このシリーズも本年最後の会となりました。
昨年の「空飛ぶ馬」より『砂糖合戦』から始まって、
今回の『夜の蝉』で5作品目になります。
三三くんの新境地ですね、このシリーズは。
落語に行かせるか?と問われると難しいように思いますが、
マクラを含む話芸全般には、良い肥やしになるのでは?と。
 

 

 


1.夜の蝉
“私”と言う20歳の主人公が、春桜亭円紫という真打の落語家と、
日常にある謎を解くという緩いサスペンスの物語です。
今回は、私の姉に纏わる物語でした。

私の6歳年上の姉、同じ会社の同僚のイケメンと交際しています。
近頃、その交際相手・三木さんが、新入社員の女性と怪しいとの噂が流れている。
そんな噂に悩まされている事を、同期の親友・大貫さんに打ち明けたら、
「直接、三木さんに訊ねた方がいい」と、アドバイスされる姉。

思い切って、直接三木さんに訊ねた姉だったが、そこの事が二人の関係をギクシャクさせる。
そして、翌日、部長に呼ばれた姉は、接待で使わなくなった歌舞伎の切符を2枚貰う。
そこで、その1枚を仲直りのキッカケにしようと、姉は三木さんに社用の封筒に入れて送る。
勿論、その事を親友である大貫さんにも話し、「仲直りできるといいネ」と励まされる姉。

ところが、その姉が三木さん宛てに送ったはずのチケットが、なぜかあの子の所に届くのだ。
歌舞伎の会場の客席で新入社員の沢井さんと、姉が思わぬ鉢合わせになり、ビックリする。
ビックリしたのは姉だけでなく、沢井さんも同じように驚きを隠せない様子。
聞いてみると、沢井さんは、三木さんからの宛名書きでチケットを受け取っていたのだ!!

どうなっているの?

後日、三木さんと沢井さんの二人に呼び出される姉。
その席で、「もって回ったいやがらせは止めて欲しい」と言われる。
何がなんだか分からず困惑する姉の前で、沢井さんが号泣するのだった。

ここで、私が気に入った表現が登場します。
この時の姉の気持ちを表現したものなのですが、
“砂漠で、トビウオがまだ捕まえられないのか?!と、叱責された気分がしました”
北村薫らしい表現だと思いますネ。

そして、例によって、姉のチケットが誰によってなぜすり替えられたのか?
この謎解きを私は、円紫師匠にお願いして、見事にこの謎を解決して、
姉の喉に痞えた魚の骨を取り除いたのでした。

この事件をキッカケに姉妹の過去について語られて、
姉妹で新潟県の弥彦村へプチ旅行をするエンディングとなります。
この弥彦の情景と姉妹の心理描写は、柳家三三らしくて良かったです。
 

 

 

 

2.つるつる
三三くんがやるいつもの『つるつる』ではなく、演出が北村薫風です。
旦那が、幇間の一八に対していやがらせで引き止めるという部分を、
極力いやがらせだというニュアンスを殺して演じるのです。
何か違うと思いますね。それが嫌なら同じ一八いじめでも、
『愛宕山』とかにすればいいのにと思ってしまいます。
私は、普通の『つるつる』が好きです。

 

 

 

3.トーク
北村先生から三三くんへの質問で、落語の仕草をどう訓練するか?というのが聞かれました。
三三くんは、鏡で見たり、ビデオに撮ったりはせず、頭のイメージで演じて、
あとは、客の反応やそれを見た先輩方のアドバイスで直すらしいです。
更に、兄弟での語り合うことや、師弟で語り合うことはありますか?との質問に、
三三くんは、「人と喋るのが苦手だから…」 実の兄とも、小三治師匠とも、
人生や芸、趣味の話をする機会は、ほとんどないとの事。
落語は喋れるのに、口下手の三三くんです。

最後に、北村先生・三三くんの二人に次回の円紫シリーズはやらないの?
みたいな質問が出ましたが、二人とも即答は避けて、前向きに検討しますとの事でした。
是非、来年も、この企画をやって欲しいと願います。