です。
今日は、ネタ卸しを二席やります!だから緊張しています!と、言う宮治くん。
遅れて来た客に、「遅れた理由は?」と、この客を弄る。
また、弄られたお姉ちゃんも達者で、「ハイ、上司が帰してくれませんでした!」と答える。
ロビーでDVDを売っている話題や、しかも、そのレーベルが総合格闘技のクエストであること。
ワザオギではなく、なぜ、クレストなのか? 最近、落語も手がけているクエスト。
白鳥師匠の三題噺DVDもたしか、このクレストです。どんなDVDに仕上がっているのか?
開口一番は、女性前座じゃなく、後輩です、残念でした!と、喋って、
一旦楽屋に下がる宮治くん、直にまた登場か?と思ったら、なんと!湯呑を起いて、
「前座の分際で… 喉の調子が悪いとか言うんですよ。ったく…」みたいに愚痴って下がる。
  
 
2.黄金の大黒/音助
空前絶後でした。なんと!老松に乗って前座・音助さん登場。そして、一礼します。
前座が、志ん朝の出囃子で登場し、圓生のように湯呑を使うのです。
しかも、ネタは、談志師匠が真打披露で掛けた『黄金の大黒』!!
湯呑と出囃子は、宮治くんからの命令というか、可愛がりというか、イジメです。
色々、宮治くんの会では、前座として使われて、可愛がりに遭っているらしい。
この前は、宮治・夢吉二人会で、 夢吉→宮治→音助~お仲入り~宮治→夢吉だったとか。
前座無しかと会場を思わせておいて、まさかの前座が仲トリですよ。

ただ、この音助さん、落語は大変上手です。最近見た前座ではBEST 3に入ります。
先輩から今日は20分以上やって!と言われた前座が、
『たらちね』ではなく『黄金の大黒』をやるだけの技量は在ります。
今後も、要チェックとは思いつつ、芸協の若手を観る機会が少ないのも事実です。


3.ガマの油/宮治
小三治師匠の『一眼国』で聴くマクラを振りながら、江戸の見世物小屋・大道芸を語る。
十分上手いのですが、「おおざる・こざる」「べな」「六尺の大イタチ」、どれも同じ調子なのです。
そう、全部宮治くんが呼び込みするなら、こうなるって感じなのです。
ココは重要だと思います。小三治師は、「おおざる・こざる」は「おおざる・こざる」の呼び込み、
決して、小三治がもしやったらとは演じません。三つやって聴いている方が飽きるから。
どれか1つは、宮治流で良いと思いますが、残る2つは、それぞれの個性でやって欲しいです。
できる子だから、尚、そう思います。

一方、本編の『ガマの油』 ネタ卸しなら十分合格点です。言立てもちゃんとできています。
ただ、酔ってからが、どうも。最初は、確かに酔っぱらいなのですが、途中からタダの乱暴なオジサンに。
徐々に酔いが廻る感じに演じれると、もっと良くなると思いました。


4.瀧川鯉八作『暴れ牛奇談』/宮治
びっくりしました。新作を、しかも鯉八作品を宮治くんがやるなんて!!
マクラでは、北千住で目撃した、不良高校生の蛮行を紹介する宮治くん。
駅に近い駐輪場の脇にある路地の入り口で、手相見の易者が座って客待ちしていた。
そこに、見るからに悪そうなガキ。三人組が駐輪場の奥から現れて、
中の一人が、いきなり、飲み終えた紙パックの苺オーレの空を易者の背中に投げ付けた。

パコン!!

紙パックが当たっても、易者がシカトしたのに、不機嫌そうな顔の不良たち。
今度は別のもう一人が、付近に落ちていた空缶を拾って、投げつける。

ごつっ!!

鈍い音がする。流石に怒った易者が、「お前ら、どこのもんだ?!」と叫ぶと、
「やーい、悔しかったら当ててみろ!!」と、笑いながら逃げ去る不良に、
宮治くんは、思わず「上手い!!」と、言ってしまったそうです。

そんなマクラから、『暴れ牛奇談』へ。この噺は、鯉八くんの代表作です。
あらすじは、ネタバレになるのであえて書かないけど、なかなかの秀作です。
ただ、噺の頭と仕舞いが意味不明なんですよねぇー 間の筋は面白いのに。
是非、みなさんも一度聴いて欲しい作品です。


5.お見立て/宮治
ネタ卸し二席が終わり、リラックスした顔の宮治くん。
最近、昇太師匠と末廣亭の打上げで飲んだ話をしました。
しょんべん横丁の場末の飲み屋に入ったら、そのにセーラー服姿に、
長い髭を三ツ網にしたオジサンが呑んでいて…
あまりに面白いので、その飲み屋に入って、カウンターでワイワイ飲んだらしい。
しかし、店は中国人のお娘ちゃんと、オーナーの男性主人の二人。
カウンターの切り盛りは、全て中国人のお娘ちゃんなので、
昇太師匠の知名度ゼロで、全然大切にしてくれないのだ。

でも、帰り際に昇太師匠が、ポチ袋に入れてご祝儀(推定1万円)を渡すと、
そのお娘ちゃんの態度が急変し、店の二階へハシゴで上がり、
「社長さん! お土産 あげるよ」と、メイドインチャイナのケバケバしい色のお菓子を、
持ちきれない程くれたそうです。 
昇太師匠、「コレは、要らないよ」と、悲しい笑みを見せて去ったそうな。

そんなマクラから、花魁は、なぜ、“おいらん”かの由来のマクラ、
定番ですね、尾が無くても化かすから、尾いらん→おいらん。
と、江戸時代は性病が早っていて、遊郭で梅毒を引き受けると、
鼻の先が欠ける、だから、花のさきがけ=鼻の先欠けを掛けて、
花魁と書くようになった説を紹介する。
でも、私が調べた限りでは、客が太夫を“おいらん”と呼んだのではなく、
カムロやシンゾが、姉貴分を指して“おいらん”と呼んだと聞いている。

さて、このマクラから、『お見立て』に入った宮治くん。
やり慣れていて、杢兵衛さん、喜助、そして喜瀬川の個性が確立している。
宮治くんらしいキャラ設定で、喜助の努力がことごとく裏目に。
喜瀬川に、悪女の魅力は無い代わりに、杢兵衛大尽が底抜けに田舎者である。
良くも悪くも、宮治くん、らしい一席です。

 
宮治くん、間違いなく芸協の若手のエースです。
夢吉くんと、この宮治くんが将来の芸協をリードするのだと思います。
ただ、心配なのは、歌丸師匠が逝った後の笑点です。
席が1つ空きますよねぇー ここに宮治くんが抜擢されたりしないのか?
そうなると、小遊三師匠のように、昔はねぇーってならないか???

  
次回は、来年2.26 二・二六事件の日です