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下北沢本多劇場で5月末から6月初旬に開催される「昇太ムードデラックス」
このチケットの発売が、14日、本多劇場で始まったので下北沢に行った。
11時の売り出し、並んだのは5人。うち2人はエレキコミックの当日券だった。
6/2(日)の昼の部を買って、当初は、芸協の末広の芝居を聴く予定でした。
昼・桃太郎、夜・遊雀です、遊雀くんからのハガキを持って行くと、
2,200円になるのも魅力だし、遊雀くんも久しく聴いていない。
そう思っていたけど、前日観た「ザ・きょんスズ」 これに完全に魅了されました。
そこで、ザ・スズナリへ。11:15に当日券1番で並んだのでした。

13時からの当日券発売に、結局15人が並んだけど11人しか入れず。
それでも入りたい!という並んだ客の為に、スタッフの方が、開場後も
「指定席で入場なさって、来場できないお友だちの分のチケットをお持ちの方?!
もし、いらっしゃったらスタッフまで申し出てください」と訊ねてました。
しかし、そんな奴は、あんまり居ないよねぇー

 
1.鸚鵡の徳利
いよいよ最終日です。このスズナリという空間での会も今日で最後かと思うと、
名残惜しい!!と、云う喬太郎。アッいう間の4日間だった5公演だったようです。
そして、本当に好き勝手に喋った4日間だったと振り返る、喬太郎。
「そんな事云って、いつも好き勝手じゃないか?!」とお思いでしょうが、
実は、意外と、こう見えて、喬太郎なりの縛りはあるんだぞ!!って云ってましたネ。
また、「今日は好きにやって下さい」と、言われたら、本当に好き勝手にやると、
言った本人は、弾ける=好き勝手と勘違いしていて、マクラもそこそこに、
タップリと古典落語をやったりすると、「好き勝手でよかったのに…」なんて残念がられるそうです。
その思い込みが、俺を縛っているんだぞ!!と、心で叫ぶ喬太郎。

ここから、マクラについての話へ。

マクラとは、勝手な雑談だけじゃなく、噺への導入なので、
定番の小咄を振りながら、本編へ入る場合もある。
そうすると、雑談を聞きたがる客からは、
マクラが無かったと言われてしまうらしいですね。
そんな話をしていて、この日も男子小学生を発見する喬太郎。
「ボク、何年生?」 「5年生です」「何歳?」「10歳です」
こんなやり取りの後、「横にいらっしゃるのは、ご両親ですか?
そうですかぁー お父さん・お母さんは、
この子の将来がどうなってもいいんですか?!
ねぇ、こんな会に連れて来て…」
そして、この日も言いました。
「坊や、いいんだよ男の子だから、女の子だと香港に売り飛ばされるからねぇー」と。
この“女の子だと香港に売り飛ばされる”は、
私が聴いていない会で、落語の中に登場したのか?

ここで。この日もやりました「鳴り物教室」
ほっぺたと、腹を使っての一番太鼓から。
そして、この日のリクエストは、談志師匠の“木賊刈り”と、
枝雀師匠の“昼飯(ひるまま)”でした。談志師匠は二日連続。
昼飯は、太鼓腹では難しかったですね、銅鑼が入りますからねぇー

更にマクラは続いて、目白の小さん師匠のお通夜の時の話へ。
目白の小さん宅で、剣道場に置かれた小さん師匠の棺の番を、
市馬、さん福、小権太、喬太郎の四人でやった時の話。
小権太師匠が「今日は通夜だから、喬太郎!お前も飲めよぉー」と、
かなりしつこく誘ったそうなんです。喬太郎が神妙な顔で
「いえ結構です」と、断り続けると、小権太師匠、
「市馬ぁー 喬太郎が俺の酒は飲めないって言うんだぞぉー」と、
こんどは市馬師匠に訴える。しかし、ゲコの市馬師匠は黙って、
物凄い形相で睨んでいたそうです。喬太郎曰く俵星玄番みたいだった、と。
そんなやり取りを、それまでは静観していたさん福師匠が突然、
小権太師匠に襲い掛かって、腕ひしぎ十字固めを決めると、
「嫌だ!って奴に、酒すすめるなぁ!ヤボ」と諌めたんだそうです。
横に、小さん遺体があるというのに… 咄家らしいですね。

そんなマクラから、『鸚鵡の徳利』へ

前回の北沢タウンホールで聴いた時より短いバージョンでした。
それでも、主要のモノマネする咄家は4人登場して、
まず、圓丈師匠、次にさん喬さん、膝代わりが馬風師匠で、トリが雲助師匠。
どれも、タウンホールの時より更に磨きが掛かっていました。


2.たらちね/千葉雅子
劇団「猫のホテル」の千葉さんがゲストでした。
ぜんぜん期待していなかったけど、ビックリするくらいに上手かったです。
女優、演劇者がやる落語は、何度も聴いていますが、
舞台での芝居の、いい面を落語に生かせているのに関心しました。
緊張しているのは伝わるんですが、それが重い空気にならず、
本人が徐々にほぐれて、調子が出る感じが客席に伝わるのです。
細かい間違いはあるんだけど、それを笑いに変えられる度胸もあるし、
機転が利くんだすよねぇー 流石、舞台女優です。
また聴きたくなった素人は、久しぶりです。
難しいと思うけど、よく退屈させずに『たらちね』を25分やったと思います。


