毎月17日に、東京大神宮で開催されている落語会。
普通は、二つ目や若手真打の研鑽会・勉強会的意味合いの会みたいですが、
年に1回、夏に一之輔の会も行われているようです。
ここ東京大神宮は、今年が二回目だそうです、一之輔。

一之輔で70人限定、しかも2,000円とリーズナブルな会です。
初めてなので、少し早めに全席自由の場所取りも兼ねて出掛けた。
東京大神宮は、すぐに分かったけど、落語会の場所が分からない。
婚礼を行う「玉姫殿」は、すぐに分かったけど…
ようやく、途中の路地に巫女さんが出て、「一之輔独演会・会場」の看板が出された。
東京大神宮所有の雑居ビルの、しかも、4階?5階?の会議室風の場所だった。
1回来てしまえば、分かるけど、あまりに早く行ったので目印が無くて迷いました。

そんな東京大神宮での一之輔独演会、こんな演目でした。

 

・転失気   … 三遊亭ふう丈

・かぼちゃ屋 … 春風亭一之輔

・粗忽長屋  … 春風亭一之輔

  
お仲入り 
  
・鰻の幇間  … 春風亭一之輔 
  

1.転失気/ふう丈
二度目だと思います、ふう丈くんの『転失気』
彼の口調に凄く合っていますし、独特の表情を見せて立体的に演じるのは、
おそらく圓丈師匠を見て、模倣しているのだと思います。
弟弟子のわん丈くんもですが、本当にできる前座さんです。
ただ、緊張したんですかねぇー、メクリを“ふう丈”→“一之輔”に変えるのを忘れてて、
慌てて、メクリに戻りましたね、まぁ、普段は前座さんにメクリなんてないので、
忘れても仕方ないかな?とも思います。そうそう、このメクリが寄席文字じゃないんですよ、
普通に楷書で書かれたメクリで、どーも字のバランスが変でした。
基本、皆さん寄席文字でのバランスで名前を決めていますからねぇー

 
2.かぼちゃ屋/一之輔
この会の登場が2回目で、1年ぶりだと言う一之輔。
この日は、下手にエンジニアさんが居て、録音してました。
会場が、大神宮の隣に立つ、雑居ビルなのをイジりつつ、
この部屋は普段何に使われているのか?
宮司さんが、巫女たちにセクハラする部屋なのか?
「三方の持ち方が違う!!」とか言って、触るんですかねぇー
と、一之輔らしい毒フレーズを吐くのですが、「言い過ぎました、録音カットしてください」
そんなギャグも入れて、『かぼちゃ屋』へ。

前座さんがやるのとも、目白の小さん師匠のとも違う『かぼちゃ屋』
実に、一之輔らしいハメごとが満載です。
最初、南瓜を売りに出た与太郎の売り声が超~エキセントリック!!
かぼちゃ!かぼちゃ!かぼちゃ!と連呼しながら、
なかば脅迫に近い声で、周囲を恫喝するのです。
そして、同業のかぼちゃ屋さんと、橋の近くで与太郎が出会います。

「あれ?そこ行くのは、隣町の伊勢屋の若旦那じゃありませんか?」

ここで、唐茄子屋政談の徳三郎が登場します。
与太郎に、誓願寺店へ行くのを止められるのです。
「若旦那!! あんな貧乏人の巣で売れるわけないでしょう」と。
そして、歴史を変えてやった!と呟く与太郎。実に一之輔らしいハメ事です。
更に、一門の先輩に受けるからって“じぇじぇ”を使う人が居てと、
明らかに、たい平批判を展開する一之輔。
でも、1度だけやってみたかったと、一之輔本人も使います“じぇじぇ”

本人も終わった後に言っておりましたが、
確かに、目白の師匠には失礼な『かぼちゃ屋』でした。
それでも、一之輔らしい一席ではあります。
だって、それなりの技量がないとできません。

 
3.粗忽長屋/一之輔
“じぇじぇ”について、笑いのパンドラの匣みたいなもんで、
こいうのを、グッと堪えて使わないのが本村法なんだと思います。
的な、そいう事をチラっと語って、『粗忽長屋』へ。
良かったです。テンポが小気味いいですね。笑いが押し寄せます。

 
4.鰻の幇間/一之輔
珍しく“中の舞”で登場。本人も、なんですかね、トラディショナルな感じで…
と、ややテレが入る一之輔、それでもマクラで控え室の話を始めました。
ここ東京大神宮の控え室は、会場が離れているそうで、着替えをしていたら、
隣の部屋から、大量の小銭がザラザラザラ・・・と、賽銭箱から運ばれたモノが、
その部屋で種分けされているらしくて、着替えながら非常に気になったそうです。
どんな顔で、宮司さんはお賽銭を数えるんだろう?と想像をふくらませる一之輔。

そんな控え室から、私服の長い髪の女性が、会場までエスコートしてくれたそうです。
「お巫女さんですか?」と訊いたら、「ハイ」と答える女性。巫女さんて、こんな私服なんだぁー
と、思いつつ、舐めるように彼女の頭から足の先まで眺める助平な一之輔でした。
そこから話題は、博多の小三治独演会のゲストに呼ばれた話へ。
何でも、小三治独演会70回記念のイベントで、一之輔だけでなく、
志ん陽、文菊、そして、ろべえの三人も呼ばれての会で、
サブタイトルに「小三治、若手に挑む!!」というのが付いていたそうです。

それにしても、独演会で、ゲストが三人で開口一番にろべえって、
おもいっきり他力本願だなざーと思ってしました。
また、小三治師匠が若手に挑むじゃなくて、若手が胸をかりて挑むんだろうに…
このサブタイトルには、小三治師匠も不満を述べていたそうで、
一之輔も、そうですよ、失礼なタイトルですよ、と、同調していたら、
小三治師のマネージャーが、「師匠、何言ってるんですかぁ、コレ師匠が考えたやつですよ」
って、言われて、黙ってしまったそうです。そんなマクラから『鰻の幇間』へ。

もっと幇間が、騙されたと気付いた後、怒りを女店員にぶつけるのか?
と、思ったのだが、そこは幇間らしく、最後まで怒りました。
中に居ますよね、大工の棟梁みたいに怒る幇間が。
ちょっと、物足りないぐらいでもいいけど、ネチっこい視点でのイヤミが、
もう少しあると良かったと思いますが、それでも十分良かったです。