中野で一之輔真打披露を聴いて、ハシゴで北沢タウンホールへ。
マンガ喫茶で1時間半、ボーーーーーっとしてから、
いつものように「三日月ロック」へ。 黒ホッピーを呑みながら、
せせり、豚バラ、ハツを注文。追加で、大分産カボスサワーを呑んで会場へ。
すると、もう、前座・笑二くんの『かぼちゃ屋』が始まっておりました。
 

 

 


1.かぼちゃ屋/笑二
途中からだったけど、この子も結構上手いです。
吉笑くんの1年半で立川流で二つ目に成ったのにも驚いたけど、
この笑二くんも、スピード出世しそうな逸材です。
妙なギャグを押して客を笑わせます。志らくが好きそうな演出です。
この日も、与太郎が二回目に長屋を廻らせられる場面で、
与太郎のバカぶりが炸裂して、世話をやいてくれる長屋のお兄さんを呆れさせます。
普通は、“上を見ろ”でやるボケだと思いますが、彼のは二回目でも与太郎はバカなので、
相変わらず、天秤棒を担いだまんま、Uターンしようとして悪戦苦闘するし、
掛け値して売る場合でも、客を客とは思わぬおバカぶりなのです。
あまりに意外な演出に、私はビックリしました。

笑二くん!そのままスクスク伸びて欲しい。
妙にシュールにならず、バカバカしいのが好きです。
二代目・木久蔵的な与太郎に期待します。
 

 

 

 

2.改作・紺屋高尾(小倉優子リンのブルージーンズ)/談笑
人気投票で1位だった噺が、この小倉優子版の『紺屋高尾』でした。
知りませんよネ、この噺。談笑マニアには鉄板な根多なんですけどね。
紺屋の職人が、児島のジーンズ屋の職人に代わっております。
児島が世界的なジーンズの流行発信基地に成っているのを知らないと、
この噺も、イマイチピン!と来ないのです。だから、マクラでは、
談笑も、岡山県倉敷市児島の話を振ります。

児島と聞くと、俺なんかは競艇場ですよ。
母親の実家が岡山なんで、親父と二人で母親の代わりに披露宴に行って、
帰りに児島競艇に行ったんですよ。そして、そこに引き出物を忘れて来てね。
母親に死ぬ程叱られたけど、勝ったんだよと言って、
ご祝儀に三万円渡したら許してくれて、そんな想い出の児島ですよ。

で、この噺。2005年だか2004年の作品で、談笑が二つ目から真打に上がる直前の作品。
当時、まだコリン星から来たお姫様だ!と、本人が言い張ってた時代の物語なのです。
だから、既に優子リンが、ヘアメークさんと結婚して、子供も生まれて、
完全にアイドルではない状態だと、噺が微妙なんですよねぇー
だれか、代わりのアイドルらしいアイドルで置き換えたいけど、
ここまで、変なアイドル現在少ないでしょう。

きゃりーぱみゅぱみゅとかで置き換えられたら?とは思うが、
きゃりーぱみゅぱみゅは一般知名度あるけど、落語ファンには浸透してませんよね。
そいう意味で、小倉優子リンというのは、ちょうどいいレベルのアイドルだったんですよ。
そして、広瀬さんも一番好きだと言う 「ブンブン、カーセブン」の優子リンのCMの真似。
あれは、今やっても客にドッカン!ドッカン!受けますからねぇ。
ただ、小倉優子リンが高尾太夫級のアイドルだったか?は、かなり異論がありますね。

あと最後の、“アイドルに真なしとは誰(た)が言うた”
このフレーズは、笑います。
 

 

 

 

3.シャブ浜/談笑
ご存知のように立川談志に禁演にされた『シャブ浜』
それを、なぜか世田谷の北沢タウンホールで解禁する談笑でした。
これも2005年の作品で、上野広小路亭での年末の談笑独演会が初演。
すぐに、物凄いブームになり、無くなった塚越さんがやっていたCXの落語会。
目玉寄席で、談笑が『シャブ浜』を演じた動画が、CXのサイトで配信されていた。
更に、ラジオデイズと落語蔵では、これが有料ダウンロードできるようになって、
完全に、談笑自身の知らない所で、もう一人歩きするような存在になった『シャブ浜』

『シャブ浜』は、談笑が『芝浜』を演じる前の作品なんだそうだ。
そして、私はクレージーケンバンドが好きだからすぐに分かったけど、
この『シャブ浜』の元題というのか、素材は「タイガー&ドラゴン」なのです。
中に横須賀の三笠公園が登場します。
TBSの宮藤官九郎作「タイガー&ドラゴン」がヒット、若い落語ファンが増えたのを記念して、
本当は、1回限定で、2005年にやったんですね。

解禁されたので、これかも、『芝浜』とは違って季節も関係ないので、
多分、いろんな場面で聴くことができると思うからあえて筋は書きません。
談笑さんの落語会へ足を運んで、聴いて欲しいと思います。

広瀬さんも言ってたが、最後は『芝浜』というより『子は鎹』です。

 

 

 

4.トークショー 広瀬和生VS談笑
この日の二席を、広瀬さんが総括して、質問・疑問に談笑師が答えるコーナーです。
終演後、30分くらいやるので、早く帰りたい私は、毎回聞かずに帰っていましたが、
この日は、30早く会が始まったので、最後まで聞いて帰りました。

広瀬さんが言うに、家元談志が言う「現代に落語を伝える」
能や文楽みたいに滅ばない為の落語。
ただし、どこまで分かりやすくするのか?
家元は、江戸の風が吹かないとと言ってますが。
談笑は、『シャブ浜』をやる事が、芸として、『芝浜』にシンクロするんだそうです。
相互に、刺激しあう関係にあるらしい。
ヘーゲル的に言うと、テーゼ『芝浜』VSアンチテーゼ『シャブ浜』が、
これがアウグヘーベンして、何か新しい一つ上のステージのシンテーゼになるのでしょう。

こんなのは、まぁ、私としてはどうでも良いのですが、
このリアルに演じるって部分。私も大切だと思うのだが、
『船徳』での、舟を漕ぐ仕草や、『首提灯』でい居合いの達人の剣を扱う仕草と同じように、
『シャブ浜』では、シャブを打つ仕草や、シャブ中の真理描写がリアルに演じられます。

これは、必要なのか?

『肥辰一代記』で、肥やウンコはリアルには圓丈師匠は演じません。
そうでなくても、おわい屋の噺だから、100人客が居ると何人かは、
生理的に、ウンコは嫌いなんだから、あえて必要以上にはやらない。
つまり、『シャブ浜』にも、良い加減のリアルがあるはずなのです。
この日のは、考える余地が、まだまだあるように私は感じました。

あと、良いのは、シャブで幻覚を見て、時間の概念が薄れていくところですね。
ここの演出は、なかなか計算されていて、ここまで落ちているんだぞ観が素晴らしい。
で、その割りに、烏カーで夜が明けるみたいに、校正してるんですよ主人公。
この校正の過程も、落ちるのと同じくらいに描いて欲しいですよね。

そんな可能性を感じつつ、リアルに演じるってなんだ!と考えさせられた『シャブ浜』でした。