予約なし、早いもの勝ちでスタートした三遊亭白鳥勉強会「よちよちSWAN」18:00開演
それなのに、告知が17:30開演となっていて、客足が早くなる。
とりあえず、入れないと洒落にならないので、14:15に会場の日本橋亭に行ってみる。
流石に誰も居ない、1番のり。講談協会の初席をやっている。
そして、高座を下りた講談師の皆さんが、日本橋亭の前で写真撮影!!
15:45頃までは、5人程度しか並んでいなかったのだが…

16:00過ぎからどんどん客がやってきて、列が40人を超える。
16:30、お手伝いのぬう生くんが登場、永谷に掛け合ってくれて会場に、
15分前に入れる事になる。ぬう生が神様に見える。そして16:45に白鳥師登場。
どんどん客が押し寄せる。17:15にはほぼ満席、17:30には入れない客が諦めて帰る。
膝送りで、どんどん会場に客を詰め込む!! まるで浅草演芸ホールの初席状態。
昔々の話だけど、志の輔が出ていた正月の日本橋亭を思い出す!! あの状態。
パイプ椅子席を無くして、全部座布団席なのに超満員、120人以上入っている。
更に更に、高座の横にも4人×2列で8人人が居る状態でした。

そんな満員御礼の「第一回よちよちSWAN」は、こんな内容です。

1.流れの豚次伝:第四話「天王寺代官斬り」
『任侠・流山動物園』に始まる、主人公・豚次が繰り広げる任侠噺シリーズ、
現在『上野掛け取り動物園』『任侠・流山動物園』『雨のベルサイユ』の三話があり、
この続き、第四話『任侠・流山動物園』を、この勉強会で語るという。
先の三部作は、横浜にぎわい座で一度三話連続で語る会を白鳥師匠はやっています。

簡単にあらすじから語る白鳥師匠でしたが、下手くそな朗読みたいにたどたどしい。
それでも、何とかあらすじを説明、本々養豚場の食用だった豚次、
養豚場を抜け出して、野良豚として生活をしていた。
しかし、保険所に捕まって、上野動物園の猛獣用のエサとして送られる、が!?
その胴に入った態度が、上野のパンダ親分に認められて、上野一家の一員になる。

しかし、このパンダの親分が因業な親分で、エサ独り占めするは、
高い利息で、園内の動物に銭を貸す。借金まみれになったアライグマの親子を、
パンダ親分から助ける豚次。だがこの手助けで親分の逆鱗に触れて、
豚次はしっぽを切り落とされて、凶状持ちとなるのである。

しっぽを切られた豚次を受け入れる動物園は、なかなか現れない。
また、野良に逆戻りとなるのか?豚次。そんな時に、助けたアライグマの母親が、
「豚次さん、千葉の片田舎に“流山”という動物園があります、
あそこの園長さん、象のマサオさんは優しいからきっと貴方を受け入れてくれるはず」
と、流山動物園を紹介されて、豚次は流山動物園に草鞋を脱ぐ。

流山動物園は、象のマサオくんは居るものの、他の動物は、牛とチャボだけ。
そこに豚次が加わっても、入園者数は増えず、経営は火の車。
そこで、豚次は、パンダの親分に助っ人を頼むが、因業なパンダが助けてくれるはずもなく、
豚次は瀕死の重傷を負う。仕方なく、入園者の老人と孫の会話をヒントに、
牛/豚/チャボが、猛特訓の末に人間の言葉をマスターして来園者を増やすのに成功する。

めでたし、めでたし、かと思ったのもつかの間、これがパンダの耳に入り、
上野の客を取りやがって!と、逆恨みをかう。結果、上野VS流山の出入りに発展。
なんとか、パンダ一家を追い払ったものの、象のマサオくんが抗争の後で亡くなってしまう。
マサオくんの遺言で、金毘羅様の裏手の洞窟にあるゴリラの親分:ゴリ長さんの墓に、
このマサオくんの骨を一緒に埋葬する為、豚次は旅に出ることに。

その最初が、名古屋のベルダイユ動物園、そこを仕切る/マリーという猫、
マリーアントワ猫が、他の動物のエサを独り占めにして君臨している。
これを追い出す革命が動物園に起ろうとしているという、ベルバラのパクリな展開に。
なんとか豚次の活躍もあって、マリーアントワ猫をベルサイユ動物園から追放する。
そして、豚次納骨の旅は続き、今回の第四話、大阪を舞台にした噺へと続きます。

大阪・天王寺動物園を仕切っているのが、鶴のツルベ、そしてその一の子分がコアラのマッチ。
納骨の旅する豚次は、カラスに教えられて、天王寺動物園に草鞋を脱ぐことにするのだが、
途中、大阪の野良犬を統率し、公園を縄張りにしている元軍用犬、
ドーベルマンの鬼蔵、通称“代官”一味といざこざを起こしてしまう。

