春風亭百栄と春風亭一之輔の二人会は、横浜にぎわい座で、
3年くらい前まで開催されていましたが、共に独演会になり、
暫く二人会では、開催されずにいたのですが、それが久しぶりに、
成城ホールで開催されました。まだ定期の会になるかは、未定です。

そんな二人会、横浜の時は、101落語会とか言ってましたが、
成城では、お洒落に「百夜一夜落語会」だそうです。
さて、その第一回は、こんな演目になりました。
 

・子ほめ    … 春風亭一力

・トンビの夫婦 … 春風亭百栄

・短命     … 春風亭一之輔

お仲入り

・七段目    … 春風亭一之輔

・露出さん   … 春風亭百栄



1.子ほめ/一力
今年もたくさん聴くであろう『子ほめ』を今回も聴きました。
また、一力さんの落語もたくさん聴きそうですね。
ご隠居さんの喋りが、もう少しゆっくりでいいように思いました。
最初は、スローなんだけど、だんだん八五郎の職人気質な喋りにつられて、
徐々にご隠居の喋りも早くなるのが、少し気になりました。

でも、前座なのにいいギャグを入れますよね。
「おじい様に似て、長命の相がお在りだ」と褒める部分で、八五郎が、
「おじい様に焼いて…」と言うと、ご隠居が慌てて、 
「バカ野郎、煮る・焼くの煮るじゃない!!」の所は笑いました。


2.トンビの夫婦/百栄
成城ホール初登場の百栄師匠、まずは、成城イジリから入りました。
三ノ輪在住の百栄さんにとっては、この成城がどーも馴染めないそうです。
外国のように生活環境が違うという表現には笑いました。
この後、定番の“ももえ”という名前についてのマクラを振りました。
たぶん、私が世界で一番汚いモモエです、と、言って。

この流れから今日のお客様は若い!!浅草演芸ホールなんてお客様平均年齢が、
日本人の平均寿命よりちょっと上と言い、ここからボケの兆候について語るのでした。
このボケのマクラは、初めて聴きました。同じ話を繰り返すのがボケの症状だと言って、
百栄さん自身が、同じ話を繰り返すという、ここら辺りで客席百栄ワールドに馴染みました。

続けて、落語は脳の活性化に役立つからボケ防止効果があるという話へ。
そして、どうせ落語を聴くなら名人みたいに反射的に情景が浮かぶ落語より、
私のようにつたない芸で、より脳をフル稼働しないと情景が浮かばない落語の方が、
ボケ防止効果は高い!と、いうお馴染みのマクラへと進んで、
話は、少し変わって似た者夫婦と全く相性が別々夫婦という、
二パターンの夫婦があるという話に持って行きました。

そして、無口な旦那と、お喋り奥様がドライブ中に検問にあう小咄へ。
これは、結構、笑いました。検問で運転中にしてはいけない事を、
警察官から旦那が尋問されて、困った末に苦し紛れの回答でごまかそうとすると、
それを一言多い奥様が、余計な事を口走って、旦那を窮地に追い込む。
夫婦の仲は、夫婦にしか本当の事は分からない、と、締めておいて、『トンビの夫婦』へ。

この噺は、おタエと八五郎夫婦、おミツと熊五郎夫婦の二組の夫婦が登場する。
前者の八五郎は、ひどいDVで、おタエの顔が腫れる上がるくらいに殴る暴力亭主、
一方、後者の熊五郎は、すごく温厚で喧嘩ひとつしない優しい亭主である。

ある日、いつものように顔を腫らしたタエが、おミツを呼び止めて、
昨夜、八五郎に暴力を振るわれ、フルボッコにされた話をする。
やれやれ、そんなDV旦那でなくて良かったと安堵するおミツに、
タエが、「でも、このくらい殴られたら、きっと詫びに亭主が、
素敵なカンザシを買って来るに違いない!」と、言うのだ。
おタエが言う通り、本当に八五郎は、素敵なカンザシを買ってプレゼントするではないか?!

