今年最後の横浜にぎわい座での志の輔独演会です。
今回は、久しぶりに二階席で観ました。高い位置からですが、
横浜にぎわい座くらいの小屋であればノープロブレム!!
カウントダウンで今年最後の高座は有りますが、
独演会の締め括りは、こんな内容になりました。
 

 


・元犬    …  立川志のぽん

・だくだく  …  立川志の輔

仲入り

・手妻曲芸 … 藤山晃太郎

・五貫裁き … 立川志の輔
 


 

 

 

1.元犬/志のぽん
今年二回目の志のぽんでした。前回は町田での志の輔独演会の開口一番!
その時は、『ガマの油』をやりました。前座根多というより二つ目トライやル的な根多でした。
さて今回はちょうど中間くらいの根多ですね、『元犬』 前座もやるけど真打もね、みたいなぁ。
しかも11/4オンエアされたNHK新人演芸大賞で、宮治くんが大賞を取った根多と同じ『元犬』

比較するなと言われても、比べたくなる根多のチョイスですよねぇ。
前座がやる『元犬』としては、それなりにデキてはいますが、
犬を演じても、犬に見えないのがまだまだ、修行が足りません。
目白の小さん師匠じゃないけど、犬の料簡にならないと、
この落語はダメだと思います。同じ柳家なんだから頑張りましょう。
 

 

 

 

2.だくだく/志の輔
マクラで、まず田中真紀子文部科学大臣の記者会見もようについて語る志の輔。
以前、新潟に総選挙中に行った際、選挙カーの上から、田中真紀子女史が、
「私は、父角栄から『真紀子が男だったら、真紀子が男だったら』と、しょっちゅう言われておりました!
そこで、今度は皆さんが本当に私を“男”にして頂く番でこざいます!!」と、
分けの分からないお願いをしていたのを聞いたそうです。
既に、十分男ですよね田中真紀子!! 少なくとも旦那よりは男だと思います。

昨日の会見は、これに負けず劣らず意味不明だったみたいですね。
私は、にぎわい座に居たので聞けませんでした。
志の輔が言うには、前半、ボロクソに今回不採用となった3大学を批判して、
一旦、下がったにも関わらず、「そう!そう!言い忘れていたワ」と言って戻ったかと思ったら、
「新しい審議の枠組が出来たら、まずは、この3大学から再審査します」と言ったらしいネ。
本当に、意味不明な大臣です、田中真紀子大臣。

この話から、橋下市長が文楽協会ともめている話に移行し、
石原慎太郎もそうですが、一見頭のいい、良さそうに見える人に限って、
何かどうでもいいような事に拘って、大衆には変に聞こえる発言をする平気ですると言うのです。
更にここから、山中教授のノーベル賞の話になり、これは文楽などを生んだ日本と言う土壌、
この日本と言う国だからこそ、ならではのお家芸と言っても良い受賞だと言い出しました。

何に?

そう思って聞いていたら、志の輔の三番弟子:志の春を引き合いに出して、
彼は非常に英語が堪能です。今日再選されたオバマ大統領と同じエール大学出身。
帰国子女で、エール大学を出て三井物産に就職。三井物産を辞めて立川流ですよ。
バカでしょう? よく親が許したなぁーと思ったら、彼の実の兄が、
オックスフォードを卒業して、アルバイトしながら劇団四季で団員やってるそうです。
親は、既に兄で免疫はできているんでしょうね。凄いですよ志の春兄弟。

その志の春は、堪能な英語を駆使して、英語落語をやります。
シンガポールで行われた、世界ピン芸人大会にも出場しています。
そこで、転失気をやったそうですが、その落語という芸に世界中のピン芸人が驚いたそうです。
別に、志の春の落語に驚いたのではなく、落語という日本の伝統芸能に驚いたのです。
つまり、ト書き無しで、会話のみで複数の人間が登場し物語を成立させる。
その手法と、客頼り、やりっぱなし、予め文化、これに驚いたんですね。

つまり、この許す心というのか、性善説的な風土ですね日本の。
逆に言うとだから、朝鮮に竹島、支那に尖閣を自分のもんだ!なんて言われるんだと思いますが、
でもでも、この単一民族で2000年以上生きてきて築かれた土壌に、
志の輔は、中山教授のノーベル賞の一因があると思うと言いながら、
パルコで去年やった『だくだく』を久しぶりに披露しました。

白酒くんや兼好さんのような、個性的ではありません。
立川では、談修がやりますね、あれと同じように基本に忠実です。
でも、最後泥棒と八五郎の“つもり”合戦は志の輔らしく爆笑です。
また、パルコの季節がやってきたと再認識させられました。
 

 

 

 

3.手妻曲芸/晃太郎
初めて見る和風手品師といった感じの“手妻使い”です。
辮髪風の髪型で、由井正雪風でもあります。イケメンです。

まず、金輪の手妻から。4つの輪を入れたり外したりの芸です。
なぜか、BGM音楽は中国風の曲。和の音楽ではやりにくいのか?
続いて、これが面白かったけど、ちょっと遠いのが残念な「蝶々」の手妻。
紙を細かく切って見せて、それを捻って2匹の蝶々を作ります。
そして、それを不思議な扇2本で扇ぐと、蝶々が生きているかのように飛びます。
これは、なかなか優雅で、最後に紙吹雪も披露されました。