さて、設定は大阪、なのに登場動物中、唯一、ツルベだけが関西弁で、
それ以外は、全部標準語を使うのが、白鳥さんらしいと思いました。
また、細かいギャグが用意されているんだけんど、ことごとく滑ってましたね。
円丈師匠がよく言いますが、白鳥さんは笑いに貪欲過ぎて、
ギャグを入れなくていい所にまで入れて、噺を訳が分からない状態にしますね。
今回も、カラスが「カッカッカッカッ」って言って登場するんです、
普通に、“掛布”さんだけでいいのに、カラスの名前がフクロウだったり、
その容姿が三遊亭円丈に似ているとか、足し過ぎて意味不明にして、
その上、噛んでたらなんにもならないでしょう。そいう序盤の展開でした。

ただ、カラスが豚次に、鬼蔵一味が大阪市長の橋下と結託して、
公園の治安を守るという名目で、他の動物を苛めているかを語る場面、
この辺りから、白鳥節が快調に成って、ほどよい笑いが展開されました。
鬼蔵たちが、公園に水を飲みに来た動物から水代を取るくだりで、
お金が払えないと、「体で払って貰うぜ!!」と、噛み殺して鶴橋に売られる、
ここは笑いましたね、だから、モグラさんの肉がカルビとして出回っているとまで、
これは大阪で言ったら営業妨害だよなぁー 白鳥さんなんも考えてないと思うけど。

カラスと別れて、天王寺動物園へ向かう豚次、その途中で水飲みに寄った公園で、
そこを仕切る鬼蔵の愛人(愛犬?)チワワのお菊たちと喧嘩になってしまう。
ここでチワワを「真中に穴のある」「それはチクワ!」といじるがイマイチ受けず。
ここでの乱闘シーンは、ブヒブヒ、ブヒー!!で省略された。
なお、チワワのお菊、私はお代官様の愛人28号だよ、も、ダダ滑りでした。

なんとか天王寺動物園に辿り着いた豚次、ここからは結構受けてましたね。
コアラのマッチ、タンチョウ鶴のツルベ、登場からドッカン!ドッカン!
ここで笑ったのが、「鶴の一声」のくだりですかねぇー どんな意味ですか?
例えば、立川流に志の輔、芸術協会に昇太、落語協会に白鳥、みたいなもんだ。
この三段オチは、受けて複雑そうでした。
更に、落語の『つる』の、首長鳥と昔は言ったんだ、も登場し笑いになってました。
なお、ツルベが豚次に“明石焼き”を振舞う場面で、“明石焼き”を白鳥さんは、
“明石のタコ焼き”と言いましたが、あれは“明石焼き”です。

ツルベは、鬼蔵に殺され嘴だけが残る。その嘴で、鬼蔵のトドメを刺す豚次。
刺された鬼蔵が、松田優作の太陽に吠えろ風に「なんじゃ!こりゃ???」拍手が起きました。
なおラストの豚次の豚足パンチの仕草が、子供のお遊戯みたいで可愛かったです。
これで全国の野犬を敵に回した豚次、血だけの豚次の旅は続くのでした。


2.新三題噺「革財布/酔っぱらい/芝の浜」
※ 「黄昏のライバル」
いきなり、マクラで第四話「天王寺代官斬り」の初演、高座録音していたのに、
頭の15分で録音が切れていたので、誰か録音している人は、私にコピーを下さい!!
と、お願いし始める白鳥師匠。自分の公演を繰り返し聴いて勉強する師匠なので、
どなたか師匠にさしあげて下さい。

まずマクラは、オーストラリアのパースに行った苦労話から。
行きのフライトは、バンコック経由でパースへ向かった白鳥さん。
英語版『初天神』と英語版・南京玉簾を彦いち師匠から伝授され、
猛特訓して現地に向かったそうですが…

前者は、あまりにも英語の発音・アクセントが悪く現地人には伝わらず、
一応、さわりの部分をやってみたけど、途中で止めてしまったそうです。
一方、後者の英語版・南京玉簾!! バンブー・ミラクル・ブラインド
これは大受けだったそうです。

さて、14時間のフライトでヘトヘトで現地に到着した白鳥さん。
ホテルには、朝からチェックインできるように予約してあると聞いていたのに、
滞在するホテルに行ってみると、フロントの女性が冷たい態度で“No”と、
チェックインを拒否されてしまったそうです。困り果てる白鳥師匠。
白鳥さんを呼んだ先生たちは、学校に居るはずだが、
「パース日本人学校に連絡してくれ!」と、言っても伝わらない。

