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各月1回の公演になったにぎわい座の志の輔公演。
巣鴨のスタジオ・フォーは毎月やっているのに…
なんとなく、久しぶりに聴いた感じがする志の輔でした。
本多劇場で『大河への道』を聴いたばかりだったのに。
今回のにぎわい座、こんな内容でした。

 

 

 

1.転失気/志の太郎
いきなり、冒頭の「知らないのに、知ったかぶりをするなんて事を言いますが…」
ここを、「知っているのに」と言い間違いして、気付いて即やり直した志の太郎。
この言い直しが一番の大爆笑だったという『転失気』でしたが、
過去に、志の太郎で聴いた『子ほめ』よりは、『転失気』の方が良かったです。
 

 

 


2.三方一両損/志の輔
4月の銀座ブロッサムで聴いて以来の『三方一両損』でした。
マクラは、正絹ではなく化繊の着物を真打に成って初めて着ていると言う志の輔。
「夏は丸荒いできて便利なんだよ!」と、同期の昇太に薦められて、
この日、超薄く淡い緑色のポリエステル製の着物で登場した志の輔でした。
2着、洗張りに出すと、1着正絹の着物が買えると嘆く志の輔でした。
 


ここから“マンナン・レバー”の話をして、日本人は偉い!!
って、事をしみじみ語ってから、話題はオリンピックに。
五輪は4年間の準備を経て、明日無き闘いをするから、
茶の間のテレビを通しても、熱中できるのだという志の輔。
だから、チャンネルを変えている時、一瞬、野球中継が写ったりするが、
全然、つまらないし、全く感動なんてしません!明日があるから。
そんな事を言いながら、話題を“お笑い”に。
志の輔がよく言うマクラで、小咄をする前に必ず言います。
“お笑う”というツボは、人によって千差万別である。
だから、お笑いは難しいと言う志の輔です。

そして、こんなアメリカン・ジョークを紹介しました。

Seven is stronger than nine. 
7,8,9. It is because seven ate(eight) nine. 

くだらないジョークですが、米国人は腹を抱えて笑います。
なんで、こんな低次元のギャグで笑うような奴等に、
戦争で負けたんだ!と、広島原爆の日に悔やむ志の輔。
ここから、いくつか小咄を披露しました。
そんな中に、談志師匠でも聴いた小咄をやりました。

弟「お兄ちゃん、お小遣い持ってる?」
兄「持ってるぞ、千円。」
弟「お兄ちゃん、千円で何か買って遊ぼう」
兄「千円でか?何かいいもん買えるのか?」
弟「買えるよ、凄くいいもん」
兄「マジか?! ヨシ、千円やるからそれを買って来い」

弟「買ってきたよ、兄ちゃん」
兄「何だこれ? アンネタンポンmin???」
弟「凄いんだよ、兄ちゃん、ここ読んでごらんよ」
兄「なになに、乗馬、水泳、テニス、何でもできます」

これは、談志作かと思っていたら、志の輔作品の小咄だったそうです。
唯一、談志と価値観を共有できたジョークだったそうです。

そんな話から小咄を3つ4つ披露して、『三方一両損』へ。
この噺は、不思議なのは江戸弁の啖呵が本寸法で切れた方が、
当然、噺として面白いように思いがちだが、ここをやり過ぎると、
後半の漫画みたいなストーリーの展開が、笑えなくなるのです。

大家が「もはや、お前達の喧嘩じゃない!」と、取り上げてしまう。
そして、おしらすでは、大岡様が名裁きで最後を〆て終わる。
ここの痛快さ、畳み掛けるような落語らしい感じにする為には、
最初の喧嘩は、やりすぎず、笑いを挟みながらの展開の方がいい。

そこが上手いんですね、志の輔。
“長屋の壁は薄い”というキーワードで笑いを生み出すのです。
そしてそして、オチも一工夫して来ます。
大工の吉五郎と、左官の金太郎は、奉行の三方一両損の説明に興味を示さず、
お膳を振舞われ「両人、あまり空腹だからといえ、たんと食すなよ」と言われた二人が、
「お~かぁ~(大岡)食わねぇ」「たった一膳(越前)」と返すのがオチだが、
ここで仕返しだ!とばかり、大岡越前が「なんのことやら」と澄まして見せるのです。

ただし、可楽師匠とかで耳慣れているベテランの落語ファンには、
あんまり評判よくありません。速くて理解できない!と言います。
この志の輔を速いなんて言ったら、志らくのはもっとダメなんでしょうね。
 

 

 

 

3.歌謡漫談/寒空はだか
おなじみ、スカイツリー音頭の寒空はだかさんがゲストでした。
志の輔の客前だと、喬太郎の客前のように、これでもか?!!とはやりません。
何か手加減してて、余所行きの寒空はだかで、不完全燃焼でした。
 

 

 

 


4.唐茄子屋政談/志の輔
久しぶりに聴きました『唐茄子屋政談』
談志師匠は、志ん朝師匠と比べられるのが厭だったんでしょうね、
『唐茄子屋政談』ではなく、『人情八百屋』を、好んでやりました。
談春もそうですね、『人情八百屋』をやります。
で、志らくは両方『唐茄子屋政談』も『人情八百屋』もやります。
 

さて、志の輔。(下)はやらず(上)だけです。
勿論、(上)だけで1時間の志の輔らくごです、(下)も本息でやられたら…
(下)の部分は、簡単に解説して、志の輔のはハッピーエンドです。
因業な大家にタナ賃の代わりに、若旦那から恵みを受けた母親は死にません。
また、売り声を稽古しに吉原土手で若旦那が練習して、
吉原と花魁を回想する場面、ここも志ん朝みたいではありません。
つまり、志ん生→志ん朝の古今亭の様式の『唐茄子屋政談』とは別物です。

かといって、談志イズムかというと、それも違いますね
良くも悪くも、志の輔独自の『唐茄子屋政談』です。
私は、否定はしませんが、お気に入りではありません。
「これも、ありかな?」って感じですね。

さて、実は今日も中野ZEROホールで志の輔なのです。
この二席のうち、どちらかはやりそうです。
『唐茄子屋政談』と『ハナコ』だったらどうします?せいこさん