第五章 近江屋
ようやく帰って来た文七を、番頭の平助と主人の卯兵衛が待っている。
「何をしていたんだ、今頃まで」と、叱る平助を制して、卯兵衛が言う、
「水戸様からのカケのお金は、どうしたんです?文七」と。

すると、意外にもこれにございますと、五十両を文七が主に見せる。
驚く番頭と主。そして、「番頭さん、これは貴方もいけませんよ、
お前さんが、もう文七は一人前だから、五十両の掛取りも任せられる、
そう言うから、文七を水戸様へ行かせたんです、みなさい、五十両増えてしまった」

意味が分からず、キョトンとする文七に、番頭の平助が言って聞かせる。
文七が碁に夢中になって、碁盤の下に五十両を忘れてしまった事。
それに気付いた、水戸の藩士が、その五十両を近江屋へ届けてくれた事。
かなかな文七が戻らないので、店中で心配していた事、などを説明する。

すると、半狂乱になった文七が、「今年、十七になる娘が梅毒になる!!」

そう叫びながら、グルグル糞詰まりの狆のように動き回る。
止めに入った番頭までも、一緒になって「梅毒!梅毒!」と騒ぐ始末。
卯兵衛が怒鳴って、なんとか治まった二人。優しく卯兵衛が理由を聞くと、
見ず知らずのみすぼらしい職人風の親方から五十両を貰ったという。
そして、そのお金は、吉原に娘さんを売ったお金だと説明する。
更に、来年の晦日までに五十両を返せば、娘は女郎に成らずに済むが…

また、錯乱した文七が「梅毒!!」を連呼して踊り出す。
すると番頭までもが踊り出し、今度は卯兵衛が立ち上がって、
いい加減にしろ!!と、ドリフのコントのいかりや長介風に止めて治まる。

ここから、古典に戻って、五十両をくれた親方の名前も聞いていない文七から、
番頭の機転で、吉原でも五十両を右から左に動かせるのは大店だ!!と、
角海老、松葉屋、三浦屋、大文字、品川楼、稲元楼、と大店の名前を挙げて、佐野槌を思い出させる。
佐野槌を突き止めて、そこから「だるま横丁」の長兵衛親方だと、
五十両の出所が分かるのでした。

 

 

 

第六章 長兵衛宅
「あんた、娘を売った銭で博打場に行ったねぇ!?」
狂わんばかりの、お兼の怒鳴り声と、
「そうじゃねぇーって云ってるだろう、くれてやったんだ!」
と、反論する長兵衛。激しい夫婦喧嘩。犬でも喰わないので、途方に暮れるマサヒロ。
マサヒロは、神様! 夫婦喧嘩を止めて下さいとお願いする。

金毘羅と、不動が登場するが、出番の関係で金毘羅は近江屋卯兵衛に備えて、
「池袋の代演に行って来る!!」とか言ってはける。
すると、マサヒロが「おじさん誰?」と、不動=喬太郎が見えると言い出し、
マサヒロは、神様が見える残念な子を熱演する。

不動が「おじさん、誰に見える?」
マサヒロはこれに、「横目家助平」と答える。私は個人的にバカ受けでしたが、
会場は、イマイチの反応でした。知られてないなぁー 一琴の横目家助平。
志らくの演劇ファンでないと、あまり知らないのかもしれませんが、
確かに体型は、横目家助平によく似ていました。

続いて、もう一度、不動が「おじさん、誰に見える?」と問うと、
「内柴選手!!」と即答するマサヒロ、これは受ける。
喬太郎が、確かに、俺にもそいう欲望はあるけど…
と、言って不動までも、ここでハケて居なくなる。

マサヒロが、誰でもいい、神様!死神でもいいぃーと言うと、
死神=柳家小せん登場!! 「私は、誰に見える?」と言うと「角田美代子」 
これが、どうやら一番受ける。そして、恐ろしく唐突に、マサヒロが、
「ねぇ、ガーコン教えて?」と、ガーコンの脱穀機の動きに興味を示す。
それに対して、死神の小せんが、川柳直伝のガーコンをマサヒロに教える。
ガーコンを教えて、死神小せん曰く「寄席ではやるなぁよ」
これが、なかなか受けて、本筋に戻る。
 

喧嘩の最中の長兵衛夫婦のもとを、近江屋卯兵衛と文七が訪れる。
ここからは、マサヒロもお兼と二人で衝立の陰に隠れるものの、
古典の文七元結と同じ展開で進む。小西の切手がないくらいで、
他は、そのとおりに流れて、長兵衛は文七の後見として親子同然の関係となり、
近江屋に対しては、対等に親戚付き合いをと言われる。

そして、一番のクライマックス!! 佐野槌から見受けされたお久の登場です。
これが、予算の関係も多分にあって、内掛けに文金高島田とはいきません。
お久=こみちちゃんは、知る人ぞ知る、実の旦那様との馴れ初めでもある、
草野球のユニフォーム姿で、バットを持って登場!!

ここから、文七とお久が夫婦になってのハッピーエンドで一応は決着するが、
死神と不動が協議の結果、これでは普通過ぎるので…
謎のバーテンダーとお久が結ばれて、1年後に長兵衛とお兼に初孫が誕生する。
そして、文七は、マサヒロ以下長兵衛親子に奴隷のようにコキ使われたという、
ドリフのコントのようなドタバタするラストで〆ました。

皆さん芸達者で、非常に良かったのと、
えりちゃんの三味線&語りが利いたお芝居でした。