ホテルの女性スタッフは、「No!! ダブルキャンセル!!」と言われたらしいが、
意味不明で弱った白鳥さん、よし、パケ代が海外は高いから使わないつもりだった、
スマホを使って、グーグルの和約英文で「パース日本人学校に電話して下さい」
と、表示された英文を、そのスタッフに見せたら、なんと!
「パース日本人学校なんてありません!」と返されてしまう。

いよいよ途方に暮れる白鳥さん、そこにたまたま居合わせた日本人女性が、
「どうしました?お困りですか?」と、助け船を出してくれたので、
このホテル従業員にパース日本人学校に電話してくれと頼んだけど、
そんな学校はないって言われて、困っています。そう言うと、その女性が、
「私もパース日本人学校なんて知りません、貴方、騙されたんじゃありませんか?」
と、更に、衝撃的な発言をするのです。

結局、白鳥さんスマホで自力検索掛けて、日本人学校へ電話。
事情を説明したら、事務員さんが来てくれて、なんとかチェックインできたそうです。
白鳥さん曰く、そのホテル従業員は最後まで非を認めず、謝りもしなかったと怒っておりました。

バンブー・ミラクル・ブラインドと、落語の仕草で大受けしたら、
現地パースの日本領事館から総領事が観に来て、
いたく感動したのでと、その日のディナーに招待されたそうです。
ただ、そんなフォーマルな席に呼ばれるとは思っていない白鳥さん。
短パンとTシャツしか持っていなかったので、その上から着物を羽織って行ったとか。

  
日曜日に領事館でのディナー 
 
総領事招待されると分かっていれば、昼を軽くしていたのに、
悔やむ白鳥さん、その日は、たまたま学校スタッフに、
テンコ盛りのサラダと、はじめ人間ギャートルズみたいな骨付肉を御馳走になり、
これをたらふく食ったので、領事館では全然食えなかったそうです。
すると、総領事から「白鳥師匠は、江戸っ子ですねぇー」と言われて、
調子に乗って、「そうなんです、飲む時は肴荒さないんです、
塩を舐めれば5合くらいの酒は…」と答えたとか。

この領事館というのが英国統治時代の100年以上経っている古い洋館。
そこに、普段はたくさん使用人が居るけど、その日はタイ人の料理長だけで、
下男下女は、日曜休みで居なかったそうです。だから、なおさら神秘的というのか、
霊が宿ったどんよりした空気を感じる、そんな洋館だったそうです。

そうこうしていると、日頃から霊感の強い、日本人学校の校長先生の娘が、
突然、霊を感じて泣き出すやらで、白鳥さんも薄気味悪く感じ出した。
そうなると、恐いのを消し去りたいので、酒の量が増える、そうなると、
自然とトイレが近くなる白鳥師匠。そして、ついに…

トイレを出て廊下を歩いていると、ゲストルームのドアが少し開いていて、
別に覗くつもりはなかったけど、その扉の向こうから見られている気配を感じて、
その隙間を、おそるおそる覗いたら、家具の向こうの一番奥の席に、金髪の老女が!!

洋服着た金髪のおばあちゃんの幽霊だ!!

大騒ぎになったら、実はそれはメアリーさんという住み込みのお手伝いさん。
メアリーさんは、日本人同士で盛り上がっていたので近付けず、
晩餐が終わったら、後片付けを手伝う為に、スタンバイしていたそうです。
これがホントの障子にメアリー
白鳥師匠は、本物の幽霊だと思ったから、
驚いて死ぬかと思いました、冥土(メイド)なだけに、と、〆ました。

このマクラから、芝浜と同じ題で違う三題噺を作る紀伊国屋で披露した噺を最後にやりました。

革財布、酔っぱらい、芝の浜

結構、意外な噺でした、桃月庵白酒いじりの一席なんですよね。
これ次のWホワイトとかでやりそうなので、詳しくは書きませんが、
落語家がばんばん出て、ギャグにされています。
歌舞伎座で年末、桃月庵白酒の芝浜の会が開催されている近未来の噺なのです。

さん喬師匠、一之輔、喬太郎、志の輔・昇太、小三治…

最後のライバルとして、池袋でおでん屋のオヤジに身をやつした白鳥さんが登場するのです。
インパクトはあります。笑えます。ただ、これが〆の一席かぁー 少し複雑です。
このおでん屋の屋号が「イラン亭」
イランは、産油国だから、“三遊亭”というのは無理あるよなぁ。

そうそう、東京ホテトル音頭を歌いました、白鳥さんが。


p.s. いやはや、このヨチヨチSWANの第一回目は、本当に印象に残る会でした。
白鳥師匠のポンコツぶり全開で、まだ、ぬう生時代の弟弟子彩大師匠に叱られながらのオープニングでした。