神奈川県民ホールの濱永さんの「県民寄席」に、
ついに一之輔くん登場です。
真打披露で使った“後ろ幕”が飾られて、
おめでたい雰囲気で始まりました。
1.小粒/春風亭一力
成城で一度聴いた一力さんが前座でした。
その時に聴いたのと同じ『小粒』をやりました。
若いのか?意外と年を食っているのか?
元気な声で、愛嬌のある前座さんです。
そうそう、太鼓はちゃんと叩けます。
2.茶の湯/春風亭一之輔
50日間の真打の披露目を終えて、ホッとした表情の一之輔でした。
マクラでは、日芸の落研時代の思い出話をし、
この日の喰い付きで行われる“日大出身鼎談”に、
何で下座の三味線のえりチャンが出るのか?
そんな鼎談が必要なのか?と、力説しながら『茶の湯』へ
一之輔らしい『茶の湯』です。
根岸で隠居生活を始めたご隠居、その身の回りのお世話をする定吉、
この二人が、“茶の湯”を覚えて、どんどんエキセントリックに成って行きます。
まぁ、“茶の湯”と言いながら、青ぎな粉と実の皮を使うので、
茶の湯ゴッコなのですが、二人だけでのやり取りまでは、
落語的表現の範疇ですが、三軒長屋の住人を招待する辺りからは、
「今時のお笑い」/コント的な要素が強くなって来ます。
ただ、それでも妙にシュールにしない一之輔なので、
一応、落語の体裁を保って演じていました。
小三治会長が眉を顰めるハメ事は入りものの、語り自身は悪くありません。
冒頭の「定や、おい定吉、“漱石”を持って来なさい」
「男の茶の湯は、漱石だ! おなごは、“雅子”だけどなぁ」
「こいうのは、分かる人だけ笑えばいい!」は、実に一之輔らしかったです。
3.猫久/柳家喬太郎
この『猫久』は、最近五年間で聴いたのは、以下の三人です。
・志らく
・花緑
・談春
掛かるようで、意外とみなさんやらない値多です。
目白の師匠と談志師匠では生で聴いたけど、
意外とやらないもんだと思います、そうそう小三治で聴いてません。
で、それを喬太郎がやりました。勿論、聴くのは初めてです。
どんな風にやるかなぁーと思ったら、目白の師匠の雰囲気なのです。
床屋で出て来る侍が、いいのです。ここで、落ち着くから仕舞いのドタバタが生きます。
まだまだ、仮免みたいな『猫久』でしたが、花緑のなんかとは比べ物になりません!!
イワシの女房がストンキョで良い。喬太郎らしい女性像を見せてくれました。
あと、毎回この噺を聴くと思うのですが、
猫さんは、誰を斬りに行ったのか?
その恨みを買った野郎は、猫久と呼ばれる程温厚な人に、何をしたのか?
最後の結末は、どうなったのか?
この謎がバックに在って、滑稽に展開される『猫久』
このギャップを演者が見せてくれると嬉しいのですが、
志らくは、滑稽が濃く、談春は謎が濃く演じます。
ちなみに、花緑は、滑稽が薄く、謎が薄いです。
その点、喬太郎はこのバランスが良かったと感じました。
重ねるごとに、あとはこのバランスで濃くして欲しいです。
4.鼎談/一之輔・喬太郎・恩田えり
全員、日大出身なんだそうです。そして、なぜかゲストの喬太郎が司会。
この会を廻しました。濱永さんのご指名だったそうです。
喬太郎は商学部、一之輔は芸術学部、そしてえりチャンはなんと!法学部。
えりチャンが法学部と言うと、「うぉー」っとドヨメキが起こりました。
それにしても、法学部から下座になるなんて!まるで、邦楽部。
えりチャンは、県民ホールに来るまで鼎談するとは知らずに来て、
主催者の濱永さんに、「えりチャン、三味線だけでなく喋りも頑張って」と言われ、
そこで初めて知ったそうで、これがあるなら親を呼べば良かった!と申しておりました。
横浜にぎわい座、鈴本演芸場には、えりチャンファンが少なくありませんが、
流石に、県民ホールでは「えりチャン!」の声援は飛ばなかった。
鼎談は、まず日大の噺。えりチャンは日大在学時代、
落研所属の同級生、現在の柳朝が演じた『狸』を聴いたのが、
これが生まれて初めての生落語だったと言っておりました。
その噺が出て、柳朝といえば、五代目が一之輔の大師匠に当たり、
なんと真打になって、五代目が使っていた出囃子「さつまさ」を頂いたそうです。
これは名誉だよなぁー 多分、立川流の弟子たちも、
「談志」は継がなくてもいいけど、「木賊刈り」は欲しいに違いないです。
小益の文楽も、流石に「野崎」では寄席には上がらないし、
ヨシ坊の小さんだって、「序の舞」は使っていない。
そう考えると、根岸のバカ息子の正蔵は「菖蒲浴衣」を使ってますね。
まぁ、新・旧「菖蒲浴衣」は、いろんな咄家が出囃子にしているから、
そんなに罪悪感がないのか???
志ん生の「一丁入り」も、志ん朝の「老松」も、圓生の「正札附」も、
このまま寄席では聴けない出囃子になるのだろうか?と思いました。
5.徳ちゃん~五人廻し/春風亭一之輔
工夫しています、『徳ちゃん』から入って、途中『五人廻し』になり、
最後サゲはまた、『徳ちゃん』に戻ってサゲました。
江戸っ子、カマ風若旦那、軍人、相撲取、杢兵衛大尽、
この5人の演じ分けは、ちゃんとできているのですが、
杢兵衛さんだけややゆっくりですが、テンポが全部同じなんですよね。
全体的に早い気がします、若いから熱演するとそうなるとは思うけど、
ここですね、江戸っ子→カマ旦那のところは、ゆっくりに成って、
軍人の冒頭ギアチェンジして、軍人の後半、貞女の女房の話でまたゆっくり、
その辺りのこまかいリズムチェンジがあれば、更にいいと思いま
した。