他人の家の芝生は青い

少しだけ羨ましく思うおミツは、仕事がハンチクになって家で煙草ばかり吸っている熊五郎を見る。
一日中吸ったキセルが詰まったので、こよりで掃除の最中である。ヨシ!今だ、と思うおミツは、
なんと!熊五郎が怒りそうな罵詈雑言を吐くが、熊五郎は全く怒るそぶりをみせない。
だんだんエスカレートするおミツ、殴る、蹴る、投げる、最後に台所の床板を剥がして、
それでぶん殴ったら、熊五郎が伸びてしまう始末。 そして、おミツがサゲの一言。

「あの人に、お詫びのしるしに、新しいキセル、買ってやろう」

なかなか、ナンセンスな、百栄さんらしい一席です。


3.短命/一之輔
去年、聴いていそうで聴いていない『短命』でした。
マクラでは、一之輔も成城という街には馴染めないと言います。
この日は、楽屋入り前に時間が有ったので成城並木通りを歩いたそうです。
その感想が「悪いことして銭ためました!」って感じの豪邸が立ち並んでいる。
更に、成城ホールについてまでイジる一之輔、最前列の空席を見つけて、
「もう、来ないと思いますから、後ろの人!!座ってください」と言ってました。
確かに、来なかったけど、面白いイジり方でしたね。ちょっと談春みたいでした。
そう言いつつ、それでも馴染めない、似合わないけど、百栄兄さんよりはましです、でした。
ここで、この日一番のギャグが飛び出しました。

百栄師匠を喩えて、「猫が吐き出した毛玉みたい」

これは受けましたネ、この百夜一夜落語会のフライヤーを作った時は、
宣材写真がオカッパ頭の写真なんですよね、百栄師匠。
だから、現在のパーマ姿をして、猫の吐き出した毛玉って、上手すぎる!!
この後、マヤ暦の地球滅亡の話に触れて、お子様が客席に居るのを気にしつつ、
「私は、そんなの気にせず用意した噺をします!!」と言って、
得意のABAB/アブアブとOIOI/マルイの小咄から、『短命』へ。

らしい部分満載の『短命』でした。
まず、八五郎がご隠居の家に行くと、八五郎はご隠居に擦り寄る感じなのに、
ご隠居が「お前なんか嫌いだ!」と、冷たく邪険にするのです。
そして、伊勢屋の三人目の婿が死んだので、“くやみ”を習いに来たと言う所を、
“いやみ”と言うのは、お約束なんだけど、本当に“いやみ”をご隠居が言うんですよね。

「おや? 弔問客が少ないですね?」
「線香の火が途絶えそうですね?」
「御寿司が乾いて食えたもんじゃない、使いまわしですか?」

言わないよ、そんな事!! と、ノリ突っ込み風にやりました。

この後、なかなか短命の理由に辿り着けない八五郎は、
ちょっと、ひつこいぐらいにボケはすますが普通ですが、
家に帰って、八五郎が奥さんに「おまんま、よそってくれ?!」と頼むと、
奥さんが「自分のことは、自分でしましょう!!」って貼紙こさえたのは、
お前さんだよ?!と、言い。更に、よそってもいいけど、
私がおまんまよそうと、貼紙に今日はシール貼れないよ?、それでもいいかい?
これには、大笑いでした。 なかなか一之輔テーストのハメごと満載の『短命』でした。

これは、小三治師匠は嫌いだと思います。私は好きですけどね。


4.七段目/一之輔
一之輔もやるんですね、『七段目』
まぁ、本格的に聴き始めたのは、二年くらい前からかので、
ここで初めて聴いても不思議ないか?
さて、『七段目』なので、そんなにハメごとできたりしません。
本寸法にやるのですが、やっぱり師匠の一朝さんのようにはいきません。
また、芝居超好きの小朝や馬桜師匠のようにもいきませんね。
短いセリフは、それなりなんですけど、セリフが長いと芝居っぽくないです。
本人も、無理にやらずできるところをコツコツとなんだと思います。
恩田えり師匠の三味線が入って、なかなか良かったです。
この噺、演じ手が自己満足でやられるとムッとするんですけど、
そいう感じでは無かったですね。
 

5.露出さん/百栄
成城の会の最後に、この『露出さん』をぶつける百栄さんに拍手でした。
また成城のお客さんも、百栄師匠の露出狂の仕草に笑っておりました。
大してドン引きせずに(笑) この選択は主催者はどう判断したでしょうね。
次回、この会が続くか?これで終わるか?は、主催者の『露出さん』評価に掛かっています。