たぶん、晃太郎さん本人が知らないのでしょうねぇー
二匹の蝶々が操れて、雪に見立てた紙吹雪の手妻もできるなら、
落語ファンが喜びそうな、そう!! 双蝶々~雪の子別れ~と題して、
そのような風情で、見せることができのにと思いました。

最後は、箱の手妻、色んなものが箱から出ました。
巨大な番傘が出たのには驚いた!!
次回は、近くでみたい芸でした。
ただ、高座が紙吹雪でちらかったので、撤収に時間を要しました。

◆藤山晃太郎
http://www.wazuma.jp/sp/20111017_2.html

 

 

 

 

4.五貫裁き/志の輔
マクラが長かった!! 志の輔、にぎわい座では、行き当たりバッタリのマクラを振ります。
だから、初めて聴くマクラに当たるのは嬉しいのですが、長いマクラになる傾向にあります。
それでも、小三治師匠のようには長くならないけど、それでも長いです。
この日は、先に上がった晃太郎の手妻で、蝶々を袖で横から見たのにタネが分からない!!
そういいつつ、晃太郎に、どうやってるの?と聞いたけど教えてもらえず、
ならばと、髪の毛は地毛なの?と聞いたけど、これも企業秘密と言われたと言って客席を笑わせました。

そして、奄美大島で落語会をした話を長ぁーーーく振ったのです。
まず、奄美大島になぜ?と思いますよね。沖縄へはもう20数年独演会で行っている志の輔。
飛行機で上空を飛ぶ旅に、奄美へと思っていたそうです。
奄美は、沖縄に近いのに鹿児島県ですよね、それは沖縄より20年早く本土復帰したからなのです。

奄美名物の ケイハン

鶏飯と書きます。これを食堂で食べた話をし出しました。
白米に、椎茸の煮物、錦糸玉子、紅生姜、湯引ササミなどの具を載せて、
そこに熱い鶏ガラスープを掛けて、お茶漬け風に頂くのが鶏飯です。
好みで、パパイヤ漬けだの、ゴーヤだの、南国風のものも載せます。
それを空港に近い食堂で食べていると、一人の杖を突きながらの老人が入って来て、
ゆっくり何やら料理を注文したそうです。 注文を受けたウエートレスが奥に下がると、
その店の店主風の女性が奥から出て来て、「御爺ちゃん、どこまで行くの?」と訊ねたそうです。
これに老人は、チケットを見せながら「喜界島」と答えた。すると、その女性は、
「御爺ちゃん、気の毒だけど、今注文した料理を作って、それを御爺ちゃんが食べてたら、
飛行機に遅れてしまうから、ここでの食事は無理よ」と、親切に老人の注文を断ったそうです。
更に、老人を立たせて、杖を持たせようとしていたら、空港の職員風の女性も定食屋に現れて、
二人で老人を空港まで連れて行ってあげたとか。

この光景を見ただけで、志の輔のハートを鷲掴みにした奄美。

それでも、客の落語への反応には苦労したみたいですね。
やっぱり、温かい地方の人は日常に笑いが溢れているので、
落語のような仕込み型の笑いに、あまりいい反応をしないようです。
そんな事を言いながら、奄美で、田中一村記念館に行った話までする志の輔。
田中一村記念館には、あのNHKのアナウンサーだった宮崎緑さんが館長で居ます。
宮崎さんに丁寧に、一村の作品を紹介してもらったそうです。
もう、宮崎さんは奄美に住んで10年以上になるんですねぇー

奄美の後、沖縄の離島でも落語会をやっている話になり、
これは何度か聞いたことのある、西表島での落語会の話をして、
そこから『五貫裁き(一文惜しみ)』をやりました。
 

義に強い者に限って、金がない
 

『五貫裁き』は、ここ5年、立川流しか聴いていません。
志らく、談春、そして、この志の輔です。
談春は最近談志の型でやらなくなりました。
圓生師匠と同じですね、志の輔と志らくは談志流のオチです。

私が好きなのは、この「義に強い」のフレーズと、「糞を喰らって、西へ飛べ!」ですね。
時々、若衆を叱る場面で使うことがありますが、言われた相手に通じません。
さて、志の輔の『五貫裁き』 久しぶりだったからか?言い間違いがありました。
まず、徳力屋に奉賀帳を持って八五郎が行って、大家の家に戻って来た場面、
「キセルの雁首で、俺の額をこんなに・・・」のはずが、「俺の雁首に…」と言ってしまいました。
八五郎に雁首はないだろうに。
また、徳力屋を世話したのは、八五郎の祖父ですよね。これが父親だった。
細かい点ですが、聴いていて気になりました。
また、マクラが長くて後半バテぎみの志の輔だった。
ちなみに、三三くんは寄席の真打披露がこの『五貫裁き』でした。

もう一度、この後聴く、江戸川辺りで万全の『五貫裁き』が聴けると幸です。