まず、富士太郎改め由井民部之助橘正雪は、尾張から河内へと向かい。自分は楠木正成の末裔だ!と言う思い込みなのか?嘘なのか?紺屋の倅らしく、染物の家系図を作り旅したらしい。

つまり、修行中、これを見せては、自身の由緒正しい出生を、方々で吹いて回ったようです。


そして河内から伊賀・大和へと旅する途中、百姓が百人規模で鹿狩をしている場面に遭遇。面白そうなんで、松の根方に腰掛けて見ていると、身の丈六尺、全身赤茶毛た化物が出て来て、農民を襲う。蜘蛛の子を散らすように逃げる農民。

その化物が、正雪を襲うが、正雪、化物の攻撃を柳のようなしなやかな体捌きで交わし、その化物の胸に短刀を刺してトドメを刺す。

大いに感動する百姓たち。貴方は?貴方のお名前は?と、問い掛ける百姓たちに、我はまだまだ、修行の身。名乗る程の者ではない。

そう言って、せめて一宿のもてなしを!と言う百姓たちを振り切って、正雪は加賀国へと赴く。


加賀国に入り、山中を抜けて街場へでようとした正雪。道に迷い一軒の荒屋を見付け、そこに一夜の宿をと申し出る。

中からは老婆が現れ、食べる物が無いから、泊まっても振舞いは、一切できぬ故、立ち去れと言われたが、この山奥で。。。と、食い下がり、

諸国武者修行の身だから、食べ物は持参していると、米があると、老婆に見せるが。。。老婆は、米を知らない様子???


本当に人か?米を知らぬとは。。。


囲炉裏に鍋を掛けて、自分で米を炊く正雪。空腹であろう老婆は、炊き上がった米には興味を示さない。そして、

正雪が食事を終えると、やたら、寝るように薦める。亭主が帰るから、その前に寝ていて欲しいと、老婆は言うが、正雪はご亭主様に挨拶だけでも。。。鰍沢?な展開に。


負けた正雪が、ムシロを被り寝たフリをしていると、その亭主が戻る。身の丈六尺(やたら、この慶安太平記は六尺です。)獣の皮を来たその亭主が、赤子を二人連れて戻って来た。


そして亭主は赤子を鉈のような刃物で、首を落とし、血を土間から外に流して、枝を突き通し串刺しにすると、囲炉裏に掛けて焼き始める。


その焼ける臭いが正雪の鼻を襲う!!


二人の赤子が、こんがり焼けると、その身を削いで、老婆と亭主は貪るように、それを食べる!

正に、餓鬼そのもの。さっきまでは、老婆だと思ったが、今見ると正に鬼婆!山姥である。


そして、一人目の赤子を食い終えた二人が、ジロり!と、正雪の方を観て、亭主が言った「旅の武者修行の人、口に合うか?どうか?一つ食べませんか?」

言われた正雪、兎に角、隙を見せると自分も喰われるんじゃないか?恐る恐る逆らわずに、赤子の肉に口を付ける。。。アレ?美味い!!

驚いた正雪が、二人に尋ねる、これは何の肉ですか?すると、亭主が笑いながら言う、見れば分かるでしょう。マシラ・猿ですよ。


猿?!


人、赤子では無いと分かると、山姥に見えていた老婆が、普通の人に見えて、亭主も人の良さそうな猟師に見えた。

人の人相は、心の色眼鏡で、如何様にも変わる事を正雪は学び、以後、人を先入観で判断しない!そんな教訓を覚えるのでした。

ちなみに、この猟師は元は武士で、豊臣と共に主君は自害、自身は二君に仕えずで、猟師となり山奥にひっそりと暮らしていました。


この猟師夫婦の家を後にして、正雪は越前へと進みます。


つづく