明らかに、人気が出つつある柳家甚語楼師匠です。独演会に74人の予約が、当日80人に増えて椅子が追加されました。
普通は、10人前後当日減るのが普通なのに、天気が良いと増えるのは、いいですね。
今回が五回目、私は第1回からの皆勤賞です。毎回テーマを決めて、花鳥風月/四季折々の落語を用意してくれていて楽しい会なんですよ。
甚語楼くん自身も、この会だから挑戦できる根多を披露するのでファンには嬉しい会でもあります。
さて、開口一番は、さん喬一門のさん坊くんでした。
根多は『真田小僧』つい最近、立川談春で聴いたばかりなんで、申し訳ないが、さん坊くんのは、25点くらいでした。
まず、金坊が“クレヨンしんちゃん”みたいにスローモーなんです。で、それならズーっとスローモーならそれはそれで芸になるが本人がダレて普通に時々戻るんですよ。
惜しい感じはします。『長短』みたいな『真田小僧』も笑えます。
『祇園祭』
マクラで、最近怒りっぽい自分を止めて、おおらかで許せる性格に成ろうと努力しているが、なかなか難しいと言う甚語楼。
例えば、携帯電話を鳴らすバカには、本当に頭に来るが、それも許せるぐらいにならないと、
渋谷の副都心線で刺された人の事件を思うと、殺されたら、もともこもないから、相手が100%悪くても許せるぐらいじゃないと、現代は生き抜けない時代なのかもしれないと語る甚語楼師匠。
流石に、今日は携帯電話鳴らす奴は居ないかと思っていたら、鳴らしましたネ!推定60歳の女性が。
バックから出さなければ籠った音だったのに、なぜかバックから出して、大きく鳴らしてから電話に出るおばさん。
「何で掛けてくるの?」と、相手を怒っていましたが電源入れていたアンタが100%悪いぞ。
甚語楼くんの祇園祭は、お囃子のアカペラが市馬並みに大熱演で良かったが、京都弁の男言葉に「○○ドス」はない。
『普段の袴』/右太楼
この会を事務的に仕切る右太楼くんです。3回目ですね、この会のゲスト。
はなは、権太楼一門で唯一スマートな右太楼さん。周囲が肥満ばかりで、逆に病人扱いされると愚痴を溢しておりました。
続いて、今日は甚語楼くんのCDが出た!というので、その宣伝もする右太楼くん。
CDのキャッチコピーが凄いと言うのです。例えば権太楼師匠なら、「平成の爆笑落語」とか、たい平くんなら「林家の異端児!本格派古典落語」とかね。
で、甚語楼くんのは、笑いますヨ「男気溢れる、若手頭」なんです。
何なんだ!若手頭。若頭なら分かるが、若手頭って?
さて、本編の『普段の袴』寄席で、まま聴く根多です。なぜ、兄弟子の会のゲストでコレを?
とは思いましたが、つかないように武士が出る噺を選んだのか?無難な一席でした。
それなりに笑いも取りましたが、何か若さがない根多選びだと思いました。
『質屋庫』
二席目は『質屋庫』でした。マクラで「これでも、5キロ痩せた」と言う甚語楼くん。
何でも、逆流性食道炎を患って数年になるが、循環器科の医者に「狭心症の恐れがある」と言われてニトロを処方されて、
気の小さい甚語楼くんは、5キロ痩せてしまったそうです。結局、狭心症などではなく逆流性食道炎だけだったそうです。
さて、『質屋庫』なんですが、旦那/番頭/熊さん/定吉の四人が登場人物です。
旦那は、大きな質屋の旦那様ですから、貫禄があり人心を掌握して、それなりに徳がある人物です。
番頭は、忠義心はありながら臆病者です。律儀で真面目で旦那には逆らえません。
熊さんは腕っぷしは強いけど、職人気質丸だしで単純。ただし、幽霊やお化けは恐くて仕方ない。
定吉は、ませたガキの弟稚で、悪知恵が働く。ただし、憎めないキャラクター。
甚語楼くんのは、四人とも人物像がぼやけた印象です。残念!!
『鰻の幇間』
幇間の一八が、イマイチ幇間らしくないのです。言葉は悪くないが、間合いとリズム、そして仕種がらしくない。
上手く表現できないが、芸人のヨイショなんですよ、幇間はもっと臭く、そして粋だと思います。
大勢を喜ばせる芸じゃないよね、幇間は。ピンポイントで旦那一人を楽しませる芸。
喜ばせる為なら、命だって差し出す覚悟が幇間ですからね。こんなヨイショが欲しいなぁー
志らくは、そいうの上手いですよね。天性を感じる天才的な芸があります。
甚語楼くんのも、面白いけど文楽が100だとすると、せいぜい35くらいの芸だよなぁー
工夫も筋立も悪くないし、木乃伊取りに成った幇間が、店に対して切れる場面なんか素晴らしいけど、
その前の一八のヨイショと幇間としての技とプライドですよね。
軽くもあり、相手の懐に入って心を鷲掴みにしようと考えるし、努力する様を見せて欲しいよね。