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いつもの時間に小田急で下北沢に行ったら、オカッパで着物姿、
両手に沢山の荷物を抱えた女性を発見!!
そうです、恩田えり師匠でした。「えりちゃん!お疲れさま」と言うと、
ニッコリしてあの声で「疲れた、観に来るの?」「ハイ」
と、言ってえりちゃんは北沢タウンホールへ、私は三日月ロックへ。
17:50に到着したが、店が“仕込み中” 待って18:10に開店。
私の前に2名待っている客がおりました。流石、人気店です。
しかし、この日はベビーカーに1歳くらいの寝た子連れのカップルが来店していた。
乳児に限らず、酒場なんだから子供は預けて来いよ!と、思うのは俺だけ?

さて、三日月ロックで“せせり”が焼けるのが遅れて、ギリギリの入館。
既に一力くんの『道灌』が始まっていた。それを袖で聴いて、
あわただしく着席しました。そんな第四回訊け!はこんな演目でした。
 

 

 

 

 

 

1.道灌/春風亭一力
一力さんを実に9回も聴いていました。よく使われている前座さんです。
太鼓が上手にたたけて、元気がよくて気持ちい前座さんです。
小さい体で、キビキビ動けるんだと思います。場数を踏めば上達も早いですよね。
師匠の一朝さんの口調を、かなりリアルに真似て喋ります。
年に似合わないのが面白いと感じますが、これが貫目が出て来ると合うようになる。
この日の『道灌』も、こまかい言葉の間違いや、抜けなどありましたが、
それよりリズムと元気です前座さんは。芸が小さくならない為にも、
基本にしっかりで、師匠の教えに忠実なのは、好感が持てました。
 

 

 

 

2.錦の袈裟/三遊亭兼好
兼好さんでは初めてでした。この根多を聴いているのが、直近5年で下記の6名です。
志らく、小三治、三三、金也、白酒、そして、今回の兼好さん。
白酒くんだけ、今年二回聴いていますが、全員1回ずつなんで、
なんかあんまり強い印象が残らないのですが、与太郎の上さんていうのがポイントです。
『鮑のし』の甚兵衛さんの女房に似てはいるのですが、与太郎に惚れる女房ですからね。
化物使いじゃないけど、操縦の仕方に苦労と愛情を感じます。
そして、今回の兼好さんの女房は、与太郎への愛を強く感じる女房でした。
 

 

 


3.対談/広瀬和生氏+兼好
名物コーナーの対談。兼好さんて、64歳で一旦兼好として引退するって決めてるんですね。
これは噂では聞いたことがあったけど、本人の口からは初めて聞きました。
年金が65歳からなのか?広瀬さんに突っ込んでもらいたかったけど、これは聞かなかった。
あと、あこがれがない!というのも兼好さんの特徴です。
だから、模倣した型のようなものがありませんね、彼の落語には。
それから、CDとかDVDとか聞いたり、観たいしないそうです。
たくさん持っているけど、セロハンが付いたまんまだそうです。
洒落だと思うけど、65歳になったら老後に聞き捲り、観捲るそうです。

そうそう傑作だったのが、娘さんが今年の夏に軽い熱中症になって、
兼好さん自らが娘を病院に連れて行った話!!
これは、爆笑でした。医師(宝塚風の女医)の問診に答える娘さん。
女医さんを真矢みきでどうぞ!

女医が「生活習慣の中に、病が潜んでいる場合があるのね、
貴方は気付かないだけかもしれないけど、合わないものがあるはず、
だから2・3質問しますね。」

・風邪をひいいたとかありませんか?
チラット兼好さんを見て娘が「お父さん、父が風邪をひいてて咳してたから、感染されたかも?」

・何か食当りとかありませんか?
再度、チラット兼好さんを見て娘が「父が、野菜炒めを作ってくれたんだけど、それが油っ濃くて…」

・湯冷めや寝冷えはありませんか?
またまたチラット兼好さんを見て娘が「父が、冷房が嫌いでエアコン付けないから、汗びっしょりになって…」

この3つの問診の後、女医が「どうやら、お父さんが合わないみたいね」と半笑いで言ったそうです。
 

 

 

 

4.竹の水仙/三遊亭兼好
なかなか、兼好さんらしい演出の『竹の水仙』でした
総論的にいうと、笑いの部分が偏らず、満遍なく爆笑と“プッ”って軽い笑いの連続なのです。
で、左甚五郎をそんなに濃く描かないので、満遍なく笑いになるんだと思うんですよね。
本人は、全く意識してやってはいないと思うけど、何がいいって甚五郎が軽いからなのです。
同じ甚五郎の噺でも、『三井の大黒』などは、甚五郎のキャラが立っていないとダメだけど、
この『竹の水仙』や『ねずみ』は、どちも宿屋の夫婦・親子と対等なくらいが良いんだと思います。

そして、兼好さんオリジナルな部分ですね、これが素晴らしい。
普通は、宿屋の亭主がお人よしで女房の尻に敷かれてて、
女房は、亭主のふがいなさに切れて、最後はフテ腐れてしまう。
ところが、兼好さんのは、夫婦共にお人よし、おだてられると弱い。
だから貧乏で、一紋無しを許してしまうんだなぁーと思わせるキャラなのです。

毎日三升飲んで鯛や平目の刺身を食って、10日で溜めた宿代が11両と二分。
これを旦那は、慈悲深い仏様のようだとおだてられると、払ってくださいと言い出せず、
代わりに請求に行った女房は、鯛や平目に引っ掛けて、乙姫様と呼ばれて好い気になる。
こんな夫婦だから、甚五郎も惚れて“竹の水仙”を彫ったんだなぁーと思わせます。
最後に、細川越中守が買い上げる場面も、兼好らくごらしい夫婦連携で値を吊り上げて売ります。

この日は、この一席をきくだけでも価値がありました。