3.漫談/寒空はだか
去年、本多劇場でやったネタと、殆ど同じでした。
客の反応が、はだかさんのリズムと合ってなくて、乗れない感じでした。
最後は、東京タワーからのスカイツリー音頭で〆て、それなりに盛り上がったけど、
はだかさんの最近の中では、珍しくノリがよくなかったです。


4.千葉雅子作;マイノリ/喬太郎
出囃子が「まかしょ」ではなく、登場した喬太郎。
この段階では、何の曲か分かりませんでした。

乙女のワルツ by 伊藤咲子

この曲が、キーワードとなって展開する、千葉雅子さん作の新作落語なのです。
まず、結構面白いマクラが展開されました。
4日間の「きょんスズ」を振り返って、今回のゲストに注目。
入門した師匠であるさん喬さん、そして新作落語の師匠である圓丈さん。
スズナリでやると聞きつけて、是非出たい!!と云った正蔵師匠。
また、若手の風車、喬四郎、天どんの三人は真打が決った三人。
そして、落日は、演劇界から千葉雅子さん、仲の良い色物の寒空はだか。
この顔ぶれをみて、東京演芸会のへなちょこ三羽ガラスが集まったという、喬太郎。
それは、喬四郎、天どん、そして、寒空はだか。確かに“へなちょこ”です。

そんな話から、咄家というものはみたいな話に展開して、
喬太郎が最近体験した、ちょっと辛かった仕事にOB会での落語会があると云う。
大先輩のOBが、二つ目勉強会の協会役員のような目で、喬太郎の落語を聴くそうです。
「今の上下逆じゃない?」「この野郎は、仕草がダメなんだよなぁー」みたいな目で。
その会のギャラが、1万円。銭金じゃないけど、
いまだに落語家は草を食べて凌ぐような生活をしているから、
1万円もくれてやれば喜ぶとでも思っているのか?!と激怒していました。
更に、OBから凄い発言が飛び出すのですが、それは書きません。

この「芸人は草を食べて生活している」という自分のフレーズから、
瀧川鯉昇師匠の極貧時代、鯉昇師匠も野草が主食だった話を披露しました。
この話は、本人もなさっているので、有名なのですが、鯉昇師匠も、
白鳥さん、こはるなどと同じく、彼らに先駆けて野草を摘んで食べていた咄家です。
で、鯉昇師匠は、皇居周辺で野草を摘んでいたらしい。なぜなら、それは、
流石に、皇居の周りであれば、立ちションベンするような不心得者が居ないので、
比較的清潔な野草が摘めるからなんだそうです。頭いいです鯉昇師匠。
でも、そんなある日、鯉昇師匠は、皇宮警察に不審者として逮捕されてしまいます。
仕方ありませんネ、あの風貌で、タンポポとか摘んでるんですから。
詰め所に連れられて、“課長”と呼ばれる人から尋問を受けることになる、鯉昇師匠。

しかし!!、ここで落語の知恵が生きます。そうです、『唖の釣り』です。
鯉昇師匠、如何に自分が貧乏で恵まれない芸人かをこんこんと課長に解くのです。
すると、同情した課長が、「これを持って行きなさい」と、自分の名刺をくれたそうです。
もし、今度、また皇宮警察に捕まったら、この名刺を見せて俺が許可していると言いなさい。
そう言って、名刺をくれて釈放されたそうです。まさに、芸は身を助くです。
そんな師匠に愛を感じる鯉昇一門だから、弟子の飲み会も変わっています。
青天井の駐車場にみかん箱を置いて、缶ビールと浅草の屋台のネタを肴に飲むそうです。
流石に野草は摘んでこないけど、居酒屋とかではなく、駐車場。
あまりに酷いので、喬太郎が「師匠、せめて屋根のある所で飲めって言って下さいヨ」と云うと、
鯉昇師匠の答えが「そうだろう、でも最近あいつらいい場所見つけたんだ、バス停」
これは実話だそうです。こんな咄家の苦労話から、『マエノリ』へ。

この噺は、日大落研の青年“中村”くんと、国学院の演劇研究会の“杉下”さんが、
オープンを控えた東京ディズニーランドのバイトに応募して、その面接会場で出会うところから始まります。
つまり、中村は喬太郎、杉下は千葉さんそのものなのです。
二人は、仲の良い飲み友達になるけど、男女の仲にはなりません。
一線を越えることのなかった二人が、それぞれの人生の節目について、
Barのマスターに思い出を語るという形式で、回想シーンの連続で進みます。

だから、落語というよりも、一人芝居に近いテーストです。
セリフの構成が絶妙で、また、芝居もできる喬太郎の芸が光ります。
客席は、グイグイ引きこまれて、大学時代、一旦就職した社会人時代、
決意を新たに芸道に踏み込んだ下積み時代、そして成功した現在という、
まさに起承転結の4つのブロックを、巧みに演じてみせてくれました。

このスズナリに非常に似合う1席だったといえます。
マクラを入れると、1時間15分くらいやったと思いますが、
それが、45分くらいに感じる作品でした。
次にやる場面があるのか?そう思う渾身の1席。
最後は鳴り止まぬ拍手に、一旦下がった喬太郎がカーテンコールで登場しました。